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集団的自衛権行使 憲法96条の脱法的行為、法の下克上

 元内閣副長官補として安全保障を担当してきた柳澤協二氏は、尖閣問題、北朝鮮問題は「典型的な個別的自衛権の問題だ」と指摘。「何をしたいのかがはっきりしない中で、集団的自衛権の行使を認めれば、青天井になる危険性もある。」とし、個別法では憲法的制約にならない。9条改正と同じ効果を持たせようというのなら「憲法96条の脱法的行為と言わざるを得ない。」と批判。
 東京新聞の論説委員で、自衛隊について詳しい半田滋氏は、集団的自衛権の4類型は「軍事を知らないから、荒唐無稽な4類型をめぐった問答になる」「現実にはおこりえない」トリックと批判し、「解釈改憲は法の下克上」と批判する。
 以前に備忘録で紹介した半田氏と柳澤氏の主張がメディアで紹介されている。
【集団的自衛権行使、想定批判の本出版 軍事ジャーナリストの半田氏 埼玉新聞10/7】
【論点:憲法9条と集団的自衛権 ニーズ論欠落し混乱 柳澤協二氏 毎日10/4】

【集団的自衛権行使、想定批判の本出版 軍事ジャーナリストの半田氏 埼玉新聞10/7】

 憲法解釈による集団的自衛権の行使を目指す安倍政権の動きを批判した「集団的自衛権のトリックと安倍改憲」(高文社)をベテラン軍事ジャーナリスト・半田滋さんが刊行した。首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、集団的自衛権を行使するケースとして提言した4類型について「現実には起こりえないこと」と同書で指摘している。「解釈改憲は法の下克上」という半田さんに聞いた。
 半田さんは、1992年から自衛隊などを取材し「『戦地派遣』変わる自衛隊」で日本ジャーナリスト会議賞を受賞した。
 「安保法制懇」が提言した4類型とは「公海での米艦艇の防護」「米国を狙った弾道ミサイルの迎撃」など。半田さんは、同書で四つの類型を軍事的常識などに照らして現実に起こりえないとし「集団的自衛権のトリック」と批判している。
 
例えば、「公海での米艦艇の防護」について、現代戦で艦艇の攻撃に使われるのは、魚雷と対艦ミサイルの2種類で、艦艇は潜水艦への警戒から数キロの距離を取って行動するのが常識で、日米の艦隊が密集して並走することはあり得ないとしている。「弾道ミサイルの迎撃」も、現在の技術的水準では不可能としている。そして「なによりおかしいのは、世界中の軍隊が束になってもかなわない米軍にいったいどの国が正規戦を挑むのか」と疑問を呈している。

 「軍事を知らないから、荒唐無稽な4類型をめぐった問答になる。憲法解釈を変えなければならないほど、差し迫った事態は起きていない。必要性に迫られた議論ではないので上滑りしている」と半田さん。今後の安保法制懇の議論について「これができる、できないという議論をしていくときりがないので、集団的自衛権の全面解禁に踏み切ろうとしている。何でもあり、と示される恐れが出てきた」
 
92年に国連平和維持活動(PKO)協力法が成立。自衛隊が海外派遣されるようになりイラクなどで自衛隊の活動を取材してきた。自衛隊の現場を知らない政治家の空理空論で自衛隊の未来が決まってしまうことに危惧を抱く。「自衛隊と一緒に海外の現場に行って自衛官は何を考えているか、日本の政治がいかに無責任か感じてきた。自衛隊に厳しいことも書いてきたが、私と自衛官が感じたことは同じだと思う。海外派遣を命じられる自衛隊は孤独にさいなまれる。政治は『行け』と決めるだけで、どこまでやれば任務終了か、いつ撤収するか決めないで送り出す。自衛官が死ぬかもしれない集団的自衛権の行使に防衛省は慎重だ。憲法9条が極めて抑制的に働き、海外で武力行使をしないで、PKOや国際緊急援助隊として、台風、地震、津波などの被害に遭った国で人助けをしてきた。それが日本の高評価につながっている」と力説する。

 「この本は『国のかたち』ががらりと変わってしまう状況から危機感をもって書いた。東日本大震災への災害出動もあって政府の世論調査で、自衛隊によい印象を持っていると答えた人が91・7%に達した。自分たちを助けてくれる自衛隊であってほしいという国民の願いと安倍さんの海外で戦争をさせようという構想とは百八十度違う」と話す。

【論点:憲法9条と集団的自衛権  毎日10/4】

 安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)で、集団的自衛権の行使などを禁じている憲法9条の解釈を見直す議論が進んでいる。憲法9条の解釈変更は、平和憲法の本質とも深く関わり、国の有りようにも大きく影響する。見直し論の是非を問う。【聞き手・因幡健悦】

 ◆「ニーズ」の議論、欠落し混乱−−柳沢協二・元内閣官房副長官補

 憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使に道を開こうという安保法制懇の議論には違和感を覚える。何をしようとしているのかが分からないからだ。
 第1次安倍政権の安保法制懇でも議題になった4類型のうち、例えば「公海における米艦の防護」や「米国に向かうかもしれない弾道ミサイルの迎撃」に関しては集団的自衛権でなくとも個別的自衛権で十分対応可能だ。国連平和維持活動(PKO)については、派遣先で他国の軍隊を守れなくてもいいのかという議論は確かにある。しかし、これも時々の政府が「それで良し」と判断し、周辺事態法、インド洋での給油法(テロ対策特措法)、イラク特措法と国会審議を経て法律を制定してきた経緯がある。非戦闘地域の概念や、他国の武力行使との一体化を避けるなどの制度的な枠組みは、冷戦後の情勢を踏まえ、こうしたプロセスを経て確定されたものだ。それを超えて、一体何をするのかが安保法制懇の議論からはみえてこない。
 憲法解釈がおかしいから変えましょうというのでは政策の議論にならない。

 ◇解釈否定、信頼に傷

 元々、憲法には自衛隊も自衛権も書き込まれていない。政府が積み重ねてきたことが実質的な憲法の中身になっている。政府の解釈に基づく国家行為によって、内容が確定してきたのである。それを覆し、政府のやってきたことは間違いだったと政府自らが提起するのは、行政の信頼性、継続性を損なうことだ。政府の解釈を変えて、実質的に憲法9条改正と同じ効果を持たせようというのなら、それは、憲法改正の手続きを定めた憲法96条の脱法的行為と言わざるを得ない。
 何をしたいのかがはっきりしない中で、集団的自衛権の行使を認めれば、青天井になる危険性もある。政府が法律で歯止めをかけるという議論もあるが、憲法に内在する論理的な歯止めがあるのと、それがなくて政府が時々の判断で決められるというのでは本質的に異なる。本来、憲法は政府の判断、行為を制約するためにある。個別法が歯止めになるかというと、憲法的な歯止めにはならないと言うべきだろう。
 混乱の大本は、具体的なニーズが議論されていないことにある。第1次安倍政権の時に比べ、尖閣諸島をめぐる緊張や北朝鮮の核保有公言など安全保障環境が厳しくなっているのは確かだ。しかし、これらは典型的な個別的自衛権の問題だ。これ以上に、何が不足し、何をしなければ安全が確保できないのか。そのニーズが明確でないと、結局、憲法解釈が違っていた、という話でしかなくなる。
 
◇危険「口だけ抑止」

 集団的自衛権行使へかじを切ることが国益に照らして妥当なのかどうかという議論も不足している。
 安全保障は相手との相互関係で決まる。強硬姿勢を取れば相手も強硬姿勢を取る。中国が台頭し、軍事的、経済的な相互の力関係が変化していく中で、対立は当然起こる。日中両国が双方のナショナリズムを高める象徴になっているからだ。だからこそ、政治がコントロールし、抜き差しならぬ感情対立を避けなければならない。中国の指導層にも問題はあるが、内政上の利益のためにナショナリズムをあおる構図は一番危険だ。
 集団的自衛権行使を可能にすることで抑止力が強まるという意見もある。しかし、これは「口だけ抑止」であり、最も避けるべきことだ。実質的な防衛力を高めるのであれば、それはそれで静かにやればいい。実際にできるほどの財源もなく、意志も乏しいのに政治的メッセージで代用させようとするのは安全という観点からは逆効果でしかない。
 自衛隊はイラクで大変な状況にありながら犠牲を出さずに済んだ。集団的自衛権の行使は、犠牲が出ることもいとわずにやるということだ。自衛隊員に対し、国益のために君たちの犠牲が必要だというメッセージを明確に示す覚悟をもった議論なのかをぜひ問いたい。
(続く、後略)

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