シリア軍事介入「合理性ない」 一般市民に多数の死者が出る可能性
シリア情勢に詳しい東京外国語大学の青山弘之教授への岩上安身氏インタビュー。ツイートの連投の整理したもの。
青山氏はシリアの複雑な状況を説明し「軍事行動により、アサド政権を倒すこともできなければ、化学兵器を取り除くこともできない。合理性がないし、そもそも成果が期待できない」。
先日のブログ内で紹介した「シリア「内戦」の見取り図 末近浩太 / 中東地域研究」」の内容をあわせて読むと立体的にわかる。
それにしても、安倍首相のへ米国支持の「軽すぎる判断」。思考停止。
【2013/08/28 英米仏によるシリア軍事介入「合理性ない」 一般市民に多数の死者が出る可能性指摘 ~岩上安身による青山弘之氏インタビュー】
【シリア軍事介入 国連事務総長が警告、英議会拒否、自民・米支持2013.8】
【2013/08/28 英米仏によるシリア軍事介入「合理性ない」 一般市民に多数の死者が出る可能性指摘 ~岩上安身による青山弘之氏インタビュー】
21日、シリアの首都ダマスカス郊外で化学兵器が使われたとされる問題を巡り、アメリカ、イギリス、フランスを中心とする欧米諸国は軍事介入を行う姿勢を強めている。アメリカのカーター国務長官は26日、報道陣に対し声明を読み上げ、化学兵器がアサド政権側により使用されたと断定。「責任を取らせる」と語り、攻撃の準備を進めていることを明かした。地中海東部には、すでに米海軍のミサイル駆逐艦4隻が配備されている。
緊張が高まるなか、シリア情勢に詳しい東京外国語大学の青山弘之教授は、岩上安身のインタビューに応え、「アサド政権側が化学兵器を使用した証拠は今のところ存在しない」と指摘。アメリカ、イギリス、フランスは、状況証拠を積み重ねてアサド政権を批判しているに過ぎない、と語った。そのうえで、「軍事行動により、アサド政権を倒すこともできなければ、化学兵器を取り除くこともできない。合理性がないし、そもそも成果が期待できない」と述べ、軍事行動に前のめりな欧米諸国の姿勢を批判した。(IWJ・平山茂樹)
青山氏「まずシリアの地域での立ち位置、国際社会の立ち位置を理解すべき。シリアはイスラエルと敵対している。西側諸国とイスラエルは関係が深い。イスラエルの安全保障を脅かすのはシリアだけではない。シリアと西側諸国は、敵対しているが、利害関係が一致する」。
岩上「中東におけるシリアの強みは何でしょうか」
青山教授「教育の水準が非常に高い。人的な資源があります。カイロとともに、中東の近代化を主導してきた面があります。アサド大統領もそのひとり」「世界の市場で戦える物品を持っていないシリア。そんなシリアの強みは、『マンパワー』、『人的資源』。アサド大統領がイズベスチヤのインタビューで、『シリアには石油はないが、文化を作ってきた』とサウジアラビアを批判した」。
岩上「他方、シリアは世襲独裁です。ムハーバーラトという秘密警察も持っているようですが」
青山教授「周辺国との関係を考えると、政治的安定と社会的自由を維持するには、独裁という選択をせざるを得なかった面がある」
.岩上「シリアと周辺国との関係について」
青山教授「同じバース党でも、シリアは左派、イラクは右派です。左派は社会主義、右派はアラブ統一を志向しています。シリアとロシア(当時ソ連)は80年代からパートナー」
岩上「アラブの春について。単純な民主化ではなかったのではないか」
青山教授「アラブの春がシリアに波及したのは2012年3月で一番最後。チュニジアやエジプトは国内問題から始まったが、シリアは政治的ブレンドがされた」「今 シリアにて単純な民主化運動はすでに皆無である。あっという間に乗っ取られてしまった。」
青山教授「アサド政権の初動ミス、ということが言われている。デモに対し、アサドが治安部隊側についた、と民衆に感じさせてしまった、ということがある。だが、アサドは自分が辞めること以外、すべての要求を受け入れている」
青山教授「シリア政府側は、反政府軍は外国の支援を受けていると主張している。事実、今、シリアが戦っているのは外国勢力。それがアルカイダ」
岩上「そこがややこしいところ。アルカイダは欧米と戦っていると思われがちだが」
青山教授「カタール、サウジアラビア、トルコが自由シリア軍を支援するかたちで国内に入ってきました」
岩上「ブレジンスキーが、カタール、サウジアラビアを、CIAが工作していると指摘しています」
青山教授「シリア国内でジハードを行っている反政府派のアル・ヌスラ戦線。彼らが最前線で戦っている。彼らの実態はイラク系のアルカイダです」
岩上「カタール、サウジ、トルコといった西側とべったりの国がシリアをぐちゃぐちゃにしているということでしょうか」
青山教授「その三国がアルカイダに武器供与し、アルジャジーラを使ってプロパガンダをしています」
・青山教授「西側は常に、国内の民主化が潰れてアサド政権が安定を取り戻すと、それを狙うかのように西側は介入する。経済制裁から始まり、兵站支援を行う。英米仏+カタール・サウジアラビア・トルコ(「シリアの友」と自称)」「今年の3月くらいから化学兵器の話が出始めた。使っているのはアサド政権だけか。今回国連調査団が入ったのは反政府側の地域。21日の事件に関しては何も分かっていない。国連がまさにサンプルを解析中」「アサド政権は化学兵器の保有を認めていないし、西側も持っていることを実証できていない。英米仏、ロシアの両方とも、状況証拠を積み重ねて主張している」
岩上「化学兵器は、相手の非人道性を国際社会にアピールするような手段に有効、ということではないか」
青山教授「その通りです。化学兵器は政治的な効果があります。最終的に誰が得をしたかで判断すると良いのでは」「反政府軍は兵站線が長くなってトルコ国境は強いが、ダマスカスまでいけない。コレじゃアサド政権は倒せない。でクサイルという町が奪還された。で西側がコレじゃあダメだという時に、化学兵器の話が出た。政府軍は使ってるかもしれないが、反政府軍も使ってるかも」
青山教授「事件が起きたのは8月21日。今回の映像がユーチューブに上げられたのは8月20日。シリアで撮った映像をアメリカに転送して上げたのかどうなのか。ロシアのラブロフ外相は日付の件を指摘している」
岩上「アサドがイズベスチヤのインタビューに答えています。どの点が注目点でしょうか」
青山教授「自軍が展開している最前線で化学兵器を使うはずがないだろう、ということ。まさにシリア軍はダマスカスに展開中だった」
岩上「核施設を空爆するのであれば効果があるかもしれない。しかし化学兵器は違う。袋に入れて分散配置するもの。ミサイルを打ち込むと一般の市民に大量の死者が出るのではないか」
青山教授「今回の欧米の軍事行動にはまったく合理性がない。アサド政権を倒すこともできないし、化学兵器を取り除くこともできない。単に古い武器を使い切るということぐらいしか考えられない」
「シリアはスカッドを持っているが、それはあくまで抑止力のため。シリアの幹部は圧倒的に国力がイスラエルに劣ることを分かっているので打つことはないだろう」i「湾岸危機からイラク戦争に至る10年。限定的な介入から初めて、最終的にはどうでもいい理由で倒した。それと同じことがシリアにも適用されることが最悪のシナリオ。その間、シリアの民衆の方々が苦しむことになる」
岩上「ミサイルを叩き込み、地上軍を派遣し、政権を打倒したとなると、それは化学兵器の使用が西側による自作自演だったということになる。それは信頼の崩壊という意味で最悪」「日本では集団的自衛権の行使容認が言われている。化学兵器が蔓延する地域に西側諸国と足並みを揃えて介入するということ」
青山教授「例えばレバノンは、不関与という政策を積極的に取っている。これは無関心ということとは違う。西側の軍事介入は大義が極めて疑わしい。そこに自動的に入っていくのはよいことではない」
岩上「エジプトとシリアの関係について。ムバラクが釈放されたのはクーデターではないか」青山教授「シリアとエジプトでイスラエルを挟むことが基本。それが、シリアとエジプトが対立するようにキッシンジャーが持って行った」
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