「棚上げ合意を守れ」(駐日中国大使)の意味
中国人民網、韓国中央日報は、尖閣巡る事態の発端を国有化と指摘している。人民網は、日中国交正常化以来、「係争は棚上げにし、共同開発する」方針でのぞんできたことを紹介し、それに反する行為として取り上げでいる。
駐日中国大使も“領有権問題を「棚上げ」した過去の日中の合意に立ち返り、「領土紛争を交渉で解決する軌道に戻る」ことの必要性を訴えた。”(毎日インタビュー)とのこと。
棚上げ合意とは、中国は主権を主張するが、「日本の実効支配は認める」というもの。その合意に立ち返ることが要求になっているのは、興味深い。
【釣魚島問題の緩和こそ日本の正しい道 人民網9/14】
【社説 冷静と自制が求められる北東アジア領土紛争=韓国 中央日報9/17】
【中国の程永華駐日大使 インタビュー 毎日9/17】
また、人民網は、食料、環境、エネルギー問題など「人類共通のふるさと地球を救う喫緊の課題」に「われわれは手を携えて共同で対処する必要がある。」とのべている。
中央日報は「重要なのは、北東アジア各国の政府と国民が感情を自制して冷静を維持することだ。いくつかの無人島のために戦争をするのではないのなら」と]結んでいる。
中国国内でも「暴徒化”は真の愛国ではなく、非愛国的表現だ」(中国共産主義青年団)や、人民日報系の世論調査で47・7%が「平和的な話し合いで解決が可能」と回答しているなどの動きもある。
どの国には跳ね上がりの勢力はいるが、理性的な解決をもとめる勢力もいる(「日本は…」「中国は…」という、表現自体が、ミスディレクションである)。そのどちらの流れを強めるか、に外交の役割があると思う。
紛争の長期化は、グローバル化した経済のもとで、とりわけ日本に影響が大きいとブルームバーグ。
【尖閣問題めぐり日中関係が悪化、貿易に暗雲-日本企業に打撃 ブルームバーク9/18】
・日中間の貿易額はここ10年で3倍に膨らみ、3400億ドル(約26兆8000億円)超となっている。
・2011年、中国は日本にとって最大の輸出市場。日本は中国にとって4番目の輸出市場。中国の税関総署のデータでは、昨年の中国の日本への輸出総額は1483億ドルで、中国の日本からの輸入総額は1946億ドル。
・中国自動車工業協会(CAAM) 8月、日本メーカーの乗用車の販売台数が減少。一方でドイツや米国、韓国メーカーの乗用車は10%余り伸びた。
・オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)のエコノミスト、劉利剛氏(香港在勤)
「対立の悪化で不透明要因がまた一つ増えた」、「経済成長においては、日本の中国への依存度の方が、中国の日本への依存度よりも大きい。日本の景気回復はすでに弱々しく、腰折れする可能性がある。中国側への影響はより少ない」
東シナ海ガス田開発の共同開発で合意(08年)したのは、中国が、実利優先で、大陸棚説にこだわらず、日本の主張する中間線説に譲歩したもの(国際司法裁判所は、中間線+特殊事情、で線引きしている。大陸側が有利になる裁定)だっだが、国内世論の動向から、合意は頓挫、そして、あらためて大陸棚説を強調しはじめた。
いづれにしても、海底資源の探索、採掘にしても、平和的環境がなければ、手をつけられない・・・。
「棚上げ合意を守れ」の主張には、様々なメッセージがある気がする。
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