雇用問題と「自己責任論」(メモ)
本日、青年の学習会で語った「雇用問題と『自己責任論』」のレジュメ。
【雇用問題と「自己責任論」】
Ⅰ.自己責任がなぜ強調されるのか・・・
(1)「自己責任論」を強化する「特殊な日本の生活構造」
~ 高度成長時期以来「いい学校、いい会社へ」が自己責任、家族責任ですすめられた
右肩あがりの経済が、それなりに「人並みの暮らし」を支えた。
①賃金依存度が高い
住宅と教育と子育、医療など公的支出が極めて低い。その分、年功賃金など賃金依存が高い
②賃金も社会保険・年金も・・・いい会社で決まる
(2)90年代以降の「構造改革」がもたらした若者の困難
①「構造改革」以前は、学校から社会への接続にそれなりの道があつた
・新卒一括採用、終身雇用、年功賃金 ~ 中小の工場で働く、また農業など家業を継ぐ・・・
②構造改革
・社会保障が貧困なもので雇用破壊 ~ 非正規雇用の拡大。一気に、貧困と格差の拡大
・少なくなったイスをめぐるイス取り競争〜 企業に選ばれる商品としての「自分」づくり競争
〜 利潤第一社会の矛盾を覆い隠す「自己責任論」(誰にも「全力つくしたか」と問われると後悔がある)
(3)自己責任がはやる「理由」 ~ 「他人事」にする仕掛け
・04年 小泉内閣 イラクの拉致事件の時に「つかまったのは自己責任」という言葉から転換した。
罪の意識~ 自衛隊を戦場に送ってしまった。それに抗議もできず容認したという罪悪感
「拉致の責任の一端は自分にもある」と突き刺さっていたものが「自己責任」論で解放された
~ それで一気に広がった。「普通の人ではない」「得たいが知れない」とスケープゴートに
・ホームレス、ネットカフェ問題でも… 同様の「免責共同体」
当事者の「自己責任」にしてしまえば、自分は「心を痛める必要はない」、~ 「便利」な言葉
・それは不満の「解消」のために「弱者を攻撃できる立場」に自分を立たせる「根拠」を与えてくれる
不満、不安のうっ積 ⇒仮想的をつくり「団結」させる(小泉手法)
Ⅱ 「憲法」から考える・・・ 「自己責任」を否定している憲法
(1)憲法とは 他の法律と次元が違うもの・・・ 国家権力をコントロールする足場
・もともと、イギリスの国王の勝手気ままを抑えるために発達・・・立憲君主制
・国民が主人公として、国家に政治の内容を強制するもの
声をあげるときにだけ確かな足場となるもの。声をあげなければただの紙切れ
(2)「自己責任論」を否定している憲法
①25条「すべて国民は、文化的で最低限度の生活を営む権利を有する」
「がんばった人だけ応援する」とかではない。
②27条「労働する権利と義務を有する」
「労働する権利」を保障するのは国家の役割、自己責任ではない。
〜 ILO宣言「永続する平和は、社会正義を基礎としてのみ確立できる」/ 平和の願いと一体のもの
Ⅲ 「自己責任」では貧困、生き辛さを克服できない
(1)「勝組」も辛い、追い立てる仕組
・大量の失業、半失業の存在〜「いつでも変わりはいるぞ」の圧力~ 過労死水準の長時間過密労働
(2)ブラック企業はお断り、と言える環境を
① 福祉の充実は、よりよい労働をつくり出す土台
・生きるために、どんな酷い労働条件でも受け入れざるを得ない状況の解決
・実は、100年以上前に、その考え仕組みは誕生している。
ブースの雇用政策 失業保険・公的扶助、無拠出年金制度
フランスの労働運動 「失業する権利がある」の意味
② 時短の深い意味
生産力が発展 → 同じ仕事量が少ない人数でできる。
時短で、失業者を少なくして、「ブラック企業お断り」が出来る環境をつくること。
Ⅳ そもそも「責任」とは、ふさわしい能力があってこそ問われるもの。
・赤ちゃんが空腹でいる ~ 誰も「自己責任」とは言わない
・人間の能力とは・・・ 個人にだけあるのではない。共同的なものとしてある
〜「オギャー」と生まれ、誰の手も借りず育った人はいない。その過程、環境の差
・教育、医療や子育てなどの社会制度の整備具合
宇宙学者 ホーキンス 障害者を支える制度があったからこそ
・「努力する能力」には差がない、という誤解
親、保育士、教師、隣人、友人などの支援、その体験とし「共同」の力として獲得
・日本では、家庭環境・家庭の資力に左右される…そもそもスタートラインが違う。
Ⅴ 変えるのは私たち
(1)現代はどういう時代か
①客観的には「自己責任」論を支えていた構造(戦後の企業社会)の崩壊
→貧困の拡大。若者の雇用、福祉の課題が、はじめて全国民的な課題となる条件が生まれた
②社会の持続性が大きな課題となっている
・少子化 労働力の再生産ができない社会 /子どもの医療費・高校無償化など
・福祉現場の担い手不足 / 県議会での決議「処遇改善の声」
・長期的な経済の成長への危惧 第一生命経済研究所「非正規の拡大による内需低迷、生産性の低下」
③世紀という流れの中でみると人権保障の面で巨大な前進
世界人民宣言48年、国際人権規約66年、女性差別撤廃条約79年、子どもの権利条約89年
日本 女性の参政権1945年、障害者の教育権の保障、養護学校の設立/1975年。
④多様な市民運動の発展 ~ シングルイシューの取組とその重なりの可能性
反貧困や各種の子育てサークル、環境問題などNPOの発展。原発、TPPなど一点共同のひろがり。
(2)「自己責任」論の強調〜 政治経済の矛盾の深刻さの表れ
①一人一人の苦しみには、「ひとりじゃない」という客観的土台がある。経済がつくりだす矛盾
〜 だから支配する側は、「自己責任」を強調し、国民同士を敵対させる「分断」攻撃を行う
②私たちの力は「連帯」
・問題の共有 ~ 「他人事」にしないリアルな状況の共有 /聞き取り活動は重要!
・展望の共有 ~ ①原因を知り、解決の方法を学ぶ。② 共に運動する仲間の存在
~この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない(12条)
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