「乳幼児の教育を考える」シリーズ 全私保連
「早期教育」への誤解。抽象的概念を覚えさせても何のプラスにならない。があってこそ、言葉という抽象的な枠組みの土台は、豊かな自然的社会的体験があってこそである。また能力は共同的なものであり、とりわけ「頑張れる意欲」には、人間的な関係の豊かさが決定的と思っている。
全国私保連が“「乳幼児期の教育」について、今、日本の社会の中で考えられ語られているイメージは、残念ながら私たちが考えているものとはかなり違ったところがあり”と保護者とともに考えることをシリーズ化(現時点で5回)してすすめている。こうした営みは重要である。
そして現在でも世界的見て不十分な保育環境の改善に力を注ぐべきである。
その中から・・・一部分引用
【「失敗」を「自信の根」に(第二回)】【良い社会脳と共感脳、そして仲間の存在(第三回)】
【全国私立保育園連盟 あおむし通信】
通信では「お願い/このシリーズで私たちが語ったことを、そのままでもよいし、皆さんなりに消化し、構成し直した形でもよいので、皆さんの園の保護者に投げかけ、そこから返ってきたものを私たちに伝えていただきたいと思います。」と呼びかけている。
【第二回より】「危なっかしさの中にこそ、学びがある」「危なっかしさの中にこそ、自信型に育つ芽が潜んでいる」
年長の子がジャングルジムに登っているのを見て、自分も同じように登ろうとする。これが「やりたいと思う段階」。
しかし、うまく登れない。失敗する。そこで「登りたいけど登れない」という葛藤が生じる。これが「できないけど、やりたい段階」。
うまく登れずに、それでもなんとか登ろうとしている姿は、「危なっかしく」見えるものですから、大人は、ここで、ついつい手を出してしまいます。
しかし、手を出してしまっては、子どもが自らの力で「やった!できた!の段階」に到達するチャンスを奪ってしまいます。そうならないためにも、大人は手出しを我慢する必要があります。このことが、失敗や葛藤を「見守る」ということです。
場合によっては、とくに葛藤せずに、別のルートを見つけて、登る場合もあります。それはそれでいいのです。肝心なのは、子どもが失敗してもやろうとしている時、そうして葛藤している時、その葛藤を見守ることです。
子どもが葛藤しているかどうかは、その子の顔つきを見ればわかります。失敗し、うまくいかない。
それでもやると決める。そうして挑戦を始める時、子どもの顔つきが変わります。「あ、決めたな」そんな顔をします。そうなったら、大人はその子の挑戦を見守る。
・・・
子どもが挑戦する時は、「できる」と思った時です。「今の自分にはできない」と子ども自身が判断すれば、大ケガをする前に、自分で挑戦を中止します。
そうした時、子どもはそっとその場を離れるか、もしくは大人に声をかけてきます。「無理だと思ったら、登らなくてもいいんだよ」というまなざしで、ゆったりと見守ってくれている大人のところにやってきます。そんな信頼関係をつくるためにも、「見守る」ことは大事です。
ですから、「見守る」ことは「放任する」ことではありません。
【第三回より】自分の子どもが人類社会の一員であって、社会全体の知識・教養・人格と共同体を構成しているのだという「ともに生き、ともに育つ」意識を、社会全体と養育にかかわるすべての人たちが共通の認識として持つことで、また、子どもたち自身にも持たせることこそが、現代社会での子育てで最優先されなければならない重要事項なのです。それが、結果的にわが子のためにもなるのです。
また、社会脳は子どもの知識・教養・人格の形成に必要不可欠であることがわかっています。そして、人類の脳にあるミラーニューロンという神経細胞によって、心の中だけで他人になってみて、その仮想体験をもとに他者の気持ちを理解したり、他者の意図を理解したり、他者の行動を予測したりする能力を持ちます。
この能力こそが、他者から知識・教養・人格を受け取る上で重要であると同時に、他者理解を通じて共感・同情・相互利益・相互扶助を行う「共生脳」においても中心的な役割を演じているのです。
保育園で、机を挟んでふざけ合っていた二人の1歳児の片方の子が、誤って机におでこをぶつけた時に、前に座っていたもう一人の子がとっさに自分のおでこをおさえて「いたっ!」と叫んだのです。この姿を見た時、「自分では頭をぶつけていないのに、どうして自分の頭が痛かったのだろう?」と不思議に思ったのですが、それが、人の行為を自分の脳に鏡のように写し取る神経細胞・ミラーニューロンの働きなのです。
この働きが、道徳の土台であるといわれています。人の痛みを自分のことのように感じ、その気持ちに共感する能力なのです。その意味で、人類では社会脳を鍛えることは共感脳を鍛えることになり、それが、子育てをする上で重要になってくるのです。そして、それらを鍛えるために、子どもに教えるとか、躾けるというようなやり方ではなく、良い社会脳と良い共感脳を育てる環境をつくることが、早期教育で最優先されるべき課題なのです。
(いじめ問題について、「共感脳」が萎縮していること。子ども同士で学びあう環境が保育所などてしか体験できなくなっている子育て環境について触れたあと・・・)
これからの教育
これまでの教育では、「賢明に生きるため、出世するための知識」を身につけることが優先され、学問的な知識や技術、社会の中で適切に行動するために必要なルールや規範、儀礼を読みとる能力の獲得ばかりが論じられ、強調され、その習得のための学習や訓練が行われてきたといえます。
しかし、脳科学の進歩に伴い、人が社会の中で賢明に生きるための社会的知性とは、人と人との関係において感情、情動で働く脳の能力も存在することがわかってきました。それによって、今後の教育とは、他人と同調する能力、傾聴する能力、共感的関心などの能力を乳幼児期につけることが優先され、その高さを伴った上で、高い知力、学力を持つことが大切であり、それによって、初めて人はよりよい社会人として生きることができるのです。
人類の心は、一個人の脳神経内に限定して機能するのではなく、さまざまな社会を構成している人どうしが相互に影響し合って、個人の脳も発達させていくものです。知識も人格も周囲の社会から学び取るものなので、その方法として、とくに乳幼児期では顔と顔を見合って会話をし、相手の行動を見て、共感して、模倣して、そして、知識が伝授されていくというのが基本的な伝達方法なのです。
→ 9ヶ月の奇跡や何故、人間だけがなぜ白目をもつか、など、これまでも触れてきたが。人の発達というか、人の分かり方、変わり方というのは大人になっても基本は同じと思う。
マネジメントにもかかわることで、仕事がら常に関心をもってきたテーマである。
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