医療崩壊の防止〜 看護師の「悲惨な職場」を救え(メモ)
ダイヤモンドオスラインで配信されている小林美希 [労働経済ジャーナリスト] さんのレポートからの政策面にかかわるメモ。なまなましい実態・・・ わが連れ合いも看護師だが、ぜひレポート本文を読んでほしい。
医師、看護師、介護士、保育士、教師の不足… 労働条件の低さ、訴訟リスク→ 離職、人手不足 → いっそうの職場の困難増 という悪循環 → 施設の減少、統廃合など、社会権を支えるシステムの弱体化という共通の現象。「一体改革」はこの崩壊を促進する。
【食事は15分、睡眠は2時間、40人の看護に奔走――。“平成の姥捨て山”で燃え尽きる看護師の異常な日々 5/25】
【他人の命を救うため、自らが宿した尊い命を失う 看護師の母性保護を顧みない「流産病棟」の非情 6/1】
【看護師の心身を蝕む過酷な“夜勤”の無限ループ 「命のガイドライン」を巡る利害関係者の綱引き 6/8】
【「特定看護師」導入が無慈悲な激務に輪をかける? 医療ミスの続発も危ぶまれる新制度の“理想と現実” 6/15】
【夜勤よりひどい激務が待ち受ける「訪問看護」の現場 重症患者を放り出す病院と“しわ寄せ”に喘ぐ看護師 6/22】
◇高齢者で溢れる病院
・高齢者の入院増 ―― 「入院」「再入院」「入院延長」を希望する家族
老々介護・看護、子どもも働いており世話ができないケースなどなど…
・いわゆる「2025年問題」〜 高齢者をどう支えるか喫緊の課題
47~49年生まれの団塊世代 約660万人が一斉に後期高齢者に。人口の2割が75歳以上、
→ その子ども世代 超氷河期世代、自身の生計を立てるだけで精一杯の生活
・病院は、急増する高齢患者に対する人手不足で、“医療崩壊”が始まり、病床削減も起こっている。
・行き場をなくした高齢者が「平成の姥捨て山」に捨てられる時代が迫っている。
◇過酷な労働、寝不足で医療ミス寸前の看護師たち
・医師の疲弊、医師不足による医療崩壊は、民の目にはっきりと見え社会問題化している。
・が、看護師の実態は知られていない。医師に負けず劣らずひどい激務で「二重の医療崩壊」へ。
・全国の就労看護職(保健師、助産師、看護師、准看護師) 2010年で約147万人
働く女性の20人に1人、全国民の100人に1人が看護職という身近な存在
看護職数は毎年、微増。が、過酷な職場に毎年12万人以上が辞めている。
・免許を持ちながら看護職として働いていない「潜在看護職」が約60万人
高齢化や医療技術の高度化に伴う業務の増加に追いつかない。
Ⅰ 高齢化の「2025年問題」-- 60万人もの看護職人員が不足
・過労から退職 日本医労連 「看護職員の労働実態調査」(10年、回答数は約2万7500)
看護師の約8割が 「仕事を辞めたいと思っている」。
その理由は、「人手不足で仕事がきつい」(46.1%)
医療事故の原因(上位2択)約9割が「慢性的な人手不足による医療現場の忙しさ」
約9割が「この3年間にミスやニアミスを起こしたことがある」
・必要人員(200万人)確保には、 高校生の10人に1人が看護師にならなければならない計算
◇看護師不足、医療難民増の背景に診療報酬問題
① 「7対1」基準導入――看護不足、病床削減を加速
・病院収入 医師による治療や検査、入院などの保険点数。
看護師が関係するのは、一般病棟の入院基本料についている看護師の配置基準
「7(患者)対1(看護師)」 1万5600円(06年導入)
「10対1」1万3110円/「13対1」1万1030円/「15対1」 9450円
例(メモ者) 300床規模の病院 「7対1」と「10対1」では、1日76万5000円もの収入差
1ヶ月(30日) 2295万円の差
看護師43(7対1)人と30人(10対1)の差 13人 給与32万 約500万円
・病院経営にとって「7対1」が最も有利 /有名病院や大病院を中心にした看護師確保
→ 看護師不足を加速
→ 病床数を削減しても「7対1」を確保する動き
→ 病床現象、病棟閉鎖 /医療難民の増加
・自治労連 「全国自治体病院アンケート」(08年4月、組合傘下の約1000病院に配布)
「看護師不足による影響」 「病床削減」11.8%、「病棟閉鎖」7.5%、「救急中止・休止」3.7%
・自治労 全国736の自治体病院を調査(2010年12月~11年1月)
回答した250病院のうち33病院が病棟を閉鎖
② 「患者追い出し」の診療報酬
・患者の在院日数が短いほど診療報酬の保険点数を高く設定。
・病院に働くインセンティブ
患者が治りきらないうちにでも退院・転院させる傾向
“採算が合わない”患者の追い出し・たらい回し
→ ワリを食うのは、良心的な病院で働く看護師(離職の要因に)。
◇過労ラインの看護師 全国で2万人
・07年5月 東京都済生会中央病院 月80時間近い残業 過労死として認定
オペ室勤務、当直明けの24歳の看護師がストレッチャーで仮眠中に意識不明、亡くなる。
・この事故をうけ、日本看護協会 2008年「時間外勤務、夜勤・交代制勤務等緊急実態調査」
交代制勤務で働いている看護師の約23人に1人 月60時間を超える時間外勤務
過労死危険レベルの看護職員 全国約2万人と推計/1病棟に1人という割合
◇母性保護が無視される職場
①「看護師の世界では、切迫流産なんて当たり前。それでも働き、流産する女性が多い」
・重労働・多忙化、混合病床化による緊張増、
・利益を出すことが重視されている病院では…
外来はパートの看護師が主力。病床の看護師は妊娠がわかっても配置転換されない例。
→ 自分が休むと現場が回らない。無理のすえの出産異常
②法があるのに守られない
・労働基準法と男女雇用機会均等法 本人申請で「妊産婦の夜勤免除や業務軽減」が適用
罰則規定 6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金(労働基準法119条1号)。
→ 看護師自身が権利を知らない /または言い出しづらい雰囲気がある。
・日本看護協会『潜在ならびに退職看護職員の就業に関する意向調査』(2006年10月実施)
潜在看護職の離職理由は、「結婚・妊娠・出産」/「子育て」「家事と両立しない」
→ 無事な出産と子育ての願いから、離職せざるをえない状況
③10人に1人が流産、3人に1人が予備軍 一般事務職員を大きく上回る異常値
医労連合の経年調査より
1988年(約8万人対象) 流産は3.7%、切迫流産24.3%
2010年(2万7545人が回答) 流産11.2%、切迫流産34.3%
・一般事務職員 17.1%(全労連女性部が行なった『妊娠・出産・育児に関する実態調査』2007年)、
・介護職員24.7%(日本医労連の『介護・福祉労働者の労働実態調査』2008年)
・女性労働協会 09年『働く女性の妊娠・出産に関する健康管理支援実態調査』
病院勤務の看護師 切迫流産31.6%、切迫早産32.6%
介護施設の介護職員 切迫流産26.9%、切迫早産21.2%
・同協会『事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査報告書 06年度』
一般の女性労働者 切迫流産が17.2%、切迫早産が15.2%
・日本医労連調査 妊産婦の3~4割が夜勤に入っている。
人手不足から、無法地帯のような職場環境で勤務が強いられているケース
④経済状況の悪化によって、妊婦でも過酷な労働から脱出できないケースも増えている
・看護職の離職率3年連続微減傾向 → 職場環境の改善ではなく、背景に、夫の雇用の危機
(保健医療福祉労働組合協議会(通称ヘルスケア労協) 村山正栄事務局長 指摘)
Ⅱ過酷な“夜勤”の実態 「命のガイドライン」を巡る状況
◇過酷な夜勤 → 体調不良など離職の増加 → さらなる人手不足と夜勤の増加の悪循環
・「日勤―深夜」、「準夜―日勤」のシフト
「日勤―深夜」 始業1時間前の朝7時30分に出勤、患者の情報収集にあたり、残業が夜8~9時まで。
3時間後に深夜勤にはいる。 「24時間連続勤務」と言っても過言ではない。
・2交代の場合 夜勤が16時30分から翌8時30分。が実際に帰るのは昼近く。
①過剰夜勤のリスク 〜 「逆循環」がサーカディアンを狂わせる
・本来は人が眠る時刻に過剰に働くことは、健康被害が大きい。
・労働科学研究所 佐々木司・慢性疲労研究センター長
「人間は『時刻』に左右される存在」「『日勤―深夜』の組み合わせは、時刻で生きる人間のサイクルに最も適さないシフト。」「概日リズム(サーカディアンリズム)を狂わせ、人間のリズムに対して逆循環」
→『日勤―深夜―準夜』 始業時刻が早まるシフトは逆循環
『日勤―準夜―深夜』 次第に始業時刻を遅くするシフトが正循環。身体は新しいリズムに乗りやすい
②「逆循環」のリスク
・海外の研究機関 老齢ラットの8週間後の生存率 「リズムのずれと生存率の実験」
リズムを崩さない83%、正循環で6時間ずらした場合は同68%、逆循環では同47%
・夜間の労働には乳がんや前立腺がんになるリスクがあるとも言われている。
デンマークは09年3月に夜勤と乳がんの関係を認めて、元看護師に労災認定
・医療ミスの危険
「真夜中から明け方にかけての夜勤中は、作業能力が酒気帯びと同じレベルまで落ち込む」「長時間の夜勤は危険」(労働科学研究所 佐々木氏)→ 医療ミスも増えることにつながる。
◇16時間以上拘束の「2交代」が9割近くに
①広がる2交代
・医労連『2011年度夜勤実態調査』 2交代の比率 2005年8.3% 11年23.7%。
2交代のうち、16時間以上の拘束となる夜勤は6割を超える。
・日本看護協会『看護職員需給調査』 08年時点でも2交代制のみ(変則2交代を含む)44.5%、3交代か2交代かを選択できる病棟などを含めると合計60.2%。
同協会『2010年病院看護職の夜勤・交代制勤務等実態調査』
2交代で16時間以上の拘束時間が87.7%
3交代の夜勤は2人に1人が月9回以上、4人に1人が月10回以上
2交代では5割以上が月5回以上
②残業代やタクシー代が浮くなど「おいしい仕組み」
・準夜勤で発生する残業代がなくなり、深夜のタクシー代などの交通費が浮く、人員配置も少なくて済む
・日本医労連調査 3交代と2交代の病棟の比較 2交代は2.6人少ない配置
→ 人件費を大きく削減できる/ 看護師の健康リスクや患者の医療安全と引き換え、2交代が拡大。
・米国での看護師の生活時間調査 16時間シフトは1.4%というイレギュラーな勤務/欧米 12時間労働でも問題視 / 16時間もの夜勤 国際的に見ても日本くらい(労働科学研究所の佐々木氏)
→ 夜勤は3交代の8時間 最低でも2時間は仮眠できるよう改善が必要
・看護師の3つの不規則性 /デスクワークとの違い
(1)患者の「生き死に」に常に直面する、(2)勤務時間が不規則、(3)一緒に働く相手が不規則
――と、もともと看護師にとって大きな負担。
・そのうえ、夜勤の労働負荷が高い。
→ 夜勤1回の疲労から回復するには2日かかるため、勤務間隔は48時間以上ないといけない。
◇事態の深刻化に重い腰を上げた厚労省 /「命のガイドライン」を巡る動き
①昨年6月 関係5局の医政局、労働基準局、職業安定局、雇用均等・児童家庭局、保健局長名による都道府県に対する通知 「看護師等の『雇用の質』の向上のための取り組みについて」
・もともとILO第149号条約の『看護職員の雇用、労働条件および生活状況に関する条約』
(1)1日の労働時間は8時間以内(超過勤務を含め12時間以内)、(2)週休は継続する36時間以上、(3)交代制は間に12時間以上継続した休息を入れる、などを規定。
②日本看護協会 、『看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン』 この秋にも完成
・健康、安全、生活の3つのリスクなどについて説明。
・夜勤の勤務編成について対策を提案。現段階の具体案は、
(1)勤務間隔を11時間以上空ける、(2)拘束時間は残業も含めて13時間以内とする、(3)3交代の夜勤は月8回以内を基本とする、(4)連続の夜勤は2回までとする、(5)連続勤務日数は5日以内とする、(6)正循環の交代周期にする、など11項目。
→ 同ガイドライン/ 人員を増やすことなく勤務のシフト組み替え対応できる。離職が1%でも減れば、単純計算でも約9000人の人材が現場に留まる、とのこと。
◇勤務の実態把握を ガイドラインをめぐって
①ガイドラインに難色を示す病院経営者
・日本精神科病院協会の声明
(1)7割が2交代で最大拘束時間を13時間までとすると、傘下の病院の8割以上が達成不可能。
(2)「夜勤回数を月8回以内にすることは、4割の病院で達成できない。
(3)このガイドラインが実施されると、日精協1病院あたり平均23名の看護師を増員する必要があり、日精協全体では2万7800人も不足することになる。
・他の経営者団体も、「看護師がよほど余っていなければ実現不可能」と言う。
②ガイドラインに沿うなら増員は不可欠
・ガイドライン作成は、職場改善へつながる第一歩。
・が、2交代の夜勤を12時間に制限するには、16時間あった4時間分のカバーが必要。/日勤を8時間から12時間にする必要が出るが、「ロング日勤」の実施は、現場を疲弊させる / ガイドラインに沿うなら、日勤と夜勤の間の『中勤』をつくるなど、各病棟で少なくとも3人の増員が必要
→ 現状は、少ない人員で看護の質を保つため、サービス残業などが蔓延。正確な労働時間を把握が必要
(東京都庁病院支部書記長・大利英昭氏(看護師)の指摘)
◇流れに逆行する診療報酬規程の変更 夜勤専従者の負担増
・今年度の診療報酬の規定 夜勤制限に逆行するかのような変更
・「7対1」看護配置基準の要件から「看護師の夜勤時間が月72時間以内」「夜勤専従者の所定内労働時間についてはその2倍以内」という規定を削除
→ 夜勤専従者への負担がより増える危険(144時間の制限なくなる)
→ そもそも『夜勤制限72時間』自体が問題/ 看護師確保法など対応し、月64時間以内に制限すべき
Ⅲ 医療の効率化を目指す「特定看護師」 その“危うさ”
・特定看護師 医師が行なう医療行為をどこまで看護師に拡大するか、という新制度
→ 医師の養成には時間も費用もかかることから、医師不足を簡単に補いたい国と、看護師の地位向上を図りたい日本看護協会の思惑が一致した、とも言われている。
・看護師特定能力認証制度 骨子案(11年11月) 早ければ2013年度スタート
◇問題を抱える新制度
①現状で、看護師の業務を拡大すれは、いっそうの激務、離職、看護師不足の悪循環を加速する。
②「診療の補助」と「医行為」との線引き グレーゾーンの存在
・看護師の仕事とは・・
保健師助産師看護師法(保助看法)「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者もしくは褥婦(じょくふ/産後の女性のこと)に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とする者」
→「療養上の世話」 患者の状態観察、食事や排せつの介助、清拭や生活指導など看護師が主体をなす業務
「診療の補助」 本来は医師がすべ行為の一部。採血や点滴、医療機器の操作など。医師の指示が前提。
・グレーゾーンには、社会通念と照らし合わせて厚労省がその都度、見解を示してきた
02年の静脈注射、09年の薬剤投与量の調節が代表的で、看護師が実施してよい業務とされた。
≪認証制度の前提 「特定行為」の範囲の検討≫
「特定行為」は、「衛生上危害が生ずるおそれのある高度かつ専門的な知識が必要とされる医行為」
56行為が検討に・・ 一例
・痛みや副作用の症状に応じた麻薬の投与量の調整
・がんの転移・浸潤に伴う苦痛症状のための薬剤の選択と使用とその効果についての評価
・酸素投与の開始・中止・投与量の調整の判断
・褥瘡(じょくそう/床ずれ)の壊死部分の切除
・創部(損傷した部分)の電気メスによる止血
・感染していない傷口の縫合
・皮下膿瘍の切開・排膿
◇教育も不十分、責任もあいまいなまま「医療行為の拡大」
①医療行為をするなら、医師と同じ教育を受けなければならないはずだが…
・認証制度骨子案 /看護師免許を持ち実務経験5年以上で厚労省のカリキュラム(2年または8ヵ月)を受けて試験に合格した者が、特定行為を「医師の包括指示」の下で実施し、認証を受けない看護師は「医師の具体的指示」で行なう。
→ 「包括指示」 処置やケアなどについて事前に文書や診療計画で医師が指示し、実際の処置は現場の看護師の判断で実施すること
→ 「具体的指示」 医師が、看護師が迷わないように具体的な処置を指示すること
②認証制度下の教育を受けなくても、「具体的指示」で特定行為ができる危険
・最大の欠陥、「医師の具体的指示」があれば、同じ特定行為をしても良いとされる点。
③責任の所在の曖昧さ
・厚労省は、「現行法と同じく指示を出した医師の責任となる」としているが、最終実行者として看護師が判断する部分があるため、看護師に一定の責任が生じる可能性 〜 職場に混乱、離職圧力の増加
・日本医師会の藤川謙二・常任理事
「医学と看護学は違う。医師の業務は医師が行ない、看護師は看護の専門性を高めるべき」「認証制度ではなく、看護の各専門学会などのレベルで、より高度な看護を目指す方法もある」「医療行為をする者を増やすなら、社会人入学などを充実させ、医師に転身しやすくすればいい」と指摘。
◇看護の本来の仕事 〜 療養上の世話の軽視へ
・患者に丁寧に対応し時間をかけると“できない看護師”と見られる傾向
・認証制度がスタートすると、認証を受けた看護師が“できる看護師”と評価され、一般の看護師も特定行為をしなければならない雰囲気になり、本来の看護の仕事である療養上の世話が軽んじられる恐れがある
・日本赤十字看護大学の川嶋みどり名誉教授
「そもそも患者に褥瘡をつくることは、ケアが不十分だからであり、看護師の恥です。人間が人間らしく、そして自分らしく生きていくため、自然治癒力の発現を助けるケアが看護というもの。看護の専門性は、医師の領域に踏み込むことではなく、療養上の世話にあります」。
→ 療養上の世話の低下から、褥瘡つくり、それを「特定行為」として看護師が切除する、という矛盾
◇反対の声をあげる医療関係団体
・認証制度の創設については、現在、日本医師会、全国保険医団体連合会、日本医労連、全日本民医連などの主要団体が明確に反対の立場
・日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本放射線技師会、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会の6団体が、骨子案に対し、役員が連名で「時期早尚、慎重な議論を」との意見書。
◇何より先に看護師不足の解消を
・現場は、“特定看護師”や“看護師特定能力認証制度”など望んでいない。何より看護師不足解消を。
・認証制度で被害をうけるのは、他ならぬ“患者”
新たな負荷 → 離職の加速、看護師不足のいっそう深刻に → 病床減
Ⅳ 夜勤よりひどい激務が待ち受ける「訪問看護」の現場
◇重症患者の病院からの放り出し 訪問看護の「おそろしい現場」
①訪問看護の実態
・1人当たり60分程度、1日6軒は患者の家を回る。移動時間を入れるとキチキチの予定
・ 医療依存度の高い患者が増え、ケアのために時間が不足。
人工呼吸器を使用(気管切開して)、中心静脈栄養の管がつながれ、「胃ろう」などなど
②医療依存度がます在宅患者
・日本看護協会、日本訪問看護振興財団の調査 訪問看護の利用者の医療依存度の高まり
2000年と2006年の比較 重度は19.8%から30.5%、最重度も3.9%から5.4%へ増加。
緊急時に24時間対応が必要な利用者の増(誰かがPHSを持って、緊急呼び出しの当番)
・5人未満の小中規模のステーションは収入が不安定。3~4割が赤字経営
③精神的にも辛い訪問看護
・寝たきりの独居生活の高齢者も多い。家計が厳しくて入院できない。止むなく在宅を選ぶ患者の声
◇利用者は10年間で15万人増 が、訪問看護師の増はわずか4000人
・訪問看護の利用者 約38万6000人。10年前の23万7000人から、約15万人増。
・訪問看護ステーションで働く看護師 2010年約3万人と横ばい傾向。10年前からわずか約4000人増
・看護職員5人未満の訪問看護ステーションが6割。数は2011年5815ヵ所で過去10年でも微増
①受け皿のたなまま「在宅」推進が生んだ矛盾
・訪問看護という受け皿が整っていない → が、国は医療費削減のために、診療報酬を「病院から在宅へ」に転換(メモ者 介護も重度中心、一部医療行為も → 介護も「施設から在宅へ」 )
②在院日数が短いほど病院が儲かる「仕組み」
・一般病棟を中心とする「退院調整加算1」
入院日から14日以内で340点、、30日以内で150点、31日以上で50点。と、早期退院を促す点数
・病院の収入源である入院基本料も在院日数が短いほど高い
→ 病院経営からは、「患者を早く退院させたほうが儲かる」システム
よほど理念のある病院でない限り、利益を出すために保険点数で患者を見るようになる。
→ 結果、全身チューブだらけの状態でも患者は病院を退院、在宅医療に移っていく。
→ 家族の負担が増す。訪問看護も手一杯になり、看護師が辞める悪循環に陥っていく。
③患者が望むことまでとても手が回らない―― 理想と現実のギャップ
・「外に出たい」という希望に応えて・・・寝たきりの高齢者を部屋から連れ出す 5人かがりで玄関でるまでに30分。/希望に応えることに難しさ
◇医療技術の前進とともに、小児利用者も増加
①訪問看護 0~9歳の小児利用者も年々増
・2001年 842人 2009年 2928人と約3.5倍
・NICU(新生児集中治療室)で命が助かり、在宅に移るケースが増えていることが背景の1つ
→ NICUを経る子は、小さく生まれた低出生体重児、難病、先天的な心臓や肺の疾患があるなど、様々
②ただでさえ子育ての不安があるなか、医療の支援は不可欠
・入院中は、面会するだけで精一杯、退院後の看護と子育てのイメージもなく大きな戸惑い。
◇看護師は、病院や在宅医療だけでなく、介護施設、保育所など様々なところで必要とされているが、圧倒的に不足している。
Ⅴ 医療崩壊を建て直すための第一歩 看護師の「悲惨な職場」を救え!
①厚生労働省は「看護師不足」とは言わず、「不足感はある」と言い続ける。
→ 看護師数そのものが年々増えていること。潜在看護師も含め200万人いるから十分だ、という考え
・「不足感」とする背景は、増員や処遇改善で、医療費などが嵩むことを避けたというのが本音
②看護師不足の放置は、「姥捨て山」が「明日はわが身」となる
看護師の「悲惨な職場」に目を向け、その実態を知ることが看護労働を救うことにつながる
→ それは、医療崩壊を建て直す一端を担うことができる
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