高濃度汚染水漏出/レベル3相当 新しい事故に等しい
近づくだけで人の命が危険になるような高濃度汚染水300トン漏れ出した。1カ月近く漏れに気づいていなかった可能性がある。とのことで、「危機管理」以前の話。
溶け落ちた燃料が冷えるまでにどれだけ高濃度汚染水が生み出され、どう処理するのかを考えれば「国家的危機」である。流入する地下水を止められず、汚染水となって流れでている。あまりの事態、途方もない課題を前に、事実を直視できず思考停止になっているのではないか。とさえ疑う。
原発再稼働のための新たな規制基準への人的、財政的投資を中断し、国と電力会社は、汚染水対策に全力を傾けるべきなのは明らか。
【レベル3相当 新しい事故に等しい 東京 社説8/22】【社説:原発タンク漏れ 国の当事者意識足らぬ 毎日8/22】【みんなの海を守って!再稼働どころじゃない、汚染水問題 FoE Japa8/16】
「国を守る」と声高に、憲法九条改悪、集団的自衛権行使に前のめりな安倍首相だが、すでに原発事故で領土、領海が喪失する事態が続き、TPPで農業がつぶれたら(日本の農業の4割は、山の管理、国土保全に極めて重要な中山間地が支えている)国土は内側から荒廃する。不安定雇用など働くルールの規制緩和で結婚・子育てが出来ない若者を増やし、少子化を推進し、日本国の衰退を邁進している。
この事態を見れば、真の意味で「国を守る」気などさらさらないのがよくわかる。
【レベル3相当 新しい事故に等しい 東京8/22】たかが水漏れと侮っていたのだろうか。レベル3。大事故に重なる大事故と言っていい。福島第一原発内で大量の高濃度汚染水が漏れていた。止められる見込みもついていない。国は無責任すぎないか。
これは新しい事故である。
それも、ただの事故ではない。原子力規制委員会は、国際的な尺度(INES)に合わせたこの事故の重大性の暫定評価をレベル1からレベル3まで引き上げる。
レベル3は「重大な異常事象」と定義され、レベル4以上が「事故」ということになっている。
しかし、一般の常識に照らせばそれは重大な事故であり、人災ではないのだろうか。
レベル7の「深刻な事故」に分類される福島原発は、収束に向かうどころか、大事故の上に大事故を日常的に重ねている状態だ。
これでは漁師たちだけでなく、周辺住民もたまらない。
汚染水漏れを起こしたとみられるタンクは、二年前から応急的に導入された「フランジ型」と呼ばれるタイプである。
鋼鉄の板をつなぎ合わせてボルトで留めたもの。つなぎ目はゴムパッキンで埋めてある。水漏れの危険があることは素人にも分かる。近づくだけで人の命が危険になるような、高濃度汚染水の保管場所とは思えない。二十五メートルプール一杯分もの水漏れを見逃していたずさんな管理体制のこともある。そのうち、海へ流せばいいと、高をくくっていたのではないか。
国際的な影響も出た。
韓国のアシアナ航空は十月以降、ソウル-福島間のチャーター便の運航を止めるという。このままだと波紋はさまざまに広がりかねない。
溶接型のタンクを一基造るのに数カ月かかるとか、周囲を凍土壁で囲むのに一~二年かかるとか、費用を負担するのは誰かとか、そんな悠長なことを言っている場合ではないはずだ。
内外の不安に対してもっと真剣な危機感を持って対策を急いでもらいたい。レベル3の事故を何とかせねば、レベル7を収拾できるはずもない。
国民の東電への不信は、さらに高まった。今や政府への不信も募りかねない。
産・官・学の総力を挙げて地下水の流入箇所と流出場所を突き止め、ふさぐ努力をしてほしい。
今この瞬間にもタンクから漏れ出ていくのは、この国の安全と信用なのである。
【社説:原発タンク漏れ 国の当事者意識足らぬ 毎日8/22】東京電力福島第1原発でまた、深刻な汚染水問題が発覚した。
地上タンクから高濃度の放射性汚染水が推計約300トン漏れ出ていた。タンクからでは過去最大の汚染水漏れで、1カ月近く漏れに気づいていなかった可能性がある。事故は収束していないことを改めて示す事態だ。原子力規制委員会は、漏れを国際評価尺度でレベル3(重大な異常事象)とすることを検討中だ。
汚染水問題で安倍晋三首相は「国として対策を講じていく」と述べたが、日々の事故対応は基本的に東電任せで、政府が前面に出ているとはいまだに言い難い。もっと当事者意識を持って対応してほしい。
漏れが起きたのは、鋼製の板をボルトでつなぎ合わせた円筒型タンク(使用容量1000トン)だ。原子炉を冷却した水から、放射性セシウムを除去した汚染水が入っていた。
福島第1原発には汚染水の貯蔵タンクが約1000基ある。うち約350基がボルト式で、残りは接合部を溶接したタイプだ。ボルト式は組み立て工期が短いが、継ぎ目から水が漏れやすい。これまでもボルト式タンクで漏れが4件起きた。そもそも今回の漏えい箇所はまだ分かっていない。今後も漏れる恐れがある。
東電はボルト式タンクを緊急点検し、パトロールも1日2回から約3時間ごとに増やすという。漏れの原因や発見が遅れた理由を検証し、監視・点検体制の抜本的な見直しを図る必要がある。海への流出の有無や地下水への影響も、きちんと確認すべきだ。
セシウムを除去した汚染水は、62種類の放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS」で再度、処理される。しかし、試運転でトラブルが起き、停止したままだ。汚染水のリスクを下げるためにも、東電は装置の稼働を急いでほしい。
東電は汚染水増加の原因となっている地下水流入を減らす緊急対策として、敷地山側に井戸を掘り、汚染される前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」を計画している。だが、風評被害への懸念などから地元の了解は得られていない。
今年4月には汚染水の地下貯水槽で漏れが判明し、先月には高濃度の汚染水が地下水と混じって海へ流出していることが発覚した。海外の関心も高まっている。日本の国際的な信用を左右しかねない状況だ。
規制委は汚染水の海洋への影響を監視する検討会を設けた。安全性を判断する前提となる客観的な分析を国内外に発信してほしい。地下水バイパスを実施するなら、汚染が生じた時の対応も含め、政府が責任を持って、地元自治体や国民への説明を尽くす以外に道はない。
【みんなの海を守って!再稼働どころじゃない、汚染水問題 FoE Japa8/16】◆後手後手にまわった汚染水対策
東京電力福島第一原発の汚染水流出が深刻の度を増しています。海の汚染は着実に広がっています。汚染水の流出は事故当初から指摘されていましたが、東電は参議院選挙後までその事実を認めませんでしたし、国はそれを鵜呑みにしていました。福島第一原発は地下水が多い場所で、事故前から一日当り850トンの地下水をくみ上げていた状態です。東電はなぜか海側の遮水壁の建設を優先させましたが、行き場のなくなった汚染水の水位があがり、溢れ出すことは自明でした。東電の対策の失敗を、資源エネルギー庁も原子力規制委員会も見過ごしました。
◆再稼働に偏重した原子力規制庁の体制
8月8日、FoE Japan、福島老朽原発を考える会、原子力規制を監視する市民の会などの主催で、汚染水に関する緊急集会と政府交渉が開催されました。その結果、次のポイントが明らかになってきました。
・ 原子力規制庁は適合性審査は80人体制(のちに100人体制)、事故収束は40人。大飯原発の評価会合だけで、非公開の電力事業者ヒアリング含めて100回以上、一方で汚染水問題に関しては、2~6回程度。
・ 東電が実施するストロンチウムなどの地下水モニタリングの報告を受けているはずの規制庁が、モニタリングの空白期間(2012.12~2013.5)を見逃していた
・ 国の責任体制がはっきりしていない。汚染水対策の責任を資源エネルギー庁が負うのか原子力規制庁が負うのか政府側は答えられなかった。◆タンクの高濃度汚染水と陸側の地下水とはレベルが違う
8月7日に原子力災害対策本部で示された国の方針としては、「汚染水はもらさない」です。一方、田中俊一・原子力規制委員会は、福島民友のインタビューに答え、「タンクにためられている汚染水について基準値以下であれば海に流すことを容認すべき」と発言しました。
高濃度汚染水が混ざるタンクの水と、以前から議論されていた内陸側からの汚染されていない地下水の放流ではレベルがまったく違います。
まずは、汚染水を止めるあらゆる努力を払うべきです。タンクの汚染水放流を今の段階で是認することはできません。◆資源エネ庁の秘密会合:ゼネコンの営業の場に?
資源エネルギー庁は、汚染水処理対策委員会を開催していますが、すべて非公開です。密室の中で、ゼネコンによるプレゼンテーションが行われ、鹿島建設の凍土による遮水対策が採用されました。「なぜ非公開なのか」と問う私たちに対して、資源エネルギー庁は、「企業秘密の問題で」と回答しました。
この大きな問題に、公の利益よりも企業秘密を優先させるのでしょうか。結果として、第三者の専門家の検証もへずに、凍土遮水壁が採用されましたが、これは果たして信頼のおける技術なのでしょうか。
凍土遮水壁は全長1.4kmで、完成すれば世界最長だそうです。福島第一原発を手掛けた鹿島建設が来年3月までに計画調査を行います。完成は2015年。建設に数百億円、維持費に数十億円かかります。
8月8日、FoE Japanをはじめとする複数の市民団体の呼びかけで、原子力規制委員会に、再稼働審査を中断し、汚染水処理に全力を尽くすことを求める緊急署名を提出しました。
2日間で、6,406筆の個人署名、214団体の賛同がよせられました。ありがとうございました。
福島の海は日本の海、世界の海でもあります。FoE Japanは今後も幅広い市民社会の声を結集して、この問題に取り組んでいきます。*本記事は、2013年8月14日時点の情報をもとに執筆しています。
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