「生活悪くなった」「生活苦しい」4割/貧困と格差が拡大 -厚労省調査
24日、厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査」の結果を公表。
調査は5年ごと。今回は昨年7月に実施。全国約1万1000世帯が対象で、20歳以上の約2万1000人が回答。
・医療機関未受診 3%が無保険、20-64歳15%が「窓口負担」が理由
・20~64歳・65歳以上において、現在、仕事をしていない者に未受診経験者の割合(20~64歳:18.5%、65歳以上:14.0%)が高い
・暮らし向き「苦しい」4割。30~59歳の無職男性は割合が高い
・生活水準 5年前と比べ「生活悪くなった」4割、「良くなった」1割
・格差拡大。 収入= 所得の低い層で、5年前に比べて「減った」とする者の割合が多く、高い層で「増えた」とする割合が多い
・東日本大震災の影響 「収入が減った」10.4%、40代後半の男性19.9%
【「生活と支え合いに関する調査」結果の概要を公表】
【2012年 社会保障・人口問題基本調査「生活と支え合いに関する調査」】
【「調査結果のポイント」に本報告から気になる部分を追加し、一部小見出しを変更 】
◆親に経済的支援をしている人が増加。
・20歳代から60歳代の人々のなかで、自分の親へ経済的支援をしている人の割合は、男性で14.3%(前回12.0%)、女性で10.5%(同8.1%)。前回調査(2007年)に比べ、その割合は高くなった。
・男性では40歳代が17.4%で最も多く、女性では20歳代が16.3%で最も多かった。
◆若者の自立は20代後半が中心
・若者(20歳代)の生活費用の担い手については、20~24歳では、親に生活費用の全額または一部を担ってもらっている人の割合が高く、25~29歳では、本人、配偶者、またはその両方で生活費用を担っている人の割合が高い。
◆ ひとり暮らしの高齢男性で社会的孤立が深刻。
・ 20歳以上の人のなかで、ふだんの会話頻度(電話での会話を含む)が「2週間に1回」以下となる人の割合は、2.1%。しかし、ひとり暮らしの65歳以上の男性では、その割合が16.7%であり、社会的孤立が心配される。
・世代別にみると、20歳代から50歳代の人々は、9割以上が「毎日」会話をしている。
・所得別にみると、65歳未満、65歳以上とも、所得が低いほど「毎日」会話をする人の割合は低くなっている。
◆7割から8割の人が、さまざまな支援を家族から受けているものの、一部の人は「頼れる人」がいない。
・おおよそ7割から8割の人が、「看病や介護、子どもの世話」「健康、介護、育児に関する相談」「いざという時の少額のお金の援助」「災害時の手助け」について頼れる「家族・親族」がいると回答。
・ 他方で、「頼れる人がいない」という人も存在し、所得が低いほどその割合は高い。
◆食料や衣服の困窮、家賃、その他債務の滞納の経験者は、前回(2007年)に比べ若干減少。
・過去1年間で、家族が必要とする食料が買えなかった経験について、「よくあった」とする世帯は1.6%、また「ときどきあった」とする世帯は3.7%。
なお食費、衣服費の困窮、家賃、その他債務の滞納経験の割合は、前回に比べ若干低くなっている。
◆ 医療機関未受診 3%が無保険、20-64歳15%が「窓口負担」が理由
・20歳以上の人で過去1年間に必要な医療機関を受診できなかった経験があるとしている人の受診できなかった理由は、20~64歳では「病院や診療所に行く時間が無かった」が67.1 %と最も多く、次いで「公的医療保険に加入してはいたが、病院や診療所で医療費を支払うことができなかった」が15.3 %。
・65歳以上では「病院や診療所に行く時間が無かった」が33.2%と最も多く、次いで「通院が困難」が19.0 %となっている。
「公的医療保険に加入してはいたが、病院や診療所で医療費を支払うことができなかった」9.2%
・公的医療保険に加入しておらず、医療費の支払いができなかった。20-64歳2.7%、65歳以上2.9%。
・また、健康診断を受診しなかった人の理由としては、「必要があると思わない」が最も多かった。
・20~64歳・65歳以上それぞれにおいて、現在、仕事をしていない(仕事を探している)者に未受診経験者の割合(20~64歳:18.5%、65歳以上:14.0%)が高い
◆ 現在の暮らし向きは約4割が「やや苦しい」「大変苦しい」。特に、30~59歳の無職男性は割合が高い。
・現在の「暮らし向き」については、約半数の人は「普通」とする一方、「大変ゆとりがある」「ゆとりがある」は1割弱、約4割の人は「やや苦しい」または「大変苦しい」としている。
・特に30~50歳の無職の男性で苦しい(「やや苦しい」「大変苦しい」の合計)とした人の割合が高い傾向がある。
・生活水準の変化では、現在の生活水準を5年前と比べて「かなり良くなった」とする者は男女とも1%強であり、「良くなった」とする者も、女性で8.2%、男性8.1%とほぼ同じ割合である。
現在は5年前と比べて悪化したという者の割合は、男性のほうがやや高く、「悪くなった」とした者の割合は、女性29.1%、男性30.5%、「かなり悪くなった」とした者は、女性8.6%、男性9.3%である。
・生活水準については、所得の低い層のほうが、5年前に比べて「悪くなった」「かなり悪くなった」とする者の割合が多く、高いほうが「良くなった」「変わらない」とする割合が多い。
収入についても、所得の低い層で、5年前に比べて「減った」とする者の割合が多く、高い層で「増えた」とする割合が多い。
◆東日本大震災の影響で10.4%が収入減少。一方、17.6%は「絆が深まった」。
・東日本大震災の影響については、「家族や友人・知人との絆が強まった」が17.6%、「ボランティア活動を始めた」が2.1%あった。
・一方で、「屋外活動の自粛など、生活面が変化した」が11.3%、「収入が減少した」が10.4%、「医療機関受診を必要とするほどの心理的不安が高まった」が2.7%、「転職や失職をした」が0.8%、と負の影響が日本全国に広がっている。
【2012年 社会保障・人口問題基本調査】
◆暮らし向きと生活の変化
1.「暮らし向き」の状況
20歳以上のそれぞれの個人が現在の「暮らし向き」をどのように捉えているのかをみると、男女ともに約半数の者が「普通」としている。
「大変ゆとりがある」または「ややゆとりがある」とした者は1割弱であるのに対して、約4割の者が「やや苦しい」または「大変苦しい」としている。
暮らし向きが苦しいという者の割合は、男性のほうが女性に比べて多く、「大変苦しい」と答えたのは男性が11.6%、女性が9.5%、「やや苦しい」は男性が28.7%、女性が27.2%である。
暮らし向きが「苦しい」(「大変苦しい」または「やや苦しい」)と答えた者を性別、年齢階級別、就業状況別にみると、勤労世代の仕事をしていない男性でその割合が特に高い。無職の30歳代男性では66.9%、40歳代男性では71.9%、50歳代男性では65.1%が「苦しい」としている。
2.生活の動向
次に5年前と比較した生活の変化を、生活水準、収入、支出、貯蓄の側面からみていく。
生活水準の変化では、現在の生活水準を5年前と比べて「かなり良くなった」とする者は男女とも1%強であり、「良くなった」とする者も、女性で8.2%、男性8.1%とほぼ同じ割合である。
現在は5年前と比べて悪化したという者の割合は、男性のほうがやや高く、「悪くなった」とした者の割合は、女性29.1%、男性30.5%、「かなり悪くなった」とした者は、女性8.6%、男性9.3%である。
年齢階級別では、20歳代から60歳代にかけて年齢が上がるほど「かなり良くなった」「良くなった」「ほとんど変わらない」とした者の割合が少なくなり、「悪くなった」「かなり悪くなった」とした者が多くなる。
「悪くなった」または「かなり悪くなった」とした者の割合が最も多かったのは60歳代であり、半数近くの者が生活水準の悪化を感じている。他方、70歳代以降では、「ほとんど変わらない」とした者の割合が増加していくことがわかる。
収入の変化については、5年前に比べて現在の収入が「増えた」とする者の割合は、女性で11.7%、男性で13.7%である。
「減った」とする者の割合は、女性で49.4%、男性で52.1%である。「増えた」者、「減った」者の割合は女性よりも男性のほうが多いが、「あまり変わらない」と答えた者の割合は男性よりも女性のほうが高く、32.4%である。
これを年齢階級別にみると、「増えた」と回答した者の割合が最も多いのは20歳代の38.9%で、年齢が上がるほどその割合が少なくなる。
反対に、「減った」とする者の割合は、60歳代までは年齢階級が上がるほど多くなる傾向がある。
5年前に比べて収入が「減った」とする者の割合が最も多いのは60歳代で71.6%である。それよりも高齢になると「減った」とした者の割合が小さくなり、70歳代では63.7%、80歳以上では49.1%である。
5年前と比べた支出の変化については、「増えた」とする者が女性で44.0%、男性で44.9%、「あまり変わらない」とする者が男女とも37.6%、「減った」とする者は男女とも13%程度で、性別による違いはない。
年齢階級別にみると、20歳代、30歳代、40歳代にかけては、55.4%、57.3%、61.4%というように、年齢階級が高いほど支出が「増えた」とする者の割合が多くなる。
それに対して、この年齢階級では「減った」とする者はいずれも1割未満である。50歳代以上になると支出が「増えた」とする者の割合が減り、「減った」とする者の割合がやや多くなっている。
5年前と比べた貯蓄総額の変化では、男女とも共通して「増えた」とする者は10%程度、「あまり変わらない」とする者は30%程度、「減った」とする者は半数を超えている。
年齢階級別では20歳代から70歳代までは年齢階級が上がるほど、「増えた」および「あまり変わらない」とする者の割合が少なくなり、「減った」とする者の割合が多くなる。「減った」とする者の割合の最も多いのは70歳代で65.1%である。
生活水準については、所得の低い層のほうが、5年前に比べて「悪くなった」「かなり悪くなった」とする者の割合が多く、高いほうが「良くなった」「変わらない」とする割合が多い。
収入についても、所得の低い層で、5年前に比べて「減った」とする者の割合が多く、高い層で「増えた」とする割合が多い。
支出に関しては、所得の低い層のほうが、5年前よりも支出が「減った」者の割合がやや多くなるが、総じて「増えた」または「変わらない」とする者が多数を占めている。
貯蓄総額では、所得が高い層ほど「増えた」とする者の割合が多く、「減った」とする者の割合は少なくなる。
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