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グローバル経済段階の経済・財政政策のあり方(メモ) 

「グローバル経済段階の経済運営はいかにあるべきか」~米田貢・中央大教授「経済」2012-8論文の備忘録。

 経済のグローバル化段階は、“グローバル企業の成長は、国民経済の成長・発展を意味しない。/国民生活の安定化・向上とグローバル企業の成長とは明かに対立する。”と、その意味を正しく理解する必要を指摘し、
90年代以降の変化、新自由主義構造改革の失敗した20年を解明。

 その反省に立つなら「最も安定した雇用」は“先祖代々の土地と不可分で営まれる産業、住民の暮らしに密着した産業”として、一次産業、自然エネルギー、医療・介護分野など国民生活の安定につながる財政支出で、雇用の喪失・消費不況から脱却する政策の抜本的な転換が必要と説く。

 最後には「国債の異常な累積にもかかわらず、日本が国債を発行し続けることができる理由」と政府・財界の「論」を批判している。

【グローバル経済段階の経済運営はいかにあるべきか】
   
  米田貢・中央大教授 経済2012-8

はじめに
・「日本再生の基本戦略」にもとづく「社会保障と税の一体改革」
→狙いは、財政を、グローバル企業の国際競争力の強化のために再編すること/税・保険料負担軽減

・民主党 期待の裏切りの背景 ~ 経済のグローバル化段階の意味を正しく理解してないから

・経済のグローバル化段階では、グローバル企業の成長は、国民経済の成長・発展を意味しない。/国民生活の安定化・向上とグローバル企業の成長とは明かに対立する。


Ⅰ.グローバル企業の成長と国民生活の安定化・向上は両立しえない

(1)グローバル企業は雇用を国内から流出させる

・経済のグローバル化… 現象的には、地球的規模で世界市場の統一性・有機性が実現されること
 → もっとも象徴的なのは、金融の世界

・経済のグローバル化を根底的に推進している資本は「産業資本」 
 → 生産過程に資本を固定化せざるをえないがゆえに、歴史的に国境に縛られてきた

・2次大戦後GATT体制、自由貿易体制のもと、世界市場の拡大が資本主義の成長要因
 → その担い手は、本国を持ち自国から他の国民経済にむけて輸出を行う国内企業

・グローバル化段階の産業資本・・・多国籍企業 
 有利な市場、生産条件を確保ためには国境を越えて資本投下し、外国で生産することをいとわない。
 → 輸出から現地生産。本国で築いてきた部品供給体制も国際的な下請けネットワークに/最適地生産原理

・海外展開/ 進出国での生産・雇用の増大、経済成長・発展 ⇔ 本国の雇用停滞・減少
  ~ 日本 製造業の雇用者数 92年から500万人減。現地雇用者数03年234.6万から10年358.3万人

(2)グローバル企業は国内の賃金・労働条件を悪化させる。

・例 自動車資本が進出した中国 当初の賃金水準1/20~1/10
 日本的経営のノウハウを移転、品質向上し日本国内並みとなると、日本の賃金水準が問題に
 → 企業内労働組合を不可欠の構成要素とする日本的枠内では、賃下げなどは限界
 → ここで雇用関係の見直し / 派遣労働、有期雇用など、(非正規雇用が全体の1/3)

・労賃(労働力再生産費)~ 非正規の一般化は、生活できる賃金を労働者階級に支払うという資本家階級の最低限の役割すら放棄したもの。

・大企業の成長が、国内の雇用を拡大し賃金水準を押し上げる時代の終焉/ グローバル企業の成長は、労働者階級の生活の安定化や向上とは決定的に対立する。


Ⅱ.新自由主義的な構造的改革と景気対策のあいつぐ失敗が日本経済を沈滞させてきた

(1)公共投資中心の景気対策、内需拡大政策は90年代不況には有効でなかった。

・バブル経済崩壊以降の日本経済の沈滞ぶりは、国際的にも際立っている。
   成長のとまった唯一の国/ GDPの国際的シェア 90年9.9%→12年5.5%と半減

・政府の出動した345兆円の経済対策~ アメリカの要求にこたえた大型公共投資など
 → 経済を立て直すことにならなかった理由は明白

 ①80年代の洪水的な輸出攻勢。90年代に貿易黒字を巨額のものにし、異常な円高水準もたらす
 ②異常円高による不況は、輸出関連大企業に
    リストラの強要/ 円高を利用した海外への直接投資・現地生産化を加速
 ③日本から雇用の喪失/ 経済の6割を占める家計消費の低迷、経済の長期低迷・沈滞

・「失われた10年」は、グローバル企業の行動自身がもたらしたもの。
 → 高速道、新幹線、空港・港湾整備など大型公共事業中心の景気対策は、何ら役立たなかったのは当然


(2)グローバル企業の成長を最優先する新自由主義的構造改革が消費不況を招いた

・90年代の失政にわをかけたのが、ケインズ主義体制、政府の市場経済へ恒常的に介入する政治体制へのアンチ・テーゼとして出来た「利潤原理」による構造改革路線   

・新自由主義的構造改革
 ①利潤原理の尊重、規制緩和の名目で、
 ②労働者階級が歴史的にかちとってきた労働保護立法、社会保障制度などの切り崩し
 ③弱肉強食の論理を、市民間に持ち込み、社会的格差を「自己責任」の名の下に容認
 ④政府の果たすべき国民に対する社会的生存権の保障義務を放棄

・非正規雇用の拡大、賃金水準の切り下げにより、長期不況に「消費不況」という新たな性格を烙印
→ 国内総支出 家計消費6割、企業部門2割 /家計を冷え込ませるとともに消費性向を萎縮
→ 消費の減退と生産の縮小・雇用の削減、という悪循環をもたらし/日本経済の停滞を固定化

・現在の「社会保障と税の一体改革」は、消費不況を激化させる歴史的な誤りを繰り返す愚行

Ⅲ.国民生活の安定化こそが国民経済を可能にする

・「日本再生の基本戦略」は、以上の内容を自覚も反省もしていない。/最大現の利潤を求めて資本主義企業が主導するグローバル化経済の流れは、経済的には不可避
(メモ者 国連スティグリッツ報告 グローバル化時代にみあったガバナンスの構築が必要)

→ 問題は、新自由主義構造改革に対抗する労働運動の力不足、市民社会的基盤の脆弱(基本的人権の定着度の弱さ)であった日本で、短期間のうちに中間層が解体され大量の貧困層が創出され、結果として国民の消費力が減退し日本経済が長期的に沈滞していること正しく認識するかどうかにある

・20年間の新自由主義構造改革の失敗の経験に学び、国民生活の安定化、向上を正面にすえた対策が必要


(1)健康で文化的な生活を可能とする安定した雇用と賃金水準が国民経済再建の第一歩

・政府は、製造業、日雇型派遣を温存/ 労働規制緩和が貧困を拡大したことを認めようとしていない。

・「働かざるもの食うべからず」(公的扶助、社会福祉の受給者を除く)は、資本主義社会の基本原則
 → 働く意思のある全ての人に、安定した雇用、普通の生活が遅れる賃金を確保・保障することは、
    企業と政府の最低限の責任(憲法25条「生存権」、28条「勤労権」)

・若者が社会的に「一人前になる」大前提 ~ 働くことで経済的に自立すること
 → 雇用不安定は、自立、結婚、子育て、親の介護も含む人生設計を立てることは不可能
 → 不安定雇用を若者に強制する社会は、安定した社会たりえない。少子化も防ぎようがない。

・民間と公務、正規と非正規の労働者が分断され、労働条件の悪化、賃下げ競争が事実上組織され/ 年収200万円に満たない労働者を1千万人にも拡大/ 財界の資本蓄積を加速させた

≪賃金水準について、新たな社会的合意を≫

・社会的格差の拡大と社会の不安定化を防ぐ労働条件を
→ 大学進学率50%を越える現代日本社会では、世帯主の年収7-800万円の一般化が必要

・女性の労働力化の向上による家族賃金、年功序列賃金の見直しが不可避の状況
 →①25条にもとづく所得水準の明確化
   ②それを政府と企業でどう分担するか
   ③どのような賃金水準と社会的給付水準を目標とし、社会的給付の形態をどうあるべきことか
 
        について、新たな社会的合意が必要

(2)農林漁業を再建し、生業に従事する若者を増やし、自然エネルギー起しで地域社会を活性化させる

・グローバル企業の海外進出で収縮する雇用を、どの産業分野でカバーし、雇用を安定化させるか
→ 資本の可動性、グローバル性は、土地にしばられないことに立脚 /反面教師「誘致企業の撤退」

・最も安定した雇用/ 先祖代々の土地と不可分で営まれる産業、住民の暮らしに密着した産業

→ 新しい国民経済モデル/地域の自然的、地理的条件、歴史的文化的特長を生かした地域経済圏の創出/  地域内で、ヒト、モノ、カネが循環できる相対的に自立した多様な地域経済に支えられた国民経済

①地産地消型の農林水産業の再建 /食料安全保障の確保

・若者の地域定着、世代を超えたコミュニティの再建による生活圏周辺への多様な産業創出の可能性
・ものづくりの技術の発揮(伝統産業含む)と情報革命を駆使した若い企業家の登場も期待される
 →TPP、水産特区など構造改革/利潤最優先の資本論理が安定した雇用を排除する。この20年間の経験

②自然エネルギー依拠した地域おこし  (メモ者 一次産業との親和性・・・ドイツの例)


(3)社会保障と社会福祉の充実で安定した国民経済づくりにチャレンジする

・高齢化、少子化、社会保障・社会福祉に対する住民の要求の強まり
  → 歴代政府は、切捨て、市場化を促進。

・産業構造審議会・産業競争力部会 2010/6 「産業構造ビジョン2010」
  戦略5分野の雇用増加予測 07-2020年
 「医療・介護・健康・子育てサービス」生産額 増加額の15.3%だが、雇用面の43.9%(113.4万人)
 
 →雇用問題を非正規・低賃金のみの分野に押し込んで「解決」するという財界の意図が透けて見える、が

・この分野を、新たな日本経済の中で展望する

グローバル企業の成長が、もはや国民経済の成長と対立するようになった現在
→ 経済成長を自己目的にする必要はない/ 国民生活の安定化を最優先にする経済をめざす
→ 生産額がさほど増えなくても雇用の伸びが大きく期待できる産業分野。しかも生活の向上に結びつく。

・問題は、社会保障費を充実し、この分野の不安定雇用と低賃金を打破すること
(メモ者 劣悪な労働環境で深刻な人手不足に/この面から制度の持続性の危機という悪循環に)


Ⅳ.日本国憲法をよりどころに国民生活を最優先にする財政構造に転換しよう


(1)国民経済の根本的転換を図るためには財政の出動が不可欠

①農林漁業  欧米では自国民の命を守る戦略的産業 

  一握りの輸出大企業のために、農産物の輸入規制、価格維持政策をほぼ全面的に放棄したのは日本のみ
→ 農業所得に占める財政支出は欧米なみの9割水準に抜本的に高める

②福祉予算の抜本的拡充

・ 福祉関係労働者の劣悪な労働環境
・相対的貧困線125万円以下の層が2000万人/ 生活保護受給者はわずか209万人
・満額でも6万5541円の基礎年金 そのうえマクロ経済スライド  

→ これらの支出は、仕事と雇用を確保する上で必要不可欠。
(メモ者 それらは安定した雇用の確保で消費を下支えする。労働力の急迫販売を防止し安定した雇用を守る、地域経済へ還元されるという点でも重要)


(2)財政を、国民生活最優先の歳出構造と応能原則に基づく歳入構造に転換しよう

・財政危機を理由に、暮らし関係の予算を削減することは、経済の悪化、税収減を招きかねない
・重要なのは、グローバル企業の成長を最優先する財政のあり方の転換
・歳入も、大企業、富裕層などへの応能負担の徹底。/垂直的な所得再配分機能の回復

(3)国債の異常な累積にもかかわらず、日本が国債を発行し続けることができる理由

・われわれの財政改革は、野田政権の「社会保障と税の一体改革」と対立している

①「社会保障費の急増で、すぐに財政が破綻する」と増税、社会保障切捨てを進めるが・・・

・2011年度末、国の累積公債残高667兆円(うち251兆円は公共投資のための建設国債) 
・財政危機の処方箋は、正確な診断が必要
→ 大型公共投資による景気対策の失敗、大企業・富裕層への減税・税収減、消費税増税など国民負担増による消費不況の加速化、非正規雇用・賃金低下による社会保険収入の低迷が、異常なまでの国債累積を招来した。(メモ者 社会保障は、今も昔も、肩車型)

②60年償還、超低金利政策による安定化の「からくり」

・財政危機の確かに異常 /2012年度予算 税収を公債収入が上回り、公債収入の半分が国債費で消える

・日本の国債は60年間で償還する仕組み
例)今年度、新たに10兆円発行 → 償還のための追加的費用は1/60。年1666億円。
→ 財務省の国債の累積を容認してきたのも、このからくりによる。

・90年に比べて国債残高は4倍化。が、利払い費は、当時の約10兆円の枠内に
→ 日本銀行による人為的超低金利政策、超金融緩和政策で、国債価格を安定化

③1400兆円を超す個人金融資産に支えられ、外国資金に依存していない。

④267兆円のゆうちょ・かんぽ資金— 事実上の公的資金として国債価格の安定化に動員
借換債も含めて百数十兆円もの国債を毎年順調に発行できる理由

~ 政府・財務省は、大量の国債発行と累積を可能にしてきた体制について多くを語ろうとしない。

・この体制には自ずと限界があるとしても、政府が言うように、すぐにぶち当たる限界とは考えない。
→ 緊縮一本やりの財政運営でなく、歴史的な分岐点に立つ日本経済の根本的に転換させるために必要な財政運営に転換する必要がある。
→ 20年間の新自由主義的構造改革の失敗を認め、グローバル企業の成長を最優先から、国民生活の安定化を最優先にする財政構造の転換こそ必要。

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