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障害者の自立に逆行-- 生活保護改悪に反対 障害者団体

  生活保護基準引下げ中止を。先の国会で廃案となった生活保護法の一部改正法案を再度廃案に。などの緊急要望。また、自立支援について「自立支援を就労することのみをゴールとするやり方は、生活困窮者や障害のある人には馴染みません。」「働いて稼ぐことだけを自立とする狭い自立観だ。」と批判する。
「本来、成人した障害のある人に対しては、個人の尊厳を保ち、家族に依存することのない所得保障制度があるべき」だが、その機能がない。生活保護の改悪は、障害者の人権に直結する。それゆえ「改悪」の本質が浮き彫りになる。
日本障害者協議会(JD)による「緊急要望書」。きょうされんの「声明」。

 【生活保護制度の見直しに対する緊急要望書10/28】
【国民生活の最低ラインを守り、障害のある人の地域生活に安心と安定を~生活困窮者自立支援法案を中心とする生活保護制度をめぐる一連の動きに対する声明~ きょぅされん11/5】

  【生活保護制度の見直しに対する緊急要望書  日本障害者協議会(JD) 10/28】

 本年8月より実施された前例のない生活保護基準の大幅引き下げの強行と、先の国会で提出され、廃案となった、生活保護法一部改正法案に異議を唱えます(同改正法案のいわゆる「水際作戦の合法化」、「扶養義務の強化」等の問題については、生活保護問題対策全国会議や日弁連等が問題点を指摘しており、当協議会も同意見であるため、本要望では、とくに障害のある人に関わる問題を指摘します)。

 そもそも、生活保護受給者が過去最多(158万8,521世帯、215万8,946人)を更新し続けているのは、他の所得保障制度が機能していないことに最大の問題があります。このことは日本の生活保護受給者の95%が保護を受給し続けていかなければ生活できない実態からも明らかです。

 障害のある人については、作業所等に通う人の56.1%が相対的貧困(年収112万円の貧困線以下)であり、98.9%がワーキングプア(年収200万円以下)であるという調査結果(きょうされんによる1万人対象「障害のある人の地域生活実態調査」2012年)が出ています。その上、この10月1日からは基礎年金の2.5%の段階的引き下げが開始され、来年4月からの消費税3%アップと合わせ、障害のある人は、ますます厳しい生活を余儀なくされることは必至です。

 本来、成人した障害のある人に対しては、個人の尊厳を保ち、家族に依存することのない所得保障制度があるべきです。しかし、多くの障害のある人が生活保護を受けざるを得ない状況があり、これ自体、障害者政策の未成熟を物語っていると言えます。

 こうした状況の中で、生活保護の扶養義務強化を行えば、障害のある人の家族の責任はますます重くなり、引いては障害のある人の自立する機会を奪うことにもなりかねません。

 日本障害者協議会は、上記の点から今回の一連の生活保護制度の見直しは、最後のセーフティーネットを崩壊させるものであり、到底容認することはできないものとして反対し、以下のとおり、生活保護制度の見直しに対して緊急の要望をします。

 政府および各関係機関におかれましては、障害のある人のおかれている現状を真摯に受け止め、社会保障制度を後退させないよう、強く要請いたします。

                           ≪緊急要望事項≫

1.今年8月から実施された生活保護基準の引き下げを即刻中止するとともに、国民の生存権を保障するセーフティーネットとして、生活保護制度を拡充してください。

2.先の国会で廃案となった生活保護法の一部改正法案を再度廃案にしてください。

理由 
(A) 申請時の資産・収入・扶養の状況等に関する書類の提出義務づけは、行政の責任を個人に転嫁するものであり、とりわけ必要書類をそろえられない障害のある人にとって申請拒否につながるものです。
(B) 家族扶養の強化は、障害のある人を家族依存の状況に追い込むものです。
(C) 保護受給者に「健康保持及び増進の努力、生計状況の把握を責務」を負わせることや「後発医薬品(ジェネリック)の使用義務付け」の強制は、人間の尊厳を否定するものです。とくに、後発医薬品については、通常の薬と後発薬では効果が違うという意見もあり、使用する薬剤は処方する医師の判断と患者の選択によって決めるべきものです。保護受給者に限って、医師の判断と患者の選択を無視して、価格の安い後発薬の使用を強制することは断じて許せません。

3.生活保護制度のあり方をめぐっては、扶養義務の強化が叫ばれています。私たちは成人した障害のある人は独立した存在であることが保障されるべきだと考えています。生活保護を含むあらゆる所得保障政策で、この考え方は貫かれるべきです。家族扶養の強化は、障害のある人を依存状況に追い込むものにほかならず、根本的な見直しを求めます。

4.生活保護法の一部改正法案とセットで提案された「生活困窮者自立支援法案」は、この2法案が共に実施されれば、早期就労を口実にして生活保護からのさらなる締め出しが起こる可能性が大きいものです。また、自立支援を就労することのみをゴールとするやり方は、生活困窮者や障害のある人には馴染みません。自立支援を名目にして生活保護をできるだけ受給させない制度とするのではなく、生活困窮者には、まず生活保護を受給させ、その上で就労支援を丁寧に行うような法案にあらためることを強く求めます。

5.真に必要な施策のために、障害のある人の暮らしの実態調査を求めます。またその際には個人の尊厳を傷つけることのない質問内容やプライバシーに十分配慮してください。            

          以上


【国民生活の最低ラインを守り、障害のある人の地域生活に安心と安定を~生活困窮者自立支援法案を中心とする生活保護制度をめぐる一連の動きに対する声明~】

きょうされん理事長 西村 直

 長引く不況の下で貧困は今や国民的課題となり、中でも低所得者の割合が高い障害のある人の暮らしを直撃している。こうした問題の解消こそが求められているにもかかわらず、政府は「社会保障制度を『持続可能』なものにする」として、憲法25条に背を向ける形で生活保護制度の後退、縮減に着手した。

 その第一弾は、今年8月に実施された生活保護基準額の引き下げである。続く2014年4月と2015年4月の3回で合計約6.5%の引き下げとなる。もともと不十分な基準額の下でつましい暮らしをしてきた生活保護受給者は、今回の基準額引き下げで「これ以上、何を削れというのか」と追い詰められている。これに対し、全国の1万人を超える受給者が、「これでは生きていくことができない」として都道府県に不服を申し立てており、未曽有の規模で反対の声が広がっている。今後、この大運動は不服申し立てから訴訟に発展することも考えられるが、その場合もきょうされんはこれを支え、ともに歩むものである。

 第二弾として、政府は今の臨時国会で、生活保護法改正法案と生活困窮者自立支援法案の成立を強行しようとしている。この二法案は先の通常国会において、時間切れだけではなく、国民の強力な反対の声に押される形で廃案になったが、それとほぼ同じ法案が再提出されている。このうち生活保護法改正法案については、申請時の手続きを厳しくする点、扶養義務者や同居家族の収入・資産等についての福祉事務所の調査権限を大きくする点等、問題点が明らかになっており、きょうされんとしても既に反対の意思を表明している。
 一方、生活困窮者自立支援法案については議論を尽くしたとはいえず、このままでの成立は許されない。以下に、この法案の根底に流れる三つの見過ごせない問題点を指摘したい。

 第一は、働いて稼ぐことだけを自立とする狭い自立観だ。この法案は、生活に困った人が生活保護に至る前に働くことを支援するとしているが、これは言い換えれば「生活保護を受けて社会のお荷物にならないよう、働いて自分で稼ぎなさい」ということだ。だとすると、働いても十分に稼ぐことができない障害のある人等は自立できないということになる。障害の有無にかかわらず必要な支援を受けながら生きることを自立の一つの在り方として認め、誰もが社会の中で誇りをもって生きることができるしくみこそが必要である。

 第二は、労働法規が適用されない新しい働き方を生む貧しい労働観だ。この法案で提起されている中間的就労は一般就労と福祉的就労の間に位置し、一般就労に向けた支援付き訓練の場とされる。そのため、実際には働いているのに最低賃金等の労働法規が適用されないことが想定され、福祉的就労と同じ矛盾を抱えると同時に、こうした不適切な働き方を固定化させるという点で障害分野にも負の影響を与えることになろう。どんな働き方でも労働法規を適用するという観点こそが、働くことを応援するしくみには必要である。

 第三は、期限を定めて自立を迫る効率優先主義だ。この法案が用意している支援メニューは、ほとんどが期限付きになっている。財源を効率よく使うための手法だが、これでは劣悪な労働条件でも、とにかく期限内に働くよう追いたてられることにつながり、一人ひとりの生活を保障するしくみとは言えない。自分なりの自立を実現することを応援するしくみは、一律に期限を区切ることと相いれないはずである。
 ワンストップの相談窓口が創設される点や国等による一定の財政負担が明記された点等、この法案が示した支援策の中には民間によるこれまでのとりくみを制度化したものもあるとして評価する意見もある。確かに当面の支援策として検討の余地もあるが、前述した問題点は、本質面においてそれをはるかに上回るものがあり、到底容認することはできない。きょうされんは、拙速と言っていい今般の生活困窮者自立支援法案について、一旦白紙に戻すことを提案する。その上で、精緻な実態把握と当事者ニーズをもとに、国民合意を形成しながら、真に福祉政策と労働政策を結び付けた本格的な生活困窮者政策を確立すべきと考える。


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