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実効ある「子どもの貧困対策法」を

 「子どもの貧困」についてはブログでしばしば取り上げてきた。
『子どもの貧困』の著者・阿部彩さんは、2010年のシンポで「再配分による逆転現象は、80年代のOECDのデータ、90年の報告の数字でも出ていたが社会問題とならなかった。06年に、本の中ではじめてグラフとして出した。それが一番最初に国会でとりあげられたのは共産党の先生が国会質問した。しかし赤旗以外はどこも報じなかった」と、その後、「たまたまの本が出、理解も広がり、いろんなことがうまく重なって関心が高くなってきた。」と述べている。そこから「対策法」制定というところまでまで進んで来た。数値目標、実効ある行動計画をもったものにすべきだ。 
 人権保障であるとともに、日本社会・経済の活力を支えるための国家戦略と認識すべき、と思う。

【「子どもの貧困対策法」制定に関する要望 全国ネット3/6】
【子どもの貧困対策法 自民案 数値目標盛り込まず 東京新聞4/5】
【「子どもの貧困 この一年」 阿部彩 備忘録 2010/6】

【子どもの貧困対策法 自民案 数値目標盛り込まず 東京新聞4/5】

 自民党の「子どもの貧困対策法案」の骨子が四日、判明した。民主党が先にまとめた案と大筋で一致しているが、民主案に明記された子どもの相対的貧困率を削減する数値目標は盛り込まなかった。民主党は超党派の議員立法として今国会に提出したい意向。安倍晋三首相も協議に応じる姿勢のため、数値目標が一本化に向けた与野党協議の焦点になる。
 自民党案は、基本理念に「子どもに対する教育支援などを、生育環境によって将来を左右されることがないよう講じる」と掲げた。
 政府に、子どもの貧困対策の推進に関する大綱の作成を義務付けた。大綱は教育支援、生活支援、保護者への就労支援、経済的支援に関する施策のほか、子どもの貧困についての調査、研究も定めなければならない。
 関係閣僚で構成する貧困対策会議を設置することも明記した。
 政府は毎年、国会に子どもの貧困状況や貧困対策のために実施した施策について報告しなければならない。
 民主党案は対象の子どもの年齢を二十歳未満としたが、自民党案は十八歳未満とした。
 民主党案は二〇〇九年で15・7%ある子どもの相対的貧困率を二一年までに10%未満に減らす目標を盛り込んだ。自民党は「貧困率自体に意味がない」と主張している。

【「子どもの貧困対策法」制定に関する要望 全国ネット3/6】

 「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク
 共同代表:湯澤直美、平湯真人、三輪ほう子

 貴職におかれましては、日頃より子どもの貧困解決に向けてご尽力いただいておりますことに深く感謝と敬意を表します。

 私たち「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークは、2010年4月の設立以来、子どもの貧困に関する市民の多様な取り組みをつなぐとともに、子どもの貧困問題の包括的な解決をめざして活動を進めてまいりました。多くの子どもたちが厳しい生活を強いられ、自らの人生に明るい展望を見出せないでいることに深く憂慮し、子どもたちにかかわる制度の拡充・強化や生活環境の改善・充実を求めてきました。

 さて、このたび、「子どもの貧困対策法」制定が議員立法で目指されていることが報道され、また文部科学大臣も記者会見でこの法律について言及しています。

 子どもの貧困率やひとり親世帯の貧困率が国際的にみても高い日本において、子どもの貧困の解決をめざす法律が必要なことは私たちネットワークもこれまで訴えてきた点であり、今回の動きに注目しております。自己責任ではないにもかかわらず、生活に困窮する子どもたちが多く存在し、さらにはいくつかの研究が指摘するように貧困が世代間で連鎖する傾向が強まっており、法律制定の必要性が高まっています。

 貧困ライン未満の世帯で暮らす子どもたちが300万人以上という膨大な数に至っている現状を勘案すると、貧困率等の当面の削減目標と削減に向けた政府の義務を明記しない法律は、貧困の削減・解決に何らの効果をもたらさないばかりか、厳しい生活を強いられている多くの子ども・保護者(養育者)にかえって落胆の思いを与えかねません。

 また、「子どもの貧困対策法」は、生活保護世帯/就学援助受給世帯の子どもをはじめ、災害や交通事故あるいは自死で親を亡くした子ども、児童福祉施設や里親のもとで暮らす子ども、親が障がいをもつ子どもなど、さまざまな要因から貧困・低所得状態で暮らす子どもを包括する必要があります。

 こうした諸点から、法律制定にあたっては子どもの貧困解決の実現に実効性あるものとすることが必須であり、必要な施策の体系的かつ恒常的な実施を確保することが重要です。そこで、「子どもの貧困対策法」の制定においては以下の事項を必ず明記することを強く要望します。また、制定にあたっては、当事者や支援者の声を聴き、十分な議論を重ねていただきたいと存じます。

                    記

(1) 子どもの相対的貧困率の削減目標を明記すること

貧困率の削減なしには子どもの貧困問題の解決はありません。貧困率の削減目標を明記しない法案は「骨抜き法案」です。ひとり親世帯の貧困率が50%を超えているという数値は、OECD諸国のなかでも最も高く異常ともいえるレベルであり、国際社会からも注目されています。
私たちは、子どもの貧困の解消に向けて、子どもの貧困率を当面は「10年後の達成目標を8%(現在より半減させる)」とすることを要望します。

(2)目標達成に向けた政府・地方自治体の施策実施の義務、報告義務を明記すること

子どもの貧困問題の解決について、政府および地方自治体の施策の実施義務を明記することを要望します。また、政府がどのような施策を実施したかについては、①施策の実施状況、②施策の効果測定、③施策の改善方策を明記した年次報告を国会に提出することを要望します。さらに、目標期間終了時にも総括の報告書を提出し、それ以後の計画を明確にすることが必要です。

(3)財政上の措置を明記すること

実効性のある施策を講じるために、国は子どもの貧困の解消を図るために必要な財政上の措置を講ずるよう努めなければならないことを明記することを要望します。他の法律(例:母子家庭の母及び父子家庭の父の就業の支援に関する特別措置法)でもこの点は明記されています。

(4)法律の見直し規定を明記すること

法律の施行後3年を目途として、必要な措置を講じることができるよう、法律の見直しが可能となる規定を明記することを要望します。

(5)総合的な子どもの貧困対策のための大綱の制定を明記すること

政府は、政府が推進すべき子どもの貧困対策の指針として、基本的かつ総合的な子どもの貧困対策の大綱を定めなければならないことを明記することを要望します。また、大綱に基づき、地方自治体には子どもの貧困の解決に向けた計画策定を義務付けることが必要です。

(6)子どもの貧困総合対策会議の設置

政府において、子どもの貧困問題を解決するための組織横断的な対策会議(あるいは審議会)を常設することを要望します。この会議には、施策の実行のための一定の権限を付与するとともに、当事者団体/当事者の参画が不可欠です。

(7)対象規定

この法律で対象とする子どもの年齢については、0歳から大学卒業程度までを網羅するよう要望します。これには、若年出産などがもたらすリスクにも配慮し、胎児と妊産婦をも対象とする必要があります。
また、保護者の所得だけで貧困世帯を捕捉するのではなく、たとえば社会的養護のように、多様な家族・生活形態が存在することを考慮し、支援策についても講じるよう明記することが必要です。

(8)子どもの貧困の定義と貧困を測る指標の策定

子どもの貧困は、相対的貧困率や家計の経済状態から把握することが重要であることはいうまでもありません。この点に加えて、貧困が子どもに与える影響を包括的に捉え、子どもの権利条約に規定されている子どもの諸権利の実現を阻んでいる現状を測定する必要があります。
この点について、公益財団法人日本ユニセフ協会の資料では「貧困とは単純にお金がある、ないという経済的な側面だけでなく、人間として享受すべき教育や医療などの社会サービスが受けられない状況も含めて多角的に測られるべきものです」と指摘しています。現在、日本には、子どもの貧困を捉える定義や貧困の解消/解決に必要な指標がないといわざるをえません。子どもの権利実現の視点から、当事者・支援者・市民の合意のもと、早急にこれらを検討し活用していくことを要望します。

(9)研究調査の実施について

この法律を実効性あるものとするために、対象となる子どもや世帯の生活状況等について把握することや子どもの貧困指標策定のための調査研究の実施を法律に明記するよう要望します。

以上

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