消費税は間接税ではない〜赤字でも課税される事業税(メモ)
税経新人会全国協議会20127月号の湖東先生(元静岡大学教授・税理士)の論文からのメモ。
日本の消費税は、仕入税額控除方式〜 一個一個の物品に消費税を乗せたとか消費税分を預かったということとは無関係に税額が算出され、赤字でも課税される事業税とも言うべき直接税の性格をもつ。
司法も「商品や役務の提供に対する対価の一部」「事業者が当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を消費者との関係で負うものではない」としている。
「間接税」と規定するのは、輸出大企業に還付をするための仕組み。還付額は3兆円、消費税額の1/4にも上る。増税になれば、輸出大企業への隠れ「補助金」が増える。さらに零細業者つぶし、非正規化促進税でもある。
以下、備忘録(正確には、本文を読んでください。)
【消費税を増税してはならない理由 たくさんの基本的欠陥をもつ税制 元静岡大学教授・税理士 湖東 京至】
【消費税を増税してはならない理由 たくさんの基本的欠陥をもつ税制】元静岡大学教授・税理士 湖東 京至
◆消費税の基本的欠陥 消費税は間接税ではないという欠陥
・多くの人が、「消費税はすべてのモノやサービスに5%入っている間接税」だと思っている。
・政府は、「消費税は消費一般に広く公平に課税する間接税で、取引の各段階ごとに5%で課税され次々と転嫁し、納税義務者は事業者とするが、事業者に負担を求めるものではなく、最終的には消費者が負担するもの」と説明している。≪実際はどうか≫
・ 消費税を税務署に納めるのは事業者
・納付税額は一個一個の商品ごとに計算するのではなく、1年間の課税売上高を課税標準として計算する。
消費税額= 課税売上高×5% -(1年間の課税仕入高×5%)という仕入税額控除方式→ 一個一個の物品に消費税を乗せたとか消費税分を預かったということとは無関係に税額が算出される。
≪シャウプ税制とのかかわり≫
・事業税のかわりに導入を提言した「付加価値税」(国民の反対でお蔵入り)と、消費税は同じしくみ
・事業税にかわる直接税だから“価格への転嫁も必要ない”“「税金を「取る、取られる」という関係も生じない”
→ 消費税はシャウプが考えた直接税としての「附加価値税」の性質をそのままもっている。・仕組み
「付加価値」= 「事業の『総売上金額』から『特定の支出金額』を控除した金額」
→ 『特定の支出金額』を、「事業に直接必要な他の事業に支出すべき金額のうち、土地、家屋、家屋以外の減価償却可能な固定資産、商品、半製品、原材料、補助材料および消耗品の購入代金ならびに次に掲げる金額の合計額」と規定。『特定の支出金額』の中に、給与は入れていない。
→ ほぼ消費税と同じ構造
≪ 消費税が直接税の性質をもっていることを証明する裁判所の判決≫・この裁判はある消費者のグループが自分の払った消費税が事業者のフトコロに入り、税務署に納められないのはおかしいとし、消費税制度をつくった国の責任を訴えたもの
【判決文】・・・消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を消費者との関係で負うものではない。(東京地裁平成2年3月26日判決文より)
→ 消費税は、消費者が税金として払うのではなく、対価(物価)の一部として負担しているだけで、事業者と消費者の間に「税を取る、取られる」という関係はない /消費者が消費税を事業者に預けたことも、事業者が預かったこともない、というもの。/要するに、消費税は間接税ではなく、直接税。
→ この判決は政府・財務省の主張をそのまま取り入れたものであるから、政府も消費税が間接税ではなく、直接税に近い税金だということを知っている。
≪なぜ「間接税」という話がひろまったか≫・フランス政府が、付加価値税を間接税だと定義した。その理由はガット協定。
・ガット協定では直接税を輸出企業に還付することは禁じられているが、間接税なら認められるから、輸出企業に還付金を与えるために間接税だと言いくるめた。
→ 日本の消費税も輸出還付金制度のあるフランスの付加価値税の仕組みをそのままいただいた。
◆消費税の基本的欠陥 輸出大企業に補助金を出す欠陥・輸出大企業はなぜ還付金をもらえるか。
→ フランスが間接税だと定義し、輸出販売にゼロ税率を適用したから。/日本の消費税率は2本建て 5%と、輸出販売のゼロ税率【例】
・年間の売上高 1千億円の企業 500億円が国内売上、500億円が輸出販売 /これに対する年間仕入高が国内分と輸出分を合わせて800億円。
国内売上高の消費税 25億円、輸出販売の消費税0%で 合計25億円
・控除できる消費税 年間仕入高800億円×5% 40億円 / 差し引き15億円のマイナス(還付)≪判決文を、トヨタと下請け業者に置き換えると・・・≫
(東京地裁平成2年3月26日判決のアレンジ)
「…トヨタが下請業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、下請業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、トヨタとの関係で負うものではない。」→ トヨタは消費税分を税金として払ったことは一度もなく、対価(物価)の一部として負担している。/下請業者との間で「払った、払わない」という関係はない。
→ トヨタは自分で税務署に消費税を納税したこともなければ、下請を通じて払ったこともない/このことは消費税が、むしろ直接税としての性質が強いことを証明している。
(メモ者 実際、消費税込みで、単価の切り下げの押しつけており、「転嫁できる」とか云々するような話ではない)≪巨大輸出企業が受け取る還付金≫
トップ10の還付金 8,600億円、還付金は合計で3兆円(平成22年度予算)
還付金は消費税収入12兆円のおよそ25%にのぼる。
◆消費税の基本的欠陥 膨大な滞納を招く欠陥・売上と仕入れの差額がマイナスにならないかぎり納付税金が生じる。
経費(人件費など)が多く赤字になったとしても納付税額が生じる。/つまり人件費にかかる税制
→ 赤字でもかかる事業税のようなもの。/滞納が発生しやすい税金。・新規発生滞納税額のうち消費税の占める割合 平成21年度は50%、平成22年度は49.7%
≪預かり金ではない・・≫
・税務署は「消費税は預り金ですから、お客さんから預かった税金を納めないのは盗人ですよ」と脅かす、が
→ 判決文のとおり、消費税は「預かるとか、預けるという関係にない」
◆消費税の基本的欠陥 正社員を減らし派遣や外注を使う欠陥≪人件費は仕入税額控除対象にならない≫
・仕入税額控除の対象となるのはもの。
仕入金額の他、消費税の課税対象となっている経費、たとえば交通費や通信費、消耗品や店舗の家賃、修繕費や機械の購入代金などが含まれる。≪派遣・請負は、対象になる≫
・ 正規の労働者を減らし、派遣社員や請負に切り替えると、その費用は仕入税額控除の対象になる。
→ 納付税額が減る!【例】 年間売り上げ 1千億円の企業 年間仕入額800億円 うち人件費100億円
・消費税 売上げ50億円 仕入れ控除40億円 /消費税額10億円
・人件費の半分を、派遣、請負に切り替えると。
→消費税 売上げ50億円 仕入れ控除45億円 /消費税額 5億円労働力に関わる経費の額は実質同じでも、形態を変えると、節税できる。
→ 5%増税と当時に、派遣法が緩和され、非正規化が一気に拡大した原因。
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