全原発の活断層調査は当然。が、直下型地震の危険は?
原発立地における活断層の定義をようやく地震学の常識である40万年前に変更される。原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理は、10月4日の毎日新聞のインタビューで、「建設中も含めた全原発で敷地内に活断層があるか総点検する」と述べている。 「総点検は不可避、当然」との社説もあいついでいる。
が、3.11をうけて、日本地震学会は、地震の予知は「非常に困難」とし,これまでの①地震発生は(概ね)周期的であり,②大きな地震の発生前には識別可能な「前兆」現象が存在するというパラダイムをリセットする必要があるとの議論されるなど根本的な見直しがされようとしている。
活断層の有無に関係ない直下型地震をどう評価するのか・・ 果たして揺れない地盤があるのか・・・
【「40万年前以降」追加提案=活断層、時期で定義拡大-円滑な認定促す目的・規制委 時事12/7】
【地震学の今を問う (東北地方太平洋沖地震対応臨時委員会報告)2012/5】
【敦賀原発活断層 全国で総点検を進めよ 琉球新報12/12】
【敦賀・廃炉か 全原発の調査は不可避 東京12/12】
【社説:敦賀原発の活断層 規制委の判断は当然だ 毎日12/11】
【原発と活断層 立地の総点検迫られる 中国新聞12/4】
日本地震学会のQ&Aの1つに【地震予知の信頼性】がある。
◆質問:地震予知はどの程度あてになるのでしょうか?◇回答: 日本で唯一予知できる(前兆現象検出+地震前の災害対策実行ができる)可能性のある東海地震ですら、必ずしも予知できるとは限りません。阪神・淡路大震災を引き起こした1995年兵庫県南部地震のようなM7クラスの内陸の浅い部分で起こる地震(いわゆる「直下型地震」)の予知はさらに困難です。加えて、それより一まわり小さいM6.5クラスの「直下型地震」は、日本のどの場所でも(活断層の有無に関係なく)起こる可能性があり、この程度の大きさの地震の予知(FAQ 2-4 で述べたプレスリップに伴う地殻変動等の現象の地震前の検知)は現状ではほとんど不可能と考えられています。M 6.5程度でも浅い地震の場合、その直上では震度6弱以上になり得ます。たとえば、東海地震が発生しなくても、M6.5の浅い地震が発生して、静岡県で大きな被害が生じることも有りえるわけです。
したがって、結論からいうと、地震予知を過剰に信頼してはいけないと思います。地震は唐突にやってくるものと理解し、それに対する日頃の備えをしておくのが一番大切です。 その上で、地震予知もなされれば幸運であると考えておくべきだと思います。たとえば、静岡県は、東海地震に対して、地震予知ができた場合とできない場合それぞれに対して、 被害想定(なゐふる27号(2001年9月号)参照)をおこなっています。(K)
~ なお「震度6弱」 520~830ガル、 「震度6強」 830-1500ガル
【内閣府防災部門 「地震被害想定支援マニュアル」】
直下型地震は、海溝型地震に比べて、地表面加速度が大きく、1000gal以上が多く観測されている。
この程度の地震は、活断層に関係なく起こる可能性があるというなら、活断層でないので大丈夫といえるか。
地震学の最新の知見を反映させるとなると、根本的な見直しがされているもとで、その基準がいつできるのか・・・ 再稼働の判断すら当分できないということではないか。
【「40万年前以降」追加提案=活断層、時期で定義拡大-円滑な認定促す目的・規制委 時事12/7】原発に対する地震や津波の影響を考慮し、新たな安全基準を議論する原子力規制委員会の専門家検討会の会合が7日開かれ、これまで原発の耐震設計審査指針で12万~13万年前以降に動くこととされてきた活断層の定義について、規制委から、判断材料が乏しい場合、40万年前以降の地形や地質を検討して認定するとした規定を追加する提案がなされた。特に異論は出ず、指針に盛り込まれる見通し。
政府の地震調査研究推進本部は活断層を、数十万年前以降繰り返し活動し、将来も繰り返し動くことが推定される断層と位置づけ、具体的な活動時期について「約40万年前程度を目安」としている。
規制委の提案は同本部の見解に沿った形。検討会座長役の島崎邦彦委員長代理は、40万年前から日本において、地盤への力のかかり方は変わっていないと指摘。12万~13万年前以降とする定義でも問題はないものの、活動時期がそれ以前のものを示す材料しかない場合、活断層と認められないなどこれまでの適用の仕方に問題があったとした。
その上で、定義の年代を広げることで、従来判断材料が乏しいとされたケースでも、スムーズに活断層の認定ができるようになるとの認識を示した。
【敦賀原発活断層 全国で総点検を進めよ 琉球新報12/12】この場所に原子力発電所を造るべきではなかったと理解すべきだろう。原子力規制委員会の評価会合が、日本原子力発電(原電)敦賀原発2号機の原子炉建屋直下に通っている破砕帯が活断層の可能性が高いと結論付けた。
原子炉から約250メートルの敷地内を全長35キロ以上の浦底断層という地震を起こす活断層が縦断しており、なぜこんな場所に原発が立っているのか強い疑問が湧く。
原電は1970年稼働の1号機が建設される40年以上前から浦底断層や破砕帯の存在を認識していた。しかし「活断層ではない」と評価し、国も認めていた。その判断を見直さないまま87年に2号機の運転を開始している。
しかし原電は2号機建設時の安全審査で、今回問題となった直下の破砕帯と敷地内の浦底断層の追加調査を実施していた。活断層であることを把握できた可能性があるが、原電は「問題はない」との調査結果をまとめ、審査で建設が認められている。
原電が浦底断層を活断層と初めて認めたのは2008年に3、4号機の増設審査で専門家から「地質調査を恣意(しい)的に解釈している」と指摘されたためだ。建設を阻害する情報を意図的に排除してきたとしか思えない。原電はもはや1、2号機を廃炉にし、3、4号機の建設を断念するしかない。「安全神話」から目を覚ますべきだ。
このような事業者任せともいえる原発立地を可能にしてきたのが、旧原子力安全・保安院の体質にあったのは明らかだ。原発推進の資源エネルギー庁と規制する立場の保安院が同じ経済産業省にあり、省内で人事異動が繰り返されてきた。電力側の調査追認に陥り、公平とは程遠い安全審査に終始してきたのは明らかであり、責任は重い。
こうした反省からことし9月に発足した原子力規制委員会は現在、敦賀など6原発で活断層の有無を調べている。現地調査団は全員、過去に原発の安全審査に関与した経験がない専門家で構成されている。
今回の評価と同様に、政治からの独立と信頼回復のため、自立した規制行政を確立する必要がある。過去の評価の誤りをためらわずに指摘し、科学的に判断する姿勢を貫いてほしい。
さらに6カ所だけでなく、この機会に全国の原発周辺で断層の総点検を進める必要がある。
【敦賀・廃炉か 全原発の調査は不可避 東京12/12】まっ黒という判定だ。科学者たちは、日本原電敦賀原発2号機が“地震の卵”の上にある危ないものだと評価した。地震国日本の地下は断層だらけではないか。全原発の総点検は避けられない。
四人の専門家の判断は、ずれることなく一致した。活断層だ。敦賀原発2号機の運転開始は一九八七年二月、比較的新しい部類に入る。だが、四半世紀もの間、“地震の卵”と言われる不安定な地層の上に原子炉が乗っていた。背筋が寒くならないか。
敦賀原発の敷地内には「浦底断層」という名の活断層が走っており、破砕帯と呼ばれる断層の一種がそこから枝分かれするように2号機の真下へ延びている。この破砕帯が浦底断層の活動に連動して動き、地震を引き起こす恐れがあるか。つまり活断層であるかどうかが、検討されてきた。
以前から危険は指摘されていた。日本原電は現存する原発では最も古い敦賀1号機の建設時から、破砕帯の存在を知っていた。だが連動して動く恐れはないと今も主張し続けている。つじつま合わせと疑われても仕方あるまい。
このように事業者側に都合の良い報告を、一般に旧原子力安全・保安院のような政府機関が追認し、政治が放置してきたことから原発の安全神話が生まれ、神話への依存が福島第一原発事故につながったのではなかったか。
福島の教訓から今年九月に発足した原子力規制委員会は、電力側の意向を排し、独自の調査に基づいて独自の判断を下すという、当たり前の仕事をしただけだ。
今後、関西電力大飯原発の追加調査をはじめ、東北電力東通原発、北陸電力志賀原発など五カ所で現地調査を実施する。だが、日本列島は地震の巣、近年の調査技術の発達で、新たな活断層が見つかる可能性は高い。このような結果が出た以上、全原発の現地調査を速やかに行うべきではないか。
規制委は、安全基準に満たない原発の停止を命令できるようになる。地震による被災が予見される原発の稼働は、許すべきではない。政府も、科学的知見に基づく規制委の判断を受け入れ、廃炉に向かうべきである。
もちろん、廃炉後の新たな産業と雇用の確保、創出には、政府や自治体が責任を持って取り組むべきだ。
敦賀の場合、既存の送電網や港湾施設などを生かし、新しいエネルギー産業を育てることも、未来への選択肢の一つだろう。
【社説:敦賀原発の活断層 規制委の判断は当然だ 毎日12/11】原子力規制委員会の有識者による調査団が、日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の原子炉建屋直下に活断層が通っている可能性が高いと結論づけた。これを受け、規制委の田中俊一委員長が、2号機の再稼働を認めない考えを表明した。
活断層の直上に原発の重要施設があると、活断層が地震を起こした時に重大事故につながる。規制委員長の判断は当然のことだ。原電は今後も断層調査を続ける意向を示しているが、運転開始から40年以上過ぎた敦賀1号機ともども、廃炉措置が迫られるだろう。
活断層の専門家らで作る規制委の調査団は今月初め、敦賀原発を現地調査した。敦賀1、2号機の東約200メートルには「浦底断層」と呼ばれる活断層が走る。そこから枝分かれした複数の断層(破砕帯)が原子炉建屋の下を通っていたからだ。
10日に開かれた評価会合では、現地調査で新たに見つかった破砕帯が原子炉直下を通る活断層で、浦底断層と連動する恐れがあることで専門家の意見がほぼ一致した。浦底断層は阪神大震災を上回る規模の地震を起こす可能性があり、原発敷地内にあること自体が異常だとの意見も出た。最後に、田中委員長が「今のままでは再稼働の安全審査はとてもできない」との見解を示した。
これまでの経過から浮かび上がるのは、原電の調査の甘さだ。
浦底断層は、1号機の設置許可時(66年)には存在を知られていなかったが、2号機が営業運転を開始(87年)した後の91年には学術書に活断層と記載された。それでも原電は否定し続け、04年には3、4号機の増設許可を申請した。活断層と認めたのは08年3月のことだ。
電力会社の調査の甘さは、原電だけではない。東日本大震災をきっかけとした再評価作業の過程で、活断層が見逃されていた可能性のある原発が相次いで浮上した。関西電力大飯原発の敷地を規制委の専門家らが調査した際にも、活断層の疑いがある新たな地層のずれが見つかり、追加調査を指示したばかりだ。
敦賀原発の調査に参加した専門家からは「電力会社は無理な解釈を繰り返し、自ら進んで不利になる証拠を出さない」という声も出ている。
ずさんな電力会社の調査を見逃してきた国の安全審査は、単なる通過儀礼だったのか。そのあり方も、厳しく問われなければならない。
規制委は策定中の新たな安全基準の中で、活断層の定義を拡大し、原発直近の活断層の評価手法も見直す方針だ。地震国日本にはいたる所に活断層がある。3・11後の活断層研究の進展も踏まえた原発の総点検なしに、再稼働などあり得まい。
【原発と活断層 立地の総点検迫られる 中国新聞12/4】地震列島で原発を再稼働させるためのハードルがまたひとつ、高くなった。
日本原子力発電敦賀原発(福井県)1、2号機の直下を通る断層だ。この断層が過去、近くの活断層と連動して動いた可能性があることが、原子力安全・保安院の調査で分かった。
原発を推進してきた国の機関が指摘した点で、異例ではある。福島第1原発の事故以降、地震に伴う原発の未知の危機に不安を募らせる国民感情や地震学者らの警告を軽視できなくなったのだろう。
原発の耐震性を判断する場合に考慮する活断層は、12万~13万年前以降の活動があるものと国は規定する。
敦賀の浦底断層の最新の活動時期は4500年前以降だという。しかも、1、2号機の原子炉建屋の下などに、「破砕帯」と呼ばれる軟弱な断層が約160見つかった。破砕帯は活断層に伴って、新しい時代に動いた可能性が否めないとされる。
日本原電は2004年に3、4号機増設を申請した際も「浦底断層は活断層ではない」としていた。しかし、今年3月、この断層の地震エネルギーが想定の2倍以上と分かり、加えて基礎データを05年には得ていたことが明るみに出た。隠蔽(いんぺい)体質と言われても仕方がない。
そもそも国や原子力産業が唱えてきた「安全」とは何か。
原子炉は燃料ペレットから原子炉建屋までの「五重の壁」を誇ってきたが、それはプラント技術である。文字通り、その根底を覆すような事態をどれだけ想定していたのか。
日本の原発揺籃(ようらん)期は1960年代後半から70年代前半だ。プレートテクトニクス理論など現代地震学の完成・普及を待たず、そのまま列島の地震活動静穏期に原発の新設・増設ラッシュが続いた。敦賀1号機の運転開始は1970年で40年を超す。従来の理論だけでは通用しない。
想定する最大の揺れの強さを「基準地震動」と呼ぶ。07年には中越沖地震に伴って柏崎刈羽原発(新潟県)で基準地震動を上回る揺れを記録し、各地で活断層の見直しが相次いだ。
さらに東日本大震災後、列島各地で地層の均衡が崩れたとして、従来考慮していなかった活断層の連動も想定するよう保安院は電力各社に指示している。
原発立地に伴う活断層評価はようやく厳しくなってきた。
保安院は日本原電に速やかな再調査を指示したというが、第三者機関を交えた調査でなければ、今や国民の納得が得られまい。
敦賀原発には日本原子力研究開発機構の高速増殖炉原型炉もんじゅ、関西電力美浜原発も近接している。「原発銀座」の住民の不安は募るばかりだろう。
この際、国内全ての原発の立地の総点検が必要ではないか。場合によっては廃炉になる原発が出てくるのもやむを得ない。
保安院は中国電力島根原発(松江市)でも、新たに日本海側の断層が51・5キロ連動すると想定した。従来は陸地の宍道断層(22キロ)を考慮してきたが、再検討が必要になってきた。
島根1号機はあと2年で運転開始から40年。新たなリスクが出てくるとすれば、40年を超す運転の判断にはさらに納得できる根拠を示してほしい。
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