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冷戦後の自衛隊とPKO20年(メモ)

  半田滋・東京新聞論説委員「冷戦後の自衛隊 PKO20年」(「改憲と国防」2013より)の備忘録。
 先日の柳澤氏の論稿など含め、安全保障分野の議論、活動の積み重ねについては、あまりよく知らない分野なので参考になる。同時に、九条の枠組みの力と、今日の「暴走」がどこに行こうとしているのか、浮かび上がらせる。自衛隊の平和的な活用と九条を守ることの意味を説く。
 また「日本の抑止力の実態」という部分は、いかに「国を守る」という話がデタラメかよくわかる。

「冷戦後の自衛隊とPKO20年」
  
 半田滋・東京新聞論説委員「冷戦後の自衛隊 PKO20年」〜 「改憲と国防」2013より

・PKO協力法 「参加5原則」〜 ①停戦合意の成立 ②紛争当事者による日本の参加への合意 ③中立的立場の厳守 ④基本方針が満たされない場合は撤収 ⑤武器の使用は最小限に限る。
・06年、自衛隊法改正 海外活動を国防に準じる本来任務に格上げ。/海外派遣の司令部「中央即応集団」が07年誕生。「国際活動教育隊」(陸上自衛隊の海外活動を想定し教育)を配下におく

【民間との協力による海外活動】

・自衛隊とNGOの連携〜 自衛隊の組織力、危機管理能力を活用したいNGO、NGOから現地の情報のほしい自衛隊と利害が一致
→ 中央即応集団には、NGOとの協力を想定した「民生協力課」(CIMIC シミック)の設置

◇04年 イラクでの経験
・イラクには38カ国が派遣〜 人道復興支援をした陸自以外は、すへで治安維持が任務/が、ほとんどの軍は、シミックを持ち、住民をやとい施設復旧を実施 〜 治安維持に役立つため。
→ 日本では外務省と自衛隊で別々の行う支援事業を、シミックが単独で行うので素早く数多くの事業を展開
→ 自衛隊はシミックを知らなかった。海外派遣は、国連から与えられた仕事を遂行することをPKOの基準としていたため。

・急きょ、建設担当など10名のシミックを結成/ ムサンナ州政府と調整して復興事業を決定、本体の復興支援群(約500人)の施設隊(約50人)に作業を指示。施設隊はイラク人を雇用し作業を実施
→ 雇用されたイラク人は日3千人。自衛隊は地元の信頼をえて、2年半の活動を無事終了。

【PKO20年の真価】

・自衛隊の海外活動は、国際緊急援助隊など含めて28回、延べ4万人。〜「地域目線で活動するのが日本の特徴です。力づくでは住民の理解を得ることはできません。活動の成否は、いかに地元と連携できるかにかかつている」(国際活動教育隊 伊崎一佐)

(1)能力構築支援の背景

・2012年度より、アジア太平洋の国々へ支援/ 「防衛計画の大綱」2010年で明記
 〜鳩山「東アジア共同体構想」につながる活動として盛り込まれたもの
・東ティモール(PKOでは道路補修を実施)〜 陸自2名を4ヶ月派遣、自動車整備士を育成
・カンボジア  4名を派遣、道路補修に必要な技術を指導
・モンゴル、ベトナム、インドネシアては衛生、気象観測に関するセミナー開催
 〜自然災害の多い途上国で、道路補修、車両整備が自前で実施できれば復旧は促進される。

・自衛隊の能力活用は「非伝統的安全保障分野」(「大綱」能力構築支援のただし書き)
 軍事的脅威に対し軍事力で対抗する「伝統的安全保障」でなく、テロ・海賊行為などの非軍事的な脅威に政治・経済・社会的に対処し、地域や国の平和と安全を確保する活動

・同活動の出発点はアメリカ/9.11以降、アフガン、イラク戦争で軍事力では緒戦で勝利したが、自爆テロなど治安悪化で、ともに撤退、撤退決定においこまれ、最終的に「勝利できず」

→「テロとの戦い」を見直し、テロの背景にある貧困への対処に 〜 08年より、4軍がイスラム国家の多いアジア太平洋で、医療・技術指導などを無償で行い、格差是正に努める「善行キャンペーン」を開始。


(2)憲法9条と自衛隊・PKO

・憲法9条は、戦力の不保持を定めているが、政府は
 「憲法第九条第一項は、独立国家に固有の自衛権までも否定する趣旨のものではなく、自衛のための必要最小限度の武力を行使することは認められている」「同条第二項は『戦力』の保持を禁止しているが、このことは、自衛のための必要最小限の実力を保持することまでも禁止する趣旨のものではなく、これを超える実力を保持することを禁止する趣旨」(1980年2月5日、森清衆院議員の質問に対する答弁書)とし「自衛隊はわが国を
防衛するための必要最小限の実力組織であるから憲法に違犯しない」との立場。

・海外派遣については
 「いわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限を超えるものであって、憲法上許されないが、他方、武力行使の目的を持たない自衛隊の部隊を他国に派遣することは、憲法上許されないわけではない」(1995年3月7日、栗原君子参院議員の質問に対する答弁書)
 〜 憲法違反にあたらない海外派遣として、PKO、国際緊急援助活動、在外邦人輸送などを挙げている

・が、PKOに参加する部隊は小銃、拳銃、機関銃を持ち武装している。これは九条に違犯しないのか?

→ 政府は「『武力の行使』は『武力の使用』を含む実力の行使にかかる概念ではあるが、『武器の使用』がすべて憲法九条の禁ずる『武力の行使』にあたるとは言えない」(1991年9月27日、衆院PKO特別委員会理事会提出資料)

→ 憲法九条に違犯しない武器使用/政府は「例えば、自己または自己と共に現場に所在する我が国要因の生命または身体を防衛することは、いわば自己保全のための自然権的権利というべきものであるから、そのために必要な最小限の『武器の使用』は憲法第九条第一項で禁止された『武力の行使』には当らない」(同上)
(PKO協力法案に審議にかかわり、ガラス細工のような解釈が内閣法制局で示された)

・自然的権利と言えない武器使用〜 攻撃を受けてもいないのに相手を攻撃すること/また、 自衛隊の活動を妨害する勢力を排除することは「その相手方が国または国に準ずる組織であった場合、憲法九条の禁ずる『武力の行使』にあたるおそれがある」

・92年、PKO協力法が成立。が、「参加5原則」や非武装地帯の確保など、後方支援分野に限定された。

・2001年PKO協力法見直し/ PKF凍結解除、「武器の防護」・「自己の管理下にある者」を守るための武器使用が拡大~ 「テロとの戦い」に便乗する形で、PKFへの道をひらいた。

→ が、国連によるPKFへの派遣が多い国は、国連からの兵士への日当を外貨獲得の手段としてる途上国

*自衛隊の後方支援の道路・橋の補修は、日本から重機を持ち込み、撤収までに現地の人に操作方法を教え、重機をプレゼントして終わる/カンボジア1157点、東ティモール150点を寄贈

→ 撤収後に、派遣先の国が自立できるように考えてPKOに参加している国は日本だけ。高く評価されている(英陸軍・軍民協力の専門家集団「軍事安定支援グループ」のトップ、センブル准将)

→ 専門家さえうならせた日本モデルのPKOを無視して、途上国の列に割り込んででもPKFに参加しろ、という政治家はどうかしている。


(3)現在の海外活動

・ゴラン高原  治安悪化で2013年1月撤収
・ハイチPKO 13年3月終了
・残るは、南スーダンのPKO、ソマリア沖の海賊対策(ジプチに海自の拠点)

◇南スーダン

 アラブ系の多い北部、アフリカ系の南部が20年にわたり内戦。05年、南北包括和平合意、国連スーダン派遣団設立、11年7月・南スーダンが分離・独立、国連南スーダン監視団設立
・面積は日本の1.7倍、人口900万人弱。際だって人が少なくマンパワー不足、国家予算1200億円、収入の98%を占める石油はパイプラインでスーダン経由で輸出。が、スーダンと争いが絶えず深刻な予算不足。
・自衛隊の施設隊は首都ジュバでインフラ整備に従事。首都の治安は驚くほどよく、周辺国の民間の建設会社によるホテル・住宅の建設が進む~国連関係者、国外からもどり始めた富裕層目当てのもの
→ 民間企業が活動できる国に、なぜ自衛隊が必要なのか?

◇「制服組の都合」

・これまで3度の派遣要請は見送ってきたが、今回は極めて積極的に対応
→ 背景/2010年12月「防衛計画の大綱」で、陸自が1人負けしたこと/ 中国の対抗から海自、空自は増強が認められたが、陸自は定員1000人削減、「大規模侵攻は起きない」とし戦車、大砲の1/3を削減
→この時、東日本大震災が発生。献身的に活動する陸自への称賛の声を、追い風に南スーダンに参加加速。

・これは、自衛隊が自ら政策をリードし、政治家に説明し納得させる「逆シビリアン・コントロール」状況
→ 過去三回ことわったPKOを、突然参加に転じたのは「制服組の都合」

・南スーダンの自衛隊派遣の理由に、米兵18人が犠牲となったソマリアPKOの失敗から、PKOへの部隊派遣をやめたアメリカの「名代」としての役割があるのは明らか
→ 米国は、南スーダンへ巨額のODAを支払い、同地で活動する中国の牽制をつよめている。

◇海賊対応(略)


★2つの顔をもつ自衛隊のPKO
①派遣された国々で人材を育成し、重機を提供する「PKOの日本モデル」
②「対米追従」の色彩が濃い南スーダンのPKO、ソマリア海賊対処、アジア太平洋の能力構築支援
 〜 国際貢献の枠内にとどまらず、日米同盟の深化に利用されている。

・イラク戦争のような強攻策にもノーと言えない日本。宗主国に従う植民地のような状態/ 米国にノーというための防波堤を果たしたのが、憲法九条。政治家の力不足を補い、自衛隊を戦死から遠ざける役割を果たした


【国民の公共財としての自衛隊】

・多くの国民が自衛隊のもとめるのは 
①地道につみあげてきた平和な海外活動を続けること ②国内では、災害救援活動

◇国家レベルの防災計画

・東日本大震災で10万人体制をとった陸自の将校「震災の経験が行かされず、防災計画が国家レベルに引上げられていない」
・東北地方の連隊長経験者「どの地方にも災害対処計画はある。いずれも自分の地域のみを考え、近くの駐屯地にいる陸上自衛隊がかならず助けに来てくれると信じている。しかし、自衛隊は政府からの命令にしたがってより優先順位の高い施設や地域に移動する可能性が高い。地元にいない自衛隊を当てにして計画をつくっても意味がない。政府、都道府県、市町村が有機的に結びついた災害対処計画を一刻も早く策定する必要がある」

・東日本 8日目に10万人、阪神淡路 5日目以降も1万人台で推移
→ 根拠法令が整ったこと / 同時に、東北自動車道が無傷で車両移動が可能だった点/阪神大震災では、海に面し道路網が集中する神戸への派遣が難航した。

・防災計画の問題点/ 学校が被災者の集合場所。一方、自衛隊が臨時ヘリポートと想定しているのも学校
→ 「人とヘリコプターが重なり合って使い物にならない。一元化した計画が必要」の指摘
→ ガレキの移動はできるが撤去はできない(民間の仕事を奪う)/不足する警察にかわっての被災地のパトロールはできない(警務隊が活動できるのは自衛隊の敷地内、自衛隊にかかわる事件・事故に限定)


【日本の抑止力の実態】

・日本周辺の警戒監視を怠らず、すきを見せない程度の「節度ある防衛力」を維持する必要はあるが/過剰な装備や増員は不要である。

・防衛省が日本有事を想定していか、疑わしい 〜 弾薬備蓄量が一度も目標の「継戦能力1ヵ月」に達したことがないことで明らか
→ 日本の弾薬メーカー。従業員が極めて少なく手作業。家内工場のような工場で生産されており、有事になって増産できる体制にない。/年間100発程度の射撃訓練も認められていない

◇九条のもとでの地道な歩みを

・疑問①  調達計画の破綻を放置
 陸自は63機調達する予定のAH64D戦闘ヘリコプターの調達を13機で打ち切り。250機予定のOH1観測ヘリコプターを34機で打ち切り。2012年度は、次期多用途ヘリUHXをめぐる不正納入が発覚し、契約を解除、機種選定は白紙に。
→ これだけのヘリが調達できない事態なのに、陸自は慌ててないし、調達計画を仕切りなおすこともなく、誰1人責任をとっていない

・疑問② ミサイル防衛計画
 不安な気持ちを静める精神安定剤でしかない。地上に落下する最終段階で打ち落とす「PAC3」の発射機は32基。使用済核燃料を補完した原子炉は、福島第一をふくめれば54基〜 核兵器を搭載しなくても、通常ミサイルで日本中を放射能まみれにするのは難しくない。(米軍は嘉手納基地だけで24基配備)
→ ミサイル防衛システムは「無駄なカネ食い虫」で有名。世界中で導入したのは日本だけ/ 初期投資で1兆円を米政府と日本の防衛産業に支払った/ 毎年のようにソフトが更新されるから、米国への「現金自動支払機」と化している。

・疑問③ F35
 共同開発したわけでもないのに導入をきめたのは日本が最初。空対空ミサイルが搭載できないため任務につけない未完成機が手渡される
(一機百数十億円のバカ高く。ステルス機体なのでミサイルの外付けができず、搭載量が制限される。しかも、不具合が次々発覚しいつ完成するかわからず、防空に穴があく)

〜 ようするに、それでも日本の安全保障に問題はない、という認識である証拠

★ 米国の第二国防費のようになっている防衛費を、日本と、国際環境改善のためにつかうべき。
①災害救済活動を本格化させ、国民に役にたつ地に足のついた自衛隊の活用法をめざすべき
②海外活動は、憲法九条にそったPKOの後方支援、国際緊急救助隊、能力構築支援に特化すべき〜自衛隊を世界のどこにもない「人助け」のための組織であることを示すことが、日本のとるべき道。

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