日本に「スパイ防止法」がないは誤り。無いのは「公開原則」
田岡俊次氏・軍事ジャーナリストのダイヤモンドオンラインの記事から。
“政府・自民党の当局者は「日本には他国にあるスパイ防止法がない。スパイ天国だ」と主張しているが、実質的にその機能を果たす法律は多々ある” と述べている。日弁連は早くから立法事実--法案が必要とされる事実がないと指摘しているが、政府のまともな説明はない。
無いのは、「安全保障上の観点から一定期間、機密が必要」であっても「20年、30年たったらいずれ情報は公開するという原則」、「ところが、その原則がないから、平気で都合の悪い書類は破棄し、重要会議の議事録も残さない。」(毎日・与良氏)。情報公開の原則こそ遅れている。
安全保障は口実。国家権力が国民を支配。統治するという自民改憲草案と同根。
【日本に「スパイ防止法」がないは誤り 焦点ボケの「特定秘密保護法」は古色蒼然10/31】
【熱血!与良政談:「秘密法案」を廃案に=与良正男 毎日10/30】
【防衛秘密、3万件超を廃棄 問われる情報公開の姿勢 共同10/27】
【日本に「スパイ防止法」がないは誤り 焦点ボケの「特定秘密保護法」は古色蒼然10/31】 2013年10月31日 田岡俊次 [軍事ジャーナリスト] (一部分引用) 国家の安全保障にかかわる機密情報を保護するための「特別秘密保護法案」が、国会に提出された。日本には「スパイ防止法」がないためとされるが、実質的にその機能を果たす法律は多々ある。何よりも問題はその捜査能力にある。いまや情報漏洩は古典的なスパイ活動よりもサイバー技術の発達で起きる。その点でも今回の法案は1950年代を想わせる古色蒼然たる代物である。
今回提出された「特定秘密保護法案」に関するテレビの討論会や新聞のインタビュー等で政府・自民党の当局者は「日本には他国にあるスパイ防止法がない。スパイ天国だ」とその必要性を説く。だが実際には日本には公務員の秘密漏洩を禁止、処罰できる法律として
①「国家公務員法」(守秘義務違反は1年以下の懲役、教唆、共謀した民間人も処罰可能)
②「地方公務員法」(罰則は同じ、大部分の警察官にはこれが適用される)
③「自衛隊法」(「我が国の防衛上特に秘匿することが必要」で「防衛秘密」に指定されたものの漏洩は5年以下の懲役、それ以外は1年以下)
④「刑事特別法」(米軍の方針、計画、部隊の編制、配備、行動人員、装備の種類などの機密を探知、収集、漏洩する者は10年以下の懲役。この法律の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法」という長い名前だ)
⑤「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法」(自衛隊が米国から導入する装備の構造、性能、技術、使用法、品目、数量などの秘密を探知、収集、漏洩する者は10年以下の懲役)
などが存在している。これらの法律では公務員だけでなく、秘密の収集や漏洩を共謀したり教唆、煽動した民間人も(もちろん外国人も)処罰できる。
日本には「スパイ防止法」と銘打った法律はないが、スパイ行為はこれらの法律違反で摘発、処罰することができる。「汚職防止法」がなくても、刑法に「収賄罪」「贈賄罪」があるのだから、「汚職野放しの役人天国」ではないのと同様だ。
【熱血!与良政談:「秘密法案」を廃案に=与良正男 毎日10/30】内閣官房の官僚から「特定秘密保護法案について意見をうかがいたい」と言われたのは9月初旬だった。長時間、話をしたが、私が言いたかったのは詰まるところ以下の点だ。
安全保障上の観点から一定期間、機密が必要なことは私も認める。しかし、20年、30年たったらいずれ情報は公開するという原則を確立するのが出発点ではないか−−と。
米国などに比べ、日本はこの点がまるでお粗末だ。機密情報にせよ、秘密交渉にせよ、いつかは公表されると分かっていれば、当事者は自分の行動が後の評価に堪えるかどうか、自制が働く。ところが、その原則がないから、平気で都合の悪い書類は破棄し、重要会議の議事録も残さない。まずそんな体質を転換する。それこそが、国民の「知る権利」を守ることだと私は思う。
その後、与党との協議で多少は検討されたのだろう。法案には30年を超えて秘密指定を続ける時には内閣の承認が必要との条件が加わった。だが、私の言う「30年経過したら原則公開」とは似ても似つかぬ話であるのは、もうお分かりだろう。これでは逆に内閣が承認すれば未来永劫(えいごう)、秘密は解除されないとのお墨付きを与えたようなものだ。
毎日新聞社説(26日付)でも紹介したように福島県議会は福島第1原発事故の際、放射性物質の拡散予測情報の公開が遅れた点を例に挙げて原発事故情報がテロ防止の名目で特定秘密に指定されることに懸念を示し、法案への慎重対応を求める意見書を出した。当然の指摘だ。
今回の法案は米国からの要請でもあったという。米国は確かに情報公開の先進国で、一定期間後の機密解除など見習うべき点は多々ある。
ただし、その米国は今、メルケル独首相の携帯電話盗聴問題で揺れる。政治権力は元来、そういうことをしたがるものだと私たちは再認識する必要がある。そして、そんな深刻な事態が明らかになっても、私たちの国は「(安倍晋三首相の携帯電話は)まったく問題ない」と菅義偉官房長官が一言語っただけで済ませようとしていることも。
特定秘密保護法案の国会審議が間もなく始まる。どう考えても、今ある法律で十分だ。何としても廃案にすべきである。みなさん(世論)の後押しがほしい。
【防衛秘密、3万件超を廃棄 問われる情報公開の姿勢 共同10/27】特定秘密保護法案を先取りする「防衛秘密」を管理する防衛省が、2011年までの5年間に廃棄した秘密指定文書は計約3万4千件に上ることが27日、同省への取材で分かった。一方、02年に防衛秘密の指定制度を導入して以来、指定が解除されたのは1件だけにとどまる。
文書が廃棄されてしまえば何が指定されたか、指定は妥当だったかの検証は不可能。指定解除の少なさも併せ、政府の情報公開の姿勢が問われている。
防衛秘密は、00年に発覚した元海上自衛隊3佐による情報漏えい事件をきっかけに、定められた。
(共同)
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