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性奴隷〜 当時も犯罪だった(メモ)

 「慰安婦」問題をめぐって・・・ 「公娼制度と同じだから問題ない」かのような論調があるが・・
 そもそも事実と違う。林博史・関東学院大学教授「安倍首相の歴史認識はどこが問題か」より、上記のテーマにかかわる部分の備忘録。

①工場で働くとだましたり、借金漬けで逃げられなくし国外移送することは「人身売買」として当時も犯罪。
②売春のための女性の人身売買を取り締まる国際条約に加盟。未成年の売春禁止を無視。
③売春ではない ・・・軍の管理下で組織的・計画的に実行された「性奴隷」である。
④戦前でも国内の公娼制度について、20の県会で「人身売買、自由拘束の二大罪悪を内容とする事実上の奴隷制度」などとして廃止決議があがり、14県で廃止されている。
 歴史を直視できない・・・国際的に通用することもなく、また現在も続く
人身売買や性差別につらなっている今日的問題である。

(1)犯罪とわかっていて「黙認」した政府と軍

◇国外移送のための人身売買は当時も犯罪 

・戦前の刑法226条 「帝国外に移送する目的を持って人を略奪又は誘拐したる者は2年以上の有期懲役」

・1932年 軍の依頼で、国内で「慰安婦」をあつめて上海に移送しようとした業者が検挙・有罪に
大審院、高裁、地裁のすべてで関係者10名に有罪判決。
 長崎地裁判決・・・上海の「海軍指定慰安所」のためであることが明記され、「醜業」(売春の当時の言い方)に従事させるためであるのを偽って「女給」「女中」と騙した、として断罪されている。
→ 国内、当時植民地だった朝鮮、台湾などから女性を慰安婦として、中国など「帝国外」につれていくのは犯罪。

◇犯罪行為を警察の「黙認」

・取り締まるべき警察が、中国との全面的な戦争に突入する中で、「現地に於ける実情に鑑みるときは蓋し必要已むを得ざるもの」(内務省警保局)と「黙認」する通達を府県知事に出す。

・軍と共謀として「慰安婦」を組織
 1938年11月警保局が5府県に知事に、人数を指定して女性集めを指示する文書を出す
  その中で「何処迄も経営者の自発的希望に基く様取運」ぶよう指示。

◇批准した国際条約を無視
・1933年までに、売春のための女性の人身売買を取りしまう4つの国際条約のうち、日本に3つに加盟
→「未成年者は、本人の承諾があるなしにかかわらず売春に従事させることは全面的に禁止」

・日本国内で女性を集めて中国の慰安所に送り込む場合、女性の地元の警察署が身分証明書を発行。軍が業者を統制し、警察と協力して女性を集めるよう指示。
→ が、酷い集め方は国民の反感を買うことへの危惧からで、日本以外では、無視された。
①1940年、台湾から中国広東省に女性6名を送り出したときの外務省文書
 6名は、18歳、16歳、15歳、14歳で、外務省、台湾総督府、日本軍部隊長、憲兵分遣隊長らが承知で送り出している。
②フィリピンの日本軍文書 パナイ島イロイロの慰安所 1942年9月現在、27名の慰安婦のうち、16歳4人を含む11名が21歳未満。

(2)公娼制度と同じか? 公娼制度は世界の常識か?

◇他国のケースとどう違うか
一般に戦争中の経済の破綻、食料不足の中で、物資を持つ軍のまわりに、生きるために、売春を目的とする女性が集まり、将兵が買春するというのは、残念ながら世界各地で見られた現象。
 組織的に実施したのは日本とドイツ。

①一般に軍が「売春婦」にたいする性病検査などを実施し統制するのは、将兵の性病予防が目的。
が、日本軍の場合は、導入の大きな理由は、地元女性への強姦事件がひどかったから。
→が、むしろ強姦は増えた。前線では慰安所はなく、末端では女性を拉致して「慰安所もとき」がつくられ、また強姦ならタダだと促す要因となった。

②もっとも大きな違い~ 軍の全面的関与による実施
 設置計画の立案(場所や必要人数の算定)、業者選定・依頼・資金斡旋、女性集め、女性の輸送、慰安所の管理、建物・資材・物資の提供などすべてにおいて軍の管理下、直接実施によって進められたこと。
(メモ者 ナチスの場合・・・「アーリア人の純潔」を守るという優生思想によるとされる。)

③アメリカの場合。軍が売春宿の利用を認めていたことが本国にわかると、教会、議員から抗議をうけ、軍中央は閉鎖させる措置をとっている。

~ 朝鮮戦争の時に、韓国が慰安所をつくり米軍に提供したことがあったが、当時の韓国軍の幹部には、旧日本軍や日本軍の指揮下にあった旧満州軍の軍人が多く、日本軍のやり方をまねたもの。いずれにしても、許されるべきものではなく、また日本の犯罪が免罪されることもない。
(メモ者 また、米軍の日本占領にあわせ慰安所をつくろうとした日本政府も同じ発想~ 重大な人権侵害の根っこに「慰安婦」制度がある。)
 
◇公娼は「事実上の性奴隷」の認識の広がり

・公娼製とは、国や自治体など公的機関が売春を公認管理する仕組であり、売春があることとは一緒ではない
・戦前の廃娼運動 ~ 廃止した県14、廃止決議をあげた県会20を超える
1928年 埼玉県会決議「公娼制度は正義人道に悖(もと)り」と批判
1937年 鹿児島県会決議「公娼制度は人身売買と自由拘束の二大罪悪を内容とする事実上の奴隷制度なり」と厳しく批判
→ 女性の人権という発想がなかった男性だけの県会においても“事実上の奴隷制度”の認識。/「公娼制度と同じで問題ない」としい主張は、この認識よりも遅れている。

◇公娼制度は、世界の常識だったか?

 19世紀後半には、人身売買をともなう公娼制度への批判
・イギリス 19世紀末に登録制を廃止
・アメリカ ほとんどの州で認められていない。とんでもないこと。(米軍では買春は軍法会議の対象)
→ 米紙への意見広告「『慰安婦』は公娼制度と同じで問題ない」の主張が、怒りをかったのも当然


(3)メモ者~ 現在も「人身売買」に甘い国として、国際機関などから批判
  過去の過ちを直視できないことが、現在の社会にも及んでいる。

【国連の社会権規約委員会 2013/5/21】
・委員会は、経済的、社会的及び文化的権利の享受と賠償を受ける権利に関して「慰安婦」に対する搾取による継続的で否定的な影響を懸念する(第11条:相当な生活水準への権利、第3条:男女の平等)
・委員会は締約国が「慰安婦」に対する搾取による継続的な影響の問題に取り組むために、また彼女らが経済的、社会的及び文化的権利の享受を保障するために必要な全ての措置を講じることを勧告する。
・委員会はまた、締約国が彼女たいするヘイトスピーチその他の彼女たちに汚名を着せる表示行為を防止するために「慰安婦」の搾取に関して公衆を教育することを勧告する。

【国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会】
今月末に勧告が出る。内容として、日本政府は慰安婦問題について公式に謝罪するとともに、慰安婦被害者の権利を救済し、また教科書に関連する内容を反映して、日本国民を教育する必要があると要求したと報道されている。

【女性差別撤廃委員会「総括所見」09/8/18】
・日本軍「慰安婦」
被害者への補償、加害者の処罰、公衆教育など、問題の持続的解決措置を求める。
・人身売買、売買春
人身売買や売春搾取の被害者に対する保護やリハビリ、社会統合支援を強化するとともに、女性の経済状況の改善など、人身売買の根本的解決の努力を求める。買春需要の抑制、売春女性の社会統合、リハビリ、経済的エンパワーメントなどの支援を勧告。研修生・技能実習生が人身売買の温床となっていることを指摘、モニタリングの継続を求める。また、人身取引防止議定書の批准を勧告。


【米国務省、世界186カ国・地域の「2012年人身売買報告書」を発表】

日本: 「政府は努力をしているものの、人身売買撤廃のための最低基準を満たしていない」として2番目のランク。G8のなかでTier1でないのは日本とロシアのみ。

≪報告概要≫
中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、その他のアジア諸国からの男女の移住労働者が強制労働の被害にあっている。また、東アジア、東南アジア、南米、そして数年前までは東欧、ロシア、中米などから、女性や子どもたちが雇用目的や偽装結婚で来日し、売春を強要されたりしている。
売春を強要される被害者は、多額の借金を負わされる上、生活費や医療費、その他必要経費を請求され、束縛状態に置かれている。そのような借金に加えて、「罰金」が加算されることもあり、売春宿の経営者による「負債」の計算方法は不透明である。
一方、日本人男性は、長年にわたり東南アジア(一部、モンゴルへも)における児童買春ツアーの主要な顧客である。

日本政府は、外国人技能実習制度において、強制労働を示す事例が発覚しているにもかかわらず、強制労働の存在を公式に認めていない。過去18年間で誰一人として、強制労働の被害者であると認定されていない。

日本政府は2011年の成人女性の性的人身売買の被害者として45人を認定し、619人を児童買春の被害者として認知している。
日本には人身売買の被害者専用の公的シェルターはないことから、おもにDV被害者が保護される女性相談所に一緒に保護されていることから、提供されるサービスには制約がある。また、男性被害者のシェルターも設置されていない。
2005年の刑法改正で、人身売買罪を新設したものの、狭い定義に留まり、「国連人身売買禁止議定書」に沿ったものではない。
報告書は、以上のような現状に対して、いくつもの勧告を提言しているが、その筆頭には、あらゆる形態の人身売買を禁止するための包括的な人身売買禁止法を制定すべきであると述べている。

~ ジェンダーギャップ指数の低さも同根と言える。

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