非婚世帯の「みなし控除」 沖縄、保育料は約半数の自治体に拡大
婚姻届を出さずに子どもを生んだ非婚の母子(父子)世帯は、税法上の「寡婦控除」が適用されず、結婚歴のある親に比べ、高い税や保育料の負担を強いられている。
「子どもの貧困」「貧困の連鎖」を防ぐためにも対策が急がれている。遺産相続の格差もこの秋には、「違憲判断が出る」との見方が強い、とのこと。
1月には日弁連が「母にとっても子にとっても合理性のない差別」として、国や東京都、沖縄県に「みなし控除」の適用を要望しているが、自治体の判断で、寡婦控除を適用する「みなし控除」が広がっている。沖縄では保育料については約半数の自治体となっている。沖縄県では、要望をうけ全庁的な調査を実施したとのこと。
今後の地方議会で重視したい。
【非婚世帯に「みなし控除」拡大 保育料適用は19市町村 琉球新報8/18】
【非婚世帯に「みなし控除」拡大 保育料適用は19市町村 琉球新報8/18】
【寡婦控除における非婚母子に対する人権救済申立事件(要望) 日弁連 1/11】
【婚外子の相続格差、国内外で批判 最高裁で弁論 秋にも結論 日経7/10】
<沖縄県知事名回答・2013年6月13日>沖縄県は、日本弁護士連合会からの要望書を受け、寡婦控除が適用される事業について、全庁的な調査を実施しました。
児童保護措置事業等、事業の多くが法律に基づき、国による財政措置がなされており、県や市町村において寡婦控除をみなし適用する場合、国庫負担相当額を含めて地方自治体が負担することになり、財政規模が小さな自治体にとって、非常に大きな負担となります。
沖縄県としましては、国が法律を改正し、財源措置を行うべきであると考えており、日本弁護士連合会におかれましては、非婚の母子世帯に対しても寡婦控除の適用がなされるよう法律を改正し、非婚の母子家庭の救済ができるように、国に働きかけていただきますようお願いいたします。
【非婚世帯に「みなし控除」拡大 保育料適用は19市町村 琉球新報8/18】婚姻届を出さずに子どもを生んだ非婚の母子(父子)世帯について、離婚や死別した寡婦世帯と同じように「寡婦控除」を適用する「みなし控除」を実施している市町村が県内で増えていることが17日までに、琉球新報の調べで分かった。非婚世帯が公営住宅に入居する際の家賃を「みなし控除」の対象としているのは5市町村だった。2011年に宜野湾市などで適用が始まった、保育園の保育料への「みなし控除」適用は、予定がある自治体も含めて全41市町村の半数近くに当たる19市町村に上った。
公営住宅で「みなし控除」を適用している自治体は宜野座村、金武町、恩納村、豊見城市の4市町村。那覇市は、寡婦控除を受けたときと同等の家賃となるよう独自に減免規定を改正し、ことし6月から適用。県営住宅が6月から非婚世帯の家賃減額に関する規定を設けたことから、今後、各市町村に波及するとみられる。
保育園の保育料については11年以降、適用する市町村が相次ぎ、2年間で16市町村に上っている。このうち名護市など7市町村が本年度新たに適用した。南風原町、読谷村、浦添市の3市町村が本年度内の適用に向けて準備を進めている。
一方、幼稚園の保育料については、沖縄市だけがことし4月から適用している。住民税や所得税については、どの自治体も対応しておらず「法制度が変われば、対応したい」という回答が3市村、「検討中」「調査中」が7町村あった。
調査結果について「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」代表の秋吉晴子さんは「全ての子どもは平等という視点に立つと、自治体の裁量で『みなし控除』を適用することも大事だが、『寡婦』の定義に非婚を含める法改正をすれば、非婚だけを区別する不平等は解決できる」と述べた。(知花亜美)
◇ ◇
調査は7月5日に各市町村にアンケート用紙を送り、7月中旬までに全市町村から回答を得た。寡婦控除の適用の有無について(1)保育園の保育料(2)幼稚園の保育料(3)公営住宅の家賃(4)住民税(5)その他(6)非婚世帯数―を聞いた。<用語>寡婦控除
戦争で夫を亡くした人のため1951年に始まった税法上の制度。死別、または離婚して子どもを扶養する人に適用する。所得税や住民税を計算する際に、所得から27万円(特定の寡婦に該当する人は35万円)が差し引かれ、課税額が低くなる。
【「みなし控除」拡大 非婚世帯支える法改正を 琉球新報社説8/19】 法律上の結婚を一度もせずに子どもをもうけた非婚の母子(父子)を社会全体でどう支えるか。古くて新しい問題である。所得税法が定める「寡婦控除」を、ひとり親世帯にも適用する「みなし控除」などの措置を導入し、公営住宅家賃や保育料を低くするなどの対応を取っている県内市町村が増えている。
公営住宅家賃で「みなし控除」対象としているのは5市町村、保育園の保育料は19市町村に上った。市町村独自の判断で、結婚歴のない世帯への支援を広げていることは望ましい動きだ。さらなる拡大を期待したい。
ただ、みなし控除は本人が申し出なければ、適用されない。家賃や保育料は家計での支出割合が高いだけに、必要としている非婚の親に十分な情報が伝わるよう、万全な周知を図ってもらいたい。
「寡婦控除」は、戦争で夫を亡くし子を抱えて苦労する妻を助けるため、1951年に創設された。所得税法などは「寡婦」を夫や妻と死別、または離婚した後に再婚していない人などと定める。
古い家族観と結婚観が色濃くにじみ、結婚せずに子どもを産み育てるシングルマザーらが支援の対象から外されている。それは、結婚歴のある親よりも高い税や保育料の負担を強いることを意味する。社会の宝である子どもは平等であるべきだ。差別的な取り扱いを受け続ける不条理をなくすため、根本的改善に向けたうねりを高めねばならない。
所得税法は、寡婦に対し所得から27万円~35万円の控除を認め、その分税金が安くなる。所得を基準に算定する住民税や国民健康保険料、保育料、公営住宅家賃などにも反映される。現行制度では、非婚のひとり親は逆に高くなる。
貧困層が多い母子家庭の中でも、未婚者は困窮の度が高い。国の調査によると、平均収入は死別が256万円、離婚が176万円だが、未婚は160万円と低い。県の08年のひとり親世帯調査でも、母子家庭の平均月収は10万円未満が40%を占めた。
未婚の人が寡婦控除制度から除外される正当な理由はない。日弁連は「合理性のない差別」として、警鐘を鳴らし、国や自治体に改善を求めている。提唱を支持する。
結婚観が多様化する中、「寡婦控除」自体が、時代にそぐわない制度と化している。「寡婦」の定義に非婚を含める法改正が急務だ。
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