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「格納容器は壊れないことにする」~推進のロジックが葬った「原子力防災」の知見(メモ)  

 JBPRESSが、『原子力防災─原子力リスクすべてと正しく向き合うために』(07年)の著者・松野元氏のインタビューを3回にわたって配信している。
 松野氏は、四国電力の元技術者、伊方原発にも勤務。その後、原子力発電技術機構・緊急時対策技術開発室長として、ERSS/SPEEDIやPBSを設計・運用してきた。
 同氏は、3.11の巨大地震と津波は想定外だったかもしれないが「全交流電源を喪失」という甚大事故は予測され研究し尽くされていた。そして「そうなったとき」のための法律やシステム、マニュアルは完備していた、と指摘。
が、原発の立地条件を充たすために「(原発周辺の非居住地区を事実上無視するため)格納容器は壊れないことにする」とした転倒したロジックを採用。その結果、IAEA「5層の深層防護」のうちシビアアクシデント対策、原子力防災の2層がとられなかった。「それが日本の原子力発電所の致命的な弱点」と語っている。
 ぜひHPから本文を読んでください。 以下は、議会論戦・交渉などで活用するための私のメモ。
【「壊れない」ことにされていた原発の格納容器 6/28】
【使われなかったバックアップシステム「PBS」。「SPEEDI」不作動でも避難誘導はできた 6/14】
【福島第一原発事故を予見していた電力会社技術者 無視され、死蔵された「原子力防災」の知見 5/31】

◆メモをつくる位置づけ
 原発は廃炉と使用済核燃料の処理が完了するまで、たとえ再稼動されなくても、危険は内在している(福島第一原発も「止める」は成功した)。よってシビアアクシデント対策、原子力防災は、原発ゼロに向かう過程においても重要な課題である。
 また、その欠如を明かにすることは、安易な再稼動を許さない力となる。

◆深層防護とは・・

日本ではこれまで、
1. 止める (核反応の制御)、
2. 冷やす (原子炉の熱除去)、
3. 閉じ込める (放射性物質障壁の維持)
の「多重防護」が言われてきた。

IEAEの基準は・・・

・第1層「通常運転からの逸脱を防止し、システムの故障を防止すること」
・第2層「予期される運転時の事象が事故状態に拡大するのを防止するために、通常運転状態からの逸脱を検知し、阻止することにある」
・第3層「「工学的安全施設の設置によって、先ず発電所を制御された状態に導き、次に安全停止状態に導き、さらには放射性物質の閉じ込めのための少なくとも一つの障壁を維持すること」

 福島事故は、第三層の「閉じ込める」においても「全電源喪失」の事態を無視するなど、欠陥があきらかになった。(記者は、この点までふくめ「天災」としているようで気になる。)

そして「過酷事故はおこらない」として、第4層、5層の対策は無視されてきた。

・「第4層 シビアアクシデント対策」とは
「設計基準を超える事故、すなわち、シビアアクシデントを対象としており、放射性物質の放出を可能な限り低く抑えるためのものである。このレベルの最も重要な目的は、閉じ込め機能の維持である」
 外部からの原子炉の注水、ベント、水素対策やその機能を果たすための重要免震棟・オフサイトセンター

・「第5層 原子力防災」とは
「事故に起因する放射性物質の放出による放射線の影響を緩和すること」
  汚染予測と迅速な避難の対策。その後の除染、食糧の検査、水道水の検査、医療支援など

なお、この多重防護(深層防護)は、「各階層独立設計運用」という思想でつくられる。他の階層を前提、あてにせず、その階層で完了させる最大限の対策をとる、ということらしい。

◆「全電源喪失」と「地震・津波」は別の話

・米原子力委員会(NRC)『5つの原発についてシビアアクシデントが起きる確率』(90年12月)
「沸騰水型では炉心溶融に至るようなシビアアクシデントの9割以上は全電源喪失で起きる」。
アメリカの原発は地震や津波とはほとんど無縁であり、全電源喪失や炉心溶融は、地震や津波と関係なく起きる事象。その対策や発生確率もまったく独立した別個の話。3.11はその弱点を顕在化させた。

◆同心円で危険度を測る発想~「格納容器はこわれない」

・同心円での避難規制は『放射線源が1点』を前提。
・「原子力災害対策特別措置法」、放射線源が点であった99年の東海村JCO臨界事故を契機に出来た法律で、
現在の立地審査指針は格納容器が壊れないことを前提にしている。
・「原発から煙のように放射性物質が噴き出す」ことは、考えなくていいことになっている。

◆原発立地のため「非居住地域」を半径1キロ圏に限定

・原発「立地審査指針」 「非居住地域」「低人口地帯」を考慮して立地と定めている。
・が、「格納容器が壊れないこと」が前提であれは、放射能影響は「1キロメートル以内=原発の敷地内」に収まり、「非居住地域」「低人口地帯」は考えなくてよい。
・79年スリーマイル事故 燃料棒が溶け、放射性物質が一部外部に漏れ出した事故。このときの避難範囲は10キロ程度。もし、この10キロに広げると、日本では原発の立地がほとんど不可能になる。場所もほとんどないし、用地買収費用も高額になる。
・つまり、「立地基準を満たすために、「格納容器は壊れないこと」を前提とした。
・この前提は福島事故で崩壊。それを無視し何も対策を取らない日本政府には原発を運転する資格がない。

◆「格納容器はこわれない」前提が葬った「原子力防災」

・「原発を立地できるように、格納容器は壊れないことにする」というロジックが分かると解ける疑問
①原子力防災の司令室であるオフサイトセンターが原発の至近距離に設置され機能しなかった。
②福島県南相馬市・飯舘村など太平洋岸から脱出するルートなど避難のための道路整備がされていない。
③原発周辺から脱出するためのバスなど移動手段の用意がない。
④原発周辺から外へ脱出する訓練も実施されていない。

・「格納容器が壊れることはない」との前提で立地審査が行われ、「立地審査が通れば、事故も起きない」という誤謬がまかり通った結果。それは全国の原発で同じことが言える。
つく。

◆「格納容器は壊れない」説の原点  伊方訴訟への松野氏の批判

・立地指針 1964年の策定。 
・四国電力の伊方原発の設置許可をめぐる裁判闘争(1973年提訴。92年に住民側敗訴の最高裁判決が確定)
・この法定論戦での原子力安全委員会委員長の内田秀雄・東大教授(2006年死去)がおこなった「格納容器は壊れない」説~「ディーゼル発電機そのほかのバックアップ電源がある。100万年に1回の確率だ」の主張が生きつづけている。
・裁判官は「設置許可基準を満たせば安全」というそのロジックを使った判決を行う。
・伊方原発訴訟(2号機)審理中のスリーマイル島事故~ 首の皮一枚で格納容器は破損せず、これが『格納容器は壊れない説』を補強するような格好になった。

・四国電力の技術者、伊方原発の勤務経験もあり、原発事故防災の専門家。裁判の詳しい内容も熟知している同氏の批判。
「『設置基準を満たしさえすれば、その原発は安全だ』という誤解が広まってしまった。これは本来まったくおかしい。設置基準と、実際に事故が起きるかどうかはまったく別の話だ。まして事故が起きたらどう避難するかは別次元の話」
→ 非常口設置や防火材使用などビルの防火基準。それを満たしても火事が起きないとは言えない。だから避難経路は決めておく。避難訓練をする。というのと同じ。
→ 福島事後。電源を喪失してから電源車を探す。注水のためのポンプ車を探す。シビアアクシデントを想定していれば、海水注入してベントもして、と手順はすぐに決まっていたはず・

◆世界水準の保険(対策)が必要。日本は30年遅れている。

・地震や津波がなければシビアアクシデントは起きない だから再稼働は許されるのだ」という論法は間違い。
・事故の原因は「航空機墜落」「勘違い誤操作」「テロ」など多様で、依然弱点をもったままであり、「健全な原子力の推進」には「世界水準の保険」が必要。

・IAEA「5層の深層防護」、日本は3層しかない。足りない2層は『シビアアクシデント対策』と『原子力防災』。それが日本の原子力発電所の致命的な弱点。
・ほぼ30年前のチェルノブイリ事故後に世界はシビアアクシデント対策をとった。
・日本は、「防災対策」が「設置許可」の条件になっていない。

◆SPEEDIが作動しなくても避難誘導はできた

 「SPEEDIに代入すべきERSSのデータが計測器の故障や停電で不正確だったので、使えなかった」「住民の避難誘導ができなかった」という論は誤り。
~「率直に言って、たとえSPEEDIが作動していなくても、私なら事故の規模を5秒で予測して、避難の警告を出せる」(松野氏)

・ ERSSが作動しなくても、SPEEDIに仮のデータを代入すれば、避難の方向だけでも分かる。
・放出された放射性物質の総量が分からない時は、仮に「1ベクレル」を代入することになっている。
・原子力の「専門家」なら「チェルノブイリ事故」と「スリーマイル島事故」の中間の10の17乗を代入して、避難すべき範囲もおおよそ分かったはず。

・避難範囲 スリーマイル10キロ、チェルノブイリ30キロ。福島はその中間=20~25キロ前後。チェルノブイリは原子炉1機の重大事故、福島第一は少なくとも原子炉3機の事故。避難範囲は大事を取って「とりあえず30キロ」が即断できる。飯館村も避難範囲に入っている。

・避難のタイムリミットも即断可能。「原子力災害対策特別措置法」15条通報(全部電源喪失・冷却機能喪失=3月11日午後4時45分)から25時間以内 ~ メルトダウンに数時間+格納容器破損に約20時間弱+放射性物質が住民に到達までに1~2時間程度。
 
*ERSS(緊急時対策支援システム) 原発で甚大事故異常が起きたときに、リアルタイムで原子炉の水位、温度、圧力などをモニターし事故進展を予測する。
*予測から得られた放射性物質の放出量をSPEEDIに代入するとSPEEDIは地形や風向風速雨量等の気象条件を考慮して放射性雲(プルーム)の流れを予測し、避難方向と範囲を決める。

◆予備システム「PBS」

・99年 東海村臨界事故以前には、住民避難のための「法律」も「システム」もなかった。その反省から「原子力災害対策特別措置法」とシステム「ERSS/SPEEDI」が生まれた。
・松野氏は、ERSS/SPEEDIを設計・運用した当事者であり、予備システムPBSの産みの親。

・「PBS」(Plant Behavior Data System) 「プラント事故挙動データシステム」
→ 全国の原発毎に、何種類もの過酷事故を想定し、「燃料が溶けて格納容器が壊れる時間」「その結果、放出される放射性物質量」を「あらかじめシミュレーションして蓄積している」データベース。
・PBSに蓄積してあるデータベースの放出量情報をSPEEDIに代入して避難方向や範囲を示すことができた。

・PBSのDVD-ROMは、各原発のオフサイトセンターに常備。典型的な過酷事故の様子はオフサイトセンターで必要に応じて、いつでも見たり研究することができる。


◆初動の遅れ~  原子炉を助けようとして住民のことを忘れていた?

・『全交流電源喪失』という情報しかなくても指示はできる。
専門家なら「全交流電源喪失」の意味するところを説明し、専門家なら、分からないなりに25時間を割り振って、SPEEDIの予測、避難や、安定ヨウ素剤の配布服用などの指示を出すべきだった

・どうして初動が遅れたのか
 松野「何とか廃炉を避けたいと思ったのでしょう。原子炉を助けようとして、住民のことを忘れていた。太平洋戦争末期に軍部が『戦果を挙げてから降伏しよう』とずるずる戦争を長引かせて国民を犠牲にしたのと似ています」
 「広島に原爆が落とされたとき、日本政府は空襲警報を出さなかった。『一矢報いてから』と講和の条件ばかり考えていたからです。長崎の2発目は避けることができたはずなのに、しなかった。国民が犠牲にされたんです」
 「負けるかもしれない、と誰も言わないのなら(電力会社も)戦争中(の軍部)と同じです。負けたとき(=最悪の原発事故が起きたとき)の選択肢を用意しておくのが、私たち学者や技術者の仕事ではないですか」

(メモ者 「格納容器はこわれない」「過酷事故はおこらない」という「神話」抜きには、原発立地もままならなかったし、そのことが安全対策もおざなりにした。
「神国・日本が負けるはずかない」と無謀な侵略戦争という「政策」に走った点でも同じ。)

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