生活保護 類型別の保護率推移 ~ 高齢者と働く貧困層の拡大
社会保障・人口問題研究所のデータより
この5年間の世帯別の増加数を見ると(世帯数、同類型世帯のうちの率)
高齢世帯 1073650(5.6) →1405281(5.91) 331631
母子世帯 473838(11.75)→ 603540(15.37) 129702
障害・傷病 397357 465540 68183
その他世帯 109847(1.32) →227407(1.84) 117560
増加分647076のうち半分強が高齢世帯。
低すぎる年金など社会保障の貧弱さが高齢者世帯の増加によって顕在化・・増加の第一の原因
第二は、90年代後半の構造改革路線、特にリーマンショック後に稼働年齢増が激増。
【世帯類型別被保護世帯数及び世帯保護率の年次推移】
◇1960年と2010年比較
高齢世帯 24.6%→ 5.9%
母子世帯 18.0%→ 15.4% (最高は1965年24.82%)
その他世帯 1.77%→ 1.84%
◇高齢世帯の保護率は、ここ20年5%前後(ここ10年増加傾向)であるが、世帯数そのものの増加が、保護世帯の増加に反映している。
◇その他世帯(稼働年齢)は、90年代後半、消費税増税や労働法制規制緩和を景気に上場をはじめ、リーマンショック後に、1.34→1.84%と一気に悪化している
(北九州餓死問題、派遣村などうけて、生活保護の申請で一定の改善がされたこともあるだろう)。
◆稼働世帯の生活保護受給を「問題にする」主張があるが・・・働く環境はどうなっているか
【母子世帯】
・平成18(2006)年段階で、母子世帯の母の84.5%が就業しており、就業している者のうち、常用雇 用者が42.5%、臨時・パートが43.6%となっている。また、母子世帯の母で不就業の者のうち、「就職したい」とする者が78.7%となっている
(厚生労働省雇用均等・児童家庭局「全国母子世帯等 調査」(平成18(2006)年))。
・平成18(2006)年の国民生活基礎調査によると、母子世帯の1世帯当たり平均所得金額は、211万9 千円であり、世帯人員1人当たり平均所得金額は、81万3千円である。
(厚生労働省大臣官房統計情報部「国民生活基礎調査」( 平成18(2006)年)
・平成19(2007)年における母子世帯の完全失業率は7.1%(一般世帯の完全失業率は3.9%)となっ ており、前年の7.0%(一般世帯は4.1%)と比べてほぼ横ばいとなっている(総務省統計局「労働力調査」)。
(母子家庭の就業率の高さは、先進国の中で極めて高いのが日本の特徴—就業しても貧困から抜け出せない問題)
【求人倍率・失業率】
・有効求人倍率 平成24年6月 0.82倍
・完全失業者4.3% 281万人
・2010年度 保護世帯 全体140万世帯
うち「その他世帯」227,407 (1.84%)
「母子世帯」 108,794 (15.37%)
→ 総体としては、「仕事があるのに・・・」という状況ではない。
(介護士、看護師などの資格をとる支援などの充実はさらにはかる必要がある)
日弁連が最近発行したパンフレットは・・・
“実際、「その他の世帯」の約3分の1の世帯は働いています。「働いているが最低生活費以下の給料しか出ない」ために保護を利用しているのです。
また、「その他の世帯」の世帯員の約半数は、60 代以上と10 代以下で、そもそも「働ける人」とはいえません。
さらに、「障害者世帯」「傷病者世帯」は「世帯主が働けないほどの障害や傷病を持っている世帯」等なので、「その他の世帯」には、中軽度の障害・傷病等を抱えている人も多く含まれています。
雇用情勢が悪化する中で、中高年齢者、中軽度の障害や傷病を持つ人、低学歴・無資格の人、人間関係が苦手な人などの「就職弱者」から順に仕事を失い、生活保護を利用せざるを得なくなっているのが実情なのです。”
「なんでもかんでも働いたらよい」というのは、「労働力の安売り」を促進し、労働条件全体の悪化を促進する重しとなるとして、100年以上前に、20世紀初頭のイギリスで「貧困とは雇用問題」として発見され、「労働市場の組織化」として「安売り防止策」として、失業保険、無拠出年金が始まったという歴史に逆行するもの。
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