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膨張する「内部留保」〜金融資本の支配と日本的搾取・収奪(メモ)

 「経済」2012.9から、“「内部留保」の膨張と21世紀日本資本主義”(大木一訓・日本福祉大名誉教授・労働総研顧問)の論文を軸に、“内部留保論の現代的課題 その全体象と分析方法”(小栗崇資・駒沢大教授)、“「新型経営】による「雇用・賃金破壊」と内部留保の急膨張”(藤田宏・労働総研事務局次長)の備忘録。
 内部留保は、資本蓄積論によってこそ本質せまることができる、とあらためて確信する。
「株主資本主義」「新型経営」など資本蓄積の方法の転換の分析、資本主義の根本的改革が迫られている意義が浮き彫りになる。

【「内部留保」の膨張と21世紀日本資本主義】

  大木一訓・日本福祉大名誉教授・労働総研顧問  「経済」2012.9

◆はじめに
・内部留保を活用するためには、その内容、性格、形成のメカニズムを明かにした上で、どのような具体的政策と社会的力が必要かを明かにすることが必要。
→「社会的力」形成のためには「内部留保」問題が、国民生活の様々な分野にいかに深刻な影響を与えているかを明かにする必要がある。

・大企業の「内部留保」は、21世紀日本資本主義の特質に深く根ざした問題/その「活用」は、日本経済の将来を決定的に左右する問題。


Ⅰ.今日における「内部留保」とはなにか

≪「内部留保」の経済的本質≫

・企業会計上は…/企業の利益のうち配当、役員賞与などに使われずに企業の内部に留保された利益の累計額
→狭義/「貸借対照表」では、「純資産の部」の「利益剰余金」
→広義/①利益剰余金 ②資本剰余金 ③長期負債性引当金 ④特別法上の引当金・準備金 ⑤貸倒引当金      ⑥減価償却の過大償却部分 ⑦土地・有価証券の含み益 ~という広義の「留保された利益の累計額 (ただし、⑥⑦は、具体的な計算が難しく、労働総研の試算では省かれている)

*多国籍企業化している今日では、膨大な額と推測される海外子会社、タックスヘイブンを使ったオフショア取引(国境を超えた資金移動によって利益を人為的に操作する取引)による利益隠しも考慮に入れる必要 /が、捕捉困難もあり容易に推計できない。

・広義の「内部留保」の累計額/ 350兆(資本金1億円以上、富岡幸雄氏)、266兆(同10億円、労働総研)という巨大な額/個別企業でもトヨタは労働者1人あたり1億1365万円(2011年3月)という異常な水準
→ 各企業とも、長期不況下で毎年のように「内部留保」を積み増している。

★今日の「内部留保」は、内容的には、従来の「内部留保」とは異なったもの
・従来は、設備投資・研究開発など、将来にわたる事業活動に必要な資金として「留保」

・今日、特定の使用目的のない過剰資本。/不況による生産・事業の停滞・縮小により、不用となり遊離した貨幣資本が滞留
→ 大企業の国内設備投資(有形固形資産) 98-09年 39.4兆円も減少
設備投資の停滞/預金残高と貸出残額との差額 過去最大の150兆円 (全国銀行協会/2011.1日経)

・不況下においても収益を拡大、「内部留保」を積み増している異常(場合によっては赤字企業でさえも)
→ 本来「内部留保」は、企業の事業活動で得た利益からの余剰
→が、ゼロ成長、業績も停滞~ 剰余価値・利潤の拡大再生産は進展してない。/にもかかわらず何故、「内部留保」=過剰資本が膨張しているか


≪膨張する「内部留保」の3つの源泉≫

(1)労働者階級に対する、その生存の条件を脅かすほどの猛烈な搾取強化の展開

・国税庁「民間給与実態統計調査」(勤続1年未満も含む賃金総額。)
97-07年比 労働者数136万人増、賃金総額220兆6千億→201兆2千億 19兆4千億円減
→ 10年間の累積減少額は、大恐慌か戦時経済のもとでしか起こりえないような賃金低下

・非正規労働・外国人労働の急拡大、賃金・労働条件の大幅低下
→ 結婚も子どもを生み育てることも困難な生活苦/労働力の価値以下への賃金の大幅切り下げ


(2)中小・下請け企業に対する大企業の収奪が、強権的な過酷さで進展

・今日の特徴は、取引先企業の経営存続をまったく配慮しない、一方的利己的要求の強要
支払遅延、割引困難手形、買い叩き、支払額の一方的カットなど下請け違反法の頻発だけではなく/半年毎の1.5%の単価引き下げとか、突如20-30%の単価カットなど根拠のない一方的単価切り下げ、身勝手で気まぐれな発注量の削減

・「民間給与実態統計調査」の中小企業(10人未満~100人以上)の給与総額 
 97-07年比 144兆4億5700万円→ 131兆7億7400万円 12兆9996億8300万円減少
 → 疲労した下請け企業は昇給も賞与もだせない。また倒産の15-20倍もある廃業に
 (「大手企業は、日本社会に対して本当に貢献してきたのか」 北見昌朗・名古屋市在住の社労士)

(3)金融収益の拡大

・大企業である都市銀行 今年3月決算 リーマンショック前を上回る高収益/3大メガバンクで約2兆円

・銀行以外の大企業も、ほとんど全てがレーニンの言う金融資本となり/収益中の金融収入の比重を拡大
~具体的には、国債・株式の利子・配当や売買益、取引先の手形取引や消費者金融をつうじての収益、金融市場での資産運用など

・増発されてきた国債の取引で大きな収益を~ 今回のメガバンクの高収益は主に国債の売買益
→ 2011年度一般会計 国債費21兆5491億円/ その大半は、大企業、外資、富裕層の懐に
→ 国民の預貯金の金利はタダ当然にし、赤字財政といって課税を強化 /一方で、自らは国民の何倍もの金利で税金をタダ取りしている。

・株主の中で圧倒的比重をしめる法人株主=大企業 / 企業業績の改善が見られないにもかかわらず、配当額の引き上げによって、ますます巨額の配当金を受け取っている。
→ 03-07年度 資本金10億円以上の企業の受け取った配当金 40兆4244億円(富岡)/ 大企業支配下の何千何万という企業から取り立てる貢物にほかならない。

・金融収益とは…全国民(国・地方自治体含む)の収奪/「小魚は鮫に飲み込まれ、羊は狼男にのみこまれる」(マルクス)修羅の世界が支配

・他にも、大企業優遇税制、海外収益の問題も考慮に入れる必要がある、が紙面の制約で今回は省略


★膨張する「内部留保」とは
 ①労働者階級の搾取(他人の労働のただ取り)
 ②中小零細業者の収奪(他人の財産のただ取り)
 ③国民各層からの金融的な収奪
  で得た「余剰資金」であり、本来、勤労者・国民に帰属すべき資金

 ~民間給与削減、非正規労働者増、中小企業給与増額の減少と、大企業の「内部留保」膨張には、見事な送還関係がある。
→ 「内部留保」の社会還元要求は、搾取・収奪論の立場からのもの/「そんなに儲けているなら分け前を」という分け前論ではない。

・トヨタの例
 リコール問題などで業績不振となったトヨタは、2010年3月期連結決算で「V字回復」を達成
 業績回復は主として「原材料や部品などの原価改善の努力」(5200億円)「労務費や減価償却費などの固定費削減」(4700億円)というコスト削減。そして金融収益(2700億円)(日経2010/5/12)
→ 国内市場の販売減は継続しており「成長なき収益拡大」/ しかも、この「収益」で、一株あたり45園の配当金を払い、利益剰余金を370億円積み増し。


Ⅱ.「内部留保」膨張のメカニズム

・「高度経済成長」期以来の大企業の強欲にとどまらない資本蓄積方式の転換。それは経営目標の転換として示されている。


≪アメリカ的な株主資本主義の支配≫

・経営の目標は、利潤率の引き上げでなく、ROE(株主資本利潤率)、PER(株価収益率)、EVA(経済付加価値)
→ 株主配当を高め、企業を売却する時には高く売れるようにする経営目標/ 従業員や下請業者との「共存共栄をはかる」という経営政策は、「古臭い」として排除。
(「ここ100年ばかりの間にみられなかった経営理念の抜本的な転換」T.E.ディール、A.A.ケネディ)

・経営目標転換の背景/金融自由化のもと投機的なアメリカ金融資本の支配の強まり/ 注目する必要!
①3大メガバンクがゴールドマンサックスと投資顧問契約を結ぶなど「提携」した業務を進めている。
②東京株式市場が外国株主の影響化におかれてきた。
③日本の看板企業が、外資系企業に変身するなか、他の主要企業にも外資(アメリカ金融資本)が大株主の席を確保するようになってきた。
④格付け会社の影響力が異常なまでに強まった。
⑤大企業の多くがグループで「○○ホールディング」といった持ち株会社を設立し、経営の実権を現場経営者から大株主に移している。

 ~例)「純国産」として知られるトヨタ 外資25.6%。上位10位のうち3,5.6位に米金融資本


→ この「陣立て」のもと、大株主は、自らの利益を最優先することを要求/具体的には
①企業業績の如何を問わず、場合によっては赤字であっても、株主配当を増やすこと
②株価を維持・上昇させるために、自社株買いやリストラなど、あらゆる措置をとること
③期待する高収益が得られない企業・部門は、黒字経営であっても整理すること
④従業員、下請の処遇は、さらなるコストダウンを促進すること
⑤保有資産、できる限り証券化・現金化し、移転可能な流動資産とすること。などなど

 → これら要求が無視された場合、格付け会社を動かし、乗っ取り屋を登場させ、株価を操作し、
時には敵対的買収や株式の売り浴びせによって「荒療治」にでる。

・金融資本の身勝手な要求、横暴に対する規制がほとんどない日本
むしろ96年「金融ビッグバン」提唱以来、政府は、金融規制改革、会社組織改革を通じ、横暴を推進。
→ 投機的な証券デリバティブの全面解禁、銀行と証券の相互参入、持株会社の解禁、証券会社設立を免許制から登録制へ移行し、資本金1円でも設立可能に。
/ 従業員・下請業者ばかりか、一般株主の関与も排除し、株主配当を株主総会にかけなくても取締会だけで決定可能に。時価での株式交換を認めて企業買収を容易に。

・多国籍企業化したわが国大企業の姿勢は、アメリカ金融資本の要求に屈服し、日米経済の一体かを押し進めつつ、自分達も目下の「番頭」=協力者として、グローバルな金融資本支配の仲間入りを果たすこと
→ プレイヤーとして振舞うため、「高収益」確保、巨額の金融資産の積み増しの必要に迫られる。

≪日本の大企業の内部留保ため込みの異常さ≫

・不況下に余剰資金が大企業に偏在・集中し膨張するのは、過剰資本の日本的形態/ 金融資本の支配や株主資本主義からだけでは説明できない問題

~ 興味深い論評 /英「エコノミスト」誌 2012.2.18号「頂点からの転落」
“日本電機産業の壊滅的敗退の原因は、高コスト、円高、法人税の高さにあるのではなく「もっと深い所にある」と、国営企業であったNTTを相手に長年「殿様商売」をしてきたNECを例に、「古いきずな」「閉鎖的な取引」のもとで、世界に通用する技術や商品を開発し続けられず、「時代の変化に適応できなかった」”

→ 著者/ 真の原因は、新自由主義的な経営により、労働者・取引業者の犠牲にしつつ、突出した海外への生産移転(メモ者 技術流出)で産業・地域を空洞化させてきた結果/ が、「論評」の指摘する旧来の企業体質もまた破綻の一因だろう。/「旧来の企業体質」の本質…過剰資本の日本的形態と関係してはいないか。

・日本の大企業/今も戦前・戦中以来の利権構造、労働者・業者への強権的な支配体制による資本蓄積を維持
(戦前・戦中からの利権構造の例/経団連が春闘前に出す「経営労働委員会報告」。戦時中の賃金統制の流れをくむ賃金カルテル。民主的な社会ではとうていゆるされないもの)
→ 勤労者によって生み出された価値の大半は、大企業に集中/不況下では損失を転嫁し、搾取・収奪を強化
→ 勤労大衆の購買力の貧しさ、中小企業の発展がそこなわれ、民間資金需要が低迷、
→ 金融機関に膨大な余剰資金が滞留
(野呂の戦前の日本経済は最初から小資本と大資本の両極発展が顕著であり、「中級産業資本の一般的発展」のないところでは、自由競争も市場の発展もない、と喝破。現代の日本にまさにあてはまる。)

≪超金融融和政策の影響≫

・ゼロ金利、量的緩和などでタダ同然の膨大な資金を提供、日銀自ら株、国債を買いさえる禁じ手にも着手
・円高対策として、何十兆円もの財政出動による米財務省証券の購入
→世界でも例のない財政・金融規律と中央銀行の責任の放棄/ 大企業は、異常なカネ余り、デフレによる物価水準低下のもとでそこから容易に利益を引き出してきた。


Ⅲ.21世紀の日本資本主義と内部留保問題

≪「資本の絶対的過剰生産」の状況に≫

・巨額の内部留保~ 過剰資本の生産の大規模なひろがり~ 日本の資本主義生産の深刻な危機の証左

・資本主義生産とは・・・ /労働者を雇用し、剰余価値を生産することで、維持・発展できる経済システム/ それが、剰余価値生産に活用できない資本が膨張している状況。
→ 「増大した資本が、増大するまえと同じかまたはそれより少ない剰余価値量しか生産しなくなるときには、資本の絶対的過剰生産が生じている」(資本論第三部15章3節)

・「絶対的過剰生産」の状況に最も近づいている資本主義国は日本ではないか・・
①生産能力と市場の乖離が大きく、生産手段の遊休が著しい/ 特に、剰余価値生産の主力を担ってきた中小企業で、受注減にともなう稼働率の低下が恐るべき勢いで拡大

②90年代以降、全産業的に利潤率が著しく低下
 →が、株主資本主義の影響で機能資本に要求される収益率が高くなっており、「失業資本」が生まれやすくなるとともに、新規の事業参入が困難に。

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③労働力の再生産が障害にぶつかり、労働人口減少する中で、相対的過剰人口の異常な高まり/  特に未来を担う若者層の失業・半失業が聞き水準を超えて増大

④国内需要の冷え込み、価格破壊に追い立てられ、中小企業をも巻き込む海外への生産移転の急進

≪過剰資本の膨張とその影響≫

 ~日本経済、社会生活に対するきわめて危険な悪影響

(1)あらゆる物を投機の対象とする資本の暴走

・株、債権、食料、石油、鉱物資源など伝統的先物市場の商品/デリバティブなどハイリスクの金融商品やギリシア危機など国家でさえ丸ごと投機の対象に

・円高/ 輸出が突出し世界一の貿易黒字であったころの円高とは異質のもの
世界で唯一マイナス成長、世界最悪の財政赤字、貿易収支も赤字に「転落」~本来なら「円安」が当然。実力とかけ離れた「円高」で日本産業に打撃
 → 米日の金融資本による消費税連続増税を人質にしての日本の通貨、国債を対象とした投機的活動
 /過剰資本の膨張が、際限のない投機行動を生んでいる。

(2)投機活動、株主資本主義の支配が、実体経済の運動を大きくゆがめ正常な発展を妨げている

・近年の大企業の高収益・高額配当~ 産業活動の実態から大きく乖離したもの
→ 高額配当の「根拠」/「機会費用」= 資本収益の「コスト化」
(株への投資資金を他の用途で用いたならば当然得られたであろう利益を計算し、企業業績の如何にかかわらず高額配当を「資本コスト」として支払うべき、というもの。)
→ 利潤の分身としての配当ではなく、金融独占資本の利権要求としての「配当」/役員報酬なども
→ 企業経営を圧迫し、労働者、取引業者の存在条件を破壊。的確な経済指標にもとづく経営を困難にする

(3)長期不況と産業・地域経済の空洞化。一方、大企業は海外に経済権益を求め資本輸出を激増させる。 

・公然たる空洞化容認論の出現~ NIRA「空洞化の動きを前提とした政策を考えるべき」(日経11/12/29)
→従来、「空洞化の事実ない」「海外移転は、国内産業強化と雇用拡大につながる」と強弁から転換

・背景/財界の「投資立国」(「交易立国)政策 /メイド・バイ・ジャパン路線
→ 日本企業が利益をえるなら、国内でも海外でも問題はない。/05年、貿易黒字を投資黒字が超える

・国民の立場から日本経済を考える立場の放棄


(4)金融資本の支配の決定的な強まり

・「経済の金融化」は「社会、政治、教育などにも憂うべき結果をもたらす現象」〜 R.ドーア「金融が乗っ取る世界経済」

・帝国主義論 金融寡頭制の支配について「独占は、ひとたび成立し、幾十億の資本を自由自在にするようになれば、絶対的な不可避性をもって、政治機構その他のどんな特殊性にもかかわりなく、社会生活のあらゆる側面に浸透していく」
→ 21世紀の日本の実態そのもの。経団連を中心とする金融寡頭制の支配

・経団連  もともと軍部に協力して戦時経済を推進した団体/戦争犯罪にとわれた団体
      今日、外資も参加する多国籍企業の「共同委員会」

(5)国民を貧困と閉塞感に追い込み、社会的緊張を高め、民主主義的な政治が妨げられる

・情勢は、民主的な方法で民衆を支配することが難しくなり、支配層が暴力的に民衆を押さえつけるファシズムへの支援に走った1930年代の状況と類似 
→ 「ハシズム」の登場は、特異なキャラクターの問題、地方的政治現象でもなく、「決められない政治」への切り札として財界によって支援されたもの
→日本政治は戦後初めて、右翼の代表に国会でのキャスティングボードを握る議席を与えるか、の岐路に

◇おわりに
・庶民の側の民主的な諸運動 〜 多くのたたかいの経験を蓄積。要求・政策を発展させてきている。
・08金融恐慌後、新自由主義のまきかえし、運動の後退を余儀なくされている。
→ が、変化はより根本のところで進行/ OWSなど今日議論になっているのは資本主義の根本的改革
/金融資本支配の資本主義から、「ルールある経済社会」を構築する課題は、日本でも正念場
 (メモ者 消費税と社会保障、TPP、原発などなど「一点共闘」の広がりの経済的根拠)

【内部留保論の現代的課題 その全体像と分析方法】  
   小栗崇資・駒沢大教授

・内部留保… 資本蓄積(剰余価値の資本への転化)を、会計面でとらえた概念

◇内部留保とは〜 貸借対照表の項目に即して

(1)貸借対照表

・企業に投入された資金を「運用」と「源泉」の両方から見たもの
・左側(借方) 投下された資金の具体的運用(使途)
  例) 設備投資すれば、固定資産(有形固定資産)の「機械装置」として表される
     金融投資すれば、流動資産の「有価証券」や固定資産(投資その他の資産)の「投資有価証券」に。
・右側(貸方) 投下された資産の源泉(調達)    
例) 負債は、銀行などからの借りた資金、資本は株主からの出資と利益の留保

(2)内部留保の発生〜 3つの計算の過程から

①損益計算の過程
・「収益-費用=当期純利益」。当期純利益-配当金の社会流出= 利益剰余金(利益の社会留保分)
→ だれもが認める公表された利益留保(狭義の内部留保)

・当期純利益を計算する前段階で生まれる内部留保
「利益の費用化」〜本来の費用ではないが、費用の名目で差引いた利益を企業内部にストックするもの/隠れた内部留保(広義の内部留保)
→ 「引当金」・「特別法上の準備金」とそのための「引当金準備金」
 (日銀「主要企業経営分析」、財務省「法人企業統計」でも内部留保として扱われている)

②資本計算の過程
・資本調達の際に、株主からの払込資本は原則的に資本金/が、一部は、資本剰余金の中の「資本準備金」に。
  06年、「その他資本準備金」は分配可能な剰余金に。

③財産計算の過程
・時価評価会計 評価差額の計算/ 留保される利益を実現利益に限定せず、経済学的な利益に近いものとして広義に理解すれば、「内部留保」に位置づけることができる。

※「自己株式」の扱い・・・金庫株とよばれるように内部留保として実質的に温存。/会計基準が、資本控除説であるからと、内部留保に。


◇膨大な内部留保の累積 

≪01-09年比≫
・公表内部留保 84.7兆 → 135.9兆 / 実質 167.8兆 → 260.7兆
・伸び  資産合計118.3%  公表内部留保160.4%  実質内部留保155.4% 
・従業員給付の低下 01年764万円 → 09年668万円
→  公表内部留保の4〜5割が、人件費削減分が生まれたと推測
・配当金の伸び 225.8%   役員給与・賞与(07年までだと)123.1%
・短期保有の有価証券 180.3%  長期保有の株式(子会社株式、投資株式)203.8%
・設備投資(有形固定資産)90.5%に低下  

⇒ 内部留保は、設備投資でなく、金融投資に。生み出した価値は、労働者でなく株主配当、金融投資に。

・自社株買い  この6年で13.0兆円/ 自社が筆頭株主200社、10位以内の企業は上場企業の4割
→ 自己資本利益率を高めることで株価の価値を高める効果をもち、売却益を出したり、M&Aの資金代わりに運用され、企業の錬金術に使われようとしている。

◇巨額の換金性資産の存在

・会計学的には、貸方側の問題だが、貸方側の内部留保は、借方側の資金として捉えることができる。

・運用可能な資産を「換金性資産」ととらえる
→ 流動資産、当座預金は、売上債権や棚卸資産など営業上不可欠な回転資金が含まれるので対象外
→ 比較的自由に活用できる金融資産を中心とする換金可能なものを対象とする
 現金・預金、有価証券、公社債、その他の有価証券、自己株式の合計を基本的に「換金性資産」
 株式 子会社株式、純粋の投資株式があるが統計では分けられてない/ が電機・自動車大手の平均では、株式の1/5が投資株式であるので、それを加え「換金性資産」(推計)とする。

≪換金性資産の急増≫
・全産業 01年52.5兆円 → 09年76.0兆円 144.8%
・換金性資産(推計) 01年68.3兆円 → 09年108.3兆円 158.6%

≪内部留保と換金性資産の関係≫

・公表内部留保に占める割合 09年 換金性資産55.9% 換金性資産(推計)79.7%
→ 公表内部留保の6-8割が活用可能

◇内部留保の活用は可能か

・巨額の換金性資産の存在は、カネ余り状況を示したもの。運用可能な部分を社会的に有効に使うべき

≪取り崩しのための制度的措置≫

①課税 〜 企業側/法人税の他にさらに課税。二重課税という批判
→ 98年台湾 毎年の内部留保増加額に10%課税/ 日本でも同属会社の内部留保に課税

・税制のたてり/法人擬制説(会社を株主の集合体と見る説)・・・利益はほとんど配当としてまわることを想定し、二段階課税の仕組みに。本来は株主の個人所得で課税すべきもので、法人税のその「前どり」と説明
→ が、実際は利益の大きな部分が内部留保に。その分は配当となって課税されることがなく、一段目の法人税で終わっている。/内部留保課税は、二段目の配当課税に代わるもので、決して無理な課税ではない。

②利益剰余金の非課税による損益計算書への戻し入れ
・雇用拡大、下請け支援のために社会的に貢献しようとした場合の措置。その費用を損金となり企業に減税効果が生まれる。

③それの前提として、企業がますます社会的・公共的な責任を担う存在になることによってのみ存続しうるものであることの確認。
 例)復興資金、設備投資、雇用・仕事という3つの分野の活用は長期的に、内需の拡大、社会的基盤の強化など企業の利益になる。


【「新型経営】による「雇用・賃金破壊」と内部留保の急膨張】

  藤田宏・労働総研事務局次長

・新型経営〜徹底した総額人件費削減をはかることで「売上げがのびなくても利益が上がる効率的経営」
 ≪1993-2010年≫
 売上高  501.0兆円→542.5兆円 1.08倍
 経常利益  10.3兆円 → 25.9兆円 2.52倍
 内部留保  127.0兆円→266.3兆円 2.10倍

≪企業レベル、政治レベルでの追求≫

・95年経団連「新時代の『日本的経営』」 3つのグループ/徹底した「流動化」「弾力化」 
・労働法制の改悪 98年有期雇用の上限緩和、企画業務型裁量労働制の新設、
          99年労働者派遣法改悪(対象業務拡大)、03年製造業に解禁
→「雇用破壊」「賃金破壊」の急加速
 正規労働者 97年3812万人→2010年3355万人 457万人減少
 非正規 〃 1152万人 →1756万人 604万人増
 民間賃金  97年467.3万円→412.0万円 55.3万円減(07.10年除き連続減少)
  (02-07の「好況期」と言われ大企業が巨額の利益をあげた時期にも低下している)

≪低下する労働分配率≫ 

  大企業  93年63.9% → 07年51.8% 12ポイントも低下
しかも、中堅・中小より10.9ポイントも低い/07年

・分配率から見えるボロ儲けの秘密

①分母の付加価値額    〜分母が増えれば分配率は低下
  93年78.3兆円 →2010年88.6兆円 10.兆円増、1.13倍
 → 増大の要因/営業純益の増加 93年度4.4兆円→ 03-07年22〜26兆円
                 10年度19.7兆円、分配率57.8%
  *深刻な不況ななかでも、営業純益を拡大/新型経営の「成果」

②分子の従業員人件費(給与・賞与と福利厚生費)  減るほど分配率は低下
  97年度54兆円をピークに、05-06年48.5兆円
 〜リーマンショック後08年度0.5兆増/派遣労働は物件費。派遣切りのあと必要に応じ非正規雇用を増やした結果。

≪若者の現在と未来への影響≫

・正規労働者としての採用35.3%(09年若者雇用実態調査 20-34歳)
・低賃金 非正規の9割は年収「200万円以下」/正規労働者で「300万円以上」層 4〜9%減(97-07年)
・自分の収入のみで生活している若年労働者44.0%/「親の収入」の援助 正規28.3% 非正規34.8%
   〜 団塊世代の親が退職することで、貧困のいっそうの拡大に

⇒ 日本社会への影響
・失業の危機にさらされ生活保護受給が急増  
   若年完全失業者 92年82万人 → 09年171万人
 若年労働者の生活保護受給世帯 97年1725世帯 →2010年4524世帯 2.62倍

・社会保険制度の土台を掘り崩す
   国民年金の未納 96-08年 307.6万人→625万人 2.03倍
特に若者の急増 /25-29歳40.4万→87.9万(2.18倍)、30-34歳28.8万→87.5万(3.04倍)、
35-39歳25万→80.8万(3.23倍)

・少子化を加速 結婚したくてもできない
  95-05国勢調査 25-39歳の女性未婚率 12-14ポイント増 

〜 少子化、賃金減→ 消費低迷・設備投資などの低迷 →経済悪化、税収減・福祉予算カット →さらなる所得の低迷・少子化 ・・・悪循環/ 日本社会の崩壊に

*新型経営による雇用と賃金の破壊をやめさせ、労働者・取引企業の搾取・収奪の塊である内部留保を、雇用の安定化など社会に還元させることが急務である。

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