自治体変質攻撃としての公務員・組合攻撃
「橋下・維新の会の自治体変質攻撃と国政進出」 金子邦彦「議会と自治体」2012/10よりの備忘録。
晴山 一穂・専修大学教授、二宮厚美・神戸大教授の論稿は、公務員制度の歴史的な発展、新しい福祉国家、地方自治の築くために求められる役割について展開している。
政治・行政のあり方と一体的にとりえることが重要。
【歴史的観点からみた公務員・公務員制度の今日的意義(メモ)2012/7】
【福祉国家型地方自治と公務労働 備忘録① 2011/9】
【「福祉国家型地方自治と公務労働」 備忘録② 2011/9】
【自治体変質攻撃としての公務員・組合攻撃】
「橋下・維新の会の自治体変質攻撃と国政進出」 金子邦彦「議会と自治体」2012/10
◆公務員・教員・組合の権利の抑圧条例
・戦後の公務員=戦前の「天皇の官吏」どはなく、憲法と公務員法で「全体の奉仕者」となった
→ 橋下「改革」はこの民主的性格を崩し、「首長にのみ従順な下僕」「住民への命令者」ら変質させるもの
→ 職員の政治活動規制、労働組合の権利制限する条例 7月市議会で可決
◆表現の自由の規制という時代錯誤
①地方公務員の政治活動が国家公務員より緩やかになった歴史経過の無視
・憲法、国家公務員法(1947年)で禁止されたもの
~ 政党への寄付、公務員の身分のまま公職への立候補、政党の役員になること。刑罰もなし
・GHQ 政令201号(48年、超憲法的な命令)が出され、国家公務員法の改定
~ スト権剥奪。「人事院規則で定める政治的行為」の禁止
→49年/「政党または政治的目的のために」おこなう「政治的行為」の禁止
政党への加入の勧誘運動
政党機関紙の発行・編集・配布、選挙活動
署名運動の企画・主宰・指導
示威運動の企画・組織・指導
集会での拡声器・ラジオでの政治的意見表明
政治的目的をもつ演劇の演出・主宰
政治上の主義主張の旗・腕章・記章・えり章の勢作・配布・着用など17項目
・アメリカのハッチ法をモデルに、それよりはるかに厳しい広範囲な規制
~ 大統領交代のたびに官僚トップクラスを入れ替える慣行。それによっても身分が左右されないようにするためのもの/ 「職員の権利の制限」というより「職員の権利、政治的自由を保護する」もの。
・国家公務員法改定への批判の広がりを受けて( 公法学会など「表現の自由」に違反など)
→ 49年、政府による「人事院規則」の「運用方針について」では「規則の目的」として・・・
国は行政の民主的運営のたる「職員の地位は、(政府の更迭等)政治勢力の影響または干渉から保護されて、政治の動向いかんにかかわらず常に安定してものでなければならない」として「従って、この規則が学問の自由及び思想の自由を尊重するように解釈され運用されなければならないことは当然である。」
・地方公務員法は、国公法と人事院規則の異様さと批判の広がりの中で1950年12月に制定
~ 国会審議をつうじ、地方公務員には政治的行為の禁止を国公法・人事院規則のように広範囲にせず、刑事罰をもうけないようになった。/しかも「職員の属する区域外において・・・政治的活動をすることができる」と、職員の政治的行為を原理的に認めている。
◆世界標準と堀越事件の東京高裁判決
・アメリカ 1993年ハッチ法改定。「スポイルシステム」の悪弊が影をひそめ、上司による職員に対する政治的行為の強要のおそれがなくなったと、公務員の政治的自由が一般市民と同等に拡大
・日本 2003年公安警察による「堀越事件」~ 社保庁職員の堀越さんか、休日に職場と離れた自宅周辺の住宅で「赤旗」号外を廃止しただけで起訴 /数ヶ月にわたる尾行、ビデオ盗撮を繰り返す
→ 東京高裁は、国公法の「適用違憲」として無罪判決。検察が最高裁に控訴
高裁判決では、「付言する」として「我が国における国家公務員に対する政治的行為の禁止は、諸外国、とりわけ西欧先進国に比べ、非常に広範なものとなっていることは否定しがたいところ」、「ILO151号条約は未批准とはいえ、様々な分野でグローバル化が進む中で、世界標準という視点からも改めてこの問題は考えられるべきであろう。」「公務員の政治的行為についても、上記のような様々な視点の下に、刑事罰の対象とすることの当否、その範囲等を含め、再検討され、整理されるべき時代が到来しているように思われる」
~同裁判のために弁護団が調査・分析した「欧米諸国の『公務員の政治活動の自由』――その比較法的研究」は圧巻の説得力を持っている。
・軽視できない動き ①「維新八策」に公約されている ②自民、みんな、たちあがれの3会派が、地公法を改悪法を提出(国家公務員同様の制限、区域外の規定の削除、罰則規定)
◆市条例 ~ 規制が無制限でない面も
・市条例と解釈・運用文書の内容/憲法・地公法違反、時代錯誤の不当なもの
→ 同時に、規制は無制限ではない
①規制される政治活動は「政治的目的」をもって行う場合に限定
その「政治目的」とは“特定の政党・政治団体・特定の内閣・自治体の執行機関(長)の支持・反対、及び公職選挙での支持・反対”
→ 内閣打倒、橋下退陣を目的とするデモ・集会を企画・組織することは規制の対象だが、単に参加するだけでは規制されない。/ 消費税増税反対、原発ゼロ等の要求での署名、集会、デモは対象とならない。
②規制される活動の場合も、「企画」「組織」「主宰」など中心的積極的役割が規制の対象
・政党への加入、まわりの知人に入党を勧誘することも規制の対象でなく、「党員倍加運動」など「勧誘運動」
・演劇も、「主宰」「演出」が規制の対象で、出演、観劇は対象外
・「政党機関紙の配布」だけ異質/ それ自体が「政治的目的」とされ、内容如何にかかわらず、無制限に回覧・配布するみとは規制の対象。条例の中でも特別に不当
→ 橋下「職員は民意を語るな」「公務員にプライバシーはない」など乱暴な職員論を主張しているが、上記のように、職員が一般的に民意を語ることも、市の行政施策に批判を表明することも「政治的目的」にはあたらず、自由であるというのが基本/ もちろん条例は、憲法、地公法の違反・逸脱であり、撤回、不適用の運動は重要。
◆労働組合の権利の不当な攻撃
・当局が応じる交渉内容の制限~ 給与、勤務時間、休暇、処分・昇給昇格の基準、福利厚生など。
~条例や予算等行政の内容。職員定数・処分の内容も「管理運営事項」として意見交換・交渉を禁止し説明のみ。
・労働組合に対する収支報告書の提出、組合事務所にど「便宜の供与はおこなわない」
*ILO勧告~公務員制度改革に関して連合、全労連の提訴に対するもの。
・団体交渉事項の範囲について「(特定の事項以外は)本来的もしくは本質的に就労条件に関わる問題であり、・・・したがって団体交渉の範囲外であるとみなされるべきではない」「団体交渉事項の範囲に関し労働組合と意義ある対話を行うことを要請する」(02年11月、結社の自由委員会第329次勧告)
~この時、日本政府は「管理運営事項」といえどもそれに影響を受ける労働条件については交渉されうる、と態度表明。/が、ILOは、それも事実上不十分と判断 / 大阪市条例は、その立場にもない。
・単なる敵視~組合と労働者の当然の権利を守ること、市の行政改善に組合とも必要な協力をする姿勢にない。
・便宜供与の一方的打ち切り/ 特別な合理的理由がない限り、労働組合の弱体化を図る不当労働行為というのが一般的な判例。
【備考】 1975年 民主的自治体労働者論
・革新自治体攻撃 /財政危機と公務員攻撃、自治体労働者と住民の分断→ 福祉切捨てと大規模開発
・自治労の弱点 ~ 地方行政=ブルジョア機構の末端、機械的労働者論では立ち向かえない。
①地方自治体とは 2つの性格 政府の出先機関、地方自治の機構
「住民本位の行政を、効率的な運営で」の提起 賃金、定数などの弱点の改善
②自治体労働者 住民全体への奉仕という職務を行う労働者
職務に相応しい労働条件、住民奉仕の行政を積極的に推進
③自治体労働組合 自治体労働者の生活と権利守る。
住民の利益を守るために地方政治の革新めざす
日常の職務でも住民立場で行政の改善にとりくむ/延長保育、窓口延長、財政分析など
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