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子育て新システム関連法 成立後の運動の課題 全保連

子ども子育て新システム関連法案の成立後の運動に課題について、全国保育団体連絡会の見解。
 幅広い運動の結果、「市町村の保育実施義務」を24条1項として残したことなど今後、新システムの本質部分を骨抜きにしていく布石を打つことができたという到達点を確認するとともに、8項目にわたり課題を整理している。
 今、最ももとめられているのは保育士の待遇改善。保育の質確保、待機児童解消にとっても要であり、新システムなどではない。高知市でも保育士不足による「保育士待ち」の待機児童が42園にも広がっている。
【子ども・子育て関連法など社会保障・税一体改革関連法の成立と今後の運動の課題 全保連9/19】

【子ども・子育て関連法など社会保障・税一体改革関連法の成立と今後の運動の課題 全保連9/19】

◆問題だらけの子ども・子育て(新システム)関連法が成立

 8月10日、民自公3党による多数の暴挙によって、子ども・子育て支援法など子ども・子育て関連3法(以下、関連法)、消費税増税法などを含む社会保障・税一体改革関連8法が可決・成立しました。これらは社会保障・税一体改革とは名ばかりで、消費税を増税し、社会保障は切り下げるという、国民に負担を強いる問題ある法律といえます。
 特に関連法については、衆議院での審議中から問題点が多々指摘されてきましたが、3党協議による修正でそれらの問題点が解消されたとはいえません。多くの事項が制度施行までに定められる内閣府令や政省令に委ねられ、重要な基準などが国会審議を経ずに決められるように制度が設計されていることも変わっていません。また関連法は修正・改正によっていっそう複雑で難解な法律となり、参議院の審議の中でさらに多くの矛盾や問題点が明らかにされています。そのため、採決に際しては、法施行に当たっての要望(附帯決議)を19項目も列挙するという、まさに前代未聞の欠陥法となっているのです。
 しかし審議の過程で、関連法案の撤回を求める関係者の粘り強い運動や、よりよい保育を求める国民の声が「このまま法律を通してよいのか」というような世論を作りだしました。そのため、法律が成立したとはいえ、法律自体が政府・官僚の意図どおりにならなかったことの意味は大きく、今後、新システムの本質部分を骨抜きにしていく布石を打つことができた、ということを私たちは運動の成果として確認し、ここから新たな運動をすすめていくことが必要です。
 この間の運動の成果として、以下の点が確認できます。
 第一に、当初の政府提出法案では削除されていた児童福祉法24条の「市町村の保育実施義務」を修正協議の課題にし、24条1項として残したことです。残念ながら、市町村の保育実施義務は保育所保育に限定されたものですが、今後も市町村の責任による認可保育所での保育が基本であるとの国会答弁を引き出したこともふまえ、これを法解釈の基本としていくことが必要です。

 第二に、すべての施設について企業参入を認めていた総合こども園法を取り下げ、改正認定こども園法と差し替えたことで、企業参入に一定の歯止めがかけられたことです。学校教育には営利企業の参入を認めないという原則を守ったことに大きな意味があります。

 第三に、この間の運動のなかで、児童福祉法24条の「市町村の保育実施義務」は堅持するという一致点で、思想・信条を超えた保育関係者の共同がこれまでになく広がったこと、保育団体の中央組織の方針に依拠せず、地域レベルで要求で一致した運動がすすんだことです。これらのことは私たちの確信であると同時に、今後の運動をすすめていくにあたって新たな可能性となっています。

◆よりよい保育の実現を求めるたたかいはここから

 子ども・子育て(新システム)関連法の本格施行は2015年10月(消費税増税の本格実施)以降とされていますが、問題だらけの新システムを、このまま実施させてはなりません。実際に本格施行までに政局を大きく変えることができれば、消費税増税や新システムを含む社会保障制度の改悪にブレーキをかけ、新たな局面を切りひらくことも可能です。「新システムは実施するな」「現行制度のもとで切実な保育要求の実現を」と声をあげ続けることが大切です。
 しかし一方で政府は、新システムの本格施行以前にこれらを既成事実化しようと躍起になっています。7月に閣議決定した「日本再生戦略」の工程表では、2013年度に子ども・子育て会議を設置し、基本指針の策定、本格施行に向けて基準等の検討を開始することなどが示されています。そうであれば、たとえ新システムが実施されたとしても、できるだけ問題が生じないよう、実施に向けての諸課題にも具体的に対応し、意見表明を行っていくことが重要です。
 私たちは、新システムを実施させない新たなたたかいをすすめていくために、新システムの以下のような問題点を確認しています。これら新システムの問題点の改善を求めていくことが、政府がすすめる新システムの準備作業にも対応するものであることに確信をもって、運動を広げていきましょう。とりわけ、今後自治体が新システムの実施主体として位置付けられていることをふまえれば、自治体への要請も重要であり、安心して保育・子育てできる地域づくりに主体的に参画する立場で運動をすすめていくことが必要です。

◆新システムの問題点と改善の課題

1.市町村責任による保育所保育と、その他施設との直接契約制度が併存する(児童福祉法24条1項と2項の複雑な関係)
 修正児童福祉法24条1項では保育所保育における市町村の保育実施義務を定めながら、同2項ではその他の施設における保育について市町村は保育を確保する措置を講じればよいとされています。2項では、認定こども園や小規模保育などの事業者と利用者が直接契約を結んで保育の利用ができるように、市町村が環境を整える責任があると規定しているだけであり、市町村の責任があいまいにされているだけでなく、1項と2項が同列に扱われているという問題があります。
 私たちは、保育を必要とするすべての子どもに市町村の責任において保育が提供されることを求め、24条1項が24条の基本であることを法解釈として定着させ、すべての保育において現物給付としての保育が提供されるよう、市町村責任の強化を求めていきます。

2.支給認定により保育時間に上限設定-必要な保育が受けられなくなる
 新システムでは、市町村が保育の必要性と必要量を認定することになっていますが、認定は保護者の就労が基本とされるため、子どもにとって必要な保育が受けられなくなる恐れがあります。また、保護者のパート労働などに対応するとして短時間利用の区分が設けられると、保育を受けられる上限が、子どもの生活・発達保障という視点を欠いたまま機械的に設定されてしまうことが危惧されます。
 また、短時間児と長時間児が混在することにより集団保育が成り立ちにくくなるだけでなく、施設にとっては、「保育必要量」の長短がそのまま「給付費」の額に直結し、短時間児が増えると施設経営を圧迫することになります。
 子どもにとって保育が必要かどうかの観点からでなく、保護者の就労を基本に認定するようなことはやめるべきです。これまで受けられていた保育が受けられなくなることがないよう、また、保護者にこれまで以上の費用負担を強いることのないよう、子どもの権利保障、発達保障の立場からの保育時間の検討が必要です。

3.保育施設、事業の多元化により保育基準、保育条件に格差が持ち込まれる
 新システムでは保育所以外に多様な施設、事業が公費支出の対象となります。施設型給付の対象となる保育所、幼稚園、認定こども園(①幼保連携型、②保育所型、③幼稚園型、④地方裁量型)のほかに、地域型保育給付の対象となる、家庭的保育、小規模型保育、事業所内保育、居宅訪問型保育の各事業が併存します。
 それぞれ、都道府県や市町村が国の基準に基づき、認定、認可の基準を条例で定めることになっていますが、都道府県が条例化する幼保連携型以外の認定こども園の認定基準は参酌基準でよいことになっています(幼保連携型認定こども園は職員配置、施設面積、設備等については従うべき基準)。また、地域型保育給付の各事業の認可は市町村が行いますが、これも参酌基準です。
 地域型保育の諸事業や幼保連携型以外の認定こども園については、現行の保育所基準を緩めた基準が適用されることが想定され、施設、事業の多元化が基準の多様化、低下につながり、子どもの保育に格差が持ち込まれることになります。
 それぞれの施設、事業における基準や条件は現行保育所基準よりも緩和させず、子どもの権利保障にふさわしい基準を設定させることが必要です。

4.保護者の保育料負担が増える
 保育料は応能負担にすると説明していますが、法律上は明記されていません。また、世界的にも高額な保育料(国基準保育料の最高額は3歳未満児10万4千円、3歳以上児10万1千円)を引き下げるための財源も示されておらず、保育料が軽減される保障はありません。さらに、認定を超えた利用は自己負担になり、保育料の上乗せ徴収等も可能になることから、オプション料金の追加徴収など、保護者の負担増は避けられません。
 保育を必要とするすべての子どもが家庭の経済力に左右されることなく必要な保育を受けることができる保育料の設定を求めていくことが必要です。

5.保育と教育(幼児教育)が区分され、保育は時間預かりの託児に
 保育と幼児教育が区分され、幼児教育は3歳以上児を対象とした就学前準備教育、保育は時間預かりの託児的な位置付けになっています。しかし保育は、保護者の就労に応じた時間預かりではなく、その子どもにとって健全な生活リズムと人間としての発達、保育園・クラスの一員としての成長が保障されるものでなければなりません。
 乳幼児の発達の独自性をふまえて積み上げられてきた保育内容や保育実践の成果をないがしろにせず、さらに発展させることが必要です。

6.保育所施設整備費補助金が廃止される
 施設整備のための国庫補助金の支給対象から保育所が除外されています。保育施設の整備は各施設にまかされることになり、施設整備が難しくなります。都市部では待機児童解消のための保育所増設や保育所の耐震対策、増改築が、過疎地では保育所維持のための改築・修繕などが難しくなり、子どもの保育環境が悪化することになります。
 運営費の改善と施設整備費補助を維持すること、公立保育所については運営費と施設整備費の国庫補助を復活することが必要です。

7.企業参入が促進され、公費が保育のために使われなくなる
 学校教育への企業参入は阻止しましたが、保育所をはじめとする各施設、事業への企業参入は認められています。直接契約の施設や事業者が代理受領する給付金(補助金)には使途制限がなく、公費が保育費用以外に流用されることに歯止めがかけられなくなり、保育の質の低下を招く恐れがあります。保育の充実のためには、運営費の使途や株主配当への規制が必要です。

8.公立施設の民営化、統廃合が促進される
 自治体と事業者が協定を結んだ公私連携型保育所では、公有財産を営利企業も含めて時価より安く施設へ引き渡すことが可能になりました。地域における公立保育所の果たしてきた役割が軽視され、公立施設の民営化や統廃合が促進されてしまう危険性があります。公立保育所がこれまで地域で果たしてきた役割をふまえ、拡充こそが求められています。

 私たちは、児童福祉法24条の市町村の保育実施義務を最大限追及しながら、子どもの権利を侵害する新システムではなく、真に子ども本位の保育制度を実現するために、地域から創意あふれる実践と運動をすすめていきます。同時に、保育・幼児教育関係者だけでなく幅広い国民のみなさんに、すべての子どもたちに質の高い保育・教育の保障を求める運動への共同を、心から呼びかけます。

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