ひきこもり 「中高年」「5年以上」ともに半数 山形県調査
山形県が民生・児童委員に実施したアンケート調査。
○該当者1607人。出現率は0.14%。町村が市部に比べてやや高い
○年代別 15歳~39歳855人、53%、40歳以上が717人、45%
(40代24%、50代14%、60才以上6%)
○男性が64%、女性が20%、無回答が16%。男性が約3倍高い
○出現率 20代0.33、30代0.33、40代0.29と高い
○ひきこもっている期間
3年以上67%。うち5年以上51%、うち10年以上33%
○困難を有するに至った経緯(複数回答可)
「わからない」573人、約36%
「失業」「就職できなかった」の計で約34%
○「どう対応したらよいかわからない」と多くの民生委員が回答している。
【困難を有する若者に関するアンケート調査報告書 平成25年9月】
【山形県調査でわかった「引きこもりの半数は中高年」
もはや欠かせない“高齢化・長期化”の視点 池上正樹9/26ダイヤモンド 】
「地域のお茶の間」アテラーノ旭のような双方向のゆるやかなネットワークづくりが重要になっていると思う。
以下の論文の中で紹介されている。
【えひめ地域政策研究センター 地域における孤立化を防ぐつながりづくり】
【山形県調査でわかった「引きこもりの半数は中高年」 もはや欠かせない“高齢化・長期化”の視点】2013年9月26日 池上正樹 [ジャーナリスト]
地域の民生委員が把握している「引きこもり」該当者のうち、半数近くの約45%は40歳以上の中高年だった――そんな衝撃的な実態を浮き彫りにするデータが9月24日、山形県の公表した『困難を有する若者に関するアンケート調査報告書』によって明らかになった。
調査を行ったのは、県の若者支援・男女共同参画課。
「これまで厚労省や内閣府の推計はあっても、実際、どこに誰がいるのか、まったくわからない状況でした。山形県には、どれくらいの引きこもりの人がいるのかを把握したうえで、支援を進めていかなければいけない」(担当者)こうして山形県は初めて、県内で引きこもる人たちの実態を探ることになった。
「当初は、若者支援の部署なので、引きこもりに焦点を絞ったわけではなかったんです。ただ、(支援の仕組みを)設計していく段階で、県として調査するのであれば、年齢に関わらず、民生委員さんが把握されている情報を共有しましょうということになりました」(担当者)
おそらく現場の実情を知る民生委員に協力を求めたことから、40歳以上の引きこもる人たちの数も、現実に無視できなくなったのだろう。
若者支援の部署の担当者が机上で考えるだけでなく、日頃から当事者に向き合う福祉関係者や保健師などの現場目線を生かした取り組みの重要さは、すでに 秋田県藤里町や東京都町田市などの事例が物語っている。◆民生・児童委員の43%が「担当地域内に引きこもる人がいる」
同課は、今年4月から5月にかけて、県内すべての民生・児童委員等2426人に対し、同県民生委員児童委員協議会を通じてアンケートを配布、回収する方法で実施した。
調査対象としたのは、<おおむね15歳から40歳まで>と<おおむね40歳以上>で、
<仕事や学校に行かず、かつ家庭以外の人との交流をほとんどせずに、6ヵ月以上続けて自宅にひきこもっている状態の方>
<仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流はないが、時々は買い物などで外出することもある方>
と、2010年の内閣府による定義に沿っている。
その他にも、民生委員目線で見て「心配な方」や「家族から支援などの相談があったことのある方」も付け加えられた。
重度の障害や統合失調症などの疾病で外出できない人については、わかりやすいように定義から除外した。調査結果によると、受け持ちの地域内に<困難を有する若者>が「いる」と答えた民生・児童委員は、県全体で43%の937人。該当者の総数は、1607人だった。
出現率は0.14%。町村部のほうが市部に比べてやや高い。このデータが実態を反映しているものなのか、町村部の民生委員のほうがより詳しく家庭内を把握できているからなのか。いずれにしても、都市部より町村部のほうが「引きこもる率」が高いのは、全国的な傾向とも一致する。
同じように該当者の性別についても、男性が64%。女性が20%。無回答16%で、男性が女性の3倍以上を占めた。◆45%が40代以上の中高年 「ひきこもり期間」5年以上は50%超に
そして、今回の調査で最も注目したいのは、該当者の年代だ。
40代の389人、50代の233人、60代以上の95人を合わせると、計717人。実に該当者の半数近くの約45%が、40代以上の中高年だった。
ちなみに、15歳から39歳の該当者は855人で、全体の約53%。無回答が35人で約2%だった。さらに、<ひきこもっている期間>が3年以上に及ぶ対象者は計1067人で、全体の3分の2の約67%。そのうち5年以上は817人で、約51%と半数を超えた。10年以上も526人と約33%に上るなど、<長期化が懸念される状況にある>と指摘している。
<困難を有するに至った経緯(複数回答可)>についても聞いたところ、「わからない」がもっとも多い573人だった。
次に「失業した」が408人で続き、「就職できなかった」と合わせると543人で、約34%。長引く不況によって就労環境が原因で社会から離脱し、再び戻れなくなって地域に埋もれていく「新たな引きこもり層」の一端が、ここでも浮き彫りになった。
◆どう支援すればよいかわからない 民生委員たちの本音
一方、民生委員らに<その方への支援の状況>を聞いたところ、圧倒的に多かったのは、「わからない」の907人。現場で長期にわたって引きこもる人たちの存在に直面し、どう支援していいのかわからずに困惑する状況が浮かび上がる。
今後、民生委員たちに、引きこもる人たちのサポートの道筋を示していく必要がある。
調査票には、自由記述欄も設けられていて、その主な回答状況も報告書に記載されている。<個別ケースごとに支援内容も異なる。どこの窓口に支援を求めればよいのか、戸惑うことが多々ある>
<ひきこもり該当者が自ら進んで働けるような環境づくり、就業に向けた支援を行う支援団体をもっと育成すべき>こういった支援策に関する提言が出された。一方で、現場ならではのリアルな意見も出されて興味深い。
<民生委員は、障がいのない大人は対象外となっており、実態がわからない。まして、こういう問題は、家の恥として表に出てこないので、行政側からのPRが必要>
<該当者やその予備軍は、学校や職場で何らかのシグナルを発しているはずで、それをキャッチするにはある程度知識をもったボランティアのような人の力が必要>実際、秋田県内において家庭内で殺傷事件が起きてから、初めてその家に長年引きこもる高年齢者がいたことを知ったと明かす民生委員もいる。それほど、外部から把握するのは難しい。
県の担当者は、
「前向きに捉えてくださった方が多かったと感じている。ただ、“甘えだ”などという厳しい意見もあった」
と説明する。
それだけ民生委員によっても、引きこもる人に対する意識の違いは相当大きい。今回のデータにしても、「実際は当事者を把握しきれていない」と県は認める。自由記述欄には、こんな本音ものぞく。
<これまで該当する方がなく、考えてこなかった分野。アンケートが配布されたことで、より民生委員の役割も範囲を広げねばと考え直す機会になった>
現場への啓もうという意味では、今回の調査は1つのきっかけにはなったことだろう。
この事業は、今年度から4ヵ年計画。地域で、福祉、雇用、教育、子育てといったネットワークを作っていきたいという。
ますます長期化していく引きこもり支援策を進めるにあたって、当事者や家族会からの思いや意向を反映させないのか、担当者に聞いてみた。
「今後は、学識経験者の意見をいただきながら進めていきたい。当事者のヒヤリングは今の段階では予定しておりませんが、これから各地域の検討会議を持ちますので、そういったご意見などがあれば、課題の1つになっていくと思う」
意見を聞くのなら、学識経験者や検討会議よりも、まずは当事者や家族を思い浮かべてほしい。これからは、当事者の経験や知恵から学んでいかなければ、せっかくのいい調査や民生委員たちの指摘も十分に生かすことができなくなるだろう。
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