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政財界やマスコミで、広がる賃上げ必要論 労働総研

 この間、エコノミスト、新聞社説、週刊誌で、「いまこそ賃上げを」の声が沸き起こったこと。そして、その源資として「内部留保の活用」が当然のごとく語られているのが特徴、次ぎの対策として「非正規の待遇改善」の必要性を論じられてきていると、間の発言や報道内容を整理している。
この流れを作るうえで、日本共産党の質問で、安倍首相「企業関係者を集め、内部留保を賃金に使うことが企業の収益につながると要請する」、麻生財務大臣「(月額1万円の賃上げが)できる条件が企業側にある」と認めさせたことが、大きな弾みをつけた。
以下に本文。一覧表は、下記のウェブサイトで。
【広がる賃上げ必要論と春闘回答へのマスコミ評 労働総研2013/5】

【広がる賃上げ必要論と春闘回答へのマスコミ評 労働総研2013/5】

 13 春闘の本格化を前に、エコノミストをはじめ政財界やマスコミなどから「いまこそ賃上げを」の声が沸き起こりました。

賃上げ擁護論・必要論が広がったのは1973 年~74 年のオイルショック・狂乱物価以来のことですし、首相による財界要請は福田内閣以来5 年ぶりになります。しかも今回は賃上げ原資として、労働総研の春闘提言(12/26)の柱である「内部留保の活用」が当然のごとく語られているのが特徴です(表1)。

◆業績改善待ちでなく内部留保で

賃上げ擁護論が最初に登場したのは昨年9 月、厚生労働省の『労働経済白書』です。冒頭の「骨子」で経済・社会の活力の低下を憂いつつ、「労働者の所得の増加が消費の増加を通じて日本経済の活性化につながる…好循環を取り戻す」ことが強調されました。

つぎのステップは、昨年末に自民党・安倍政権が誕生したことです。デフレ脱却の手段として「物価目標2%」(世界標準)を掲げたとたんに金融市場が反応して「円安・株高」が進行しました。しかし、2%の物価値上げは、労働者にとっては「2%賃下げ」になり、放っておけばとんでもない経済状況になってしまいます。

そこでまず、「物価目標2%」の片棒を担がされた日銀の白川総裁が異論を唱えました。『日経新聞』の1 月1 日付で、デフレ脱却の起点は「雇用が確保されて、賃金も上昇」するのが先で、財界が主張する「企業の業績改善」が先だとする態度を批判したのです。
この論調は、日増しに主要経済研究所のエコノミストが主張するようになりました。第一生命経済研究所、みずほ総合研究所、富士通総研、日本総研などを代表するような研究者たちです。
なかでも、富士通総研の根津利三郎氏、経済アナリストの菊池英博氏、暮らしと経済研究室の山家悠紀夫氏らは、賃上げ原資として「膨らみ続ける内部留保」(菊池氏、山家氏)、「企業が保有している現金・預金」(根津氏)をあげているのです。
このような賃上げ擁護論、内部留保活用論が、テレビを通じてお茶の間の話題になったのは、2 月6 日にローソンの新波社長が「正社員の年収を3%(15 万円)引き上げる」「4億円の原資は内部留保を充てる」と発表したことです。世間には驚きをもって歓迎されました。間もない18日には作業服チェーンのワークマンも同様の賃上げを発表しています。

もう一つ話題になったのは、2 月8 日に衆議院予算委員会で日本共産党の笠井亮議員が内部留保増と賃金低減の相関グラフを示しながら、政府に賃上げ施策の実行を求めたことです。安倍首相は、「企業関係者を集め、内部留保を賃金に使うことが企業の収益につながると要請する」と答弁。麻生財務大臣も、「(月額1万円の賃上げが)できる条件が企業側にある」ことを認めました。
2 月12 日、首相官邸に経団連、経済同友会、日商の代表を呼んでの賃上げ要請は、国会答弁よりトーンダウンしましたが、賃上げ世論を盛り上げ、公明党が経団連に要請する事態に波及しました。

こうして新聞各紙がいっせいに賃上げ問題を取り上げ、必要性を論じる記事や解説、社説を載せるようになったのです。『東京新聞』の2 月18 日社説は「企業には所得増→内需拡大→企業業績好転の好循環を引き寄せる重い役割がある」と断じています。

2 月中旬、世間に賃上げムードが広がり、円安効果で自動車・電機など輸出大企業の業績が大幅に上方修正されるという、かつてない「追い風」が吹く時期に、大企業労組(連合系)が春闘要求の提出期を迎えました。
ところが、これらの組合の要求は、ベアを見送り、軒並み一時金の引き上げにとどまりました。当然、職場には労働者の不満が蔓延しています。


◆「ベアゼロ」回答を批判。非正規の待遇改善を

3 月13 日、13 春闘最大のヤマ場・集中回答日を迎えました。大企業各社の回答は、ほぼ組合の要求どおり「ベアゼロ・定昇維持、一時金の(若干の)上積み」で決着しました。
この結果について、各紙がいっせいに社説で取り上げて論評するとともに、週刊誌・経済誌も特集を組んで大企業労使の姿勢や家計・経済への影響などを論じました。ここでも「内部留保」が取り上げられたのが特徴です(表2)。

なかでも週刊誌の奮闘が目立ちます。『週刊エコノミスト』(3/19 号)は、「賃金を上げろ」という大特集を組み、産業別に主要300 社の1 人当たり利益剰余金(内部留保の中心部分)から簡易労働分配率を求め、賃上げ余力ランキングを発表しました。『週刊朝日』(3/29 号)は、急増する内部留保額と低迷する賃金のグラフを示しながら、大企業の内部留保ランキングを紹介してベアゼロを批判しました。『週刊ポスト』(4/05 号)も一流企業65 社の春闘結果を分析して、ボーナスを満額回答した大企業が利益の大半を内部留保に回してベアを拒否したことを痛烈に批判したのです。内部留保の総額や個別企業のデータなど労働総研調べの数値が活用され、役員のコメントも登場しました。

回答日翌日の新聞各紙の社説も、「デフレ脱却・景気回復のためには賃上げを」というこの間の流れを受けて「ベアゼロ・定昇維持」で終わった春闘を批判的に紹介しました。なかでも、『朝日』『毎日』『東京』などが次の施策として「非正規の待遇改善」への期待と必要性を論じているのが特徴です。

週刊誌の特集や各紙社説以外でも、注目すべき論調が展開されました。『日経』の経済教室では「賃上げ実現の条件」について、論客3 氏の研究をシリーズで掲載しました。雇用の流動化促進、70 歳定年制や年功賃金・解雇規制の見直しなど、日本経団連が主張する成長戦略に連動した施策を唱えており、『日経』らしい内容ですが、部分的には「(賃上げ交渉で)労使の力関係が崩れており、政府関与やむなし」(㊤・高橋進氏)、「(一時金より)基本給引き上げの方が消費拡大効果は大きい」(㊦・樋口美雄氏)などの主張も見られました。

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