新・規制庁人事案 今度も原子力村では・・・
新しい原子力規制委員会の人事案。委員長に田中俊一氏。原発推進の読売が「しがらみない実務派」ともちあげているが、67年日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構に入職)。元原子力研究開発機構特別顧問、前原子力委員会委員長代理と、一貫して原子力行政の中にいた人である。
原発推進の「NPO放射線安全フォーラム」で活動し、もんじゅ実用化が遅れた場合「使用済燃料をひたすら貯蔵する。ウラン資源は200-300年はもつ” 枯渇に対しても“海水ウランも利用できるかもしれない”とあくまで原発推進、プルトニウムの利用の立場での講演をしている。
安全基準の厳格化に「科学的根拠にもとづかない基準を設定していると」異論をとなえているが・・・
日弁連は、候補者の「過去の主要な言動を収集し、候補者を国会に招致し、その資質と識見に関して時間をかけて質疑を行い、そのプロセスを公開し、さらに、その候補者に対する国民の意見を聴取する」ことで、国民が納得できる人選をしないと、「国民の失われた信頼を取り戻すことなど到底できない」と警告している。
【原子力規制委員会委員長・委員の選任基準と選任方法についての会長談話 日弁連7/19】
◆放射線防護研究会「プルサーマルの必要性と安全性」の概要報告 2010/6/26
原子力企業があつまった勉強会で、田中氏の講演「わが国のプルトニウム利用の動向」の記載部分
プルサーマル利用は、我が国の核燃料サイクル政策の基本に深く関わるものであり、講演では、軽水炉からの使用済燃料の蓄積、六ヶ所再処理工場の稼動、高速増殖炉実用化の見通し、さらには高レベル廃棄物の処分などと併せて、今後のプルトニウム利用の動向について話された。 当面のプルトニウムは、プルサーマルで消費するしかないが、高速増殖炉の実用化が遅れる場合、使用済み燃料は、ひたすら中間貯蔵する。ウラン資源は200~300年はもつので、本格的なプルトニウムの利用は何時になるか分からない、見えないとの見解を示された。” (主な質疑) 世界中で原子力をやりだすとウランの可採年数は短くなるのでは?とのフロアからの問いに対して、発電での燃料費は安いので、海水ウランも利用できるかもしれないとの回答をされた。
◆田中氏がいま活動する「NPO放射線安全フォーラム」の立場は・・・
“【理事長コラム】 放射線の安全と社会生活の維持をいかに調和させるかが 政治判断に求められている。それを忘れては困る加藤和明 2012年04月05日
定期検査で停止中原発の再稼働について、野田政権の施政が批判を受けている。
今朝の産経新聞の社説「主張」には、『原発の安全と社会生活の維持をいかに調和させるかが政治判断に求められている。
それを忘れては困る』という文章が書きこまれている。
産経紙のこの主張は誠に当を得たものと考えられ、筆者は全面的に賛成である。実は、この文章は、文中の“原発”を“放射線”に置き換えても、そのまま、同じように成り立つのであって、食品含有放射能や放射性汚染除去についての、国の一連の施策をみていると、マスコミさんには、こちらの方にも同じように目を向けて欲しいと願わずに居られない。”
この産経は主張は、「夏の電力不足」で危機感をあおり、ストレステスト一次評価で判断するというルールを勝手にかえるな。再稼動しろ!という「経営」優先の電力会社と同じ立場ではないか。
いままでの基準がいいかげんだったのが問題であり、国会事故調が指摘した国際的な深層防護の5層のうち3層しか実施してなく、きちんと実施していれば「防げたかもしれない」「人災」であり、甘いルールをつくるために圧力をかけたのは電力会社である。
【明日への提言「国は対応迅速化図れ」NPO法人放射線安全フォーラム副理事長 田中俊一氏 福島民報7/12】 田中氏の発言より
「除染もそうだが、健康管理について国は科学的な根拠に基づかない基準を設定している。食品の基準を一キロ当たり500ベクレルから100ベクレルに下げ、水は100ベクレルから10ベクレルまでに下げることとなったが、数字だけが一人歩きしている。基準を超えたものは有害にとらえられ、住民を混乱させている。風評被害や将来の不安を拡大しているように思う。専門的な知見から言えば、厳格化するばかりでは理にかなっていないことを国にしっかり認識してほしい」
【福島県での放射能除染の必要性と課題 8/23原子力委員会 田中俊一】
“ 住民が復帰し、生活するために成すべきこと (6ページ) ・住民が村に復帰し、あるいは避難せずに生活できる条件を達成するためには、住居、田畑、山林等の放射能を除去し、放射能濃度を下げ、年間の被ばく線量を20 mSv以下にすること。 ・子供等のことを考慮すれば、被ばく線量は20 mSvから出来るだけ下げることも必要。 当面は、実被ばく線量として、成人や従事者の3分の1程度、5mSvを目指すのが現実的。 ・土壌等の放射能汚染は、Cs-137(半減期30年)、Cs-134(半減期2年)によるものであり、自然の減少はほとんど期待できない。”
【原発再稼働 勝手にルール変更するな 産経・主張2012/4/5】
定期検査で停止している関西電力の大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の再稼働について、新たな条件が課せられた。
3日夜、野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら関係3閣僚で行われた再稼働の政治判断に関する初協議で、首相が福島原発事故の教訓を踏まえた「暫定的な安全基準」の策定を持ち出したためである。
安全基準は地元の福井県などが求めていた。それに応えること自体には意味がある。だが、結果として、当初期待された再稼働への政治判断を次回協議以降に先送りしたのは極めて問題である。
野田政権は安全性重視の姿勢を印象づける狙いだろう。その一方で、再稼働が遅れ続けると夏の需要ピーク時の電力不足が深刻な現実問題になってくる。原発の安全と社会生活の維持をいかに調和させるかが政治判断に求められている。それを忘れては困る。
そもそも、定期検査を終えた原発の再稼働の条件は、ストレステスト(耐性検査)の1次評価に合格することであったはずだ。
関電による大飯3、4号機の1次評価は昨秋、経産省原子力安全・保安院に提出された。保安院での審査後、国際原子力機関(IAEA)も原子力安全委員会も妥当としている。また電力各社は国の指示に従って、全電源喪失に対処する備えの補強も実施済みだ。そうした結果を踏まえ、地元の福井県などに閣僚が説明に行く寸前で安全基準が追加されたのは、政権が自らの手で再稼働のゴールを遠ざける行為に等しい。
安全基準の追加は、ストレステストの2次評価に盛り込むべき課題だろう。それをこの段階で突然言い出すのは、安価で安定した電力の供給を必要とする多くの国民の期待を裏切る身勝手なルール変更に他ならない。地元説明の「先頭に立つ覚悟」を語ってきた首相にも、真摯(しんし)な自省を求めたい。
枝野氏の無責任な迷走発言も目に余る。2日の国会では「現時点では再稼働に反対だ」と述べ、保安院と原子力安全委員会の専門家の分析・評価に「得心がいっていない」とも語った。
後で修正されたものの、これでは地元の信頼は得られない。閣僚協議の方向性にも予断を与えかねない不適切な発言だ。電力の安定供給は経産相の主要な責務であることを認識してもらいたい。
【原子力規制委員会委員長・委員の選任基準と選任方法についての会長談話 日弁連7/19】去る6月20日、原子力規制委員会設置法が成立した。現在、同委員会の委員長と委員を選任し、委員会を発足させるための作業が進行中である。
この組織は、福島第一原子力発電所事故後の原子力安全規制を委ねられ、全国の原発の再稼働の適否や放射性廃棄物の管理処分の方法などについて判断していく組織である。福島第一原発事故によって根底から失われた原子力安全行政への国民の信頼の回復が、新たに選任される委員長・委員の手に委ねられることになる。
原子力規制委員会設置法第7条は、委員長及び委員に、「人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する」ことを求めている。真にこのような要件に合致した者が選任されるためには、それにふさわしい委員長・委員の選任基準と選任方法を定めなければならない。
政府は法律上の欠格要件に加えて、①就任前直近3年間に、原子力事業者等及びその団体の役員、従業者等であった者、②就任前直近3年間に、同一の原子力事業者等から、個人として、一定額以上の報酬等を受領していた者を欠格要件に追加し、さらに、①個人の研究及び所属する研究室等に対する原子力事業者等からの寄附について、寄附者及び寄附金額(就任前直近3年間)、②所属する研究室等を卒業した学生が就職した原子力事業者等の名称及び就職者数(就任前直近3年間)について任命に際して情報公開を求めるとしている。
しかし、これだけでは不十分である。委員長・委員は両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとされている。この手続において、候補者の原子力安全に関する過去の主要な言動を国会事務局において収集し、国会に提出した上で、候補者を国会に招致し、その資質と識見に関して時間をかけて質疑を行い、そのプロセスを公開し、さらに、その候補者に対する国民の意見を聴取するべきである。
このようなプロセスを経て、国民の多くが「人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する」と認めた者が委員長・委員に選任されなければ、国民の失われた信頼を取り戻すことなど到底できないであろう。
一部に、委員長には原子物理学専攻であることを求める考えがあるとも伝えられているが、そのような隠された要件を課すことは疑問である。同委員会が、福島原発事故の反省を踏まえて、国家行政組織法第3条に基づく行政委員会(いわゆる3条委員会)として、その職権の独立性が強化された形で設置された経緯から鑑みても、委員長には、その独立性と責任を強く自覚し、原発の再稼働の適否や放射性廃棄物の管理処分の方法について、安全を第1の判断基準として、毅然とした決断を行うことができる資質が何よりも求められる。
したがって、当連合会は、政府に対し、前記指摘を踏まえた公正かつ適正な人選を行うことを求めるものである。
2012年(平成24年)7月19日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
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