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ベーシックインカム論~資本主義による「貧困」から考える

 拡大する貧困対策の方法として、税額控除が十分活用できない低所得者に、その分を現金給付し、底上げをするという「ベーシックインカム」論が語られている。
 22日の高知学習協の学習会で、「どう見たらよいか」という質問に応えてふれたが、あらためて整理してみた。
 制度を考える上で基本があると思う。基本にのれば有効でも、基本を外れたら毒にもなる、とうのが私の今の認識。
 なにごとも、そもそも論から考えることが大事と思う。現代の貧困化とは何か・・・から考えたい。

 資本主義の生産では、労働の成果が搾取(労働力の再生産の費用と、労働力商品が新たに編み出す「価値」との差が資本家の利潤の源泉)され、働いた分を受け取ってない、ということが根本である。その点で、多少なりとも生活に豊かになっても、生み出している価値との関係では、片方に富が偏在し、労働者には、その成果をきちんとは受け取ってない、という点で貧困が蓄積される。
 しかも、生産力の発展は、資本にとっての「余剰人員」を恒常的に生み出す。それがマルクスの解明した「相対的過剰人口」。生きていくためには、どんな条件でも働くことを迫られ、「代わりはいくらでもいる」と、労働条件の切り下げを強要する強固な武器となる(「産業予備軍の死重」)。
 
 それに対して、労働者のたたかいは、どういうバリケードを生み出してきたか。
①ブースの雇用政策~社会保障のはじまり
 19世紀末から長期の不況。貧困が拡大し、イギリスで労働運動、社会運動が高揚し、これにあわてた資本家側がうった対策。海運業者のチャールズ・ブースが貧困の原因を調査。「貧困は怠け者だからではない」ということを明らかにした。肉体労働が主であった当時、労働力でハンデをもつ障害者、高齢者が「生きるためにどんな条件でも働く」ということで、半失業のような劣悪な条件での労働力の「切迫販売」を余儀なくされていることが、全体の水準を低下させることを明らかにした。
 ブースの方法は「労働市場の組織化」といわれるが、半失業を余儀なくされる層を、生活保障によって「失業」状況にすることで、労使間の力関係のバランスをとることであった。
 失業保険、無料の正職雇用しか紹介しない職業紹介所、無拠出年金などを実施した。
 現在も・・フランスなどヨーロッパの労働運動では「失業する権利」が主張されている。「人たるに値しない労働は拒否する権利」である。そのためには、失業期間中の生活保障が不可欠である。

 日本とヨーロッパでは「失業率」といっていっても、かなり意味合いが違う。

 社会保障というのは、資本主義の労働者搾取に対抗するバリケードというのが原点と思う。
  

②労働時間短縮、有償休暇の拡大、同一労働同一賃金
 資本主義は、競争を通じで生産力を飛躍的に拡大してきた。スケッチ的に言うと、100人でやっていたことが、50人で出来るということ。恒常的に失業者をつくるシステムである(生産力の拡大が、労働力の価値を押し下げることで、あらたに医療、介護、教育など、家族、共同体で担って労働が、商品化され、労働市場を拡大する・・・それは複雑になるのでこの際は省く)。
 高まる生産力に対する抵抗手段はなにか。
 1人当たりの労働時間を短縮して、雇用を拡大し、失業者を生まないことである。ヨーロッパでの週30数時間という時短。残業の制限、4-5週間の有給休暇は、失業者を少なくし、労資の階級的力関係のバランスをとるためのたたかいである。
 賃金闘争も重要だが、労働時間のたたかいがメインの舞台。

 このように貧困問題の基点は、利潤第一の資本主義のもとでの労資のたたかいである。貧困問題のアプローチは、この観点を抜きにしてはありえないと思う。

 最低賃金の引上げと時短による雇用増、失業保険や児童手当、年金など現金給付の充実、医療・介護の現物給付の充実があれば、ベーシックインカムが必要なのかどうか・・・
 まず日本では、サービス残業や残業しないと生活できない賃金という問題の解決が要となる。生産性は向上しているのに、労賃は下がっている。なにより、少子化とは、労働力の再生産もできない賃金(社会保障など間接賃金含む)、労働力の価値以下の賃金という資本家の最低限の使命も果たしてない現われである。
 働くルールを確立し、後藤道夫氏が主張するように、ライフサイクルにおいて、さけられない福祉サービスは無償化し、その財源は、応能負担の税制で・・・ということ向かわなくてはならない。

 働くルールと社会保障が不十分なまま、「市場原理」のもとで ベーシックインカムが導入されれば、まっすぐにバウチャー制度、福祉・教育の市場化に直結する、と思う。
(その観点からの「支持」の主張も見受けられる)

③20世紀から今日までの資本主義を俯瞰すれば、資本主義の矛盾が、労働者のたたかいが必然的に生み出し、その新たな「強制」のルールが、資本主義の生産力の発展、社会の発展を生み出してきた。そして生産力と生産関係の矛盾をより顕在化させていっている。
 「金持ちクラブ」と言われるダボス会議の創設者・会長が、この1月、格差拡大、環境問題などをあげ、「新しいモデル」が必要と述べた。

 これだけの富と科学技術の到達を「社会のために」に使うために、資本の横暴をおさえる強力な「強制」「ルール化」をたたかいとらなければならない。


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