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歴史的観点からみた公務員・公務員制度の今日的意義(メモ)

 晴山 一穂・専修大学教授の地方自治問題研究機構にアップされた論稿からのメモ(今日の「制度改革」の具体部分は省略)。
 論者は、公務員制度を考える視点として、歴史的視点から位置づける必要を指摘する。

 第一段階「絶対主義国家の下における官僚制」から市民革命を経た第二段階「民主化〜猟官制、更迭政策」、そして、資本主義の発展のもとで、その制度が、腐敗した金権政治の好餌となり、また国家機能が複雑多様化するもとで、第三段階の「現代化、科学的人事行政」へ。そのもとで、専門的能力、身分保障、人事行政の中立公正を担保する制度へ発展してきた。

 今日の国や維新の会の公務員制度改革は、政治に官が無条件にしたがえというものだが、それは「第二段階」が、腐敗・金権、専門性の低下などで乗り越えられてきたもの。が、日本は「第二段階」を経ていない。
君主、政権政党の奉仕者でもない「国民全体の奉仕者として、すべての国民の権利と福祉の実現を目的として公務を遂行するという点」から、公務員制度のあり方を考える必要がある。
【「歴史的観点からみた公務員・公務員制度の今日的意義 晴山 一穂(専修大学教授)7/17」】

・・なお、制度を考えるうえで、低賃金・使い捨て労働など民間の働くルールのひどさの是正がどうしても必要。その背景には、大企業の正職員を中心とした「連合」の会長が野田首相再選を支持しているように・・・ 労働運動の中にある労資協調主義がある(支配層の統治機構の重要な柱)。
EUの産業別組合が、産業界と協定賃金として「同一労働同一賃金」など働くルールを前進させてきた状況と大きな違いがある。この克服が極めて重要。

【「歴史的観点からみた公務員・公務員制度の今日的意義 晴山 一穂(専修大学教授)7/17」】

 晴山 一穂(専修大学教授) 自治労連・地方自治問題研究機構

◆本稿の課題 “ 現代社会における公務員の役割と存在意義とは一体何なのか” という論点

〜 この問いが、現在の時点において特別の重要性をもっている。

①最近の公務員制度改革に示される“ 改革推進の論理”

・「内閣主導」「政治主導」の名の下で、政治部門としての国会= 内閣と行政部門である官僚= 公務員との関係 について、官が政に対する服従の強化を導き出す方向での一連の方策の追求
→ やや単純化していえば“ 憲法の定める国民主権と議院内閣制の下では、国民の信を得た政治部門である国会= 内閣が決定した政策を忠実に実行することこそ公務員の本来の役割であり、それに適合的な公務員制度に作り変えていくことが公務員制度改革の目指すべき方向である” という論理

・その地方版の先鋭化した主張 橋下徹氏「選挙で選ばれた首長に職員が従うのは民主主義の当然の要請である」という、住民主権= 住民自治の名の下に公務員の首長への全面的服従を正当化する主張

→ 「政治部門に忠実に従うことだけが公務員の本来のあり方なのか」「政との関係において公務員の役割というものをどのように考えるべきなのか」という問題が浮上

②1990 年代以降急速に進められてきた「官から民へ」の動き

・「公務」部門の大幅に縮小。
・国家・公共部門の手に残る公務についても公務員以外の者によって担われるという事態の進行。

→ 「 そもそも公務を公務員が担うということの意味は、一体どこにあるのか」「公務はなぜ公務員によって担われなければならないのか」 という根本的な問題を提起している。

③“ 政官関係のあり方” と“ 官民関係のあり方”とは、“ 現代社会における公務員の役割とは一体何なのか、またそれを支えるべき公務員制度の意義は一体どこにあるのか” という問題に帰着する。

〜 重要な視点
 ①日本国憲法の定める公務員像に立ち返ってこの問題をとらえるという視点。
 ②さらに視野をひろげ、公務員制度の歴史との関係において位置づける視点が重要。


◆ 公務員制度の歴史  〜 辻清明氏の業績から概観

≪封建時代の「家産国家」≫

・軍事・裁判・行政は領主の私的所有に属しており、そこでの行政担当者は領主との間を個人的な忠誠関係で結ばれた「家臣」としての性格を有す。

≪近代国家の成立≫

・行政担当者はこのような私的性格を失い、非人格的な職務の担当者という性格をもつようになる。

≪その展開過程 3 つの歴史的過程≫

【第1 過程 絶対主義国家の下における官僚制= 官吏制度】

・近代国家の成立に本源的な役割を演じた絶対制の強力な支柱としての官僚制を形成しながら登場
・絶対君主が、封建諸勢力に対抗しながら一元的権力によって統一国家を形成することになる。
→ 重要な役割を演じた「常備軍組織」と「強固な官吏制度」。その特色

①君主の特権的支配を合理化するための「後見性原理」と「公共福祉」の観念
・君主が人民の福祉の最高の理解者であるとの啓蒙思想に依拠して、行政担当者は人民の福祉という目的を達成するために全能であるという福祉主義を意味する。/ 他方で、人民を「臣民」に転化し、臣民に対する官僚の超越的・特権的支配とその身分保障を確立するという結果を導いた。
〜 明治期に始まるわが国の官僚制は、このような性格を帯びている。

② 特権的官僚層の圏内に入るための厳格な資格要件と官吏に対する苛烈な服務規律
・前者は、今日「資格任用制( merit system) 」( 成績主義と訳されることが多い― ― 晴山) と呼ばれる制度の端緒形態。/ プロイセンの官吏試験や明治期の文官試験がそれに当たる。/ 試験制そのものが特権的官僚の再生産に貢献するところ大。

・後者は、当時のドイツ( プロイセン) の官吏制度に象徴される。/官僚制の統治機構を、頂点の君主から末端官吏に至るまでの典型的な階級制の形態に整備することに少なからぬ寄与。


【第2 過程 市民革命後の近代市民国家における公務員制( civilservice)】

・絶対制を打破した市民階級が、議会制の勝利という形態で国家権力を掌握し、かつての超越的特権階級である官吏を、改めて自己の従僕( servant) へと転換させることが課題となる。

①官吏制度に対するいままでの価値判断の基準は完全に逆転し、人民意思を代表する政党ないし議会から超越した固定的な官吏層の承継及び形成を極端に排撃
②人民の要求した権力担当者の交替にともなって、現存官吏に対する大量の更迭を敢行するような新しい官吏制度観を生む 〜 17~ 19 世紀のイギリスがその例 

・顕著な例はアメリカの猟官制〜 植民地時代の総督政治の記憶から脱しきっていなかった19 世紀初頭のアメリカ人民は、官僚制の再現を危惧し、1920 年に諸種の官職の任期を4 年に限定する法律を成立させ。その後に大統領となったジャクソンは、1929 年の年次教書において、民主制下の官職の本質について、次のように説く。

 「およそ一切の官職の内容は、理解力のある人間であれば、いかなるものであっても、容易にその任務の遂行に適するほど簡明であり、同時にこうしたものとして創設されたものである。私は、官職を永く保有することが、その経験によって得られる以上のものを喪失するという事実を固く信じて疑わない」。
「官職が人民の利益に役立つためという理由だけから設けられた国では、この地位に任用される権利になんらかの差別がある筈はない。官職は公費をもって特権者を支援するために設けられたものではない… … 官吏というものは、予め公衆の利益に対する配慮を承知した上でその職についたものである。公衆の利益がかれらの更迭を要求するならば、私人の利益は常にその前に譲歩しなければならぬ。悪吏を良吏と交替する場合、その弾劾権を有するものは人民であり、しかもかれらだけがこれをもつ。更迭されたものは、はじめから官職を有していない数百万の人民と等しくその生計を営みうる筈である」( 13 頁) 。

→ 英米でこの時代を風靡した情実任命とか猟官制と呼ばれるこの慣行は、民主政治の確立と官僚制の破砕に寄与した点において重要な歴史的功績を残したとものと評価しなければならない。猟官制の弊害を批判するあまり、それが有したこの歴史的意義を無視することは許されない。「猟官制もその時代の社会的要請をもっとも有効に充足する官吏制度であったという意味において、卓れた民主的行政能率を堂々と誇りうるものというべきである」( 14~ 15 頁) 。

【第3 過程 「更迭制度」が、新しい政治的条件と社会的環境の出現により厳しい審判の対象に 】

・この事態を生み出した条件
 政党の変質/ 政党の発達は、政党内部の寡頭制的支配および少数の幹部と特殊利益との結合をもたらすとともに、国家権力を独占した市民階級が、その私的利益をもっぱら確保する有力な武器として官職の政治的任免を濫用し始めることになる。
→ 「『更迭政策』は当初の民主的性格を喪失し、代って腐敗した金権政治の好餌と化し去ったのである」
→ 官吏制度を浄化する革新的気運及、金権と政党による支配から公務員を保護する要求が誕生/ 現代の合理的な公務員制を樹立しようとする運動が開始される。

②いわゆる「社会職能国家」の出現

 交互に政権を担当してきた既存政党は、その利害の妥協ないし予定調和を可能とする同質的基盤を近代議会制の裡に保証されていたのであるが、市民社会内部の対立と闘争を背景にして、この同質性を脅威と感じる新しい異質的社会層が出現し、従来の議会ではこれらの異質的利益を包含することが困難となる。
→ 資本主義の発達に伴う矛盾の拡大によって、猟官制をその民主的性格とともに有効に機能させることを許した社会的政治的諸条件が失われることになったから
→ ここに、国家が自ら広範な社会政策と大規模な企業経営に乗り出さざるをえなくなる。/、拡大された国家権力を行使するための現実の担当者として、そのための能力と資格を必要とする膨大な官僚制が再登場してくる必然性が生まれる。
→ 通常「立法国家」から「行政国家」への転換といわれる現象


≪この過程の官吏制度の特色≫

①官吏に対する政党的拘束を排除して、「全体の奉仕者」や「国民的利益」の名のもとに、その地位の政治的中立と身分保障を主張すること。
②量的に拡大し質的に複雑化した行政機能の合理的遂行を実現するために、能率的公務員制ないし科学的人事行政を採用したこと。
〜 イギリスの1855 年・1870 年の枢密院令、アメリカの1883 年のペンドルトン法。/ 人事行政を実施するために独立の地位を有する人事委員会の設置、公務員の能力と知性を判定するための試験制の樹立、公務員の地位を保障するための分類制( classification) の実現、公務員に対する政党的影響の排除等、総じて資格任用制( merit system) のための最初の布石。

◆ 公務員の今日的役割と公務員制度の現代的意義

1 現代国家における官職の性格

・現在の世界の( 少なくとも先進諸国の) 公務員制度は、第3 過程に入っている。
(日本は、英米のような第2 過程の民主的慣行を経ることなく第3 過程に突入したという特殊性をもつ)

・特に重視したいのは、「社会職能国家化・行政国家化」に伴う官職の性格の変化。
→ 猟官制の下での官職は、数年ごとに更迭される公務員によっても担うことのできる簡明な内容。
/ 社会職能国家への移行は、官職の複雑多様化と専門分化を招き、政権交代ごとに大量に入れ替わる公務員によっては、もはやそれを担うことが不可能な事態になる。

・政権交代にもかかわらず、国民全体の奉仕者として、永続的な勤務を旨とする職業公務員が不可欠の存在として登場せざるをえないことになる。
→ そこで「能力と知識をもった公務員」が「政治勢力の支配と影響から守られながら」「中立公正の立場に立って公務を遂行することが求められる」ことになる。

→ それを保証するための不可欠の要請
①客観的な能力の実証( 試験制) による任用( 一般に成績主義という場合はこれを指す)
②公務員がみだりにその地位を脅かされることのないようにするための厳格な身分保障、
③人事行政の中立公正の確保を任務とする政治部門・任命権者から独立した第三者機関の存在、など
〜 これにアメリカで発達した職階制を加えるならば、一般にアメリカで「科学的人事行政」( scientific personnel administration) と呼ばれる現代公務員制度の特色が、ここに浮かびあがっる。


2 日本国憲法下における公務員の基本的役割

・憲法15 条2 項は公務員を「全体の奉仕者」と規定
→ “ 政治部門による支配から独立して公正中立の観点に立って国民全体の福祉の実現のために奉仕する” という第3 過程における公務員像が前提とされている。

*第3 過程における「全体の奉仕者」は、本来、政権政党の奉仕者という猟官制時代の公務員のあり方を否定するために生まれてきた観念であるのに対して、わが憲法の「全体の奉仕者」規定は、戦前の絶対主義君主( = 天皇) の奉仕者としての官吏( 天皇の官吏) のあり方を否定する趣旨で設けられたという点に、その特殊性がある。/ 第2 過程を経ることのないまま第1 過程の否定形態として戦後の公務員制度が創り出されたという、わが国公務員制度の特殊な歴史に由来するもの。


≪戦後日本の公務員制度 2つの課題≫

・官僚制の「民主化」( 第2 過程) と「現代化」( 第3 過程) という二重の課題を同時に負わされる。
→ 日本国憲法の「全体の奉仕者」を、第1 過程と第2 過程の双方の官吏・公務員のあり方を同時に克服しながら、現在の日本にふさわしい“ 国民全体の奉仕者” としてのあり方を志向しなくてはならない。

・日本国憲法の施行に伴って制定された国家公務員法と地方公務員法
基本原則は、成績主義、身分保障、独立第三者機関としての人事行政機関の設置( 人事院・人事委員会) を定めている。/ 辻氏が紹介する第3 過程の公務員制度の不可欠の特色を示すもの。

→ “ 国民全体の奉仕者として、政治部門による支配から守られながら、自らの専門的能力を発揮して、全体の奉仕者としての自覚と誇りをもって、公正中立の観点に立って国民の権利と福祉の実現のために奉仕する” という点にこそ、第3 過程にある日本国憲法下における公務員の基本的役割がある。
/それにふさわしい公務員制度が必要


3 政治主導論の問題性

・民意を理由にして選挙で選ばれた内閣・首長への公務員の服従を強化しようとする動きは、第3 過程にある日本国憲法下の公務員の役割と正面から対立するもの。
→ 第2過程の「猟官制」にもどる内容/ それは資本主義の発達した条件で否定された内容。

・民主主義国家においては、最終的に政策を決定するのは選挙で選ばれた政治部門の役割( ここでは、選挙制度を含む政治部門の選出過程がどこまで民主的かの問題は措く) だが・・・
→ 政治部門の方針に無条件に従い、政治部門の決定した政策を機械的に執行するのが公務員の役割だということには決してならない。

≪現代国家における公務員の役割≫

・政治部門からは相対的に独自の立場に立って、政治部門による政策の決定・執行過程に対して「全体の奉仕者」の観点から自らの専門的知見に基づき積極的に意見を述べ、政策の内容が国民の権利と福祉の向上にできるだけ資するものになるように努力する役割を負っいる。
・政治部門は、その公務員の役割を発揮させるように導く責務を負っている。

〜 これこそが第3 過程における政官関係のあるべき姿。


4 民間化の問題性

・公務が公務員によって担われることの第一次的意義
→ 君主、政権政党の奉仕者でもない/国民全体の奉仕者として、すべての国民の権利と福祉の実現を目的として公務を遂行するという点にある。

・民間化= 非公務員化は、公務と公務員の存在意義そのものを真っ向から否定するもの。
→ 利潤を最大の目的として財界主導の下に進められてきた公務の民間開放、公務員の非公務員化の動きは、このような民間化の本質を如実に示すもの。

・第二次的意義
身分保障を有する公務員によって担われるのは、公務がもつ専門性、継続性、総合性を確保するという意義。
→ 民間化は、公務の中から民間企業に都合の良いところだけを切り出して営利の対象化するもの。
→ 公務が有すべき専門性、継続性、総合性を解体してしまうおそれが大きい。

・公務を解体する民家化の流れを転換させ、現代国家における公務の意義と公務員の役割を再確認・再確立することが、官と民の本来の協働関係のあり方を論じるための不可欠の前提。

5 プロフェショナリズム批判としての公務員批判の問題性

・政治部門と民間部門の双方との関係において公務員の独自の役割を否定しようとする動き
〜 専門的能力や知識に裏づけられた専門家・職業人が社会において一定の有用な役割を果たすということそれ自体への批判、プロフェショナル批判、プロフェショナリズム批判の一環としての性格を帯びている。

≪示唆的な文章の紹介≫。

 「もう一つの最近のあらわれ、『霞が関退治』の掛け声が意味しているのは、プロフェッショナル攻撃です。もとより、生命科学や大規模技術開発( 原子力など) に携わるプロフェッショナルは、普通の人びとの知らない領域で重大な決定に関わっているのですから、絶えず批判にさらされて当然です。そのことは前提とした上でのことですが、扇情的なプロフェッショナル攻撃に対する批判の眼もまた、必要です。… … 多くの場合にはいわれのない批判、今現在では、官僚制への非難、お役所仕事とか役人の無駄遣いという意味を超えた、本来の社会科学の用語としての官僚制そのものに対する攻撃です。
かわりに登場するのが、素人支配です。経済界のリーダーたちを初めとする素人がさまざまな公的あるいは私的審議会をつくり、そこで決めたことが経済政策以外でも、いわば排他的に政策として貫徹していく。
小泉・竹中政権のありようは、まさにそうでした。
プロフェショナル攻撃と素人を前面に立てた諮問会議、審議会支配が、政治過程を漂流させてきたのではないのか」
 樋口陽一『いま、憲法は時代遅れか』( 平凡社、2011 年)

「『一九九〇年代改革』の一環として登場した公務員制度改革」を進める要因の一つとして、「政策立案・行政サービスの専門家としての公務員への批判」がある。「このようなプロフェッショナリズム批判にもとづき、安倍内閣そして大阪府・市などでは教育界批判が繰り広げられ、政治の下に教育制度を統制する制度設計が提唱されている。ここでは、もっぱら産業界からの教育批判を取り入れているが、同様に公務員制度改革でも、公務員制度の専門家以外の分野とりわけ『民間』ないしは経済界からの議論を素朴に制度改革の理論に取り入れようとしている」
 牧原出「政権交代と公務員制度改革」人事院月報752 号( 2012 年)

★プロフェショナリズム批判としての公務員批判、官僚制批判の背後に、諸々の官僚制批判を包摂しながら意図的に進められてきた新自由主義の立場からする公務員批判があることに目を向ける必要がある。

≪含蓄あふれる文章を紹介≫。

〜野口雅弘『官僚制批判の論理と心理』〜

 「デモクラシーの名のもとで『悪』としての官僚制を批判するという議論の仕方には、硬直化し、画一化しがちな行政の論理を揺るがせ、政治的な討論に導いてゆくという意義と可能性があることは事実である。しかしそうした議論の仕方は、デモクラシーが存続するために必要な条件すら、破壊してしまう危うさをも孕んでいるということを忘れてはならないのである」。
 「( 一九九〇年代以降の新自由主義政策の本格的展開という― 晴山) この時期に、官僚主導体制のパーフォーマンスへの信頼が崩れ、『正当性の危機』が露見したことは指摘した。これによる官僚や公務員への不信は新自由主義の説得力を高め、そして新自由主義的な思考の進展が官僚パッシングを昂進させることになる。
もちろん、すでに言及したハーバーマスや松下圭一は、新自由主義とはまったく関係なく、むしろそれに批判的な論者である。それにもかかわらず、彼らが切り開いた、デモクラシーを根拠とするテクノクラート、あるいは官僚制への批判は、ある点までは新自由主義的な議論と共鳴することになる。… … 中央集権的な『官僚主導』を批判する点で、個人の主体性を強調する論者も、市民社会の理論家も、新自由主義者も、あるいはポスト・モダン系の論者も、共闘することができたのである」
「後期資本主義国家においては、経済へのいかなる政治的介入も、市場の論理を踏みにじり、特定の人々の既得権をつくりだし、擁護するものに見えてしまう。これを回避するには、介入をミニマムにする、つまり『小さな政府』が有効な方向性として浮かび上がってくるというわけである。このとき『民意』は、容易にそちらの方向へと誘導されていく。『より多くのデモクラシーを』という方向性と、『より小さな政府を』という新自由主義の共闘による官僚制批判は、『正当性』をめぐる争いに直面して、後者に絡め取られていくのである」。 


Ⅵ おわりに

・公務員 / 人間、労働者、市民、公務担当者の4 つの側面( 性格) をもつもの

【人 間】
 公務員も一人の人間として「人間の尊厳」に値する生存と生活を保障されている。/ 公務員という存在の最も基底に位置するものであって、憲法との関係でいえば、憲法25 条の生存権に対応するもの。
→ 非正規公務員が置かれた劣悪な状態、正規職の相次ぐ定員削減と労働強化の中で過労死を生み出すまでに進行している非人間的な職場実態など・・・ 公務員を「人間の尊厳」のレベルでとらえるこの視角は、ますます重要性と現実性を帯びている。

【労働者】
 公務員も基本的に民間労働者と同様の労働者/ 憲法27 条の労働権、同28 条の労働基本権。

【市 民】
 公務員も公務員という立場を離れれば市民社会の一員としての市民である。/憲法21 条の表現の自由を核とする一連の市民的・政治的権利が対応する。

【公務担当者】
 公務を担当するという地位からみた公務員のこと/ 憲法15 条2 項が「全体の奉仕者」ある。

・現代社会における公務員のあり方を考えていくためには、公務員の4つの側面( 性格) を総合的にとらえ、それらの相互関係、相互の調整のあり方を考察することが今後の重要な課題として提起されている。

*本稿の検討対象 〜 第4 の公務担当者としての公務員のあり方に関わる問題。
労働者、市民としての公務員の権利に関わる重要な動きも現れており、さらに、給与・定員の前例のない大幅削減や人間としての人格さえ否定しかねないような常軌を逸した公務員攻撃が進行する中で、公務員の生存権、「人間の尊厳」の保障は、今後ますます重要な課題となってくるであろう。


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