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憲法九条の国際貢献~ 元国連軍縮大使の公述(04年)

 現在は自民党議員だが、元国連軍縮大使として、猪口邦子さんが、04年に憲法調査会で、九条をもつ日本の国際貢献、他の国がもつことが出来ない力を発揮、として語った内容は、安倍政権が集団的自衛権行使を強行しようとしているときだけに、また、アメリカの軍事中心のアフガン侵攻、シラク戦争が失敗し、国連のもとでの国際的な安全保障が模索され大きく動こうとしている中(その背景として、経済のグローバル化、相互依存の決定的な強まり~これこそ最大の抑止力とも言える)、今一度読む価値があると思う。
【猪口邦子・元国連軍縮大使の公述 衆議院・ 憲法調査会公聴会 04年05月12日】

◆猪口公述人 

 会長。ここで、日本の国際貢献を世界はどのように認識し、評価しているかにつき、一人の研究者及び元外交官としての限られた経験に基づく意見であることをお許しいただきつつ、公述いたしたく存じます。

 我が国が憲法第九条一項において、国際平和を誠実に希求する志のあかしとして、国権の発動たる戦争等の放棄を掲げていること、また二項において陸海空軍その他の戦力は保持しないという考え方を示していることは、今日では広く国際社会において知られており、その志と理念は、戦禍に苦悩した歴史を真剣に受けとめるという国民の真摯な生き方及び国家の賢明な選択を伝えるものとして、世界で特別の評価を獲得するに至っていると感じております。その評価は、戦後日本が経済成長に成功し、世界経済の発展や低所得国の救済に寄与した実績等にも補完されて高まったと感じております。

 世界は、日本が軍事面での国際貢献においては制約を有していることを了解しており、またその制約の範囲内で近年に見る国際貢献についての著しい工夫を行ってきたことを正当に評価し、またその日本の努力を温かく支援する友情を示してきました。現代国際社会が建設的に発展するには、多様性への寛容をはぐくむことが最も基本的な課題であることは言うまでもありませんが、世界は唯一の被爆国である日本の特別の国民的思いを礼儀正しく受けとめていく過程を通じて、現代国際社会における多様性への寛容の精神を体得する契機をつかんできた側面があるとも言えます。

 どの国も、みずからの履歴から生まれる特殊性、いわば個性のような、グローバリゼーションの時代の中でも標準化され得ない部分を内包しています。平等な主権国家間におけるそのような部分をどのように相互に受けとめ合っていくかは今後の国際社会の大きな課題ですが、日本は、みずからの特質についての謙虚にして毅然とした国家の姿勢を示すことによって、世界に多様性と向き合う教育的機会を与えた面があり、欧米諸国はまた、軍事的制約を負いながらも誠実に貢献努力を模索する日本を肯定し、評価することにより、多様性への政治的感性を高めたとも言えます。日本は、そのようなみずからの国家としてのあり方を過小評価するのではなく、むしろ国際社会への長期的な啓発力を信じて積極的に発信し、また日本の姿勢を肯定的に受けとめる各国の多様性の受容をより積極的に外交を通じて評価していくべきであると感じます。

 どのような戦争も必ず終わり、その後において、戦後復興の長く不安定なプロセスが続くことになります。戦後復興の失敗は内戦や紛争の再発につながりやすいため、戦後復興プロセスにおいて軍縮、不拡散、人道支援を中心とする具体的な協力に成功し、その実績に基づく和解へのプロセスを誘導することは戦争を最も直接的に予防する貢献となります。言うまでもなく、戦争は、未然に予防することこそがそれに対する正しい対応であり、その意味で、戦後復興に貢献することは過小評価してはならない重要な予防的かつ修復的な国際貢献であり、自負を持ってその観点からの具体的支援に現地において取り組みつつ、あわせて各勢力の和解を仕掛ける外交力を発揮すべきです。

 戦後復興期において戦争の再発を防ぐためには、治安回復のための武装解除や治安セクターの改革、そして小型武器軍縮なども含む広範な軍縮・軍備管理政策の実施が必要であり、同時に、人心を安定させて諸勢力の和解への意思を引き出すための人道支援が必要です。

 ここで一言、私が特別に思い入れて国連で推進してきました小型武器軍縮について謹んで言及することをお許しいただきますが、小型武器とは人が一人で操作できる戦争用殺傷兵器を意味し、この武器範疇は、戦争終結後の移行期を含め毎年五十万人もの死をもたらし、アナン国連事務総長もこれを事実上の大量破壊兵器と称しました。

 日本は、昨年七月、最初の小型武器軍縮実施のための国連会合の議長国に選任されましたが、これは日本が国連で獲得したこの種の会議の初めての議長職であり、私は、軍縮会議日本政府代表部の館員たちと必死で小型武器軍縮実施のための優先措置とその方法についての議長総括をまとめ、無理かと思いながらも猛烈な外交協議を連日繰り返して、ついに、大国も小国も、世界が全会一致でこの議長総括を添付した報告書を採択することを実現いたしました。現在、この国連会合を受けて、世界各地で具体的な小型武器軍縮への措置が講じられ始めています。

 さらに、近年においては、大量破壊兵器と関連装置の不拡散を徹底することも、テロの破壊力を抑え込み、広く国際社会の信義を守るために必要であり、日本は、このような軍縮、不拡散、人道支援の分野における工夫ある貢献を、外交活動と、また具体的実施の活動の双方において着実に行っていくべきであります。

 戦禍に病む紛争直後の不安定な移行期における支援の具体的実施活動については、防護力のある実力組織に依存しなければならないことも少なくありません。その場合、憲法第九条に見る日本の平和への哲学を基本的には保持しつつ実行できることも多いのではないか、よく研究し、工夫ある努力を誠実に示しながら、国際貢献についての哲学的立場を信念を持って前向きに世界に説明し、積極的に発信し、評価を得ていくべきであると考えます。

 会長、軍縮、不拡散、人道支援を日本の国際貢献の特質とすることについて、それは軍事的リスクや危険を回避する臆病なやり方であるとの批判があるとすれば、断固として反論し、論破すべきです。紛争直後の社会は、予断し得ない不確定性や不安定性を帯びている場合が多く、どのような分野でどのような機能を担う実力組織も、おのおののリスクを覚悟して赴いているのであり、職域に殉ずる潜在的な危険性は、その地で活動するすべての部隊とその成員にあるという中で日本の自衛隊もとうとい協力をしてきたのです。そのように世界に認識してもらうことが必要であり、その視座を欠くと、平和のための国際貢献を担う任務で日本から派遣される組織の一人一人に対して、国家として正義ある立場にはなりません。

 言うまでもなく、日本の国際貢献は、自衛隊のみが行うものではなく、問題解決を導く政治・外交力を初め、経済・社会開発支援も含め、日本の政府と社会の各方面の総合力をもって効果的に展開していくべきものであります。しかし、紛争直後の社会の不安定性を考えれば、実力組織によってしか効果的な貢献が望めない状況もあり、日本は、法律に基づき、憲法の定める範囲内において、自衛隊による国際貢献を行ってきました。また、日本は、自衛のための必要最小限度の能力を有する必要から、自衛隊の機能を維持してきました。

 その事実を踏まえ、生命のリスクを負いながら日本の安全保障と国際貢献に尽くす組織の憲法上の位置づけをより明確にすべきとの見解については、今後、国民世論が憲法の修正を求めることとなった場合には、第九条の基本を維持しつつ、簡潔に、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する国家として保持する、自衛のための実力組織につき言及する可能性は研究するに値する面があります。他方で、その場合においても、個別の法律で扱うべき範囲の事柄を憲法に織り込むことや、今後の国際情勢や国連の活動の方向性を予断して複雑な修正を試みることには慎重であるべきと考えます。

【塩川てつや議員の質問に答えて】

 一言で申し上げますと、軍縮、不拡散という分野におきまして、日本が言えば聞いてくれる、通るというような形で評価を得ているのではないかという感じがあります。ほかの国が同じことを主張してもそれが否定されるかもしれないけれども、日本が言えば聞いてくれるということです。それは、やはり存在の重みがそこにあるし、日本の主張はやはり特別なので、国際社会として誠意を持って聞かなければならないのであるというような、やはり特別の思いが各国の側にもあるのではないかと思います。

 その理由は、一つには、やはり被爆の経験があるかもしれません。しかし、それだけではなくて、戦後、この憲法を日本が誠実に生かしてきた、かつその中でさまざまな工夫と苦労をしながら国際貢献の道も模索してきた。ですから、普通の国ではない苦労を特別にした国に対する敬意のようなものがあって、日本の主張は世界で通るという感じがあります。

 具体的にと聞いてくださいましたので、それでは二つ申し上げたいと思います。
 私が先ほど言及しました日本の核廃絶決議案でございますけれども、NPT条約上の核兵器国、核兵器を保有している国の支持を取りつけることができるかどうか、ここが大きな一つのポイントになりましたが、ある核兵器国は、昨年の総会第一委員会におけます投票を終わった後、その投票においてはついに支持票を入れてくれましたが、以下のように述べました。日本提出の本決議の内容のある部分については我が国の国防方針に抵触する可能性が十分にある、しかし、本決議は日本提出のものなので賛成票を入れると。非常に重い言葉ではなかったかと思いました。
 ほかの国が提出したならば賛成票にはならなかった可能性があるということをその政府代表は国連の議場で堂々と述べ、日本提出であるから賛成票であるという立場を表明した。日本の、軍縮外交におけますやはり特別に重要な役割が世界の側で認識されていたと感じました。

 あと、もう一つは、先ほどの小型武器軍縮のことでございますけれども、国連の多国間主義はさまざまな分野で行き詰まっております中、私は、やはりこの兵器範疇が今日最大の戦争関連死の原因となっているということから、つまり、年間五十万人ということは毎日千四百人ぐらいでありまして、一分一人ぐらいですので、こうして私たちがここで議論している間も、もう何十人も亡くなるということでございます。いや、百人以上ですね。
 そういう兵器範疇ですので、何としても軍縮が必要という観点から、国連での、一国も取り逃さないといいますか、一国も置いていかない全会一致での多国間主義というものを推進しようという語りかけをして、そして先ほど申し上げたような結果を得たんですけれども、その過程においても、やはり日本議長の言うことであるから一応協議には応じなければならないと。
 何度も決裂する非公式協議を経て、しかし、日本議長がここまでの合意を世界でつくりつつあるので、自分の一票で全会一致を崩すということはやはりやり得ないのであるというところまで各国を持っていきました。国連議場ですので多くの国、最近国際政治でいろいろと指摘される多くの国、例えば北朝鮮、リビア、イラン、イラク、いずれも私の議場で全会一致に参加してくれました。

 このようなことは、ほかの国もできたかもしれず、あるいはできなかったかもしれません。それを検証することはなかなか難しいですが、私は、自分の印象論からのみ述べることができますけれども、やはり日本が積極的に軍縮、不拡散、人道支援のような分野で強い主張をし、かつ強く世界を率いていこうとしたときに、ほかの国にはできない力を発揮できることがあろうと思います。

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