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原子力防災~リスクと向き合うために(メモ)

福島原発事故後にかかれたのでないか、と錯覚するほど的確な指摘をしている07年発行された同書からの メモ。
 著者は松野元(元四国電力社員、原子炉主任技術者、元原子力発電技術機構・緊急時対策技術開発室長)氏は、資源の乏しい日本では原発は必要との立場だが、巨大なリスクを抱えており、リスクを直視した対策と国民の理解を前提とし、現行の原子力安全対策の不十分さを指摘し「原子力災害は、自然災害と違って、その災害原因から結果まですべての責任を、人類自身が負わなければならない」と厳しく迫っている。
 再稼働されなくても核燃料体があるかぎりリスクは存在する—何に取り組むべきか、地方自治体の取り組みを深めることができる。 
  最近、同氏がおこなったインタビュー記事からのメモも参考に。 
【「格納容器は壊れないことにする」~推進のロジックが葬った「原子力防災」の知見(メモ)2012/7】 

【原子力防災  ~ 原子力リスクすべてと正しく向き合うために】

2007 松野元(元四国電力社員、原子炉主任技術者、元原子力発電技術機構・緊急時対策技術開発室長)


◆まえがき~などから

◇JOC臨界事故(99年) ~ 許可という安全のお墨付きが国から与えられたからといって、重大な事故が発生しないとは必ずしも言えない。原子力安全に絶対はないということを改めて感じた。(P5)
→ 原子力災害対策特別措置法(原災法)制定(99/12)

◇日本では、重大な事故時において、原子炉格納容器の健全性を前提としており、チェルノブイリ発電所事故のような広範囲の影響を環境におよばすことはあり得ないという評価結果
→ 深層防護の考え方の「原子力は1つの安全対策のみで事故を防ぐことはできない」という原子力開発初期からの精神に反するとこになっている。/注意を要する(P26)
 → 深層防護/ 原子力の潜在的危険性への対処 

◇再処理~核不拡散の問題(P34)

 74年、東海再処理施設が試験を終え操業を開始しようとした時/ 核不拡散をすすめるカーター政権から原子力協定に基づき待ったがかかった。交渉の結果
→ ウラン溶液とプルトニウム溶液を1対1の比率で混合したものから直接、混合酸化物MOX(Mixes Oxide)燃料を作ることとなり、直接プルトニウムの取り出しは制限された。


◆原子力の災害リスク(P45)

・想定外の事故は起きることがある。/許認可時に想定した条件の範囲内で原子炉施設が運定されるとは限らないから。
→ 設計時に想定していなかった事態が発生した場合のために、原子力災害対策が原子力防災として準備されていなくてはならない。

◇災害の発生頻度

 「隕石にあたる確率より低い」のもと~ NASAフォールトツリーという確率論敵評価手法を取り入れた74年のラスムッセン報告/ メルトダウンの確率は、一機たり10-100万年に一回
→ 実際は、79年TMI、86年チェルノブイリ、(2011福島第一 …32年で3回 )
→ 確率論が機能するには膨大な機器と事故のデータが必要、またヒューマンフックターの影響が大きい
(JR西日本事故… 制限速度が守られているという前提なら確率論的には事故はほとんどおきない。ロスタイムを取り戻す超過速度が常識に。/JOC東海事故 ルール手順の軽視 /MTI ESSC操作ミス)

◇固有の安全性

・システムが安定なときは自己制御性があるが、逆は真ならずで自己制御性があるから安定といえない。
→ 自己制御力も復元力も弱いもの。それを越える力がくわわれば負けてしまう。
(自己制御性すなわち固有の安全性を保つように設計されているのでジェット機は墜落しない、は間違い)

・BORAX調査(米アルゴンヌ国立研究所52-57年実施)
 沸騰型軽水炉の開発が可能か(安定した出力が得られるか、核暴走しないか)、の実験
 末尾の実験として、「急激に大きな反応度」を加えた場合に、原子炉に何が起こるか調べるという実験を行った結果、理論どおり原子炉に暴走出力が発生。そして原子炉の破壊が確かめられた。
→ 即発中性子と遅発中性子/ 0.7%しかない遅発中性子があるから制御できる。しかもその遅発時間はまちまち・・・。即発中性子だけで臨界状態になる即発臨界となると暴走する。
(野生の馬を、人間がこれに乗って暴走することなく制御できることを発見した。が、だからと言って、馬が暴走することがないことを発見したと考えるのは間違いである)

◇原子力安全委員会の役割 ~ 裁判所の指摘(P51)

・多くの判決で「原子力安全委員会が行う審査の対象は基本設計の安全性にかかわる事項のみ」で、安全の確保の仕上げは、事業者。
→ 基本設計しかみていない原子力安全委員会が、事業者を飛び越える形で「日本でチェルノブイリ発電所事故と同様の事態になることは極めて考えがたい」としている表現は、ダブルチェック、安全規制の機関が原子力推進のための安全宣言を出しているような表現。/国民、関係者に誤解を与えている

・原子力安全委員会は、許認可条件だけでは、発生確率はゼロにできないことを認め、その上で/発生可能性の可能な限りの縮小、事故発生時の進展拡大の抑制、事故の影響の緩和という役割を果たすべき。
→事故発生をゼロに出来ないことを認め、そのメリット、デメリットなど住民が判断できる材料を提供すべき
→残余リスクへの対応として、原子力防災が必要となる。


◆原子力災害 ~ 仮想事故と実際の事故の比較

・日本の仮想事故の考え方の中にチェルノブイリ発電所事故を入れて考えると低人口地帯の目安を超える

・日本の安全評価は、格納容器さえ健全であれば大丈夫という危険な災害評価を採用している。
→ 格納容器は、冷却材喪失事故の際に配管破断等によって高圧蒸気が格納容器内に噴出したときには、冷却スプレーなど健全性を保つ手段は設計されている。
→ チェルノブイリのような反応度事故による核暴走が発生したときについては保証ない。
(冷却材喪失事故の時は、原子炉は止まっている。全出力の数%。チェルノブイリの反応事故は、全出力の100倍に至った)

◇実際の原子力災害とEPZとの関係

・EPZ(10キロで10mSv。30キロに見直し方向) 
原子力安全委員会は、TMI事故をもとにした試算で、最悪の気象条件のもとでも10キロ地点で6 mSvであり、「原子力施設等の防災対策について」は、見直す必要ない、と結論づけた
→ が、法的に無縁と考えられるEPZ以外の人々に、事故時の退避のための指針である10 mSvは適用できるとかぎらない。一般の人への法的規制である1 mSvを基準と考えると、EPZの範囲が狭い

・EPZは、防災が目的であり、立地審査が目的ではない。
→現行の立地の許認可は、防災の整備(EPZの確定等)を条件としていない
→ EPZは、原子炉の型式に依存せず、出力に依存する/EPZを小さくするには、原子炉を小さくしなければならない(→ プルサーマル運転は、プルトニウムの問題が別にある。補償額は数万倍が必要 )

・国は、基本設計について許可を与えるので、許可したからといって安全を保障したわけではない。
例)原子炉の許可にあたっては、反応事故について、制御棒一本が逸出(落下)を想定して安全審査/2本以上落下した場合など許認可条件でカバーできない範囲が存在する。
→ 原子力防災が、この残余リスクの受け皿となる。
→ が、原子力安全委員会は、原子力防災を安全審査の必修科目と認めていないため、日本の原子力安全は、チェルノブイリ発電所事故、プルサーマル炉の事故に対応していない状況にある。

◆原子力緊急事後の住民行動~ 屋内退避及び避難(P110)

・防災対策範囲の考え方
防災指針「放射線の影響は、放射源からの距離が増大するにつれて著しく減少することから、EPZをさらに拡大したとしても、それによって得られる効果はわずかなものとなる」
 →が「距離によって影響が著しく減少するというのは、これをただの点線源と考えているからであって、雲のような塊のブルーム状態で放射性物質が長距離を漂っていくことがあり得るという現実を無視したもの」

・屋内避難と避難の選択
 屋内退避でよいように見えたとしても、事故の進展によっては避難すべき状態になるかもしれないことも十分考慮すべき
・避難所・避難経路
 できるだけ遠隔地にあって、東西南北それぞれの方位についてあらかじめ選定しておく必要がある。

・チェルノブイリ発電所事後のような想定外の際の対応(P124)
大きな災害の場合には、解析制度よりも災害対策の速さと大胆さが必要
格納容器が持たないおそれがある場合(15条通報) 30キロ範囲の避難を必要とする可能性がある。

◆緊急時支援システムの 今後の課題(P132)
①同時複数プラントへの対応

②アクシデントマネージメント(AM)への対応
AM対応が法的に位置づけられておらず、事業者の自主的な設置となっているため、運転パラメータがERSSに入っていないものがある。(2012年法改正で、法規制の対象に)

③重複した情報を事業者から得る必要    
コスト面から必要最小限のパラメータに限られ、その他は推定する仕組み。が、事後時には正確に送られないパラメータもあるはずであり、重複したパラメータの伝送が必要。

④現地での操作 ~日本の防災対策の最大の弱みは初期動作の遅さ
現在の体制は、東京から現地に専門家が駆けつける仕組み
→ 現地で対応し、専門家が必要な場合は通信設備で対応すべき/ ERSSも通信設備で中央からの助言を得つつ、現地の判断で操作できるようにすべき

⑤地方自治体が主体となって最終判断できるシステム
“地域の住民の安全の確保は地方公共団体が一義的に担う”という地方自治法と災害対策基本法の精神は生かさなければならない。/原災法1条目的 災害基本法と「相まって」機能するものであるため、災害対策基本法と同様の地方公共団体の責務をここで規定している。
→ 国の指示がなくても、地方公共団体が独自に判断して国に支援を求める研修が必要

◆一般国民に対する原子力防災啓蒙(P156)

・内容/ 確率は低くても事故は起こりうるものとして原子力の「絶対安全」から「リスクを基準とする安全評価」への転換が必要。
・リスクコミュニケーション手法 一緒に対策を考える/情報ニーズの把握、正確な情報、信頼関係の回復

◇正確な情報とは(P160)
・チェルノブイリ事故について防災指針は「固有の安全性が十分でない原子炉で発生した事故」と表現
→固有の安全性である自己制御性をもっていても、それをうわまわる外力があれば安全性はたもてない
  「安全」というなら、核暴走を止める事項を正確に評価して説明しなくてはならない

・事故が起きないように設計されているかどうかは安全審査で判断。が防災対策の整備の有無は、安全審査の対象となってない。

・アクシデントマネージメントは、EPZに関係ない。AMは過酷事故の場合の環境影響を緩和するものだが、AMがあるからといってEPZを小さくすることはできない。

・チェルノブイリ発電所事故の被害状況
05/9/5、IAEA、WHO等が発表した「chemoby1:The True Scale of the Accident」
 事故を原因とする被ばく死者4000人と推定
 災害時に急性障害をうけた災害従事者 05年半ばまで50人弱、甲状腺がんに小児の死亡9人
 推定で20万人の災害従事者(86-87年)、11万6千人の避難者、27万人の汚染地帯の住民の計60万人に対する推定死亡者数3940人。
→日本の原子力防災のパンフレットなど、チェルノブイリ事故の事実を記述したものがほとんどなく、災害時に消火にあたった31人程度が死亡という記事はあるが、被ばくのよるガンなどのリスクは「報告がない」という表現がほとんど。/原子力災害の真のリスクが正確に与えられていない。

・プルサーマルの影響
チェルノブイリは、30キロ内にプルトニウムの汚染スポットができたが、避難範囲を30キロとしたため、実害は出てないと報告。
→ もし、避難範囲が30キロより狭く、プルサーマル炉として数倍のPuが炉内にあれば、事故のプルトニウム被害は数倍になった可能性がある。

→ プルサーマル計画では、燃料の安全性に問題ない、とされたが/ 燃料の問題というより・・・
 プルサーマルのために存在していかのような再処理計画、プルサーマル燃料の再処理のために別途建設されるであろう再処理施設、耐震設計審査指針の不備、核不拡散の問題など、プルサーマル計画のために発生している様々な事柄とのリンクが問題なのであって、その経済性を含めたメリットとリスクとの比較が明らかにされないのが問題。

◆あとがき(P166)
・原子力の開発は、そのエネルギーの膨大さと万一のときの被害の甚大さ、という矛盾があることが前提
→ 国民がメリットとリスクのきわどいところで、覚悟を持って選択していくべきもの。

・原子力防災は、許認可時の安全審査でカバーできない残余リスクを引き受ける受け皿となりうるもの。

・原子力災害は、自然災害と違って、その災害原因から結果まですべての責任を、人類自身が負わなければならない。
→ TMI事故、チェルノブイリ事故のような想定外の事故を経験した人類は、どのくらいの原子力防災を考えれば、安心して原子力利用を進めることができるか、という問題にかわった。
→ 原子力のリスクを正確に直視し、そのリスクを認めた上で、健全な原子力利用のための原子力防災の必要性について、国民的なコンセンサスが必要であることを示している。

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