原発輸出 国民負担に直結〜 リスク説明しない政府
これまでも輸出した原発が事故を起こせば日本国民の負担になることに触れてきたが、このところ毎日が原発輸出の問題点を連続的に報道している。
インドはメーカー責任の規定がある。ベトナムは賠償責任限度額を超える損害には電力会社などで出資する「支援基金」をあてるが、ここに外国企業も協力させる仕組になっており、原発は官民一体で輸出しているのだから当然日本政府の責任をのがれられないだろう。 また巨額の融資がこげついたらそれも日本国民の負担である。インフラファンドの原資として年金基金も狙われている。
さらに、輸出する原発の安全確認の体制もない。住民への安全周知指針もない。汚染水は垂れ流す 〜安倍首相は、「世界一の安全な原発を提供できる」とトップセールスするが・・ 悪徳商法以外のなにものでもない。
【原発輸出:国民負担に直結 国のリスク不十分な説明 毎日8/3】
【米国:加州原発廃炉決定 米電力会社、三菱重に全額賠償請求 原発輸出影響か 毎日7/24】
【原発輸出:住民への安全情報周知指針なし 政府5年間放置 毎日8/7】
【原発輸出:相手国の安全確認なし 規制委「推進業務」拒否 毎日8/3】
【原発輸出、復興基金~ インフラ・ファンドの危険性 2011/5】
【原発輸出:国民負担に直結 国のリスク不十分な説明 毎日8/3】日本が安全確認体制を整備しないまま、原発輸出を強力に推進し続ける背景には、原子力安全条約の存在がある。条約は原発事故の責任を「原発を規制する国(立地国)が負う」と規定しており、日本は免責されるという論法だ。茂木敏充経済産業相も5月28日の衆院本会議で「(海外で事故があっても)日本が賠償に関する財務負担を負うものではない」と強調している。
果たして本当に「知らぬ顔」は通用するのか。推進役の経産省幹部でさえ「賠償でなくても援助などの形で実質的な責任を取らざるを得ない」と高いリスクの存在を認める。売り込み先の一部には別のリスクもある。インドには電気事業者だけでなく、製造元の原発メーカーにも賠償責任を負わせる法律があり、米国はこの法律を理由に輸出に消極的とされるが、日本は前のめりだ。そもそも、輸出国向けに実行される国際協力銀行の融資は税金が原資であり、何らかの原因で貸し倒れが起これば、国民負担に直結しかねない。国のリスクに関する説明は不十分だ。
安倍晋三首相は原発輸出について「新規制基準(などによって)技術を発展させ、世界最高水準の安全性を実現できる。この技術を世界と共有していくことが我が国の責務」(5月8日、参院予算委)と正当化。公明党の山口那津男代表も6月、新規制基準を前提に輸出を容認する姿勢に転換した。しかし、この基準は国内の原発にしか適用されず、輸出前に原子力規制委員会が安全確認を行うシステムはないのだから牽強付会(けんきょうふかい)だ。
「安全」を強調する一方、事故時の責任回避も主張する姿は、原発を推進しつつ賠償責任を電力会社に負わせる「国策民営」と呼ばれてきた原子力政策に重なる。原発事故から2年超を経てなお約15万人が避難する現状に照らせば、無責任な輸出は到底許されない。
【米国:加州原発廃炉決定 米電力会社、三菱重に全額賠償請求 原発輸出影響か 毎日7/24】廃炉が決まった米カリフォルニア州のサンオノフレ原発を運営する電力会社のサザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)が、トラブルを起こした蒸気発生器を納入した三菱重工業に対し、原発停止で生じた損害全額を賠償するよう求めている。三菱重工側は「責任上限額を超える賠償責任はない」と反論しているが、米国では「懲罰的賠償のリスク」(業界筋)もあるだけに事態の行方は予断を許さない。事故発生時に巨額賠償を迫られることになれば、原発輸出を推進する日本政府や三菱重工など大手メーカーに冷や水を浴びせそうだ。
SCEは今月18日、「蒸気発生器の欠陥は基本的かつ広範。三菱重工はSCEや顧客が被った損害全額の責任を負うべきだ」とする文書を三菱重工宛てに送付したと発表。賠償請求額は明らかにしていないが、SCEは原発停止中の代替電力確保に関わる費用の支払いなども求めている模様。現地メディアでは請求額は数十億ドル規模とも報道されている。SCEと三菱重工が機器納入時に結んだ責任上限額(約1億3700万ドル)を上回るのは確実だ。協議で90日以内に解決できなければ、SCEは裁判所に仲裁手続きを求める意向だ。
これに対し、三菱重工は19日「SCEの主張は不適切で根拠がない」とのコメントを発表。原発停止に伴う代替電源確保などの間接的な損害は請求されない契約だとして、全面的に争う構えを示す。三菱重工は責任上限額分は業績に織り込んでいるが、それを大幅に上回る賠償を迫られれば、業績への打撃は必至だからだ。
東京電力福島第1原発事故後、国内で原発新増設が困難となる中、三菱重工や東芝、日立製作所など原発メーカーは政府の後押しを受けて海外ビジネスに活路を求める。ただ、原発需要が高まるアジアでは、インドのように事故の際、メーカーが巨額の製造物責任を問われかねない国もある。今回は契約で責任が明記された米国で多額の賠償を求められかねない事態で、業界には波紋が広がる。大手メーカー幹部は「電力会社側の保守や運用にも問題があるはず。メーカーだけに事故責任を負わされてはたまらない」と話すが、原発輸出のリスクが浮き彫りになった形だ。
【原発輸出:住民への安全情報周知指針なし 政府5年間放置 毎日8/7】原発関連機器の輸出を巡り、立地予定地域の住民に安全性などに関する情報が十分に公開されているかどうか確かめる「指針」について、当時の麻生太郎政権が2008年に策定を約束しながら、約5年たった今も作成されていないことが毎日新聞の取材で分かった。原発輸出に絡んでは、従来行われてきた相手国の規制体制などを調べる国の「安全確認」と呼ばれる手続きが実施不能になっていることが既に判明している。チェック体制のずさんさが一層鮮明になった。【高島博之】
政府が指針に言及したのは、社民党の近藤正道参院議員(当時)の質問主意書に対する08年11月の答弁書。政府系金融機関「国際協力銀行」(JBIC)が輸出先に融資する条件について(1)原発の安全性がどの程度確保されているのか(2)事故が発生した場合、どのように対応するのか(3)使用済み核燃料など発電に伴って生み出される放射性廃棄物の管理方法−−に関する情報を「(輸出先の住民に)適切に公開されていない場合には、貸し付けなどを行うことのないよう今後指針を作成する」としていた。
しかし指針作りは進まず、国際環境問題に取り組む「FoE Japan」など非政府組織(NGO)7団体などが10年12月、JBICの監督官庁である財務省との定期協議の席上で取り上げた。財務省国際局職員が「JBICから『指針の内容、策定スケジュールについて鋭意検討中』と聞いている」とだけ答えたため「省としてどう考えているのか」と追及。「近藤議員の主意書に対する答えの通りだ」と述べたという。
原発輸出を巡っては昨年9月以降、経済産業省の旧原子力安全・保安院が行ってきた安全確認と呼ばれる手続きが実施不能になり、経産省が対応を検討していることが毎日新聞の報道で明らかになっている。
JBICと財務省は取材に対し、指針が未策定であることを認め「安全確認に関する経産省の対応を踏まえて指針を作成する」と回答した。
FoEの満田夏花(みつたかんな)理事は「説明になっていない。国が行う安全確認と住民への情報公開は別次元の問題」と批判している。
1基数千億円とされる原発を輸出する場合、新興国は代金を一括で支払えないため、JBICから融資を受けることになる。経産省幹部は「指針が無ければ融資が実行できず、輸出も不可能になる」と指摘している。
【原発輸出:相手国の安全確認なし 規制委「推進業務」拒否 毎日8/3】◇賠償責任負う恐れ
原発関連機器の輸出前に実施されてきた、相手国の規制体制を調べる国の「安全確認」と呼ばれる手続きが昨年9月以降、行えない状態になっていることが分かった。毎日新聞が情報公開で入手した文書や関係者の話によると、従来は経済産業省の旧原子力安全・保安院が担当していたが、東京電力福島第1原発の事故を受けて発足した原子力規制委員会側が「(推進業務である)輸出に関与すると規制機関としての独立性を保てない」として引き継ぎを拒否した。安全面で事故前より後退した体制のまま他国に売り込みを図る、異常な実態が浮かんだ。
経産省資源エネルギー庁関係者によると、大半の輸出では、政府系金融機関「国際協力銀行」による融資か、有事の際に備えて加入する独立行政法人「日本貿易保険」の貿易保険のいずれかを利用する。情報公開で入手した経産省の内規(2003年)によると、国際協力銀行や日本貿易保険は融資や保険加入を認める前に安全確認をエネ庁に申請。エネ庁から照会を受けた旧保安院が、輸出先の国や地域が▽適切な規制体制を整備しているか▽放射線防護など原子力の安全確保に関する国際的な取り決めや、放射性廃棄物の故意の海洋投棄を禁じた条約を締結し実際に守っているか−−などを調べ回答していた。
関係者によると、旧保安院は組織改廃前の昨年8月、エネ庁から安全確認業務を引き継ぐかどうかを尋ねられ「関与しない」と口頭で答えた。旧保安院から移行した原子力規制庁(規制委の事務局)にも今年1月、エネ庁から照会があり、電子メールで同様に回答した。規制庁は推進役のエネ庁から切り離して新設されており、エネ庁と一体となって輸出業務を行うと独立性が揺らぐ。規制庁国際課は「国内の原発は機器、人的要因、管理体制、立地状況などさまざまな要素からチェックする。外国の場合、実務上無理だ」と話す。
情報開示された文書によると、03年以降の安全確認は▽中国12件▽米国5件▽フランス4件▽ベルギー2件▽スロベニア、フィンランド各1件あり、すべて「合格」。機器の種類や金額など詳細は黒塗りにされ公開されていない。
安全確認は昨年9月に規制委が発足して以来、宙に浮いた形だが、これまで実際に確認が必要になった例はない。今後の対応について、経産省は自ら安全確認する方向で検討を進めているが「輸出の旗を振りつつチェックもできるのか」など内部から異論が出ている。【松谷譲二、高島博之】◇ことば【原発輸出に伴う安全確認】
日本から原発関連機器を購入する新興国は、代金を一括で支払えないことが多い。このため「国際協力銀行」が旧原子力安全・保安院による安全確認を得た後、新興国に融資を実行する。融資金の原資は税金だ。一方、戦争や内乱、自然災害等で支払いの滞る場合に備え原発メーカーが加入するのが「日本貿易保険」。保険加入の前提として安全確認が必要になる。原発は1基数千億円。国内の新増設が望めない中、受注確保、技術力維持、人材確保などを目的にメーカーは輸出に力を入れており、安倍晋三首相はアラブ首長国連邦やサウジアラビア、東欧4カ国にトップセールスして後押ししている。
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