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集団的自衛権の本質 「地球の裏側で」戦争可能 

 だいたい日本周辺での有事は、個別的自衛権の範囲。またインド洋での日本による給油活動中に、米艦が攻撃された場合も「個別的自衛権」と説明してきた。
 集団的自衛権に「地球の裏側に絶対行きません、という性格ではない」と説明した官房副長官補の発言は、ある意味正論。「イメージのひとりあるき」ではない
 日本有事でもないのに、地球の裏側で「自衛」を口実にした侵略戦争できる、というのが集団的自衛権の本質。だから憲法が禁止してきた。自衛隊の派遣も「非戦闘地域」「武力行使しない」など限定してきた。
 しかもこの議論、なんのために必要なのか、まともな説明がない。国際情勢の変化も認識していない。
  【自衛隊「地球の裏側」にも 集団的自衛権で官房副長官補 朝日9/19】
【集団的自衛権:「地球の裏側」発言、防衛相が火消し 毎日 9/20】
【「日本をめぐる安全保障環境の激変」とは何か 五十嵐仁 9/20】

 【自衛隊「地球の裏側」にも 集団的自衛権で官房副長官補 朝日9/19】

 安倍政権で安全保障政策と危機管理を担当する高見沢将林(のぶしげ)・官房副長官補は19日の自民党の安保関係合同部会で、集団的自衛権の行使が認められた場合の自衛隊の活動範囲について「『絶対、地球の裏側に行きません』という性格のものではない」と述べ、日本周辺以外での武力行使の可能性を示した。
 これまで安倍政権は、集団的自衛権の行使が容認されるケースとして、日本周辺の公海上での米艦防護を示し、「地球の裏側で自衛隊が行動を起こすことではない」(小野寺五典防衛相)と説明しており、整合性が問われそうだ。


【集団的自衛権:「地球の裏側」発言、防衛相が火消し 毎日 9/20】

 小野寺五典防衛相は20日の記者会見で、集団的自衛権行使を容認した場合の自衛隊の活動について「地球の裏側10+件(まで行く)ということを想定しているわけではない」と改めて明言した。この問題では、19日の自民党会合で防衛省出身の高見沢将林官房副長官補が「絶対に地球の裏側10+件に行かないという性格のものではない」と言及。しかし行使に歯止めが利かなくなるとの意見が党内にあり、小野寺氏が火消しを図った形だ。
 さらに小野寺氏は、安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」でも「実際と違うイメージが独り歩きしている」との懸念の声があることを紹介。集団的自衛権が及ぶ地理的な範囲をめぐっては、自衛隊が日本と関係の薄い米軍の軍事行動に巻き込まれる可能性があることを念頭に、議論の対象になっていると強調した。
 ただ、高見沢氏の発言を「脱線」とも言い難い。政府内には、具体的な地理的制約をあらかじめ設けると想定外の事態に対応できなくなるという意見があるためだ。政府関係者は「他国の領域に入って戦争はしないが、公海は別だ」と語り、各国の主権が及ばない公海なら集団的自衛権の適用範囲に含まれるとの見方を示した。

 【「日本をめぐる安全保障環境の激変」とは何か 五十嵐仁 9/20】

 安全保障と言えば、すぐに軍事的な解決手段を連想する。ソフトパワーの力を信じることができず、非軍事的な手段による安全保障を構想できない。
 ここに安倍首相の根本的な弱点があります。19世紀的なパワーポリティクスに拘泥している安倍首相は21世紀に生きる政治指導者としての資質を欠いており、生まれてくるのが2世紀ほど遅かったと言わなければなりません。

 このような安倍首相の欠陥によって現在の安保・防衛政策は大きく歪められています。それだけではなく、安倍首相の軍事的安全保障政策の根拠とされる「日本をめぐる安全保障環境の激変」についての理解も決定的に誤っています。
 安倍首相は、あたかも中国や北朝鮮が明日にでも日本を攻めてくるかのような危機感を煽り立てています。尖閣諸島をめぐる中国の対応や北朝鮮によるミサイル危機などの軍事的挑発行為が、このような安倍首相の主張を裏付けるものとして最大限に利用されてきました。
 しかし、状況は大きく変化しつつあります。そして、このような変化は極東における緊張緩和にとって好ましいものであり、安倍首相がこれから本格的に取り組もうとしている安保・防衛政策の転換がいかに現実離れした無意味なものであるかを如実に示すものとなっています。

 第1に、中国や北朝鮮の姿勢が変わりました。事態は鎮静化し、緊張を高めないような対応がなされていると言って良いでしょう。
 中国では、尖閣諸島の「国有化」から一周年が経った9月11日も満州事変が勃発して「国辱の日」とされる9月18日にも、昨年のような過激な「反日デモ」は起きませんでした。当局も国民も昨年のような激しい抗議行動を「自制」し、関係改善を望んでいることは明らかです。
 北朝鮮も配備したとされるミサイルは撤去し、新たな核実験は行わず、3年ぶりに離散家族の再開について合意するなど、南北関係の改善に向けてのアクションを起こしています。先日は、重量挙げの2013年アジア・クラブ選手権の開幕式で、南北分断後始めて韓国選手団が国旗の太極旗を掲げ入場し、韓国国歌も流れ、4月に閉鎖されていた開城工業団地の操業も一部再開されました。

 第2に、アメリカの対応が変化しています。シリアでの化学兵器使用問題について、アメリカ国内ではミサイルによる空爆など軍事攻撃に対する反対が強く、オバマ大統領もロシアのプーチン大統領による平和解決の提案を受け入れました。
 当初の軍事攻撃案に対しては、米軍内でも75%、米国民では64%もの反対があったそうです。オバマ大統領が軍事攻撃を提案した場合、上院はともかく下院での採択は難しかったとされています。
 イラク戦争とアフガニスタンへの軍事介入の失敗によって、アメリカ国民は軍事的手段による対応への忌避感情を高めています。このような状況が続く限り、オバマ大統領も世論を無視した軍事的解決手段を選択できず、非軍事的な外交交渉によって中東問題全体の解決を図らなければならないでしょう。

 第3に、国際情勢全体の基調も転換しています。当初、シリアに対するアメリカの空爆に賛成していたイギリスは議会の反対によって方向を転じ、その後のG20でも空爆賛成派は多くありませんでした。
 ここで大きなイニシアチブを発揮したのが、これまで中東問題について積極的な関与を手控えていたロシアです。国内外で孤立し、窮地に陥ったオバマ米大統領に助け船を出すような形で、プーチン大統領は新たな提案を行いました。
 国連もこれを歓迎し、シリアが保有する化学兵器を国際管理下に置き、来年半ばまでに完全廃棄することでケリー米国務長官とラブロフ・ロシア外相が合意するなど、事態は一挙に平和解決の方向に動き出しています。両外相は13日の協議で、シリア内戦の政治解決に向けた国際和平会議の早期開催に努力する方針を確認しており、シリアの内戦や中東問題の解決に向けて新たな進展がありました。

 まさに、「日本をめぐる安全保障環境」は大きく変化しました。このような変化の結果、日本周辺での軍事衝突の可能性や中東での米軍主導による多国籍軍型の軍事介入の可能性はほとんどなくなっています。
 安倍首相は集団的自衛権の行使容認を急いでいますが、何故、何のために、何時までに、そうしなければならないのか、その必要性も目的も時期もはっきりしなくなりました。国際政治の現実からすれば、安倍首相は風車を怪物と見間違って突進したドン・キホーテのようなもので、今もなお風車に向けて身構えているというわけです。
 本来であれば、シリア問題での平和的解決の見通しを開いたロシアのプーチン大統領のような役割を、日本の首相が果たすべきだったでしょう。それが憲法9条が求める国際政治における日本の立ち位置であり、国際紛争の非軍事的解決に向けてイニシアチブを発揮することができれば、「国際社会において、名誉ある地位を占め」(憲法前文)ることができたはずです。

 しかし、安倍首相はシリア問題で何らの積極的役割を演ずることができませんでした。東京オリンピック招致のためにG20 を途中で抜け出し、福島第1原発の汚染水問題について「状況は完全にコントロールされている」と国際社会に向かって大嘘をつき、日本に対する信用を傷つけ「名誉」を貶めただけです。
 憲法を活かすという行動規範を身につけていれば、もっと違った対応ができたでしょうに。国際紛争の非軍事的解決に向けてイニシアチブを発揮できなかったのも憲法を敵視する安倍首相の限界であり、そこにこそ日本の首相としての根本的な欠陥があることを指摘せざるを得ません。

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