米兵暴行は「事故」 「たまたま」 防衛相
「事件」を「事故」と言い換える。「最悪のタイミング」って、被害者や沖縄県民のことは眼中にない証拠。
「真面目に仕事をしている人も多い」「たまたま外から出張してきた米兵が起こす」(防衛相)=「機体に欠陥はない。人為的ミス」とのオスプレイの説明と同じ。「綱紀粛正」=「マニュアルの改訂」ということか。
相手を人と見ず、躊躇なく殺す訓練をし、また実践している軍隊(兵器)が「占領」状態そのままに存続していることが問われなくてはならない。
【米兵暴行は「事故」 防衛相、外務副大臣発言 琉球新報10/21】
【米軍再発防止策 地位協定改定が不可欠だ 琉球新報10/21】
【社説[夜間外出禁止令]政府の姿勢は弱すぎる 沖縄タイムス10/21】
以下は、先日、日米高官の発言や外交文書から整理したもの。
【米兵犯罪・オスプレイ強行 占領を継続する地位協定・安保 2012/10】
【米兵暴行は「事故」 防衛相、外務副大臣発言 琉球新報10/21】 【東京】米海軍兵による集団女性暴行致傷事件を受け、県内では事件の悪質性に 反発が高まっている。だが、政府の認識や危機感を疑う大臣らの発言が相次いでいる。 事件発生翌日の17日、防衛省ロビーで記者団に初めて事件の受け止めを聞かれた森本敏防衛相は「非常に深刻で重大な『事故』だ」と発言。「事件」を「事故」と表現した。 さらに同日、「もはや正気の沙汰ではない」と強く非難する仲井真弘多知事に対し、森本氏は「米兵でも真面目に仕事をしている人も多い」「たまたま外から出張してきた米兵が起こす」と、言い訳とも取れる言葉を並べた。 ルース駐日米大使に事件の再発防止を申し入れた会談後のぶら下がり会見でも、森本氏は「米国と緊密に連携して『事故』の根絶をする」と取り組みをアピールしたが、ここでも「事故」と表現。この会見では4度にわたり「事故」と口にした。 一方、海外出張中の玄葉光一郎外相に代わり、事件の対応に当たった吉良州司外務副大臣も18日の定例記者会見で、「今回の『事故』はあってはならない」と発言した。 県内では、米兵による事件・事故が繰り返されてきた。特に女性暴行事件は復帰後127件に上る。だが野田政権の大臣、副大臣が今回の事件を何度も「事故」と口にする姿勢からは、政府が「たまたま」(森本氏)起きた偶発事として捉えたい本心だけでなく、国民にもそうした印象を植え付けようとする思惑も透けて見える。
【米軍再発防止策 地位協定改定が不可欠だ 琉球新報10/21】米軍や日米両政府は何か勘違いをしていないか。米海軍兵による集団女性暴行致傷事件を受け、米政府と米軍が発表した再発防止策のことだ。在日米軍全兵士の一時的な深夜外出禁止などが柱だが、基本的に同様の重大事件が発生するたびに取られた措置であり、抜本的対策になるとは思えない。
日本政府の対応もおかしい。森本敏防衛相は県が求めている日米地位協定の抜本的見直しについて「現時点で改定する考え方は政府内にはない」と述べた。しかし、このような対米従属的な考え方や姿勢が、米軍・米兵絡みの事件事故が繰り返される根本的な要因であることを日本政府は認識すべきだ。
地位協定は前身の行政協定からの改定(1960年)時に、刑事裁判権をめぐる米軍人・軍属の公務中か否かの判断について、日本側が行うか裁定機関を設けるべきだとの要求が日本側にあったことが、外交文書で判明している。
この時、米軍側に配慮する形で要求を抑えたのが外務省だ。こうした姿勢が米軍側の占領意識、植民地意識を助長し、同様の犯罪を誘発しているのだ。
占領政策の延長線上のような決めごとが、今や時代遅れなのは明らかだ。「治外法権」「基地の自由使用」の特権をほしいままに傍若無人に振る舞う米兵や米軍組織の行動を規制し、事件事故を何としても抑え込む必要がある。
綱紀粛正、運用改善など、姑息(こそく)で小手先の対策では限界がある。国民が公平に感じ、米軍に緊張感を持たすような、地位協定の抜本的改定が不可欠だ。
1995年のきょう、在沖米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直しを求めて「県民総決起大会」が開かれた。言うまでもなく、米兵3人による少女乱暴事件を契機にした取り組みだ。そして今回、地位協定の見直しが進まない中で同様な事件が起きたのだ。
米軍普天間飛行場の県内移設計画が続き、欠陥が指摘されるオスプレイが強行配備される中で起きた重大事件。県民の人権と尊厳は二重にも三重にも踏みにじられている。
中部市町村会は18日の記者会見で「基地撤去まで訴えていかなければ根底から解決できない」と強調した。「県民総決起」は続いている。日米両政府は県民の積年の怒りと訴えを見誤ることなく、真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
【社説[夜間外出禁止令]政府の姿勢は弱すぎる 沖縄タイムス10/21】2人の米兵による女性暴行事件を受け、在日米軍は日本に滞在する全ての軍人を対象に夜間外出禁止令を発令した。
時間は午後11時から午前5時まで。対象者は陸海空軍と海兵隊の約4万人。違反者は統一軍法に基づき処罰する。
併せて、軍人・軍属への再研修、勤務時間外の行動指針の見直しにも触れた。
在日米軍トップのアンジェレラ司令官が会見し、ルース駐日米大使も立ち会った。
「迅速な対応」や「全米兵対象の異例の措置」とする本土側の評価とは違って、沖縄の反応は冷めている。この種の再発防止策が長期的に有効に機能してきたとはいえず、実効性の乏しい約束であることを肌で感じているからだ。
県民に大きな衝撃を与えた、1995年の暴行事件の後、米軍は再発防止を約束し、日本の文化や習慣について集中討議するなど規律教育を徹底したはずだった。
2008年に中学生が暴行された事件では、沖縄に駐留する軍人と軍属の外出を禁止する措置が講じられた。
だが、その後も米兵による事件は続いた。禁止令を破って、フェンスを乗り越え、酒を飲み…。
いくらトップが神妙な面持ちで綱紀粛正を説いたところで、空疎な演説にしか聞こえない。
半年ほどのローテーションで次々と入れ替わる海兵隊の若い兵士たちに、きちんとした教育がなされるのか、疑問である。
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今回、米側の対応が早かった背景には、新型輸送機オスプレイをめぐる県民の反発など、日米同盟を揺るがしかねない事態への危機感がある。
日本側にいたっては「最悪のタイミング」(官邸筋)で事件が起こったとし、反基地運動の高まりを心配している。被害に遭った女性のことより、日米関係への影響を懸念する政府とは何だろう。
米兵による事件・事故が発生するたびに、政治は問題を沈静化することに力を注いできた。しかし沈静化で問題は解決しない。被害者の苦しみは終わることがないからだ。
事件を受けて、過去に危険な目に遭ったことのある50代の女性は「狭い場所にいられない。大きな声が怖い。カウンセリングの電話番号を持たないと外出できない」と明かした。ようやく気持ちの整理がついたのは、事件から30年以上たってからだという。
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軍隊が持つ占領意識や暴力性は構造的なもので基地と性暴力は深く結びついている。
にもかかわらず、政府は米兵の性暴力を個人的な問題として押しやり、なぜ事件が繰り返されるのかの原因に目を向けようとしない。米兵犯罪が沖縄に集中しているのに、基地を受け入れている日本側の対策はあまりに傍観者的だ。
今回の事件でも、野田佳彦首相や森本敏防衛相の言葉から、自国民の安全や尊厳を守ろうとの決意や気迫が伝わらない。
政府はもっと強い姿勢で再発防止策を要求し、その実効性に目を光らせるべきだ。
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