領土問題と国際ルールの変遷(メモ)
領土問題を考えるうえで「国際ルール」に照らしてというが、そのルールが、どういう経緯でつくられ、また歴史的に変遷してきたことを知ることは、主張すべきは主張しながらも、歴史的事実をどう考えるか・・・両国民間の一致点、協力点をさぐる上で大切ではないかと思って、学習会の準備として、門外漢だが、自分なりに整理してきたメモ。
領土問題は、日本の場合は、侵略戦争とその敗戦・ポツダム宣言受諾、そしてサ条約の単独講和という問題が存在している。
【領土問題の出発点〜ポツダム宣言2012/9】
【はじめに】
①領土であるかどうかはどう決める(現在のルール)。
・古くからその地に人が住み今も住んでいる、または漁業などの基地として使用し続けてきた場合は、明白
・「実効支配」/発見や「領土宣言」しただけては認められない、居住や経済活動、調査活動などの実態が必要。/何より公権力の行使
②なぜ領土問題がうまれてきたか。
・航海技術・海底資源の発掘技術の進展
航海能力も未熟な時代 ~ 遠方の孤島に経済的価値なし
〃 が発達すると 孤島も、漁場の確保、基地として有用に
さらに海底資源の開発 資源獲得に「排他的経済水域」が重要に
〜 古くから知っていた島であっても、昔は、「領土」にする意味がなかった。それが技術の進歩とともに「価値」を持つようになった。
・国力の不均等発展~ 力、威圧での「解決」は、その報復を招く。
・「国際ルール」も大航海時代、帝国主義の時代、二次大戦後の民族自決権の時代と大きく変化
③領土交渉とは・・・ 実利実益による合理的解決が必要
a 歴史、国際法にもとづく冷静な議論を・・
・「領土問題は存在しない」というだけでは何も解決しない。
~ 相手の主張をよく知る。複雑な問題は、その複雑さを知る。
・両者の主張に違いがあれば、継続的な交渉事項として、漁業協定や共同開発など、両国民の利益となる解決(妥協)が必要
・・・ それ以外は、武力でしか「解決」しない
b そもそも国際法をどうとらえるか――
欧米諸国を中心に出来上がってきたもの。ルールづくりから疎外されてきた新興国、非同盟諸国の主張をどうとらえるか。また影響が強まる中で、変化してきたし、今後、変わることもありうるというもの。(早くに技術が進歩し、近代「国家」の形態を持つ国が有利なルール、そのもとでの『既得権益』の見直しと言える)
【国際法が幅をきかす時代〜 「先占」論理の誕生と崩壊】
①19世紀末 植民地獲得合戦のルールとして誕生したのが「先占」
(それ以前は、「発見」 アメリカ大陸「発見」など・・・)
が、ドイツ、日本など後発帝国主義国の隆盛とともに、ルールはあってなきがごとしに。そして戦争へ・・
②極めて身勝手なルール 先住民が住んでいる土地を「所有者がいない」と見なして奪う
~明治の元勲・木戸孝允「万国公法は小国を奪う一道具」。
③第二次大戦後、植民地体制の崩壊。「先占」のルールの崩壊
・新しいルール誕生/「先占」の国際法で奪われた土地を、自決権を行使して独立を勝ち取る。
・天然資源についても/ 一定の補償のもと国有化できるルールに変更
1962年 国際連合で「天然資源に対する恒久主権の権利」の宣言
1973年 石油ショック OPECの価格攻勢
1979年 イラン革命後、国有化の動き加速
*その時うまれたのが「収用と補償」条項
産油国による油田国有化に対抗する為に米英によって編み出されたルール。
「収用」(政府が民間企業を国有化、資産を強制的に接収)に対する「補償」(外資が「収用」で被った損失の代償を求めることができる)。
→ が、TPPなどで、今、米国が持ち出しているのが「間接収用」という危険な規定。
「間接収用」とは、資産の接収など物理的な損害を受けていなくても、現地国政府の法律や規制のせいで外資系企業の営利活動が制約された場合、収用と同等の措置と見なして損害賠償を請求するというもの。
・同時に、無人島などの領有については「先占」のルールは、国際基準として生きている。
【海をめぐるルールの変化】
・公海 どの国にも属さない、だれもが自由に行き来したり、魚をとったりできる海のこと
・領海 その海の近くの国の陸地のつづき、つまりその国の領土と同じという考えかた
・そもそも公海と領海は国際的な法律で決められたわけではない。
国どうしが守る考えとして、17世紀末頃に世界に拡大。
領海は3海里(1海里1,852mなので、約5.5キロ。当時の大砲の届く範囲と言われる)
・大陸棚条約 1945年 トルーマン大統領が「公海の下にあっても米国の管轄権」と宣言。
58年採択(現在失効)水深200mまでの海底、それを越える場合は、開発可能な所までを大陸棚と定義
→アメリカ大陸地殻で発見された海底油田を所有するため。/技術力をもつ先進国に有利な「国際ルール」(その後見直し)
→ これを契機に、世界中で、領海を広げる動きが活発化。
・1966年 漁業及び公海の生物資源の保存に関する条約 12マイル以内(19.3キロ)
・1973年 海洋法会議 領海12海里、排他的経済水域200海里の主張が多数に/日本反対)
・1982年「国連海洋法条約」 領海12海里以内と決定。同時に「排他的経済水域」の決定
・排他的経済水域」/陸地から200海里。その国が魚や海底資源をとったり管理する権利をもつ。
→海底ケーブル、パイプラインの設置などは自由という公海と領海の中間の海という考え。
→その起点「島」は、居住、継続的な経済活動が要件(中国、韓国 沖の鳥島は、「岩」)
→ 向かいあう国の「境界」の設定ではルールの変遷がつづく。後段参照
*公海での無害航行権
外国船舶(軍艦含む)が、沿岸国の平和・秩序・安全を害さないかぎり、その国の領海を自由に通航できる権利。潜水艦の潜航は含まれない。(軍艦等の通過には、摩擦をさけるため事前通告するのが通例)
【ほとんど無価値だった無人島の価値のへ変遷】
・スケッチ的に、経済的に価値をもつ水域(領海、排他的経済水域の広さを図式(島を点として仮定)
・領海3海里の範囲 図の尖閣諸島の の中の「・」
・領海12海里の範囲 〃 「○」
・200海里 沖縄、台湾の半分、中国大陸沿岸まで届く巨大な範囲
→ 日中国交回復の1972年とは・・
長らく海の中の「点」でしかなかった島が、大きな経済的価値を持つ方向で国際法が動こうとしてした時期。
その時に事実上の「棚上げ」合意した重み(ちなみにその時の日本は3海里の立場)
【東シナ海ガス田開発~ 中間点をめぐるルールの変遷から見る】
・中国の開発している地域が、日中の中間点の直近/ 日本の主張 ガス田は、日本側にも続いており、日本の資源に対する干渉であり、一方的な開発を批判。
・中国「大陸棚」説。沖縄トラフまでの大陸棚が排他的経済水域
・排他的経済水域 200海里 →が、向かいあう国の「境界」の設定ではルールの変遷がつづく
≪国際司法裁判所の最近の判例≫
・「中間点」「大陸棚」説もとらず、「中間点+特殊事情」で決着
・特殊事情とは 中間点の基点をなす双方の領土の形状。大陸と島しょでは、大陸に重きをおく。
・東シナ海の場合 中国は大陸、日本は島 → 例えば、3対1とかで中国の排他的経済水域が拡大する
≪実益による解決≫
・なぜ中国は訴えないか…エネルギー問題の解決を急ぎたい。共同開発の方が有利(08年に合意)
→ これは日本にとっても実利のあること(英・ノルウェーの油田開発などの実例あり )
・漁船衝突事件でガス田開発交渉は延期 ~ 共同開発は日本の中間線論に近い。国内の加熱するナショナリズムの影響で中国政府動けず/「大陸棚説を放棄したのか」「日本に屈服したのか」という世論
【おわりに】
最後に、かもがわ出版の松竹氏のコラムを紹介。
【主権と協力のバランスということ】
【中国はなぜ日本の尖閣領有に抗議しなかったのか・上】
【中国はなぜ日本の尖閣領有に抗議しなかったのか・下】
すとともに… ナショナリズム台頭を土壌となっている「格差と貧困の拡大」をどう改革するかが、問われていると思う。
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