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原発30キロ圏 7割避難先メド立つ??? 全員避難は保証されていない

 共同通信のアンケート調査で、過酷事故での被曝を提言させる「原子力災害対策重点区域」(30キロ)のうち、7割の自治体で避難先確保の見通しがたったとのこと・・・・本当だろうか。
 避難先は、風向きを考えると東西南北に確保する必要がある(「原子力防災」松野元)、地震なとどの複合災害を考えると複数のルート確保もいる。渋滞にならないよう移動手段の工夫もいる。入院や介護施設の入居者の受け入れ先は、・・・
 原子力災害対策指針は、きわめて抽象的。机上のプランで対策はできていると言われてはたまらない。
【原発30キロ圏 3割 避難先メド立たず 東京新聞11/4】
【原子力災害対策指針】
【この国と原発:第5部・立ちすくむ自治体 松野元・元原子力発電技術機構・緊急時対策技術開発室長の話「全員避難、保証無理なら廃炉に」 毎日4/23】

 「実際の避難に当たっては、原子力規制委員会が把握した環境放射線モニタリング結果等を踏まえて」となっているが、全電源喪失など、一日後に格納容器が破損する危険が出たときに開始しないとまにあわないのではないか。
 また「原子力災害対策本部が、輸送手段、経路、避難所の確保等の要素を考慮して避難の判断を行った上で、避難指示を地方公共団体を通じて混乱がないよう住民等に適切かつ明確に伝えることが必要である」
 となっているが、15条通知とともに、風向きなどを判断して、自治体を軸に、直ちに最大限の取組をするとしなければ、ならないのではないか。
(大規模災害の場合、自治体の機能、ネットワークも完全には機能しないことが前提とならなければならない)


【原発30キロ圏 3割 避難先メド立たず 東京新聞11/4】

 原発事故時の避難や屋内退避に備える「原子力災害対策重点区域」が原発から半径三十キロ圏に拡大されたのに伴い、新たに区域に入る二十道府県八十三市町村(福島県を除く)のうち、三割超の二十九自治体が避難先確保の見通しが立っていないことが三日、共同通信社によるアンケートで分かった。甲状腺被ばくを避けるための安定ヨウ素剤の住民への配布方法も九割が対応を決めていない。原子力規制委員会が十月末に決定した原子力災害対策指針による自治体の防災計画づくりは難航が必至だ。 
 アンケート結果によると、緊急時の避難先について「確保した」と答えたのは福井市や長崎県佐世保市など十二自治体にとどまった。「まだ確保していないが、できる見通しがある」は二十八自治体。「確保の見通しが立っていない」は北海道積丹町や福井県越前市、静岡県島田市など二十九自治体で最多。「確保したが不十分だ」は十自治体だった。
 指針では、重点区域の目安を半径十キロ圏から三十キロ圏に拡大した。しかし全域や周辺自治体が区域に含まれ、近隣に逃げ場がない自治体も多い。越前市は「ほぼ全域が三十キロ圏内で全市民が市外への避難となる」と答えた。
 県境をまたぐ広域避難も想定され、島田市は「他市、他県との調整が必要」と回答した。
 <原子力災害対策重点区域> 原発事故に備えて事前に対策をとる地域。放射線量を測定するモニタリングポストを設置するほか、事故や避難に関する情報を住民に確実に伝えるための防災無線などを整備する。従来は原発の半径10キロ圏を目安としていたが、原子力規制委員会が新たに策定した指針では30キロ圏に拡大。周辺自治体は規制委が試算した原発事故時の放射性物質の拡散予測も参考に、地域の事情に応じて区域の範囲を決める。


【原子力災害対策指針】

② 避難
避難は、住民等が一定量以上の被ばくを受ける可能性がある場合に採るべき措置である。放射性物質又は放射線からの放出源から距離を置くことにより、被ばくの低減を図るものである。
緊急時には、緊急事態が発生した時点で、原子力施設からの放射性物質の放出による被ばくを回避するため、まずPAZにおいて即時避難を実施する。それに続き、確率的影響を低減するため、UPZにおいて原子力施設の状況及び緊急時モニタリング結果により把握できた周辺の状況に基づいた避難を実施する。
実際の避難に当たっては、原子力規制委員会が把握した環境放射線モニタリング結果等を踏まえて、原子力災害対策本部が、輸送手段、経路、避難所の確保等の要素を考慮して避難の判断を行った上で、避難指示を地方公共団体を通じて混乱がないよう住民等に適切かつ明確に伝えることが必要である。
その際、住民等に避難による肉体的・精神的影響が生じることから、一般の住民等はもとより、自力避難が困難な災害時要援護者に対する配慮が必要である。また、避難場所の再移転が避けられない場合は、可能な限り少ない移転となるよう、避難場所の事前調整が必要である。さらに、プルームから避難する際は、風下軸から一定の範囲にいる住民に対して、必要な措置を講じるべきである。加えて、無用の被ばくを回避するため、必要に応じて立入制限区域を設定することも重要である。
なお、避難が遅れた住民や避難が困難となる住民等が、一時避難ができる施設については、今後、原子力規制委員会において検討し、本指針に記載する。

【この国と原発:第5部・立ちすくむ自治体 松野元・元原子力発電技術機構・緊急時対策技術開発室長の話「全員避難、保証無理なら廃炉に」 毎日4/23】

 ◇全員避難、保証無理なら廃炉に
 日本の原子炉立地審査指針の安全評価は、格納容器が壊れないことが前提だ。どんな重大な事故でも発電所敷地内で収まる建前だったため、原子力防災体制の整備は原子炉設置許可の条件とならず、原子力防災は「飾り」のような存在だった。本来はチェルノブイリ事故後に根本から見直すべきだった。面倒なことを嫌った政府の怠慢だと思う。

 福島第1原発事故では、地震で原子炉が自動停止してから津波で非常用ディーゼル発電機が壊れるまでの約1時間に緊急時対策支援システム(ERSS)がリアルタイムの予測をし、その情報を緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)につないで避難を容易にするはずだった。現地からのデータが途絶えても、ERSSには全交流電源喪失から炉心溶融に至る過酷事故などを想定したデータがいくつも内蔵されている。にもかかわらず活用できなかったのは、関係者に心構えがなかったからと言わざるを得ない。

 これだけの事故が起きたのに、日本は従来の考え方と体制からまだかじを切れていない。

 格納容器が壊れるほどの過酷事故の場合、早ければ25時間後に周辺に放射性物質が降り始める。その間に
少なくとも30キロ圏の人を全員、風下を避けて避難させねばならない。

 具体的には、原子力災害対策特別措置法が定める「第15条緊急事態」(全交流電源喪失・全冷却機能喪失など)の時点で避難を始めるべきだろう。福島の事故でいえば3月11日午後4時45分だ。炉心溶融が始まってからでは遅い。

 原子炉設置者側の対策も重要だ。格納容器の圧力を下げるベントの際に放射性物質の飛散を防ぐフィルターの設置はもちろん、注水用の水源確保や事故後の迅速な補償方法も決めておいたほうがいい。そして、自治体は国の指示がなくても対応できる能力と、独自の避難や安定ヨウ素剤配布の計画を持たねばならない。

 今各地で行われている避難訓練の決定的な問題は、30キロ圏の住民全員が事故時に本当に避難できるのかを確認していない点だ。米ニューヨーク州のショーラム原発は、避難計画を州知事が承認しなかったため、運転開始できずに89年、廃炉となった。日本でも住民の全員避難が保証できない原発は、遠慮なく廃炉にすべきだ。原子力と付き合うには本来、そのくらいの覚悟が必要だろう。(談)
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 ■人物略歴
 ◇まつの・げん
 1945年生まれ。東京大工学部電気工学科卒。67年四国電力入社。伊方原発、原子力部次長などを経て00〜03年、原子力発電技術機構(現・原子力安全基盤機構)に出向。ERSSの改良と原子力防災の指導などに従事した。著書に「原子力防災」。


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