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待機児童と保育制度改革〜子育て支援策を問う(メモ)

 子ども子育て関連法案が成立し、2015年4月施行となる。今日の待機児問題を切り口にこれまでの対策の問題点、複雑な新制度の問題点と限界、新たな運動の方向などに言及した「経済」2013.9に掲載された以下の3本の論稿の備忘録。

1 「待機児問題の3つの障壁とその対策」村山祐一・保育研究所所長
2 「保育制度改革と子ども・子育て支援新制度」伊藤周平・鹿児島大教授
3 「子どもの生存権としての学童保育~ 新支援法下での課題」石原剛志・静岡大教授

【待機児問題の3つの障壁とその対策 】

   村山祐一・保育研究所所長

Ⅰ.待機児問題の深刻化と対策の障壁

(1)就労していても保育が保障されない

・深刻化~ 東京の待機児童 親が就労中が半数を超える /法律違反の状況の拡大
〜児童福祉法24条 保護者が働く等保育に欠ける状況にある場合、そのすべての子どもの保育について、市町村の責任で、親が希望する保育所への保育を保障しなければならない

・政府の施策〜95年エンゼルプラン、01年「待機児童ゼロ作戦」、08年「新待機児童ゼロ作戦」、10年「待機児童解消〔先取り〕プロジェクト」、13年「待機児童解消加速化プラン」
→なぜ、解消がすすまないのか
①地域の待機児童数を踏まえた中期的な保育所整備計画が明確に打ち出されていない
②保育所の運営費問題(東京社協・市町村の課題調査 運営費確保80.4%、需要が0-2歳児への偏り78.2%)

(2)待機児のカウントと「待機児『ゼロ』宣言」

・待機児の規定〜自治体でバラバラ/認可外利用、一時保育のよう、育休延長、求職中を除くなど・・
→ 横浜市の「ゼロ宣言」も、1700名余の「待機児」を除いた狭い規定 
・待機児の定義は、親の保育所選択の権利、子どもの保育を受ける権利や保育ニーズをどうとらえるかの問題


Ⅱ.待機児童解消が進まない3つの障壁と課題

(1)待機児童の定義と保育ニーズの把握

・児福法24条の意味「保護者が・・・入所を希望する保育所を選択して、申し込みに基づき市町村と保護者が利用契約を締結する仕組(公法上の契約)であり、「利用者の意思表示を前提として保育所入所が行われ、保育所入所・選択の権利が明確」になり「保護者の選択を制度上保障したもの」(最新児童福祉法の解説99年)
→市町村は「保育に欠ける乳幼児」かを実施基準(条例)で確認し、希望する保育所に入所させなければならない
→ 権利がありながら入所できない場合=「待機児童」/ その場合、24条の但し書き規定〜「保育に対する需要の増大、児童の数の減少等やむを得ない事由があるときは、家庭的保育事業による保育を行うことその他の適切な保護をしなければならない。」

☆待機児童の定義に関する厚生省の通達等

・99/3/5 保育課長通知「求職中については一律に除外することのないように」、「保育所への希望が依然としてある場合には待機児童としてカウントする」
・00/2/9 保育課長通知 「求職中でも保育所に入所申込みができることを入所案内書等に記載する」こと
・92/3/5 児童家庭局長通津「育児休業に伴う保育所への年度途中での円滑な受け入れ等について」〜「休業開始前既に入所していた児童」(上の子)については「児童福祉の観点から継続入所の取り扱いとして差し支えないこと」、さらに「新に養育することとなった児童」(下の子)について「同一の保育所への入所が可能となるように配慮すること」
〜 通知からは、市町村の斡旋で認可外保育所に入所できた場合でも、「上の子」と「下の子」が同一の保育所でない場合も、「待機児童」となることは当然。

・01年「待機児童ゼロ作戦」の打ち出しとともに定義を変更〜 特定の保育所を希望している場合、自治体の団独施設(保育室など認可外施設、保育ママなど)はカウントしない。
→ 自治体で定義がバラバラに /先の横浜市では、「特定保育園のみの申込者」もカウントしていない。が、これは兄弟姉妹で同じ保育園とか、近所の保育園へという、当然の要求である。

・今、大切なのは待機児童を正確に把握し、地域の保育ニーズを総合的に把握すること。/計画の前提

(2)保育所施設・整備計画と財源の問題

・政府は、95年より次々と待機児童対策をうちだしたが、むしろ深刻化
・95-00年、低年齢児の入所児童が増加。入所児童は、95年4月159万4千人が01年4月182万8千人へ。/が、待機児は毎年4万人前後。
・保育所数 90年代半ばまで、公立減少、民間微増。それ以降は前年比減。95年22496→01年22218ヶ所
・01年からの「ゼロ作戦」は、詰め込み保育推進 〜 設置主体制限の撤廃(企業等の参加容認)、園庭設置の緩和、定員超過の拡大、短時間保育士規制の撤廃など/しかも、待機児の対象を狭める
・05年 国は50人以上の待機児のいる自治体の解消の計画策定・実施・公表を義務づけ
→ が、財政措置とらず/ 逆に、04年、公立保育所の運営費国庫補助金の廃止、05年、施設整備国庫補助金も廃止し、一般財源化 → 公立保育所の統廃合が加速
・08年度補正予算で「安心こども基金」で保育所整備に支援/が、対象は民間だけ

・保育整備の推移01-12年/ 都市部 在籍児142%増、園数132% 待機児は毎年2万人前後 /それ以外の地域 在籍児横ばい、園数やや減少、待機児50%増で5千人強に。
→ 定員の弾力化/2,011年度 全国平均70%、指定都市70%で実施〜 遊戯室を保育室に改造、廊下で食事など/ 待機児童が解消しないだけでなく、入所しているこどもの保育環境が悪化

(3)国負担1割強(推計)の保育所運営費問題

◇国の定める保育所運営費基準総額

・大きくは、保護者負担分と公費負担(国及び市町村)で構成
・公費負担部分〔基準総額-保護者負担分(徴収金額基準分)〕 1/2国、1/4都道府県、1/4市町村(政令市、中核市は、県負担なく1/2負担)
・保護者負担分(徴収金額基準分)の割合に、法律上の基準がなく、毎年の予算編成で決定
→ その割合は、平均4割(3歳未満約3割、3歳以上約6割)/それを踏まえ、国基準保育料を設定
→ 国基準は、/3歳以上児でも月額10万円を超える大変高い額。各自治体の努力で軽減
 例)沖縄 国基準額の約25%を市町村単独で軽減、毎年17億円補填

◇「運営費補助基準」の内容が貧困

・保育士の配置数が実態より少ない。/ 保育士1人の人件費400万円程度(事業所の福利厚生負担損含む)/子どもの生活費(保育材料費、昼食、おやつ代など)1日約250円(幼児)/職員研修費1人年間約3千円
→ このため自治体単独で、私立保育園に対し、運営費補助を実施 /公立保育所は、04年より運営費は一般財源化。

◇運営費総額の国規準の1.6倍、自治体負担は約3倍 

・運営費総額の負担区分 
 国予算1兆8473億円/保護者7829億円(42.4%)、国3522億円(19.1%)、自治体7122億円(38.3%)
 実 際 3兆99億円 /保護者5762億円(19.1%)、国3522億円(11.7%)、自治体2兆816億円(69.2%)
(10万人以上の66自治体の回答から村山が推計)

・保護者負担は約2割。自治体の負担によりOECD平均水準を維持

・総務省「社会保障関係の地方単独事業に関する調査結果」(11/11)〜子ども子育て分野の単独負担は1兆7200億円。その8割が市町村負担である保育関係
→ 自治体負担を改善することなしに、待機児解消、保育の質向上はありえない。


Ⅲ 新制度では待機児解消は望めない 〜待機児カウントも不透明に

(1)新制度は、児福方24条一項(市町村の保育実施責任)が復活したが・・・大きな問題あり 
・新認定こども園、地域型保育給付対象4事業(小規模、家庭的保育、事業所内、居宅訪問型)は対象外で、市町村は実施責任の義務を負わない。

→ 新認定こども園などは親と施設の直接契約。その利用者は、待機児にカウントされなくなる。/0歳児の時にやむを得ず小規模保育などを利用していたが、3歳になって認可保育所を利用しようと思っても整備されていない、という事態がおこる懸念あり

(2)現行と大きく変化する認定こども園〜 待機児は解消しない

・現行認定こども園の4類型 
 幼保連携型(認可幼稚園+認可保育園)、
 幼稚園型(認可幼稚園+認可外保育施設)、
 保育所型(認可保育所+認可外幼稚園)、
 地方裁量型(県条例で定められた認可外幼稚園+認可外保育所)

〜 幼保連携型では、5年間の認定制度(更新あり)で、両施設の定員が必要であるが、更新しなければ別々の施設に戻ることが可能。/ 幼稚園が、幼保連携型、幼稚園型のこども園となる場合には、保育所定員が増え、待機児解消に一定貢献する。

・新制度
 幼保連携型に、保育所、幼稚園が移行する場合、新たな定員枠を設ける必要なし。
 幼稚園型、保育所型、地方裁量型は、「3歳未満児」の定員を義務付けていない
 幼保連携型認定こども園に認可されればもとの保育所、幼稚園にもどれない

・新制度の目的はなにか〜 児福法24条一項の市町村の実施責任を負う施設を少なくさせ、保育の公的責任を縮小するため

(3)財源
 ①保護者に指定された施設を利用するための個人現金給付(施設型給付、地域型保育給付)
 ②地域子ども・子育て支援事業(13項目の法定事業)
 への「予算の範囲内で交付金」=-包括交付金の交付が位置づけられただけ。

→ 保育所等施設へのすべての補助金の廃止、学童保育・延長保育等子育て支援事業に係るすべての補助金も廃止、現在実施されている保育所新設・増改築などの施設整備補助金も廃止
・市町村 子ども子育て支援事業計画の策定が義務化〜待機児解消の保育計画の作成義務付けは廃止

Ⅳ 今後の対応
・児福法24条1項の市町村の保育実施責任が義務付けられたことを踏まえ改善・改革を求める運動
→ 実施責任を果たすためには、認可保育所への保育保障の委任責任が義務付けられる/その責任を果たすためには保育所整備、運営にも責任がもとめられ、施設への補助金が必要となる。
→ 子ども子育て支援法の改正、または支援法附則6条(保育所に係る委託費の支払等)にもとづき施設への補助金制度を創設する規定を政省令で明記させる運動が必要。

【保育制度改革と子ども・子育て支援新制度】    伊藤周平・鹿児島大教授

Ⅰ 問題の所在〜子ども・子育て関連法と安部政権の「女性活用」政策

・2012年8月10日、社会保障・税一体改革関連法として子ども・子育て関連法が成立
・関連法・・・①子ども・子育て支援法 ②認定こども園法の一部改定 ③関連法律の整備に関する法、で、消費税10%となる予定の2015年4月に施行
→ 法成立後1年たつが詳しい情報は明かにならない/そのもとで「待機児解消」の幻想も

・待機児解消を2年間前倒しする「待機児童解消加速化プラン」は、13-14年度「緊急集中取組期間」20万人分、15-17年度「取組加速化期間」40万人分の保育を整備する内容〜 だが、7万人分1600億円の財源しか確保できておらず実現の可能性がないことが明かに。
・内閣府・有識者会議「少子化危機突破タクスフォース」 5月に、30代後半になると女性は妊娠しにくくなりリスクも高まることを啓発するために「女性手帳」の配布を打ち出す(批判うけて撤回)/安倍政権の「女性活用」政策〜公費支出を抑え、女性に過重な仕事と家事責任を負わす政策との不信の高まり


Ⅱ 保育制度改革の展開

(1)少子化対策と保育制度改革

・1989年、合計特殊出生率が過去最低の「1.57」〜少子化対策を政府の主要課題として認識
・共働き家庭の増加(97年、そうでない世帯を上回る)/子どもの数が減少しているのに保育需要が増大、待機児の増加。特に0-2歳児の保育・長時間保育の需要の高まり
→ 少子化を食い止め、女性労働力の活用をはかり、経済を活性化させるという目的のもと、保育所待機児の解消を主目的とする少子化対策が展開されだした。

・95年より各種のプランの実施。03年少子化社会対策基本法、次世代育成支援推進法が成立。2法にもとづき少子化社会対策大綱の決定がされ、「子ども・子育て応援プラン」が実施(05-09年)
→ いずれの政策も、認可保育所の増設(メモ者 保育水準の充実も)という根本的な解決ははかられず、規制緩和が中心であり、待機児は増え続け、少子化も歯止めかからず/ 明らかな失策だが、安倍政権は、同じ道をすすめようとしている。

(2)保育分野の規制緩和

・設置主体の規制緩和 00年3月 営利法人など企業参入/が、全国2万4千ヶ所のうち376ヶ所
→ 建設費など初期投資に補助がない。市町村の委託費に使途制限がある、ことで広がっていない
→ 新制度/給付金制度。市と制限をなくし企業参入を促進するためのもの

・公立保育所の民営化、統廃合 /09年まで15年間で2千箇所の減少/指定管理の導入

・定員の弾力化 10年度より、年度当初から定員超過の上限も撤廃
→ 超過入所の場合も設備、職員数などの最低基準を満たすことが条件/が、1948年の制定。当時でも不十分な水準。が、11年、地方条例化される。

・短時間勤務保育士の増大 〜 最低基準の定数上の保育士は常勤保育士が基本とされていた
/が、98年、最低基準の2割を限度として短時間保育士(1日6時間未満または月20日勤務)を充ててよい /02年、常勤保育士が各組、各グループに1名以上配置されていれよい。

・一般財源化 03年障害児保育の補助金、04年公立保育所運営費、05年延長保育促進事業
〜 民営化に拍車。08年安心ごとも基金も対象は民間だけ


Ⅲ 子ども子育て新システムから子ども子育て支援新制度へ

(1)新保育制度案の提案

・高齢者福祉・障碍者福祉〜 介護保険をモデルにした利用者補助方式・直接契約方式へ
・保育制度は、97年、措置制度から契約制度にはなったが、市町村の実施義務(現物給付)があり、施設補助方式(現物給付)・自治体責任による入所・利用という公的責任による仕組が維持された
→ 06年、障害者自立支援法施行とともに、保育分野での「改革」への声が勢いを増す
・06年6月「認定こども園法」により、直接契約方式が導入。幼保一体化が推進される
・08年 社会保障審議会少子化対策特別部会「新しい保育メカニズム」提言、09年「次世代育成のための新たな制度体系の設計にむけて」(第一次報告)で、直接契約方式が提言される。

(2)子ども子育て新システムの提言と子ども子育て関連法案の提出

・自公政権のもとの「第一次報告」は、民主政権下で「幼保一体化」を加え、新システム創設へ進む
・10/6 「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」の決定
・12/3 子ども・子育て関連3法案の提出
・12/6 衆院で「3党修正」、参院協議で修正の不十分さ露呈/19項目もの付帯決議をつけ可決。

≪附帯決議 8/10 参議院 /メモ者≫
1 施設型給付等については、幼保間の公平性、整合性の確保を図るとともに、受け入れる子どもの数にかかわらず施設が存続していく上で欠かせない固定経費等への配慮が不可欠であることにも十分留意して、定員規模や地域の状況など、施設の置かれている状況を反映し得る機関補助的な要素を加味したものとし、その制度設計の詳細については関係者も含めた場において丁寧に検討すること。
2 施設型給付及び地域型保育給付の設定に当たっては、認定こども園における認可外部分並びに認可基準を満たした既存の認可外保育施設の給付について配慮するとともに、小規模保育、家庭的保育、居宅訪問型保育及び事業所内保育の普及に努めること。
3 施設型給付、地域型保育給付等の設定に当たっては、三歳児を中心とした職員配置等の見直し、保育士・教員等の待遇改善等、幼稚園・小規模保育の〇から二歳保育への参入促進など、幼児教育・保育の質の改善を十分考慮するとともに、幼稚園や保育所から幼保連携型認定こども園への移行が進むよう、特段の配慮を行うものとすること。
4 施設整備に対する交付金による支援については、現行児童福祉法第五十六条の二の規定に基づく安心こども基金からの施設整備補助(新設、修理、改造、拡張又は整備に要する費用の四分の三以内。耐震化その他の老朽化した施設の改築を含む。)の水準の維持を基本とすること。また、給付費・委託費による長期に平準化された支援との適切な組合せにより、それぞれの地域における保育の体制の維持、発展に努めること。
5 保育を必要とする子どもに関する施設型給付、地域型保育給付等の保育単価の設定に当たっては、施設・事業者が、短時間利用の認定を受けた子どもを受け入れる場合であっても、安定的、継続的に運営していくことが可能となるよう、特段の配慮を行うものとすること。
6 大都市部を中心に待機児童が多数存在することを踏まえるとともに、地方自治体独自の認定制度が待機児童対策として大きな役割を果たしていることを考慮し、大都市部の保育所等の認可に当たっては、幼児教育・保育の質を確保しつつ、地方自治体が特例的かつ臨時的な対応ができるよう、特段の配慮をすること。
7 市町村による地域の学校教育・保育の需要把握や、都道府県等による認定こども園の認可・認定について、国として指針や基準を明確に示すことにより、地方公共団体における運用の適正を確保すること。
8 新たな幼保連携型認定こども園の基準は、幼児期の学校教育・保育の質を確保し、向上させるものとすること。
9 現行の幼保連携型認定こども園以外の認定こども園からの新たな幼保連携型認定こども園への移行の円滑化及び支援に配慮すること。
10 特別支援教育のための人材の確保と育成により幼児期の特別支援教育の充実を図ること。
11 安心こども基金については、その期限の延長、要件の緩和、基金の拡充等を図り、新制度施行までの間の実効性を伴った活用しやすい支援措置となるよう改善すること。その際には、現行の幼稚園型や保育所型の認定こども園における認可外部分に対して、安心こども基金が十分に活用されるよう、特に留意すること。
12 新制度により待機児童を解消し、すべての子どもに質の高い学校教育・保育を提供できる体制を確保しつつ、幼児教育・保育の無償化について検討を加え、その結果に基づいて所要の施策を講ずるものとすること。当面、幼児教育に係る利用者負担について、その軽減に努めること。
13 施設型給付、地域型保育給付等の利用者負担は、保護者の所得に応じた応能負担とし、具体的な水準の設定に当たっては、現行の幼稚園と保育所の利用者負担の水準を基に、両者の整合性の確保に十分配慮するものとすること。
14 施設型給付を受けない幼稚園に対する私学助成及び幼稚園就園奨励費補助の充実に努めるものとすること。
15 幼児教育・保育・子育て支援の質・量の充実を図るためには、一兆円超程度の財源が必要であり、今回の消費税率の引上げにより確保する〇・七兆円程度以外の〇・三兆円超について、速やかに確保の道筋を示すとともに、今後の各年度の予算編成において、財源の確保に最大限努力するものとすること。
16 放課後児童健全育成事業をはじめとする地域子ども・子育て支援事業については、住民のニーズを市町村の事業計画に的確に反映させるとともに、市町村の事業計画に掲げられた各年度の取組に応じて、住民にとって必要な量の確保と質の改善を図るための財政支援を行う仕組みとすること。
17 放課後児童健全育成事業の対象として、保護者の就労だけでなく、保護者の疾病や介護なども該当することを地方自治体をはじめ関係者に周知すること。
18 妊婦健診の安定的な制度運営の在り方について検討を加え、その結果に基づいて所要の施策を講ずるものとすること。
19 ワーク・ライフ・バランスの観点から、親が子どもとともに家族で過ごす時間や地域で過ごす時間を確保できるよう国民の働き方を見直し、家族力や地域力の再生と向上に取り組むこと。

右決議する。 

Ⅳ 子ども・子育て支援新制度の本質と問題点

(1)子ども・子育て支援新制度の本質

・施設補助方式・自治体責任による入所・利用 を 利用者補助方式・直接契約方式への変更
→給付金制度で、補助金廃止、使途制限をなくし企業参入を促進。市町村の保育実施義務(現物給付)をなくし、公的責任を縮小(メモ者 国に財政出動の縮小)
・が、運動により3党修正で、市町村の保育実施義務を残させる

・認定こども園、幼稚園、保育園は「教育・保育施設」とされ、補助金が施設型給付金として個人給付化/
家庭的保育事業なども地域型給付金として、個人給付化
・外見上は施設補助方式〜 保育所のみ市町村の実施義務。保護者と市町村の契約 /私立保育所には委託費(施設型給付費の算定方法により額を決定)を支払い

◇利用者補助方式の仕組み
・施設型給付費 /支給認定を受けた子どもが「教育・保育施設」を利用した場合、市町村は、公定価格から保護者負担分を控除した額を、施設給付費として、利用した子どもの保護者に支給(利用者補助方式)

→ が、本来、市町村が保護者に支給する給付金を、施設に直接支払う(代理受領方式)。/私立保育所の場合は、当分の間、市町村が保育所に委託費を支給(代理受領方式はとられていない)

(2)子ども・子育て支援新制度の問題点

①保育の利用/ 保育の必要性のほかに、保育の必要量の認定を新にうける必要がある(メモ者 毎月、その認定をすると説明されているが、就労証明など膨大な事務量になる。また農業や家業の手伝いなどをどう扱うのかも疑問)

②保育必要量/ 長時間区分、短時間区分の子どもに分けられ、両者が混在して利用することで、年齢に応じた子どもの発達保障のための保育実践が困難になる。(メモ者 短時間保育は、どの日にはどの時間帯で実施するか、保護者が希望できる、と説明されている)

③委託費(施設給付費)も区分に応じることとなり、短時間保育の多い保育所では運営が不安定化する

④使途制限のない給付金となり、民間施設給与等改善費などの補助金がなくなり、保育士の処遇が悪化する

⑤保護者の方も、保育必要量を超える保育時間について全額自己負担となり、負担が増加する。

⑥保育所整備の補助制度が廃止され、保育所増設による待機児解消や老朽化した保育所の整備が困難になる
/「児童福祉施設については、整備に要する費用の3/4以内の補助ができる」(児福法56条2第1項)が「児童福祉施設(保育所を除く)」と改定

⑦株式会社が運営する認定こども園、地域型保育事業は、繰入や配当に関する規制がなく、株主の配当にまわすことが可能となる/ 認可保育所の場合も、給付費であるため、現在の保育所運営費のような使途制限がなくなると考えられる〜 そもそも子育て支援のための税金が、収益とされ株主配当とされる仕組は大問題(メモ者 議論では、資金調達での銀行への利息払いと同様と主張されている。~ そうであるならば間接金融の範囲を超えない上限設定などが必要)

(3)幼保連携型認定こども園への誘導?

・現在、保育利用者218万人。認定こども園、認可外保育施設など直接契約の利用者は、多くて2割程度/ 新制度でも市町村が実施義務を負う保育所の利用者が圧倒的 /そこで
・政府は、市町村の実施義務がなく、直接契約方式の「幼保連携型認定こども園」への移行を促す政策をとろうとしている。

例)幼保連携型認定こども園は、幼稚園の定数を設定しなくても、学校教育を行う態勢(幼稚園教諭の資格と保育士の資格を併用する保育教諭の配置)があれれば認定できる。/学校教育を行う体制を整備しているとして給付単価を、保育所委託費わりも引き上げて、移行を促す可能性がある

→ が/ 極端な単価の差は困難/ 給付単価は実施直前(15年1月ごろ)でないと確定せず、見通しがたたない /介護保険のように、最初は高い報酬を設定しその後削減していく「はしご外し」は確実

・幼稚園は、私学助成制度が維持されるので、施設給付費の対象となる認定こども園への移行は少ない

Ⅴ 安倍内閣の子育て支援策の限界と今後の課題

(1)安倍内閣の待機児童対策の問題点と限界
・「集団異議申し立て運動」の大きな意義~保育所入所を競い合うライバルから、保護者の共同の関係に変化。子どもの預け先の拡大にととまらず、保育条件の整った認可保育所の増設を求める要求運動に発展
・安倍内閣~「横浜方式」の推奨(問題点は、村山論文参照)
→ 規制緩和による保育環境の悪化。待機児も解消されず/ 過去の失策の繰り返し。学習能力欠如

≪保育園での死亡事故 メモ者 ≫
・2012年保育所の死亡事故・・・認可6件(利用200万人以上)、認可外12件(利用20万人弱)。事故率で認可外は20倍以上。
・認可園での死亡事故。 2000年度までの40年で計15件。内訳は60年代2件、70年代6件、80年代1件、90年代6件。定員の25%増がみとめられた01年度以降の8年で22件と急増。

(2)安倍政権の「女性活用」政策の問題点と限界

・皮相的なキャンペーンで、多くの問題点を内在

①3年育休み~ 3歳になるまで女性が家庭で「抱っこし放題」
・「少子化白書」(98年)で「合理的な根拠は認められない」と断罪された「3歳神話」(3歳まで母親が育てないと子どもがまともに育たないとの説)の復活を彷彿させる。
→ 費用負担の大きい0-2歳児保育を「3歳神話」をもとに、女性におしつけ、公費を節約する政策
・育休取得を理由にリストラや非正規雇用にされる職場が多く、しかも若い世代で低賃金の非正規雇用が激増しており、3年も育休をとれる女性がどれだけいるのか・・・現実的に進展するのか疑問

②経済的に不安定な非正規雇用、正職員の長時間労働など、少子化の最大の原因である若い世代の労働環境の悪化や貧困を是正する施策はまったくない。/ 逆に、解雇の金銭解決、派遣労働の期限撤廃、限定性社員の導入など、いっそうの労働環境の悪化をすすめようとしている。
→ 財界要望にそって、女性を安い労働力として活用するため、安上がりの託児・子育てを金儲けの道具とするために整備しようとするのか、安倍政権の待機児対策と「女性活用」政策の本質/少子化加速策

(3)運動の課題

・改正された児福法~ 市町村の保育実施義務が残り、「ただし書き」が削除されたので、保護者が保育利用を希望し続ける限り、市町村の保育所保育の責任を問うことができる/有効な権利主張の根拠となる。

→新制度のもとで、認可保育所の増設は望めず、多くの保護者は、認定こども園、家庭的保育事業の利用をかんがえ、市町村も勧めるだろう
→ その場合に、保育所利用を希望する保護者が共同し、集団申請(申込み)、集団異議申し立て、さらには集団訴訟もふくめ、認可保育所の増設を求めていく運動が不可欠である(実施義務が残った意義は大きい)。

・利用者補助方式・直接契約方式を徹底したい政府官僚による「市町村の保育実施義務」を空洞化させる方形解釈、政省令の策定を行う可能性が高い。
→ それを許さず /関連法案の施行凍結、もしくは施行前の法改正も含めた抜本改革(保育所整備の補助金制度の復活、民改費や保育所事務職員雇用加算継続・復活拡充など)をもとめる運動を拡大していくべき

☆メモ者) 年末の補正で、地域の元気臨時交付金が公立保育所の整備に活用できること、緊急防災減災債で公立保育所の耐震化・避難所としの整備が可能となったこと。安心ごとも基金が延長され従来の民間保育所の整備・耐震化に加え、民間保育所の処遇改善への活用が新設されたことなど・・・ が取られている。急がれる南海トラフの巨大地震対策、深刻な保育士不足など、これらは、一般財源化や新制度の矛盾を示したものであり、たたかいの足場となりえると思う。


【子どもの生存権としての学童保育~ 新支援法下での課題】

  石原剛志・静岡大教授

Ⅰ 学童保育へのニーズ

(1)拡大しつつある利用者児童数、潜在化しているニーズ

・学童保育~ 放課後、学校休業日に、保護者が労働等をしている時間に、子どもだけで過ごさなくてはならない状態におかれた学齢期の子どもを対象として保育のこと。
・全国2万846ヶ所、利用者数84万6967人/ 利用割合 1年生27.2%、2年生23.6%、3年生17.7%
~利用者数の急増/ 98年33万強、03年53万強、07年74万強 ~事業施行後2.5倍以上に
・潜在的な待機児童、約50万人(全国学保協)~低学年の子どもを持ち勤務している母親210万人、うち6割が1日6時間以上勤務・・・ニーズは130万人と推計

(2)有職の母親の増加、家族構成・地域社会の変化と学童保育のニーズ

①末子が7-8歳となる子を持つ有職の母親 2000年代に60%弱から06年以降65%以上に
②「三世代世帯」92年27.2% 12年18.0%に減少/「ひとり親と未婚の子」92年3.8%、12年6.6%
   (①②は、国民生活基礎調査より)
③子どもを通じての知人(子ども白書H19 /00と07年の比較 )
よく行き来する   10.0→7.6
  ある程度行き来する 35.7→25.3
  あまり行き来しない 24.4→18.9
  ほとんど行き来しない18.9→22.9
  あてはまる人がいない11.8→26.3

~ 家庭や地域にあった放課後の子どもの世話、見守り機能が急速に縮小。学童保育への期待の高まり

Ⅱ 学童保育の制度としての放課後児童健全育成始業
(1)放課後児童健全育成事業の対象、目的と方法、市町村の責任

・97年児福法改正により、放課後児童健全育成事業が制定

①事業の対象「小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童であって、その保護者が労働等により昼間家庭にいないもの」~ 「おおむね」について市町村で様々な判断

②目的「健全な育成を図る」ことで、それは「適切な遊び及び生活の場を与え」るという方法による

→「生活の場」が入った意義/ 児童厚生施設(児童館、児童遊園)は、その目的実現の方法を「健全な遊びを与え」る、となっている厚生省は「児童館があれば学童はいらない」というスタンスをとってきたが、学童の実践を通じ、保護者が昼間不在の子どもには「遊び」だけでなく、安心と安全、のんびりと過ごし、おやつを食べ、休息もできる「生活の場」が必要ということを明かにした運動の成果として明記されたもの
→ が、「生活の場」たるにふさわしい「最低基準」がないのは根本矛盾(12年法改正で「基準」/後述)

③市町村の責任 同事業を「行う」、「利用の促進に努めなければならない」・・・に過ぎず、児童の利用の権利も、それを保障する国、自治体の責務も定めていない。/保育所との大きな違い

(2)放課後児童健全育成事業の問題点

①利用を必要とする子どもが利用できない状況
・「潜在的な待機児童」は約50万人~ サービスの供給量の不足だけではない問題/保育料の負担

②「適切な遊びと生活の場」にふさわしい設備が保障できていない
 最低基準がないため、狭い面積、専用トイレがない、外で遊ぶ場所がない、静養できるスペースがない、100人近い子どもが「ごったがえし」ているなどなど

③学童保育指導員の養成、資格、研修、身分や労働条件などの制度が遅れている。
・独自の国家資格・公的な要請制度は未整備/「ガイドライン」で内容は示されているが研修は自治体まかせ
・指導員の劣悪な身分/ 正規職員 公立2.9%、民間18.6%(全国学保協調査)。年収200万円以下が78.8%

(3)現行制度下で学童から「排除」される子どもたち

・重い保育料負担〜認可保育所の保育料は、所得に応じた「応能負担」であるが、学童の多くは定額負担
  運営主体別の月額(12年 学保協)公立5535円、社協6144円、運営委員会7980円、父母会10872円
・保護者の所得に応じた減免制度や免除制度も国の制度はない。自治体の制度も57.4%(公立の場合?)
~ 保育料負担で申込みしなかったり、退所したり。おやつ代を出せずその時間は子どもが保健室にくる例。誰もいない家でスナック菓子とテレビで過ごし肥満になり健康のリスクをかかえている例など・・・
→ こうした放課後、学校休業日に「放置」された子どもの問題は、保護者の私的な問題とあつかわれるため、公的・社会的な問題と見なされない。

Ⅲ 子ども・子育て関連法案における放課後児童健全育成事業の変更と問題

①対象年齢 「おおむね10歳未満」との文言の削除

 高学年に置いても学童が必要との運動の反映/が、引き続き、利用する権利、権利保障の責務の記載なし
→ 利用できない子どもの問題は、改正法でも解消しない
・そうした指摘への「反論」~「市町村子ども子育て支援事業計画」の策定を義務づけ、その中で、学童含む「地域子ども・子育て支援事業」の「量の見込み」「提供体制の確保の内容」を定める、となっている。
→ が、計画策定のためのニーズ調査は、抽象的・一般的にならざるを得ない/ ナショナル・ミニマムが確立しておらず、施設の実態、サービスの質、利用料負担など多種多様で、そのもとでの利用抑制・停止があるもとで、適切なニーズ把握は不可能。/そもそも「量の見込み」に矮小化させてもならない

・保護者の利用希望にとどまらない、子ども自身のニーズとして学童保育の質と量を考える必要/ 保護者のニーズだけでは、放課後に「放置」された子どもの問題を含めて解決することにならない。

②「設備及び運営」については「条例で基準を定め」る

・まったく無かった基準からの変更 /その基準は「児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な水準を確保するものでなくてはならない」(/改正児福法/他の児童福祉施設と同様の文言)
→ が、「厚労省例で定める基準に従い定める基準」は、「従事する者及びその人数」だけ。床面積や設備、運営などについては「その他の事項」として「参酌する」ものにとどまる。

③位置づけ/ 「地域子ども・子育て支援事業」

・地域子ども・子育て支援事業~ 一時預かり、地域子ども支援拠点事業、乳児家庭全戸訪問、延長保育、病児・病後児保育、妊産婦検診など
・「子ども・子育て支援給付」は国庫負担。「地域子ども・・事業」は国庫補助金で国の裁量が認められる
→最大の問題は、特定財源でなくなり、財源が不安定化すること

Ⅳ 子どもの生存権としての学童保育を

・問題は、放課後・学校休業日に「保育に欠ける」子どもの存在をどう捉えるか~運動の課題として

①学童保育におれる生存権の言及が抽象的・一般的に語られ終わっている
②生存権を保障する主体の関連構造を明らかにすること~ 子どもの権利を保障する義務をもつ国家と保護者の関係をどうとらえるか / 子どもの放課後、地域社会の「私化」が進む中で、子どもの生存権を考えることは、公的な領域(責任)をいかに位置づけるか、という問題。
③放課後などに「放置」されている子どもの実態を憲法上の権利に照らし、どう捉えるか、という問題
→ 最低生活費だけでなく、人との「つながり」「関わり」、ケアの内容や質など、放課後の時空間において生活のあり方そのものにおいて具体的に明かにする必要がある。
④生存権保障として学童保育を位置づけ明かにする課題は、新福祉国家論的研究の一翼を似ない、生存権そのものを革新していく

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