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汚染水対策の破綻~「東電」救済優先、国の責任のがれの顛末

 このところ次々に汚染水がみつかったり・・とニュースを追うのも忙しいほどだが・・・汚染水対策の破綻は明らか。対策のスキームを抜本的にあらためて取り組まないと取り返しがつかなくなる。再稼働や輸出だ、と言っている状況ではない。
 そもそも、加害者が、被害者の補償の査定をしたり、被害回復の事業を仕切るというのはありえない。取り組みをおくれさせ、あきらめさせて賠償、除染費用を値切り、東電やそれに融資した金融機関や株主を救済しようとする、そのスキームが、国の責任をあいまいにし、隠蔽や対策の遅れ、そして国民の不信の増大という悪循環ををもたらしてとしか思えない。

【汚染水が「土の壁」越え流出も 福島第1原発 共同8/1】
【福島第1原発の現状/ 汚染水対策は事実上破綻  海洋流出防げるか不透明 共同7/29】
【特集ワイド:続報真相 福島第1原発事故 汚染水、本当の深刻度 毎日7/26】
【東電再建:誤算続き 実質国有化1年 汚染水、再稼働暗礁、人材流出… 毎日8/1】
【原発汚染水の流出/東電任せはもはや危うい 河北新報7/24】

【汚染水が「土の壁」越え流出も 福島第1原発 共同8/1】

 福島第1原発の敷地内にある観測用井戸の水位が上昇している問題で、東京電力は31日、岸壁沿いで工事を進めている「土の壁」を越えて汚染水が海に流出する可能性があるとの見方を示した。
 土の壁は、地下の汚染水が海に流出するのを防ぐ目的で、地中に水ガラスを注入して地盤を固めた。近くの井戸では、工事が始まった7月上旬から水位が上がり始め、30日時点で地表まで約1メートルの所に上昇した。土の壁が地下水をせき止めたのが原因とみられる。
 土の壁は地下1・8メートルよりも深い部分に設置されているため、地下水の水位が上がれば壁を越えて水が漏れるほか、壁の横からも漏れる恐れがあるという。


【福島第1原発の現状/ 汚染水対策は事実上破綻  海洋流出防げるか不透明 共同7/29】

 福島第1原発からの汚染水の海洋流出を受け、東京電力は護岸の地盤改良など流出防止策を急ぐが、対策の効果は不透明だ。加えて敷地内の汚染水は1日400トンのペースで増え続け、抜本的な解決策もない。廃炉に向け当面の最重要課題とされた汚染水対策は事実上、破綻している。
 「1リットル当たり23億5千万ベクレル」。原子力規制委員会が汚染水の漏えい源と疑う敷地海側のトレンチ(地下道)にたまっていた水の放射性セシウム濃度だ。東電が27日、発表した。トレンチが通る2号機タービン建屋東側の一帯では5月以降、観測用井戸で高濃度汚染水の検出が相次いでいる。

 東電は4月、港湾内で長さ約780メートルにわたって鋼管約600本を壁のように打ち込む「海側遮水壁」の工事を始めた。完成は来年9月ごろで、汚染水が海に漏れ出さないよう“念のため”の措置だった。
 ところがわずか約2カ月後、敷地海側や港湾内の海水で高濃度汚染水の検出が相次ぐと、水ガラスという薬液で護岸などの地層を固める「土の壁」の工事に着手せざるを得なくなった。

 トレンチには事故直後に流れ込んだ極めて高濃度の汚染水がたまっている。2011年4月に2号機取水口近くで汚染水漏れがあったことを受け、継ぎ目部分の縦穴を埋めて水の流れを遮断しているが、本来は配管や電源ケーブルを通すためのトレンチに、防水処理は施されていない。

 東電は早期に汚染水を抜き取ってトレンチを埋める計画だが、ここが汚染源だとすれば、完了までは高濃度の汚染水が漏れ続ける。今月26日に記者会見した 広瀬直己 (ひろせ・なおみ) 社長は「もっと早くやるべきだった」と悔やんだ。

 一方、汚染水をどう減らすのかも重要な課題だ。建屋に流れ込む前の地下水を井戸でくみ上げて海に出す「地下水バイパス」計画は地元の強い反発でめどが立たない。1~4号機の周囲の地盤を凍らせて地下水流入を防ぐ「凍土遮水壁」は15年の完成を目指すが、世界的に例のない取り組みで効果は未知数だ。「まずは流入量を減らさないとだめだが、抜本策は挙げられない」と広瀬社長は苦悩をにじませている。
(共同通信)


【特集ワイド:続報真相 福島第1原発事故 汚染水、本当の深刻度 毎日7/26】

 ◇ルート未特定、まずは地下水の全体像つかめ
 国際原子力機関(IAEA)が、東京電力福島第1原発事故の「収束への最大の壁」と呼んだ汚染水。これまで一応管理できているとされてきた放射性汚染水が、海に流出しているという。今そこにある「汚染水危機」の実態は? 防止策はあるのか。

 ◇原子炉建屋から?分かれる見解
 13年前まで福島第1原発の所長を務めていた二見常夫・東工大特任教授(70)は22日夜、自宅でテレビを見ていた。
 「東京電力が放射性汚染水が海へ拡散している可能性があることを認めました」。アナウンサーの言葉に「やっぱり!」と思った。すぐに東電のホームページで情報を確認。「もっと早くから海への拡散に対応しておくべきだった。また後手後手に回ってしまった……」。ため息が出た。
 6月3日、海から約30メートルの1、2号機近くの井戸から1リットル当たり50万ベクレルのトリチウム、1000ベクレルのストロンチウム90が検出された。その後、近くの井戸からも放射性物質が次々と検出され、7月10日にはセシウム134が1万1000ベクレル、セシウム137は2万2000ベクレルに上った。ちなみに飲料水の放射性セシウムの基準値は10ベクレル。事故直後の暫定規制値でも200ベクレルで、井戸の汚染は深刻だ。
 現在原子炉建屋には、1日約400トンの地下水が流れ込んでいるとみられている。建屋は1〜4号機とも事故時に大きく破損しているが、線量が高すぎて近寄れず、詳細はいまだに分からない。
 汚染水はどんなルートで海へ流出しているのか。東電は「タービン建屋から海へトレンチ(配管などを通しているコンクリートのトンネル)がのびている。そのトレンチにたまった汚染水が流出している可能性がある」。トレンチの汚染水は事故時に大量に水が漏れたり、海水を取り込んだりしたもの。原子炉建屋から汚染水が漏れ続けているわけではないと主張する。だが、専門家の間で意見は分かれているのが実情だ。
 国の汚染水処理対策委員会の大西有三委員長(67)=京都大名誉教授=は東電の主張を肯定し「正確には分からないが、爆発した原子炉建屋から今も流れ出ているわけではないと思う」と話す。建屋の中の水位を周囲の地下水の水位より低くすることで、水圧を低くしていることが理由だ。「原子炉建屋のあちこちに亀裂ができ、そこから地下水が流れ込んでいるだろうが、逆に外へはあまり流れ出ていないはずだ」と話す。
 一方、二見教授は「原子炉建屋で溶けた燃料に触れて汚染された水が、現在もタービン建屋を伝ってトレンチに流れ出ている可能性がある」とみる。
 現在、原子炉建屋とタービン建屋を渡る配管やケーブルの貫通部の隙間(すきま)などから、原子炉に注水された水がタービン建屋に漏れている。さらに2号機と3号機ではタービン建屋の水位が変わるとトレンチ内の水位も変わることが確認されており、タービン建屋とトレンチの間で水が行き来している可能性がある。この二つがつながることで、原子炉で汚染された水がトレンチまで流出するルートが想定できるという。
 原子炉建屋から直接地下水に漏れている可能性を懸念する専門家もいる。産業技術総合研究所の丸井敦尚・地下水研究グループ長(55)は「原子炉建屋の壁はとても厚いが、その壁の外側から1日400トンもの地下水が流れ込んでいる。家庭の風呂の約2000杯分で、壁に大きな亀裂があると考えてもおかしくない」と指摘。その上で「そこまで壊れているのに水位を下げているから汚染水が絶対に外に漏れない、というのはちょっと乱暴な説明ではないか。漏れていると想定して先手の対策を講ずるべきだ」と話す。

 ◇港外への漏れの有無、わき水観測で可能
 現場では故吉田昌郎元所長が指揮を執っていた頃から「廃炉に向けて汚染水の処理が大きな課題」と言われていた。最も避けるべきなのは海への流出だ。また汚染水が増え続けると保管場所の確保が困難になり、廃炉作業の障害になる。海への流出が明らかになった今、汚染源や流出ルートの特定が急務だ。
 海への流出ルートがトレンチだけなら「まず大量の汚染水がある2号機と3号機のトレンチと、タービン建屋のつなぎ目を早く塞ぐことが必要」と二見教授は言う。効果的なのは「つなぎ目を凍らせること」で、トレンチを水抜きし、コンクリートで埋める作業が必要だ。
 しかし、トレンチだけが流出ルートとは限らない。丸井グループ長は「とにかく観測井戸が少なすぎる」と厳しい表情で語り、原発敷地の地下水の流れの全体像がつかめていないことを問題視する。「建屋と問題の井戸の間に10本も掘れば、漏れ始めたところはどこか計算できる。時間がたつとどんどん汚染が広がって調査が難しくなる。一日でも早いほうがいい」と指摘する。
 東電は「専用港の外の海には漏れていない」と説明するが、丸井グループ長はその点にも疑問を示し「専用港の外側に建つ防波堤の海側の海底に地下水がわき出る場所がある。そこを調査すべきだ」と強調する。魚がよく集まる場所で、福島県の水産関係者や漁師も知っているという。海水の調査だけでは海流ですぐ希釈されてしまうが、わき出ている部分で地下水を直接観測すれば、汚染されているかどうかが分かるからだ。
東電の計算では、地下水は1年に約30メートルの速さで海に向かって流れている。問題の防波堤の海側までは建屋から2キロぐらいあり、丸井グループ長は「今ならまだ拡散を止められる」という。
 海への流出とは別に、回収した汚染水の保管場所も大きな問題だ。現在約32万立方メートル(ドラム缶換算で160万本)をタンクに貯蔵しているが、大西委員長は「敷地内に保管するとなると、残るスペースはあと2年分ぐらい」と話す。二見教授は「放射線量が高い中での作業のため貯蔵タンクは急造で、溶接不良やつなぎ目の締め付けが十分でないところがある」と苦い顔だ。そこから漏れる恐れもあり「周辺の工業団地や福島第2原発の施設を使い、仮設ではなく十分に耐用性があるものを造るべきだ」と力を込める。

 ◇「凍土で壁」に国予算 際限ない維持費
 汚染水処理対策委員会は、1〜4号機の原子炉建屋とタービン建屋のまわりの土を全体的に凍らせ、水を通さなくする「凍土遮水壁」を地下水対策の「切り札」として投入することを決めた。
 「問題なのは、世界で誰もやったことがない大規模な工事であることだ」と大西委員長は言う。今までの日本の地下トンネル建設で経験された長さの100倍ぐらいにはなるという。U字形のパイプを80センチから1メートルの間隔で埋め、そこに不凍液を流して周辺の土を凍らせる工法だが、本当に間の土が凍るかが大きな課題だ。
 うまくいけばトレンチごと凍らせることができ、タービン建屋とトレンチの間を埋めることができる。国が予算をつけて、今年中に現地で実験する予定だ。大西委員長は「これができれば建屋内に入り込む水をある程度コントロールでき、溶けた燃料に触れて新たに生まれる汚染水を減らすことができる。周囲の線量を下げることも可能。燃料の取り出しに向けて大きな進展となる」と期待する。
 これに対し丸井グループ長は「凍土方式は最新技術だが、一回始めたらやめられない麻薬のようなもの」と説明する。毎年維持費として膨大な電気代がかかるうえ、凍らせていた土が解けた場合、もともと水を通しにくかった粘土質の土に隙間ができるなど逆に水を通しやすくなってしまう。「凍土壁が解けた場合を想定し、凍土の外側に鉄の連続壁を造ったり、さらに外側に井戸を掘って周辺の地下水を減らしておくなど二重三重のバリアーが必要」と警告する。多重のバリアーは海側にも造り、遮水壁やガラス系の薬液を投入する防止壁など重層的な対策をなるべく早くしなければならないという。
「東電は『自分たちが何に困っているのか』をオープンにして、知識や技術を広く求めなくてはいけない。国はこれまで現場作業や調査はほとんど東電にまかせきりだったが、今後は本格的に協力しないととても収束ははかれない」と二見教授は忠告する。
 海への汚染を広げず、何十年にもわたる廃炉の道を歩むためには、国内外の英知の結集が求められている。【田村彰子】

【東電再建:誤算続き 実質国有化1年 汚染水、再稼働暗礁、人材流出… 毎日8/1】

 福島第1原発事故で経営難に陥った東京電力が国から1兆円の公的資金を受けて実質国有化されてから31日で1年。「国有東電」は被災者への賠償や廃炉など事故処理と安定的な電力供給を両立させた上、経営再建を目指す。しかし、事故処理では放射性汚染水の相次ぐ流出などで国民の不信が増幅。収支改善の大前提の柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働は地元の反発で申請のメドさえ付かず、再建計画は瓦解(がかい)寸前だ。【清水憲司、大久保渉、浜中慎哉】

 「(原発事故処理は)汚染水問題で厳しい。(再建は)合理化に努めてきたが(柏崎刈羽原発の再稼働無しで)黒字化は非常に難しい」。31日に2013年4〜6月期決算を発表した東電の広瀬直己社長は実質国有化1年をこう総括した。

 国有化に伴い東電は経営体制を刷新。弁護士で原子力損害賠償支援機構の前運営委員長の下河辺(しもこうべ)和彦会長や数土(すど)文夫JFEホールディングス相談役ら社外出身取締役6人が経営権を握った。外部の目を入れ「霞が関以上に官僚的」な体質を改め、賠償も含めた円滑な事故対応と、コスト削減を進める狙い。広瀬社長ら生え抜き役員は改革実行を厳しく迫られることになった。

 改革は一定程度進んだ。クライン元米原子力規制委員会(NRC)委員長ら海外組も加わった「原子力改革監視委員会」は福島事故を教訓に社内の安全文化を高める策を提言。遅れていた被災者対応では、本店に代わり賠償などの判断権限を持つ「福島復興本社」を今年1月に開設。相談人員を増やした効果もあり、国有化前は1・1兆円にとどまった賠償支払い実績は直近で2・6兆円となっている。

 コスト削減も外部の人材が主導。大手メーカーの元調達担当者らを起用した「調達委員会」が10億円以上の調達案件に目を光らせた結果、13年3月期は計画の1・4倍(4969億円)の経費削減を達成した。
 しかし、これら改革で信頼回復や再建の道筋が見えたわけではない。原発事故処理では今春以降、放射性汚染水漏れなどトラブルが多発。汚染水の海洋流出では、7月18日に確認しながら、公表が4日も遅れ、国民に不信を広げた。

 再建の行方を左右する柏崎刈羽原発再稼働問題も迷走。東電は新潟県の泉田裕彦知事と親交のある経営コンサルタントの大前研一氏を原子力改革監視委員に起用。安全対策などで厳しい指摘を受けた上、泉田知事の理解を得て、原子力規制委員会に再稼働に向けた安全審査を申請するシナリオを描いた。
 しかし、泉田知事は6月下旬の毎日新聞のインタビューで「福島原発事故の総括が先」と批判。「(規制委の)新基準では県民の安全を確保できない」と踏み込んだ。慌てた東電は広瀬社長が7月2日、早期に審査を申請する方針を表明したが、説明責任を欠く「見切り発車」は地元の不信を増幅、再稼働の行方は一段と不透明となった。

 再建計画で今年4月以降に見込んだ柏崎刈羽の再稼働の見通しが立たず、東電は火力燃料のコスト増がのしかかり続ける。利用者の反発で電気料金再値上げもままならず、このままでは金融機関からの融資継続に必要な今年度の経常黒字化達成は厳しい。昨年度の依願退職者が700人を超すなど人材流出も続く。ある役員は「真っ暗なトンネルを手探りで進んでいるようなもの」と先の見えない現状を嘆く。

 ◇国民負担と追加支援焦点
 「東電は信用できない。国が安全を確信できる対策を」。福島原発での汚染水漏れ拡大を受け、自民党福島県連の平出孝朗幹事長は30日、茂木敏充経済産業相に訴えた。汚染水が海に漏れ、東電は31日、「事故収束と言える状況ではない」(尾野昌之原子力・立地本部長代理)と初めて認めた。地元は東電任せの事故処理見直しを求めている。

 政府は4月、汚染水対策で経産省や原子力規制庁幹部、学者、原発メーカー幹部を集めた検討会を設けた。ただ「東電救済色が強まれば、国民の反発は必至」(官邸筋)とし、国の本格的な関与には慎重だ。
 東電国有化は「破綻させれば、市場が混乱し、国民負担も大きい」(財務省)というのが理由。日々使う電気を地域独占で売る東電なら、国や銀行が賠償などの資金繰りを支えれば、電気代で時間をかけて返済できると考えた。現在の再建策もこの枠組みがベース。
 しかし、返済原資を生むはずの柏崎刈羽原発の再稼働は暗礁に。一方、賠償支払要請額は国の資金繰り支援枠(5兆円)に近づいている。東電は昨年11月、賠償や除染費が計10兆円を超すとし、国に支援の枠組みの見直しを求めた。下河辺会長らが今年4月、安倍晋三首相と会談。首相は「国も一歩前に出る」としたが、具体策は示さなかった。再建策見直しは必至だが、確実な事故処理と、国民負担抑制の両立が求められるだけに難航しそうだ。


【原発汚染水の流出/東電任せはもはや危うい 河北新報7/24】

 東京電力福島第1原発の地下の状況は、一体どうなっているのか。汚染物質が「制御不能」になっている可能性もあるのではないか。
 東電は22日、高濃度の放射性物質が原発敷地内から海に流れ出ていることを初めて認めた。それ自体、極めて重大な問題だが、東電のこれまでの対応は全くなっていない。
 原発の敷地内にある観測用井戸から2カ月前に高濃度の汚染水が見つかり、その後もずっと検出されていた。海に近い井戸の中の地下水から放射性物質が検出されれば当然、海への流出が疑われる。それでも東電は流出を否定した。
 今月になって、国の原子力規制委員会が高濃度の汚染水が地下に染み込み、「海に拡散していることが強く疑われる」と指摘しており、結局はその通りだったわけだ。
 外部から言われて追認する結果になってしまったのでは、当事者としての無能力ぶりを証明したに等しい。汚染水を海へ垂れ流すことは到底許されず、東電は当面、海への流出をくい止める対策に全力を注がなければならない。
 東電の対応能力の欠如はあきれるばかりだ。事故処理に東電が第一義的な責任を負わなければならないのは確かだが、国はもっと関与を強めて、作業を主体的に進める時期に差し掛かっているのではないか。
 東電によると、海への拡散を見抜けなかったのは社内の連絡体制の不備が原因だという。
 潮位や降雨によって観測用井戸の地下水の水位が変化していたが、そのことが「社内で共有されていなかった」と説明している。
 だが、さまざまな理由で水位が変わるのは当たり前であり、いちいち説明しなくとも分かるのではないか。何とも首をかしげたくなる話だ。
 福島第1原発には危険な放射性汚染水が少なくとも2種類ある。一つは海に近い作業用トンネルの中に、もう一つは原子炉建屋内にたまっている。
 このうち建屋内の汚染水は地下水の浸入によって1日に400トンも発生し続け、重大な不安材料になっている。
 汚染水が地下水などとともにいったん海に出て拡散したら回収は不可能であり、是が非でも流出させてはならない。東電は地中に特殊な物質を入れて土を固化し、海への流出を防ぐ計画だが、その効果は数年にとどまるという。
 環境汚染防止のためには、原発敷地内を通って海に続く地下水の流れを止める必要がある。陸側で地下水を抜いた上、「土の壁」で海と遮断する方策が考えられているが、地下水の影響を完全に排除することは相当に困難だろう。
 福島第1原発の廃炉作業はもはや、極めて緊急性が高い「国家プロジェクト」と位置付け本気で取り組むべきだ。一企業で担い切れないのは明白であり、早めに手を打たないと取り返しがつかなくなる危険性がある。

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