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憲法九条による日本の安全保障(メモ)

 安部政権の安全保障政策は、ひたすら軍事力拡大で緊張を高め、リスクを高める方向にすすんでいる。危険要素を排除、軽減するなど「リスクマネジメント」の戦略がない。軍事はその大戦略の中の一オプションでしかない。
 日本のメディアがまともに報道しない中国めぐるアセアンの経験、北朝鮮めぐる米中韓のシャトル外交などの実例から憲法九条による日本の安全保障の根本を考える。
 「憲法を生かして日本を守る~中国や北朝鮮めぐる疑問にもこたえて」(川田忠明氏 前衛2013/10)からの備忘録。

【憲法を生かして日本を守る~中国や北朝鮮めぐる疑問にもこたえて】

  川田忠明 前衛2013/10

Q「中国・北朝鮮と、ひょっとしたら武力でぶつかり合うのではか」の懸念の声

A  何より紛争を戦争にしないことが大事
・武力衝突で、貿易、経済の混乱が起きれば、日本人の生活もなりたたなくなる。/ヘイトスピーチが問題になっているが、その人たちも、韓国製、中国製の商品を排斥しては、今の生活はなりたたない。
・武力衝突を避けることはすべての共通の利益

→ 日本共産党の提案/ 軍事力に頼らない安全保障、平和的安全保障

Q「戦争はいけないが、相手が軍事力で威嚇してきたら、軍事力の対抗も必要ではないか」
 ~「厳しい世界の現実を見れば憲法九条は理想論」とか「ユートピア」(自民改憲草案Q&A)は典型

A 平和的安全保障~ 領土、国境めぐる武力衝突のリスクを経験したアセアンのリアルな政策と行動で示さている。


≪東南アジアのリスクマネジメント≫

◆繰り返された「危機」

・領有権問題/中国とベトナム、フィレピン、マレーシア、ブルネイ~南沙諸島/中国、ベトナムから西沙諸島/ 実際に武力が使われ、死傷者も出る危機的状況を何度も経験

・2013年前半 南沙諸島をめぐり中国とフィリピンの緊張高まる~95年よりフィリピン兵士が駐屯/4月、中国艦艇の侵入に、フィ外務省が“駐屯部隊への補給の妨害”と非難。一時は、国家安全保障会議議長「中国と最後の一人まで戦闘する」と発言
・2012年4月 スカボロー礁で、フィ海軍と中国海洋監視船が二ヶ月にわたりにらみ合い/ 中国がフィリピンに「最後通告」(5/8)など一触即発の事態に。
・フィリピンが領有権を主張するミスチーフ環礁で、中国が95年より軍事施設を建設/ 99年、フィ軍の警備艇が中国漁船を沈没させる事件が続発 /2000年、中国漁船船長の射殺事件

・2013年3月 西沙諸島近海でベトナムの漁船を中国船舶が追跡・発砲。ベトナムが主権侵害と非難。中国は主権の行使と反論。
・2012年6月 中国が西沙諸島のウッディー島を県庁所在地とする新県の配置を決定、滑走路の建設を開始。/ベトナムはかつてより同島の領有権を強く主張
・2011年5月 中国監視船が排他的経済水域を航行中のベトナムの資源調査船の探索用ケーブルを切断
〔両国には、中国のベトナム侵略に端を発する「中越戦争」(79年、犠牲者3-6万人)、中越国境紛争(84年、同5千人)、南沙諸島での両海軍の衝突(88年、同70人)など紛争の歴史がある。〕

・2013年3月 マレーシアが主権を主張する南シナ海最南端のジェームス礁に、中国が海軍艦船を派遣し「中国領最南端到着」の記念式的を開催、マレーシア政府が抗議

・インドネシア海軍が中国漁船に発砲し1名死亡2名負傷(05年)、中国漁船8隻拿捕77人拘束(09年)


◆立ち戻るべき対話の基盤=DOC

・東南アジアでは、こうした事態でも大規模な武力衝突、戦争にならなかった。/ここに大事なポイント!

・スカボロー礁の対立の場合/ フィリピン政府は「平和的解決のためにあらゆる政治的手段と外交手段をつくした」と外相が発言。が、軍事力に訴えるのでなく国際仲裁裁判に解決を求めることを決定(13年6月)

→ 中国「独断専行で国際的な仲裁を求めることには一貫して反対」と非難しながらも「中国は依然として、特大の善意と誠意を維持して、南シナ海の平和と安定に努力しつづけたい」「交渉の扉をとざしていない」と付け加え、力による決着には行き着かなかった。

・ベトナムの場合/ 3月の中国船発砲事件のあと、ベトナム国家主席が訪中し、習国家主権と会談し「共同声明」発表。領有権問題について冷静に自制した態度で、争いを複雑にしたり拡大したりする行動はとらないと約束(6/21)。さらに「海上危機管理ホットライン」を使い「建設的な態度で適切に処理する」と合意。

→ 重要なのは、首脳会議で、アセアンと中国の紛争を平和的に解決するとする02年の合意文書「南シナ海行動計画」(DOC)を全面的に実行すると改めて確認。/中国が相手を非難する根拠もDOC~フィリピンの行為は、我が国の主権を侵害。DOCの精神に背く」(中国国防軍報道官6/27)
→ DOCは共通のよりどころ。一線をこえさせない歯止め

☆DOC ~ 80年代からの度重なる南シナ海での衝突を踏まえ
①国連憲章、国連海洋法条約、TAC、平和共存5原則などを確認する 
②平等と相互尊重の基礎に立って、信用と信頼を作り上げる 
③南シナ海での航行の自由とその上空の飛行の自由の保障 
④友好的協議と交渉を通じて、平和的な手段でその領土及び管轄権紛争を解決する
⑤紛争を複雑化し、エスカレートし、平和と安定に影響を与える活動(無人島、岩礁などへの居住を含む)を自制する。

~ どの国も、その立場もどる、暴発を抑える安全装置の1つ

・より安定的な環境づくりへの努力
 DOCを、法的拘束力のある「行動規範」にするための作業のための協議開始で合意(2013/9)
→ これ自体は、領有権問題の解決をするものではないが、紛争を戦争にエスカレートする歯止めをさらに強化することになる / 日中にはそうしたチャンネルがない。

◆大国の対立に巻き込まれない=非軍事同盟型

・アセアン外交の特徴の1つ~大国Aと同盟して大国Bに対抗するのでなく、バランスのとれた関係を築き、対立を生み出さないようにしていること
→ 安部政権、日本の商業マスコミは「米中対立」という、硬直した「冷戦型」思考で思考停止に。ダイナミックに動いているアジア情勢に対応できない
(メモ者 アメリカ自身、中国とは戦略的対話、軍事交流の強化で、安定した関係の中に納める取組を重視している。)

・注目すべきアセアン諸国の提案

①インドネシア 「戦争放棄条約」の提起
2013年5月、外相の米国での講演/ アジア・太平洋のアセアン10カ国、日米中印露韓豪NZの18カ国(東アジア首脳会議参加国)が戦争放棄の義務を負う条約を締結する
→ 「大国同士の争い」「一国の制約されない優勢」は、地域にとって望ましくはなく「この地域の平和と安定は共通の安全保障、共通の繁栄を話し合い、その展望を促進することを通じて実現すべきものだ」

②ベトナム 武力の先制不使用協定
2013/5 アセアン国防会議での提案/ 南シナ海の紛争に関して、アセアン10カ国が協定を結び、「アセアンの対話パートナー国も含むアジア・太平洋諸国に拡大」~米国、中国を含むもの

◆東南アジア友好協力条約(TAC)と日本国憲法

・アセアン外交、安全保障政策の土台が、武力行使の放棄と紛争の平和的解決などの原則を掲げ「永久の平和」「「永久の友好と協力」をすすめるとしているTAC
・このTACの核心は、日本国憲法の恒久平和主義と通じるもの/ 本来、日本が、アセアンのような軍事力によらない安全保障を、率先して探求し、広げ、実行する立場にある。

→ 今日の日本をめぐる情勢は、その真剣な取組を求めている。

・例)尖閣問題では、中国と交渉の枠組みをつくること/ 領有権をめぐる対立は現に存在しており「領有権問題は存在しない」という政府の姿勢は、現実を見ないもの。/その場があってこそ、国際的な道理と歴史的事実にもとづき解決をすすめることができる

(メモ者 アセアン関係の会議は、公式日程のほか、参加者全員でアンコールワットの観光や保養地での交流などがセットされ、人間的な交流、親交を暖めることを重視している。そこには米国、北朝鮮の政治家も参加したりする-- 「相手が何を考えているかわからない」「相手は理解不可能な存在だ」という認識、また「対話の糸口もない」状況が、リスクを高めることは歴史の教訓である。アセアンは、そこまで踏まえた懐の深い対応をしている。)

・重要なのは「交渉がはじまるだけで緊張が緩和される」こと
~領土問題の解決には長期の複雑な交渉が必要/ よってDOCのような「行動ルール」の確立が必要となる

→ 「東シナ海を『平和・協力・友好の海』にするべく努力する」ことを基本目標にし、「危機管理メカニズム」や問題解決の方向を探求するとした「日中高級事務レベル海洋会議」(第一回2012/5)の再開が望まれる。
→資源の開発・利用では、東シナ海ガス田問題の合意(08年)の条約化、日中漁業協定をめぐる問題など、解決すべき課題を明確にして交渉のレールを敷くことが大事/ 軍事での対応だけでは知恵はてでこない

(メモ者/ 排他的経済水域をめぐっては、国際司法裁判所は「中間点+特殊事情」で判断を下す傾向にある。起点が大陸と島では、大陸側を優位に判断し境界を設定する。そうなれば海底ガス田は、文句なしに中国側になる。共同開発に実利を見出した中国側の判断と思われる/ 漁業問題では、尖閣問題を優位に運びたいがために、台湾と無原則的な合意をしたことが、今後の中国との交渉をさらに難しくした、と思われる)

◆軍事力と外交との関係

①フィリピン
・2013/6 米軍との合同軍事演習を実施。毎年実施したものだが、今年はスカボロー礁周辺で実施し、中国が警戒心を露にした。

→ 背景は、アジアで影響力を行使したいアメリカと、それを交渉の「カード」にしたいフィリピンの思惑がある、と言われている。が・・・
→ フィリピンは、92年に巨大米軍基地を撤去。外国基地の建設は憲法で禁じられており、米軍の恒常的な駐留は不可能 /また、日本と違い中国との関係でも独自の外交を展開

②ベトナム

・07年以降、潜水艦と戦闘機をロシアから調達。10年からは米軍と交流開始(米軍の人道支援「パシフィック・パートナーシップ」の実施、国防次官級会議)

・同時に、中国との対話強化
 米越国防次官級会議(2011/8)の直後に、国防次官が中国訪問“軍事交流は米国からの提案であり、米国とは軍事同盟関係にはならない”“南シナ海問題とは関係ない”
/米越政治安全保障対話(2011/6)の直後に、外務次官が訪中し、南沙諸島をめぐる紛争解決のためのガイドラインの早期締結で合意

・フィリピンもベトナムも安全保障政策の中に軍事力、米国との軍事交流を織り込んではいるが、/重要なのは戦略全体の基調と最大の目標が、問題の平和的解決にあるという点。/軍事はオプションの1つにすぎない。

★日本の場合も、自衛隊が存在し、安保解消以前であっても、問題の平和的解決をめざすことを中心とした、憲法を生かした対外政策は可能ということ

→ 問題は、日米同盟の「神聖」化によって、現実を直視した代案を生み出せないこと/ そして安保条約をなくすこと憲法を生かした外交、武力によらない安全保障政策が、全面的に花開くことになる。


≪ 北朝鮮の「脅威」にどう対応するか ≫

Q-1 万一の場合は、北朝鮮に軍事的に対抗すべきでは?
・2013/3 米韓軍事演習開始に対し、北朝鮮労働党機関紙は「休戦協定は完全に白紙化された」「鋼鉄の砲身と戦略ロケットが発射の瞬間を待っている」と宣言/ 日本海側に9基のミサイルを配備し、核兵器の先制攻撃すら口にする事態に ~ こうした事態に不安になるのは当然
Q -2 「発射される前に基地を攻撃すべき」

A-1  武力衝突になれば日本、アジアに破壊的影響。
・1993年 北朝鮮が核開発に着手したころクリントン政権は先制攻撃を検討したが断念
~ 武力衝突になれば米韓軍に膨大な犠牲者が出て、中国、日本も巻き込み混乱が起きる /後に、ベース米統合参謀本部議長「多くの犠牲者が出て、朝鮮戦争のようになるだろう」(06/10)と警告
・韓国軍の研究(98-99年) 北朝鮮の核施設を破壊した場合、放射性物質は日本にまで及ぶと報告

A-2 その後に北朝鮮からの全面的な報告や原発が大都市が攻撃の対象にならないのか? 行動の結果を想定しない無責任な議論
(メモ者 山岳地域に移動式ランチャーで展開する中距離ミサイルを破壊するは極めて困難。ノドンは200-300発あると想定されている。軍事的にも無責任な論)

~ 「北朝鮮の政権が倒れればよい」との考えも、政権の評価は自由だが、北朝鮮で非平和的な動乱が起きれば、難民の流出、軍の統制崩壊など、その混乱は東アジア全体にひろがる危険性がある。
 (メモ者 日本にも数十万規模での難民流出を想定する必要がある)

A 従って優先課題は、武力衝突の可能性、「暴発」の危険性を削減することに知恵と力を注ぐこと
→ その重要性を示した3月以降の事態の経過

◆解決の方向性をしめしたこの間の事態

・「開戦近し」といわんばかりの北朝鮮が、落ち着きを取り戻しつつある(8月末時点)
~5月ミサイル撤去、7月に南北対話再開、ケソン工業団地の操業再開の協議
(メモ者 これとて複雑で困難をともなう経過をたどるのは間違いないが・・・)

・ヒントは、4月中旬から集中的に展開された「中米韓のシャトル外交」
①米国防長官の訪中、習国家主席との会談(4/13)
②米統合参謀本部議長の訪中(4/21)
③中国・朝鮮半島問題特別代表の訪米(4/22)
④韓国外相の訪中(4/24)
~ 北朝鮮問題を主議題にした集中した協議でまとまった内容に北朝鮮が前向きに反応したと見るべき/3国の外交努力が効果をあげた。

・その間、日本は・・・ 日中韓首脳会談(5月予定)が無期延期、日韓外相会談中止
~ 副総理ら閣僚3人の靖国参拝(4/22)、安倍首相「侵略の定義は定まっていない」(4/23)などで内外から批判をあびる

→ 米中韓が必死に打開策を話し合っているときに、日本は何もできなかっただけでなく、東アジアが一致して対応することを妨害した/ 一方、あたるかどうかわからない対空ミサイルを配備し「いつ発射するか」と身構えていた。/その姿は滑稽ですらある

(メモ者 PAC3は、パトリオットミサイルの改良型。射程は20-30キロ。パトリオットミサイルの命中率は湾岸戦争時、9%以下と米会計検査院が報告。)

・6月、米中韓三国で、北朝鮮問題に対処する初の「戦略対話」が実施され、7月には、三国の枠組みを恒常的なものとすることが確認される

→ 中韓と問題をおこし、軍事対応しか考えない安部政権はいなくてもいい、いないほうがいいということ。

(メモ者 フィナンシャルタイムは、尖閣問題で、安倍政権が日米安保の適用範囲の確認を何度ももとめ、米軍をタテに強行路線をとっていることに、「領土問題には関与しない」という米国を無益な戦争にまきこもうとしている、との懸念がある、と報じている。)

◆軍事対応では解決しない

・北朝鮮は「合意が出来ても破られる」「なかなか前進しない」という苛立ちがあるのは事実。
・が、この間の事態ではっきりした2つのこと

①中国も含めた関係国が一致して北朝鮮に対抗することの重要性 
②軍事的な圧力や「抑止力」(メモ者「の強化だけ」?)では解決にむけて前進できない。こと

・木村幹神戸大学教授、最近の韓国論壇の変化を指摘
「朝鮮日報を例にとるならば、僅か数年前までは、米中対立を前提として中国を警戒する論調が多かった同社の論説やコラムは、この一年間では、中国との協調を主張するものが多数を占めるようになっている」(ア゛ジア時報13年6月号)~ これを韓国では、アメリカとも中国とも連帯する「連米連中」という。
・韓国大統領 6/27に訪中し、習国家主席と会談 「朝鮮半島の非核化」を目指すとの共同声明

~ 外交も国内の論調に符合するように動いている

・中国 北朝鮮の3回目の核実験(2月)に対する国連安保理の制裁決議に賛成 /マスコミは中国の北朝鮮に対する態度の変化を報道

→ 北朝鮮の貿易の半分は中国に依存、中国の政治的影響力は小さくない/ この変化も韓国が中国との連携を強化し始めたことと無関係ではない。

→ 韓国の変化の背景について、木村氏は、前大統領の、米日と連携した北朝鮮強行外交の失敗がある、と指摘/ 軍事的圧力は緊張を高めるだけで何も解決しない。しかも、緊張が続くと外資が韓国から逃げたし経済的にもダメージが大きい、という事実がある。

・アメリカの認識〜 ボズワース・アメリカ北朝鮮担当特別代表「北朝鮮が望んでいるのは、現体制の存続と民族主義、外部からの絶え間ない援助だ」(2012/9)と北朝鮮の狙いを説明

☆日本が本気で北朝鮮問題のリスク削減、解決を望むなら、これらの教訓に学び、関係諸国とのコミュニケーションを密にして、一致した行動をとれるよう尽力すべき

→ リアルな現状認識も情報もないまま、ミサイルへの軍事対応しか頭にないというのは、もはや外交でも安全保障でもない。

◆核兵器全面禁止の大義を掲げる

・北朝鮮は、核兵器の放棄は拒否しており、本格的な対話ははばんでいる。
・北朝鮮の主張~ 核保有はアメリカの敵視政策に対する「抑止力」、防衛的なもの /同時に、核兵器禁止条約の交渉開始を求める国際決議には賛成している。/六ヶ国協議の共同声明(05/9/19)で北朝鮮は核兵器の放棄に同意。

→ 核保有国が、核兵器禁止の方向にすすむことが、北朝鮮に非核化を迫る上でも重要になる。
→ 日本政府が、核兵器禁止の交渉開始でイニシアチブを発揮することが重要(17年間、この決議に反対しつづけている。国連加盟国の70%が賛成)/ 日本がアメリカの「核の傘」を依存し、場合によっては核兵器の使用を認める立場をとっていることは、朝鮮半島非核化の大きな障害となっている。
→ 唯一の被爆国である日本が、核兵器全面禁止の先頭にたつことは、その流れを強めるとともに、日本の国際的地位を高め、結果として、安全保障環境を改善する。


≪東アジア外交の土台――歴史問題≫

・日本外交ゆきづまりの原因 ①軍事と日米同盟優先の姿勢 ②侵略戦争を真摯に反省しない態度

◆靖国神社と戦没者を悼むということ

Q 靖国神社への閣僚参拝は「個人の信条の問題であり、外国がとやかく言うべきでない」のでは?

A 個人の問題でなく、国の姿勢が問われる問題として考える 
・靖国神社は一般の宗教施設ではなく、戦前は国民を戦争に動員する施設、しかも現在も「正しい戦争」だったと宣伝する特殊な政治目的をもった運動のセンター / 資料館「遊就館」の存在
しかも、断罪されたA戦犯が「殉教者」として祀られている

→ 日本が「国際復帰」したサ条約は、極東国際軍事裁判の判決を「受託」するとともに、「刑を宣告した者については、この権限(赦免、減刑、仮出獄)は、裁判所に代表を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基づく場合の外、行使することはできない」(11条)
→ それを勝手に免罪したのが靖国神社。そこに国の指導者が参拝すれば国際的に批判をうけるのは当然。

Q 戦没者の思いにどうこたえたらよいのか?

A  憲法の平和主義を守り生かすことが真に戦死者を悼むこと
・戦死した兵士を悼むことに反対しているのではない。戦死者を悼むことの意味を考えた場合、靖国神者は参るとこが、本当に戦死者の願いに添うものなのか?

→ 戦死した軍人・軍属230万人のうち、60%を超える140万人は、病死、そのほとんどが餓死(「餓死した英霊たち」藤原彰)/彼らを、苦悩と絶望においこんだ戦争の現実を直視し、子孫に二度と同じような苦しみを味わせたくないというのが、戦死者達の願いではないでしょうか。

(メモ者 米2長官が、2013/10千鳥が渕戦没者墓苑に献花する異例の対応をとったことは、警告と言われる)
(メモ者 ’補給計画もなく、兵士をモノのように扱った思想は、現在のブラック企業と同根ではないか?) 

・特攻隊に志願した経歴をもつ作間忠雄・明治学院大名誉教授~ 戦死した同僚らは「『日本国憲法』に化身して、平和日本の礎となった、と私は確信している」(朝日新聞93/9/11)

◆外交的に求められていることは何か

Q 「中国や韓国は、戦争のことがあるから、反日は変わらない」のでは?

A  双方の国民が受け入れられる「折り合い」をつけるのが外交
・侵略者によって肉親・同胞が無残に殺された記憶は消し去ることはできない。そのことは侵略した国にあるものとしてしっかり認識すべき /一方、日本人は何でも悪いとの偏狭なナショナリズムを煽る動きもある。

→ 平和と友好に障害となる韓国内の、同時に日本国内の排外主義的な動きには断固反対すべき。
(参考) ノムヒョン大統領「歴史を冒涜し韓国民の自尊を阻害する日本政府の一連の行為が、日本国民の普遍的な認識に基づいているわけでないという期待を持っています。(中略)我々が感情的対応を自制し冷静に対応しなければならない理由もここにあります」(韓日関係について特別談話06年)
・外交関係は、感情の対立を原因にしてはならない。双方の国民が受け入れることのできる「折り合い」をつけ、前にすすまなくてはならない。

Q 日本が謝っても、歴史問題をついもカードに使ってくるのでキリがないのでは?

A 韓国、中国は、互いに確認してきた到達点を踏み外していることを問題にしている。

①竹島問題
・交渉の糸口がつかめない原因~ 韓国は日本の侵略と植民地支配の清算の問題として位置づけているのに対し、日本政府は領有権問題としてアプローチする「すれ違い」にある。
~ 竹島の日本編入と、韓国併合に至る日本の植民地支配のプロセスが並行して進行した事情がある

→ 日本政府は、韓国併合は、当時は有効との立場(これ自体は重大問題)。が、韓国側がもとめているのは、韓国併合への謝罪ではない。

・06年特別談話「日本国民と指導者達に丁寧に頼みます。我々はこれ以上の謝罪を要求しません。既にこれまで幾度も行った謝罪と符号する行動を要求するだけです」
~ 村山談話、河野談話/不十分さはあるが侵略戦争に日本が初めて自らの手でおこなった「反省」と「謝罪」

→ この談話を受け継ぎ、侵略戦争美化の言動をい戒め、誠実な対応をしめすこと/ この当たり前のことができないことにが、不信と不満を増大させている。

・不満を「報復」的行動に結びつけることは正しくない〜 李大統領は竹島上陸について「(慰安婦問題は)日本がそのきになれば解決するのに、内政のために消極的なので、行動で見せる必要を感じた」(2012/8)

→ 背景に歴史問題があるのは事実だが、それぞれは性格も解決方法の違う問題で、かえって問題解決に障害をもたらすだけ。/なお、野田政権末期で、「慰安婦」問題について韓国の要求がまともに扱われなかったこと自体は、重大な問題

②慰安婦問題(この部分は、メモ者追加)

・日本政府は、日韓請求権協定(1965)によって財産・請求権問題は解決ずみで「紛争は存在しない」という立場。「慰安婦」被害者の賠償要求に応じてない。
・が、「慰安婦」問題があきらかになったのは90年代。政府の関与みとめた河野談話93年
・従来、日本政府は、「慰安婦」問題については解決済みだが、被害者個人の損害賠償請求権までは消滅してないとの態度をとってきたが、05年、態度を変更。07年、最高裁が追認。

→ 日韓請求権協定締結当時、日韓間で“対立する見解”が生じた場合には外交上の努力で解決されるべきだとする「条約解説」を日本の外務省がまとめている。

・韓国憲法裁判所判決(2011/8)「日両政府間の解釈上の紛争を解決せずにいる韓国政府の不作為は違憲である」/ 韓国政府はこの決定をうけ、外交交渉を行い、解決できない場合は、日韓請求権協定第三条にもとづく仲裁手続きで紛争を解決する方針をとった。

・問題は、河野談話を出したにもかかわらず、個人への損害賠償の態度を変更したり、「狭義の強制制はなかった」との閣議決定、請求権協定で定められた外交交渉での解決など誠実な対応をしていないことにある。

 橋本首相以降、小泉首相まで表明された謝罪。要は、実際の行動によって「この謝罪の言葉」が相手に心に届いていないということだろう

〔橋本内閣総理大臣がオランダ国コック首相に送った手紙〕
1998(平成10)年7月15日 内閣総理大臣 橋本 龍太郎

 我が国政府は、いわゆる従軍慰安婦問題に関して、道義的な責任を痛感しており、国民的な償いの気持ちを表すための事業を行っている「女性のためのアジア平和国民基金」と協力しつつ、この問題に対し誠実に対応してきております。
 私は、いわゆる従軍慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題と認識しており、数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われたすべての元慰安婦の方々に対し心からのおわびと反省の気持ちを抱いていることを貴首相にお伝えしたいと思います。
 そのような気持ちを具体化するため、貴国の関係者と話し合った結果、貴国においては、貴国に設立された事業実施委員会が、いわゆる従軍慰安婦問題に関し、先の大戦において困難を経験された方々に医療・福祉分野の財・サービスを提供する事業に対し、「女性のためのアジア平和国民基金」が支援を行っていくこととなりました。
 日本国民の真摯な気持ちの表れである「女性のためのアジア平和国民基金」のこのような事業に対し、貴政府の御理解と御協力を頂ければ幸甚です。
 我が国政府は、1995年の内閣総理大臣談話によって、我が国が過去の一時期に、貴国を含む多くの国々の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたことに対し、あらためて痛切な反省の意を表し、心からお詫びの気持ちを表明いたしました。現内閣においてもこの立場に変更はなく、私自身、昨年6月に貴国を訪問した際に、このような気持ちを込めて旧蘭領東インド記念碑に献花を行いました。
 そして貴国との相互理解を一層増進することにより、ともに未来に向けた関係を構築していくことを目的とした「平和友好交流計画」の下で、歴史研究支援事業と交流事業を二本柱とした取り組みを進めてきております。
 我々は、過去の重みからも未来への責任からも逃げるわけにはまいりません。我が国としては、過去の歴史を直視し、正しくこれを後世に伝えながら、2000年には交流400周年を迎える貴国との友好関係を更に増進することに全力を傾けてまいりたいと思います。


◆戦略的互恵関係としての日中関係

A 中国との関係でも、到達点をふまえた対応が重要

・1972/9 国交回復の共同声明「過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについて責任を痛感し深く反省する」と表明
~が、「侵略」との言葉はなく、「反省」も極めて不明瞭/ 協定を締結した田中首相「侵略戦争であったかどうかは後世の歴史家がきめる問題、日本の首相として侵略戦争だったなどとは断じて言えない」(不破哲三氏への質問に対し。1973/2)/これが歴代首相の答弁の「定番」となり、現在も続いている。

・1998/11 小渕恵三・江択民会議の共同声明 「日本側は、1972年の日中共同声明及び1995年8月15日の内閣総理大臣談話(村山談話)を遵守し、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した。中国側は、日本側が歴史の教訓に学び、平和発展の道を堅持することを希望する。双方は、この基礎の上に長きにわたる友好関係を発展させる」

→ はじめて「侵略」という言葉を使って日本の「反省」を表明。基礎となったのは村山談話。

・2008/5 小泉内閣のもとで冷え切った関係をへて10年ぶりの日中首脳会談/ 福田康夫・湖錦濤共同声明~両国は「歴史を直視し、未来に向かい、日中『戦略的互恵関係』の新たな局面を絶えず切り開くことを決意」します。そして中国側は「日本が、戦後60年余り、平和国家としての歩みを堅持し、平和的手段により世界の平和と安定に貢献していることを積極的に評価」。

→ この声明には、過去の侵略戦争についての記述はなく、98年共同声明が前提とされている。

・今、もとめられているのはこの到達点を双方の政権が遵守し、それを踏まえ前進すること
(メモ者/ これらの共同声明は、時々の政権の思惑を反映したものでもあるが、国家間の約束として積み上げられてきたもので、決して軽いものではない)

★日本の外交と安全保障の起点は、憲法

・日本では、「侵略戦争」を否定する政治勢力が政権を担ってきている。/かれらは日清戦争から始まる日本軍国主義の朝鮮半島と中国に対する侵略と植民地支配についても「反省」してない。

→ 平和運動は、村山談話、河野談話を無視して、歴史の逆行をはかろうとする企てを許さず、日本の他国への侵略と植民地支配という犯罪に対し、明確な反省と決算をおこなうこと、を求める国民的な認識と世論をひろげること。

→ そうした日本の良識が目に見える形で示されることは、中国・韓国を含むアジア諸国民の相互理解を促進し、結果として国家間の信頼関係と協力関係の発展に寄与する
 (日本の安全保障に資する)

・戦後の世界は、日独伊三国の侵略戦争を断罪し、再びそのような戦争をおこさないことが原点

→ 日本は、日本国民が「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」(憲法前文)したからこそ、国際社会への復帰が可能となったことを忘れてはならない。

・そして軍事力ではなく「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ことによって、権力はその具体化と実践を義務づけられた。

→ ここに日本外交と安全保障を考える起点がある。
→憲法の 恒久平和主義は、世界に先駆けた「理想」にとどまらず、実際に力を発揮している日本国民の安全と平和を守る政策と戦略の基礎、最も強力な手段。

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