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生活保護とジェネリック医薬品

 生活扶助の切り下げ以外で、ジェネリック医薬品使用の促進などで保護費を450億円削減しようとしているが、
医師が安心して処方できる環境の整備が必要である。必ずしも同じ効能」でない場合が存在すること、効果のばらつきなどの不安の声が寄せられている。
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 東京保険医協会は「使用は医者に相談して」と呼びかけている。同時に「きちんとしたGEメーカーの医薬品はむしろ使用を促進するべきであると考えております。精度管理の出来ていないGE医薬品が報告されており、現行の後発医薬品の承認審査内容では不安を感じているのも事実です。厚労省並びにGEメーカーにおかれましては先発品と同程度に安心を得るべく、これらの状況を是正していただきたい」と述べている。以下、かなり専門的ながら東京保険医協会の意見。
【私たちの考え~ジェネリック医薬品について】【社団法人日本ジェネリック医薬品学会への返書 東京保険医協会・2012.4.16】

 

【当協会院内掲示用ポスターに対する貴学会の意見に関する見解について

2012年4月16日

社団法人 日本ジェネリック医薬品学会 代表理事 武藤 正樹 殿

東京保険医協会            会長 拝殿 清名

 拝復、当協会が会員向けに作成し協会HPに掲載した「ジェネリック医薬品ポスター」に関して、貴重なご意見をいただき誠にありがとうございます。

  私たちはGE医薬品一般が先発品に比べ薬効が劣っていたり、副作用が多いと主張しているのでは決してありません。きちんとしたGEメーカーの医薬品はむしろ使用を促進するべきであると考えております。しかしながら現状では以下で述べますようにきちんと精度管理の出来ていないGE医薬品が報告されており、現行の後発医薬品の承認審査内容では不安を感じているのも事実です。
厚労省並びにGEメーカーにおかれましては先発品と同程度に安心を得るべく、これらの状況を是正していただきたいと切に願っております。

1 新薬(先発医薬品)と「同じ成分、同じ効能」か

 ご指摘の通り後発医薬品は、「有効成分の物質特許が切れ、その物質の基本的な情報は公的に既知の知識となっており、ゼロから検討し直す必要なく、先発医薬品と品質が同等かそれ以上であることが確認されれば良い。そのため有効性物質の化学特性、薬理効果、毒性などの基礎情報は、検討対象からは外す」となっており、生物学的同等性試験を実施していることは存じております。ただし、生物学的同等性試験は健康成人志願者を対象に行われるものであり、実際の臨床で使用される高齢者や乳幼児などの年齢要件、妊産婦、授乳婦、肝機能障害、腎機能障害などの特殊条件を考慮した試験ではないため、「臨床試験」と同等ではないと考えます。

 また「法律の規定で、添加剤は有効成分への薬理作用を示さず無害でなければならないため、添加剤を変更したとしてもその効能効果はいうにおよばす副作用においても影響を及ぼすことはない」とされていますが、実際の臨床使用において薬効に疑問があったり、後発医薬品独自の副作用例を経験しており、以下にこれまでPMDAへの報告事例及び文献のいくつかをお示しします。薬学者、薬剤師の先生方の中からも後発品の有効性と安全性が生物学的同等性試験のみでは担保されないのではないかという声が聞かれます。

 生物学的同等性とはバイオアベイラビリティ(生物学的利用率)が同等であるとのことであり、血中濃度測定と溶出試験で評価されています。柳川忠二東邦大学教授はin vitroの実験で球形吸着剤(具体的には先発品クレメジンと後発品のメルクジンなどとの比較)の吸着性能を比較したところ、イオン性有機化合物の吸着除去率や、糖及びペプチド・タンパク質の吸着除去率の分子プロファイルに差がみられたと報告しています(柳川忠二他 医薬品研究 36:497-505, 2005、国立医薬品食品衛生研究所HPにも記載)。
 政田幹夫福井大学教授は非イオン性造影剤イオパミドールの先発品、後発品において高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で品質検査を行ったところ、日本薬局方のイオパミドール類縁物質の試験項目に準じた方法での分析では両薬品間に大きな差を認めなかったが、他の条件で分析したところ、先発品に認められない複数の未知物質が検出されたと報告しました(矢野良一他 医療薬学フォーラム講演要旨集12:153,2004)。したがって先発品の承認申請には必要であるが、後発品の場合は不要とされる「毒性試験」のデータも必要だとしています。杉本功神戸薬科大学教授も、純度試験方法が異なるとそれまで検出されなかった不純物が検出されることがあると述べておられます(LIBRA No43, 2006)。
 このほかにもPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)では2007年5月より医療関係者からも後発医薬品の相談を受け付けていますが、その内容には効果への不安、有害事象の疑い、品質関連、先発医薬品との違いなど2007年度中でも163件の相談が寄せられており、医療関係者の不安を表しています。(具体的な有効性の相談はロキソプロフェンナトリウム、ロペラミド、バルプロ酸ナトリウム、グリクラジド・ボグリボースがあり、具体的な有害事象が疑われる事例は、グリベンクラミド、ロラゼパム、塩酸チクロピジン、ニトレンジピン、ベニジピン塩酸塩などでした。)直近の2010年10月から2011年3月までの報告でも前述のクレメジンなどの例等を含み、継続して事例報告が上がっております。このように少なからぬ後発品の薬効への疑問と副作用についての報告に対して、PMDAの評価は後発医薬品による可能性を否定できないとしている事例もありますが、後発品のせいではない、または単一報告のため評価できないなどとしている事例も多いことは、事例収集分析の点ではさらに踏み込んだ対応が求められると思われます。
 次に、溶出試験についてです。新潟県保健環境科学研究所では臨床使用が多いロキソプロフェンナトリウムとシメチジン、塩酸ジルチアゼムについて溶出試験を実施しています。結果はロキソプロフェンナトリウムの後発品9品目中6品目は溶け始め15分の溶出率が低いものの先発品と同等性が認められましたが、残り3品目は溶け始め15分の溶出率が45%未満と低く同等性を確保できていないと評価されました。シメチジン後発品13品目中8品目は先発品と同等でしたが、5品目では同等性を確保できていないと評価されています。塩酸ジルチアゼム後発品5品目は全て同等性が認められました(新潟県保健環境科学研究所年報 17:106-111,2002)。

 生物学的同等性試験で同等であれば医薬品の基礎情報の抜けがないという考えが、米国・欧州など世界的標準であると述べられていますが、米国では「後発品と先発品は必ずしも同等ではない」との認識に基づき、FDA(食品医薬品局)が「承認医薬品と治療同等性評価」(オレンジブック)で後発品のランク付けを行っており、年間数十億円の費用を投じて後発品の治療同等性を評価しています。1974年には米国議会内に後発品の品質と価格問題に関する委員会が設置され、40年かけて後発品使用の環境が整備されてきた結果が、現在の50%以上の後発品シェアとなったと認識しております。

 従って日本でも、現在の溶出試験による生物学的同等性試験のみでなく、第三者機関においてより積極的に審査評価をすることによって、医療関係者・患者の安心納得に資することができ、結果的に後発医薬品の普及促進につながると考えます。

2 ジェネリックの効能に“ばらつき”がある

 ご指摘の通り「ジェネリックが新薬と比べるとチェック項目が少ないので、製法などが少し違っている」との表現が誤解を招いたことはお詫びします。

ポスターの真意は、① ジェネリックは新薬と比べると承認審査のためのチェック項目が少ない、② ジェネリック医薬品は物質特許が切れていても製剤特許や製法特許が残っているために新薬と同一の製剤や製法でない場合が多い、ということです。
字数の関係もあり省略した記載でわかりにくい表現でした。問題点にあげた「効能にばらつきがある」については、上記1で例示しましたが、1で述べなかった安定性・安全性について以下にお示しいたします。
 
まず安定性についてですが、後発品の安定性試験は加速試験(40度、相対湿度75%で完全包装状態のまま6ヶ月保存して、安定であれば室温で3年間安定であるとする)のみでよいとなっています。しかしながら在宅医療や高齢者医療が急増している医療現場では、PTP包装から医薬品を取り出して一包化して長期処方するケースも一般的になっており、長期安定性や、包装から取り出してより苛酷な条件での評価(先発品に求められる苛酷試験)での安定性に関するデータが後発品にも求められると考えます。
 次に生物学的同等性が不要とされたり、評価として十分でないと思われる注射剤、徐放性剤、外用剤などで先発品と後発品では治療安全域が異なる可能性が指摘されています。
 注射剤は吸収による薬剤濃度の差がないため試験を行わないとされています。しかしながら現実には、注射剤ファモチジンを先発・後発品で溶出試験をしたところ後発品7製剤中4製剤で夾雑物が有意に多かった(鳴戸郁江 医療薬学 32:523-530,2006)、強力ネオミノファーゲンCで先発品から後発品に切り替えたところ症状悪化した(古庄憲浩 新薬と臨床51:219-226,2002)との報告があります。さらに京都大皮膚科からはセファゾリンナトリウムのジェネリック医薬品に含まれる類縁物質が原因でアナフィラクシーショックを起こした症例が記載されています(日本皮膚科学会誌117:979-983,2007)。
 一方、北大病院薬剤部の井関健教授によれば、腸溶性製剤は消化管内移行によるpHの変動に伴って溶出が変化するため、試験液のpHが一定である溶出試験のみで同等性を評価することはできず、また、徐放性製剤はコーティングに用いられた添加物の種類によって薬物放出速度の違いが生じ、吸収過程に影響を与える可能性も考慮する必要があると述べています。従って、腸溶性製剤や徐放性製剤については添加剤の違いに着目して、薬剤の崩壊、溶解、吸収過程に及ぼす影響を検討し、正しく評価することが要求されるとしています。後発医薬品の評価はメーカーが公表している溶出試験や生物学的同等性試験のデータを詳細に解析することが求められますが、メーカー公表のデータのみでは先発品との同等性を正確に判断することができないこともあり、情報不足であると指摘しています。国立医薬品食品衛生研究所では独自に製剤特性の情報を公表しており、後発医薬品メーカーの製剤情報を補う評価方法としても、また第三者機関が行った試験データとしての高い信頼性を持つとしています(病院薬局協議会、学術小委員会報告、後発医薬品に関する調査研究2010から。井関教授は国立医薬品食品衛生研究所の後発品の検討会に日本病院薬剤師会からの委員として参加されています)。
 経皮吸収型β2刺激薬は、夜に貼付して明け方の適切な時間に効果を発揮し、同時に長時間効果が持続して喘息患者さんに対応するよう作られています。そのため現行品ではツロブテロールを結晶化するとともに、膏体の厚みを薄くするなどの工夫がなされています。したがってジェネリック貼付剤には「皮膚の刺激試験」、特に経時変化させて劣化させたものの安全性試験が求められ、「含量均一性に関する試験」も必要と思われます。
 点眼剤は防腐剤に塩酸ベンザルコニウムを用いるかパラペンを用いるか、またその濃度により防腐効果や安定性、刺激性が異なると報告されています。

 先発品も当然不純物を含んでいますが「臨床試験」により不純物を含んだ製品としての有効性・安全性が確認されています。後発品も溶出試験が不要とされる注射剤や外用薬、徐放剤などについては「臨床試験」を追加実施してその結果を公表することで医療関係者と患者さんの理解・安心が格段に増すことでしょう。井関教授の指摘の通り、厚労省または後発品メーカーは第三者機関を設立して後発医薬品の品質評価をすることを真剣に考えてみてはいかがでしょうか。

3 ジェネリックの効能格差は最大40%

 ご指摘の通り米国でも生物学的同等性の差として、日本と同じく+-20%の基準となっていますが、実際は平均約3.5%と言われています。それでは日本における実際の後発品の製剤間の平均値の差を示して頂けないでしょうか。すなわち個々の後発医薬品についての平均値及び個々のデータすなわち値のばらつきについて公表して頂きたいと思います。そうでないと後発品が先発品よりも当たりはずれが大きくないという安心が得られません。私たちは、たとえば解熱鎮痛剤を後発品に変更したところ効果が明らかに低下したという実臨床の経験を持つため、個々の後発医薬品のデータを公表して頂きたいと願っています。

4 薬局でよく効くジェネリックはもらえるのか

 医療系情報サイトm3.comの今年4月のアンケート(約2000名の医師対象)では、「一般名処方を実施している、または実施する」と回答したのは病院で20%、「実施の予定なし」が28%、診療所では「実施+予定」が32%で、「予定なし」が18%でした。また「一般名処方を推進すべき」が19%、「推進すべきでない」が42%、今次改訂によって「後発品の処方が増えた」が37%、「変わらない」が46%という結果でした。国は2006年度から積極的に後発品の使用促進を行ってきましたが、まだまだ実際の後発品の使用促進にはつながっていない実態があります。

 また、2003年に全国保険医団体連合会が開業医を対象に行った調査では、「先発品と異なる薬効を経験した」との回答が14.4%、「先発品と異なる副作用の体験」が4.5%あり、客観的データではありませんが、医師が後発薬に非同等性を感じていることが伺える結果で、上記アンケート結果の理由ではなかろうかと推察されます。

 「薬の選択は薬剤師に任せて」と言われますが、上述した処方医の意識を考慮しますと、後発薬の安全性と有効性がしっかり担保されるまでは、薬剤アレルギー、他院の処方の有無、飲み合わせ、服用方法など「処方薬の服用に関すること」は専門の薬剤師さんを信頼し、「処方薬の臨床的な効果について」は薬剤師さんは具体的には知り得ない部分も多いことに鑑み、医師が後発医薬品変更後の効果についても患者さんと話し合いながら評価をするのが妥当ではないかと思います。医師は薬の薬効のみならず最終的な治療効果(血圧を下げて心血管疾患を予防する、血糖をコントロールして透析や失明、動脈硬化症進展を予防するなど)を挙げることを目的としておりますので、有効性が高く安全であると評価したジェネリック医薬品であれば、処方の時点で積極的にジェネリック医薬品を指定して処方します。
ただ残念ながらこれまで述べた理由により、一部のジェネリック医薬品に対して有効性と安全性に疑問を持っている医師が多いのも事実です。今次診療報酬改定を受けて、一般名処方を受けた薬剤師さんがジェネリック医薬品を採用するケースは多くあります。医師が院外薬局にて変更された後発医薬品をよく知らないケースも多いと思われます。従って、真に患者さんのための医療にするためには、医師と薬剤師が積極的に情報交換をする体制を整える必要性を痛感いたします。
 
日本ジェネリック医薬品学会におかれましても、「よく効くジェネリック」すなわち有効性が高く安全で安定したジェネリック医薬品に関して、厚労省の求める承認基準にこだわらず、より積極的に品質評価をなさって結果を公表して頂きたいと思います。そして、万が一基準に満たない後発医薬品があれば、米国FDAが実施しているようにランク付けをなさる英断を下されるのであれば、処方医は全幅の信頼をもって「良い」ジェネリック医薬品を処方することでしょう。結果として医療経済的にも、患者さんの健康と幸福のためにも資する面が大と考えます。
 ともにより良い日本の医療を作ってまいりましょう。

敬具

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上記の東京保険医協会のジェネリック医薬品に関する意見に対して、日本ジェネリック医薬品学会の意見がホームページに掲載されております。以下をご参照ください。
http://www.ge-academy.org/img/iken20120619.pdf
日本ジェネリック医薬品学会代表理事 武藤正樹

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