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防災と国土強靭化(メモ)

 住民と自治2013.9号より。以下の論稿のメモ。

①「本来の国土強靭化とは 〜沖積低地の土地利用秩序のあり方」
 千賀裕太郎・東京農工大名誉教授
②「自治体のポイント 3つの構え」  塩崎賢明・立命大教授
③「国土強靭化の問題点」 森裕之・立命大教授
④「国土強靭化と地方自治体に求められる防災・老朽化対策」  高木直良・建政研

〜 「防災」と名がつくと、オスプレイを飛ばすのも何でもあり・・のような状況になっている。「復興予算」同様、なんでもありの「国土強靭化計画」の問題点をつかみつつ、中長期的視点で、まちづくりのあり方、経済のあり方とリンクさせて、真に合理的な政策選択が必要になっている。
ところでオリンピック・・・沖積低地に施設を建設することになる。

≪防災と国土強靭化2013≫

【Ⅰ.本来の国土強靭化とは 〜沖積低地の土地利用秩序のあり方】    千賀裕太郎・東京農工大名誉教授

◇はじめに

・地震大国、洪水大国では、他国にまして国土の注意深い利用・管理が必要〜が、東日本大震災は、構造的な弱点を顕在化 〜 今後発生する巨大地震・津波にはいっそう弱点をさらけ出すだろう
・「国土強靭化計画」は、「日本列島改造計画」「全国総合開発計画」を模した「国土軸」と称する高速移動手段や巨大な堤防建設など、巨額の公共事業を費やして景気回復をはかろうという浅薄なもの

◇近未来の巨大地震を前提にした国土利用の議論を

・M9クラスの南海トラフ巨大地震 30年以内に87%の確立で襲う、太平洋側を中心とした日本列島全体が地震の激動期に入った(政府 地震調査研究推進本部)〜すでに94年に石橋克彦氏が警告
・つまり、日本列島全体の国土保全・災害回避の中長期的展望のなかに位置づけ、まちづくりの再検討を
 〜 本稿では、河川下流部の沖積平野の防災と土地利用のあり方の基本的考えを記す。

◇沖積低地の危険性と基本的な国土利用構造

・太平洋沿岸部の沖積低地は、もっとも旺盛な経済活動を展開する日本経済の心臓部
・中長期的には、利用制限を含む土地利用計画が必須〜 原発。化石燃料貯蔵拠点を含む大規模工業地帯、メガロポリスが、危険な条件下に入っている。
→ 長期的には、地震の影響が相対的に小さい列島内陸地域への移動が必要。そのためには人口、経済拠点を小規模にし、多極分散型の国土利用構造に転換させることが必要。/原発を閉鎖し、エネルギー体系を再生可能エネルギーを軸にした地域分散型に転換することも不可欠の方策。

◇二次大戦後の治水事業、沖積低地の都市化

・科学技術の高度化、公的資金の充当により、大容量のダム、高く連続した河川堤防、排水機場の建設による河川治水工事が実施され、沖積低地での洪水防止がかなりの程度可能となり、開発が加速
・高度成長による所得の増加、政府の持ち家政策のもとで、沖積低地での住宅建設が加速 
・海岸部の「埋立て」も多用され、土砂採取場として山地、河床の自然破壊。造成地の地盤の不均等沈下、地震時の液状化が問題に。/逆に、内水排除の困難さの拡大、小河川を逆流し洪水が多発する地域の出現
・高度成長と重なる60年代からの30年間、地震の静穏期と重なり、巨大地震を想定した土地利用が考慮されなかった。(メモ者 高知市では、戦後、革新市政のもとで南海地震の経験もうけ、土地利用の制限を進めようとしたが、私有財産であることもあり、土地開発を進めようとする力に、有効打をもちえなかった。)

◇国土の利用管理の転換を

・ほんの数十年前ので、沖積低地の大半は、「被災型」土地利用を展開していた。
 〜 大都市市街では機能しているところがある。//水田利用、湿原など優良な自然保護地として
・再生可能エネルギーに本格的に依存する社会とすれば、沿岸部の化石燃料基地は大幅に減少でき、製造業等の産業拠点も内陸部に立地可能に。
・「困難」「非現実的」として、国土利用の管理転換の議論を避けてはいけない。


【Ⅱ 自治体のポイント 3つの構え  塩崎賢明・立命大教授】
〜 小さくでも・・自治体フォーラム滋賀での発言 

・日本では、災害は日常だというぐらいの構えを/ 災害を減らすには日常的に自覚し、訓練し、議論し、互いを高めていかないと、現地での対応はできない。

①事前の予防〜 堤防の建設、家などの耐震化、避難道の整備と訓練、備蓄など
②緊急対応〜 災害時の避難、消化、救急救援隊、支援物資、避難所ぐらしなど災害発生72時間〜1週間までの対応
③復旧・復興〜仮設住宅、工場・店の再開、住宅再建。長期に続く過程 〜次ぎに来る災害の備えでは「復興災害」が起こらないような社会的システムの整備

・自治体の備えでは、3点

①災害が起こったときには全職員が担当者になる
②行政と住民が一体となって地域と生活を守る
③首長・職員のレベルアップ〜 とくに災害対策基本法、災害救助法を熟知してほしい
→災害対策基本法、災害救助法の改正で、要援護者の個人情報を同意なく取れることが明記され、被害者台帳をつくれることになった。/被災証明は発行しなくてはならない /地域防災計画をグレードアップし、地区防災計画がつくれるようになったなど・・・

【Ⅲ 国土強靭化の問題点 森裕之・立命大教授】

◇公共事業の復活

・国土強靭化基本法案 10年間で200兆円の公共事業
 〜近年の公共事業費(行政投資)23兆円前後/ これに20兆円を上乗せして増額するか、国の公共事業費関係費(約6兆円)との差額を生めると主張していると解釈できる。/今の2-3倍近くの規模。90年代水準
・この復活は、防災・減災政策の強化、社会資本の老朽化対策が理由。客観的にも同意が得られるもの

◇国土強靭化基本法案の内容

・第二条「基本理念」〜 「多極分散型の国土形成」「国土の保全及び複数の国土軸の形成を通じた国土の均衡ある発展が図られることを旨として講ぜられる」
・基本的施策では、大規模災害の対応が述べられているが、「地域間の交流及び連携の促進」「我が国全体の経済力の維持及び向上」として複数の国土軸り形成、国際競争力の強化なための道路、鉄道、港湾。
・また「離島の保全等」、「隣保共同の精神」に基づく国民の自発的な防災活動の支援
・内閣に「戦略本部」な置き、内閣府に「国民運動本部」を設置する

◇国土強靭化基本法案の問題点〜 3点

①旧来の「全国総合開発計画」の引き写しに過ぎない
 「多極分散型の国土」(83年4全総)、「国土の均衡ある発展」(全総計画で一貫して目標)、「日本海国土軸」「太平洋国土軸」「多極型の国土」(98年新全総)とまったく同じもの
 〜 全総計画の開発中心主義の転換をはかるとした05年「国土形成計画」を再び、全総計画に戻すもの
②グローバル企業のための産業基盤整備、領土問題対策の推進を明文化〜 防災・減災と無縁
災害からの復興は内需依存企業の重要性も同じ/領土問題は、外交・安全保障の分野
③本部、国民運動の規定は、戦時体制を彷彿させるもの

◇国土強靭化と公共事業
 (メモ者 「復興予算」の流用問題と根は同じ。防災・減災を名目に大規模な「流用」の仕掛けづくり)

◇真の防災・減災対策としての内発的発展

・ムードに乗じて大規模プロジェクト、原発再稼働に利用されることのない、真に必要な防災・減災のあり方を構築することが喫緊の課題 /一方。人口減少・少子高齢化のもとで国全体の財政危機が深化していく蓋然性が強くなっている。
→ 新しい国土のあり方を考えなくてはならない。/その原点は、内発型発展論

*内発的発展論~ 拠点開発方式など外来型開発の対抗軸として提起されたもの。地元の産業・技術・文化を土台にし、地域の企業や住民が主体となって経済・福祉・文化などの総合的な発展と自律的な地域経済構造を構築しようとする概念

・いずれかの地域が災害に襲われても社会全体がシステム・ダウンしない仕組の構築/ 「地域分散型ネットワーク型経済システム」(金子勝)の提案。国がすすめてきた「緑の分権改革」はこのようなアイデアを国策として取り入れたもの。

・国土強靭化計画は、分権化の流れを中央集権の体制へ大きくシフトさせるもの。/地域と自治体の主体的力量を劣化させるもの(メモ者 道州制となればなおさら・・・)
→ 災害が起こった場合の緊急的対応は現場の力に掛かっている。その土台として内発的発展が大きな意味。


【「国土強靭化」と地方自治体に求められる防災・老朽化対策  高木直良・建政研】

◇本音は旧「国土強靭化法案」の復活

・2013.5 自民党が野党時代に提出した旧「国土強靭化法案」(廃案)を、防災・減災に絞込み「防災・減災に資する国土強靭化計画」として提出。
→ 「国民を守る」「環境、自然との共生」など旧法案のイメージを大きく変えるもの/ 大規模な補正予算や新年度予算に大規模公共事業を盛り込む一方、「バラマキ」批判を意識したものに。
・が、「事前防災を重視した国土強靭化」では、「同時に・・太平洋側の経済活動などをバックアップする日本海国土軸の形成」「多極分散・・」「ミッシングリング解消」「国際競争力を備えたハブ空港」など、旧法案そのものが書かれている。
→ 本音は、「全国総合開発」政策の再現

◇トンネル事故が教えるもの・・・老朽化対策で重要な安全確保の視点

・「社会資本の老朽化対策会議」答申(3/21) 「ITの活用等、インフラの維持管理のイノベーションの推進」/「成長戦略案」の総理スピーチ(6/5)社会資本の老朽化対策=「戦術市場創造プラン」としてITなどを活用した新たな市場開発分野に位置づけ
→ 老朽化対策は、あくまで日常生活、生産活動における安全の確保であり、「成長戦力」とは異質のもの/新技術の開発は必要だが、老朽化対策の送れは、技術の遅れが主要な問題ではない

・笹子トンネル事故〜 30年以上もボルトを放置し取り替えなかった。民営化に伴う維持管理経費削減のために打音検査という「ローテク」の検査を怠ったこと。
→ 日常的、定期的な点検業務に必要な体制、費用が確保されてないことが問題

◇地域防災で重要なことは災害の未然防止の対策

①建物の耐震化促進
・既存不適格住宅(4m公道に接道していない)の対策・・・ 建替えが違法になる。/中林一樹元首都大学教授。建築基準法42条2項の緩和での建替え促進を提起
・保育園、学校の非構造部材、病院など

②地盤・造成地対策
・液状化対策〜 道路埋設管、戸建て住宅宅地は無策
・技術的には、施設の基礎地盤への薬液の投入、砂地盤の締め固めなど地盤改良が必要
 〜 現行の補助制度は、道路など公共施設の対策時に申請すれば、一緒に実施も可能という貧弱さ
・比核的安価な新技術が研究開発されているもとで、抜本施策が必要
・造成地の地すべり対策〜 国の対策要件の緩和が必要(造成規模、住宅戸数)、

③地方自治体の財政と体制の確立〜地域建設業の育成
・大都市部での「公共施設白書」づくりの広がり〜 財政対策、行政改革の一環としての位置づけ
 〜 統廃合、多機能化、民間施設の利用、包括管理委託など 
→ こうした方針の作成、実行段階での住民の合意形成、参画が不可欠

・埼玉県鶴ヶ島市の「公共施設修繕白書」(2012)
 施設で発生した不具合を職員が自ら修繕した記録「施設修繕情報ボート」の活用/ 他の部署が参考にして自主修繕し、保全に対する意識を高め、創意工夫を生む
→ 不具合の多い施設、使われ方による違い、改修実績との関連分析で、修繕費の標準化たのための施設保全計画の作成

・社会資本の維持・管理の困難は、財政不足と技術不足、人材不足
→ 自治体内部に保守点検のノウハウを蓄積し、基礎的な技術力(施設の仕様や図面から機能、材質や構造を読み取るなど)を備えた職員の配置、育成が不可欠。

・維持管理、保守・改善・更新を現場で担う地域の建設業者、技術者の育成が重要
→ 業務の中長期の安定的な発注が、経営を安定させ、技術者の雇用の維持と技術力の維持・向上に
→ それか地域循環型経済の実現に結びつく。


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