四国電力値上げ申請を読む〜 原発全廃なら値上げ必要なし(改定)
◆前回の論点
・昨年度、760億円の赤字。今後280億円のコスト圧縮でも625億円の赤字というか・・・。
①原発発電費 2,011年度資料で663億円
(前日の朝日の記事によれば4-12月373億円。なので500億円か?)
②今後のコスト圧縮のうち、人件費分(97億円)と広告費・寄付金・研究費分(77億円)
③今後3年年310億円の原発関係の設備投資がある。
→ ①②で赤字は回避できた。③も加えると料金値上げの必要なし。
◆今回、改めて「電力料金値上げ申請・詳細」を検討してみると・・・膨大な固定費がある原発は、省エネ社会と相容れない、ことがはっきりする。(6/15訂正・改定)
①赤字増670億円(11-12年比)の2/3は融通収入の減。省エネが社会的に進んだ結果。
②原発全廃で、値上げ必要なし
・火力燃料増加分は393億円〜「赤字」は625億円から1018億円に。
・原発固定費663億円、原発投資310億円、原発廃炉のよる事業報酬源47億円、1050億円。
・さらに、事業報酬率、天然ガスの高値買の是正で値下げが可能
③原発全廃でも債務超過にならず。
引当金不足411億円、原発施設の除却損911億円、核燃料の除却損569億円の計1976億円
12年度末の純資産は2378億円。債務超過で破綻に陥ることはない
①赤字増670億円(11-12年比)の2/3は融通収入の減。省エネが社会的に進んだ結果。
②原発利用率ゼロで火力燃料などコスト増は差引き132億円。
③値上げ申請で圧縮可能分 事業報酬算定の基礎である自己資本比率を実態にあわせなど(84億円)と人件費を公務員並で計算(21億円)
◆省エネが進むと破綻するビジネス
①「収支の内訳」より〜燃料コスト増というが、実は販売電力の激減が主要因
・23年度 90億円赤字 融通収入530億円
24年度 760億円赤字 110億円
赤字増670億円のうち融通収入減420億円
→ 全国的に「原発ゼロ」を乗り切る省エネが進んだ結果。
②「原価計算の概要」より
・原価増で一番大きいのは「その他」
1100億円(13-15年) 611億円(08年) 489億円増
その理由は、「その他」の主要項目「控除収益」の減
販売607億円減(109億円-715億円)
(参考 購入は、88億円減(654億円-743億円 ・・・契約内容の変更による)
→ 今後の赤字の625億円のうち、販売減の607億円がほとんど。
◆原発関係の投資 年310億円
・3年間の費用で、
新安全対策 730億円(設備投資441億円 その他289)
原発関係の設備投資642億円
→ 642億円+289億円= 931億円
◆原発ゼロ 火力燃料増 393億円
今回 前回
・火力 149億kW時 1231億円 137億kW時 1093億円
・原発 60億kW 52億円 145億kW時 86億円
①原発60億kW を火力にすると
60*8.26(1231億円/149kW時)= 496億円
(火力燃料計 1231+496=1726億円 前回比633億円)
②核燃料費 33.8%からゼロ 103億円
・52億円がゼロ
・バックエンド費用のうち利用率に関係する部分51億円減
(廃炉費用の不足は、清算事業団など別スキームが必要だが、ここでは料金問題に特化)
③ 差し引き増加分 393億円
→ 天然ガスの高値買いの是正
原発投資310億円と固定費500-660億円
で吸収できる数字
◆事業報酬を維持 年292億円(前回296億円) 原発ゼロの場合176億円と116億円減
・事業報酬 = 発電用の資産(レートベース)× 事業報酬率
・事業報酬率
= 他人資本報酬率(有利子負債利子率)×他人資本比率
+ 自己資本報酬率(自己資本利益率及び公社債利回り)×自己資本比率
*他人資本については全電力会社の有利子負債利子率・・・1.49%
*自己資本については電力を除く全産業の自己資本利益率を上限、公社債利回りの実績を下限
①自己資本報酬率の問題
・公社債利回り1.52%と電力を除く全産業の自己資本利益率6.86%をもとにウエイトづけし計算
・申請内容 自己資本報酬率6.28%
自己資本報酬率=公社債利回り×0.11+自己資本利益率×0.89=6.28%
→ 自己資本報酬率のウェイトづけ「0.89」
企業の相対的なリスクの大きさを表す数字。電力9社平均の数字。
→ が、東電(1.32)には賠償その他の特殊な事情があり、参考にすべきではない
→ 東電を外した計算 0.836
(ウエイトづけの説明・主張は河野太郎議員による)。
・0.836を使うと、自己資本報酬率 6.28% → 5.98%
→ 事業報酬率②=5.98%×自己資本比率+1.49%×他人資本比率。
②実態を無視した自己資本比率
・申請 自己資本比率30%、他人資本比率70%
(5.98%×30%+1.49%×70%という計算)
・四国電力 自己資本比率・額
2011年度末 21.6% 283,0億円
2012年度末 17% 2260億円(申請書より)
③実態での計算 73億円減少
事業報酬率 2.16%=5.98%×17%+1.49%×83%
事業報酬 219億円=9734億円(レートベース)×2.16%
→ 申請内容より73億円減
◆レートベースの疑問 核燃料資産が増加
・事業報酬の基礎となるレートベースは9734億円。
そもそも発電しない伊方1号2号の固定費が入っている
(安全対策の内訳に、難燃ケーブル対策がないので、この3年は動かないと思う)
①核燃料資産
・今回1387億円、前回1168億円 219億円増加。
申請内容では「伊方発電所停止による増」と説明。
→ 再稼働の見込みがないのに、燃料を買い続けた?
→ 当面動かないのだから、外国に売ったらどうか。
②日本原燃への出資 計270億円
日本原燃を原発ムラで救うために、179億円増資し270億円に。
こんなのまで、電力料金に含まれている。
③試算
・燃料資産の増加分、日本電源の出資489億円を レートベースから除くと、事業報酬はさらに11億円圧縮
(*営業資産増は、総括原価方式の見直しとある。調べてみたい。 )
◆原発全廃した場合の事業報酬 大きく減少
・廃炉すると、原発施設の除却損911億円、核燃料の除却損569億円が発生。
レートベース9734億円が、1565億円減少し、8169億円。
・事業報酬率の申請の値をつかった場合 245億円。47億円減
・事業報酬率2.16%を浸かった場合 176億円。116億円源
◆人件費コストの圧縮
河野太郎氏の主張の要約
“経産省は、健全経営のための自己資本比率は30%、と省令で制定しているが、あるべき自己資本比率を大きく下回っている(経営がおかしくなっている)関電、九電に、極めて高い人件費を認めるのはおかしい。
・「一般的な企業」の平均値である賃金構造基本統計調査の1000人以上・正社員と比較というが・・
→ 市場で競争している企業の人件費と市場で競争する必要のない(自由化された部門ですら競争を拒否している)企業の人件費が同じであってよいはずがない
・まして経営がおかしくなっている電力会社の人件費が民間の大手企業と同じだというのは理屈に合わない
・総括原価で料金が決まる電力会社の人件費は、公務員の人件費と比較すべき
→「有識者」会議 役員報酬は国家公務員の指定職並みに削減している(それでも決して安くはないが)
・この両社は健康保険料の企業負担を法定の50%を上回って申請
→ 「有識者」会議は、55%までの企業負担は妥当としている)
・自己資本を毀損して、望ましい姿ではない状態にある企業に、なぜそんなに高い人件費と法定以上の福利厚生費の企業負担を認め、消費者にそれを負担させるのか。”
この主張の線で、申請内容を見てみた。
①賃金366億円。437億円から71億円減
・1人あたり給料手当((超過労働給与を除く)の比較
四電645万円 (公益平均656万円、全産業633万円)
公益関係〜ガス716万円 水道608万円、通信633万円、鉄道618万円、航空706万円
→うち、公務員である水道と比較すれば
差は48万円。賃金額は345億円。申請内容より21億円減
②健康保険料の事業主負担割合 申請内容「56%に引き下げ」?
« 全柔連の「不祥事」と「柔道死」 | Main | 「辺野古移設」前提で、宿舎など再配置 既に71億円 »
「原発・エネルギー」カテゴリの記事
- 「原発」固執は、脱炭素の障害 再エネ普及の足かせに (2024.08.08)
- 気候正義 残余カーボンバジェット あと数年? (2024.01.15)
- 「汚染水」放出の愚挙 ~合意無視、コスト高、廃炉・核廃棄物処理の見通しなし (2023.08.23)
- 国連「ビジネスと人権」部会・訪日調査・声明 11分野で、政府・企業に国際水準の行動求める(2023.08.13)
- 政経データ メモ(2022.12.09)
Comments