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ものづくりの危機~要因は、目先の利益追求での技術流出(メモ)

 「電機・半導体産業で何が起こっているか—ものづくりの危機と事業再編の動向」 坂本雅子・名古屋経済大学名誉教授(「経済」2012/7) 論稿の備忘録。

 圧倒的シェアを誇っていた電機産業がなぜ壊滅的な状況に直面したのか。
 日本企業同士の競争に勝つために、「品質は保持しながら、低価格に」と、築き上げた技術をアジアの企業にまるごと移転を繰り返してきた。
 その結果、「育成」したアジア企業に敗北。今やものづくりからの撤退や技術まるごとの身売りを始めている。
 その反省もなく、今度は原発などの「インフラ・システム輸出だ」と、国家資金、国民の金融資産を当てにした安易な商売へ走ろうとしている・・・そうした日本企業のあり方を厳しく問うている多くの人に読んでほしい論稿。
 著者は「日本の英知を結集し、日本の技術と国内生産を守り発展させる長期の戦略を模索すべき。」と結んでいる。
 それにしても、財界の無策・無責任ぶり(その財界いいなりの自民党政治も・・・)にはあきれる。こういう所業こそ「売国的」と問題にされるべきではないか・・・

【「電機・半導体産業で何が起こっているか—ものづくりの危機と事業再編の動向」】
坂本雅子・名古屋経済大学名誉教授 「経済」2012/7

はじめに

・電機、半導体産業は、質の違った危機に直面
  DRAM  世界の8割生産がゼロに 
 「委託生産」の急激な拡大  薄型テレビ 丸ごと台湾企業に委託した「東芝」「ソニー」製
    貿易収支にも影響  デジタル家電分野は「純輸入国」に
・韓国、台湾企業になぜ敗北?  /最大の要因は、日本企業による安易な技術移転、流出
  電機メーカー、先端素材メーカー、先端部品を製造する機械メーカーが、最新技術を流出。アジア企業を「育成」。委託生産による技術移転・流出の拡大。
・電機メーカーの今後の戦略 / 電気機器、半導体などの「単品売り」を「ばかばかしい商売」と切り捨て、社会インフラ、産業システムの「まるごと売り」を指向。大きな問題が内在する。

Ⅰ 電機産業の概要と趨勢

◇電機産業 80年代以降、従業員数で国内1位。ただし、85年183万人→10年110万人

◇国内生産の趨勢
・総額は 80~90年までの間に急成長。90年代横ばい。2000年代低下。2010年22兆円と85年水準。
・80年代の急成長 半導体・電子部品、電子計算機・通信機器の2分野 /4倍近く成長
・00年代 電子計算機・通信機器で激減。4割以下に。
   コンピュータ・情報端末6兆円→1.5兆円。携帯電話など通信機器4兆円→1.7兆円
・半導体・電子部品は、90年代も成長、00年代も維持。電機全体の約1/3を占め、下支え

◇民生用電子(薄型テレビ、ビデオ等) 85年まで急成長、90年代減少。
   薄型テレビの国内販売 03年200万台、10年2500万台。が11年11月前年比90%以上減。

◇家庭用電気 80年代まで大きく成長。その後減少に。90年2.7兆円、10年1.8兆円。
       白物家電は、早くから海外生産へ。この20年で国内生産終了。

◇輸出入のすう勢
・電機輸出の8-9割は、半導体・電子部品、電子計算機・通信機器、薄型テレビ・ビデオ等の3部門
    国内生産の減少は、輸出の減少と連動/ 輸出品が完成品から半導体など部品へ転換
・輸入 85年1.2兆円 → 05年9.7兆円。/電機産業全体の輸入依存度49%。完成品輸入が増大

◇海外生産のすう勢
・85年代以降、急加速。メーカー同士の競争を勝ち抜くため、低賃金低コストを求めて進出。
・90年代、海外工場からの逆輸入が増加 
→半導体などの生産を大きく成長させる/高度技術を有する中核部品は、国内生産 
先進国日本のあり方として「東アジア内国内分業」として肯定的な見方が広がった
⇔ しかし、アジア企業が、日本企業より技術的に劣っていることが前提。その前提が崩れてきている。


Ⅱ 電機産業停滞の原因

◇電機産業の成長をささえたのは「技術力」

・特に半導体・電子部品など中核的部品の技術力。他のあらゆるものづくりの中核
   自動車の製造原価に占める電子部品の割合 ガソリン車2割、HB車5割 EV車6-7割
・今、その中核部品で大きな危機に

(1)半導体での日本の敗北

・90年 世界全体の50%以上、現在20%内外。メモリの主製品DRAMは、8割から1割台、そして消滅へ

①家電産業、急成長の80年代 ~ なぜ世界市場で勝利したのか

・70年代後半 半導体を組み込んだ製品の投入 TV、デッキ、レンジ、炊飯器、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等に、半導体集積回路が組み込まれた。電子計算機、通信機、時計、FAX、ワープロ、船舶、航空機、自動車、そしてロボット、NC工作機等々の分野でも集積回路が組み込まれ、品質を向上。
・世界初の商品化、大量生産に成功した製品  レーザーディスク、電子カメラ、CD、液晶パーソナルテレビ、家庭用VTRカメラ、家庭用ゲーム、コンピュータ制御一眼レフカメラ、ICレコーダー、電子手帳、温水洗浄便座等々。

 ◇背後に官民あげての半導体開発

・もともと半導体生産は、米国の独占。主要技術はすべて特許化。
・70年代、日本は、官民共同で、技術開発を支援。
例)75年「超LSI開発プロジェクト」、76年「超LSI技術研究組合」を組織し、官民学で推進
     同組合だけでも、国の資金300億円、民間資金400億円を投入
・88年、世界生産の51%まで急成長。NEC、日立、東芝が世界3強。特にDRAMで8割に。
・米国の半導体生産 半導体だけを専門とする企業が担う。/ 日本は、家電メーカーが人材、資金を投入。出来た製品を市場に供給するとともに、自社製品に組み込み家電製品の質向上につなげ、家電製品全体の販売も伸ばした。

②日本企業の半導体からの撤退

・90年代、次々撤退 半導体生産は、DRAM(記憶素子の主製品)、システムLSI(多機能集積回路)が中心
・DRAM 80年代10社以上の電機メーカーが作成。エルピーダメモリ(日立、NEC、三菱電機系)1社に
・システムLSI 2010年時、5社のみ。
12年末に、ルネサス、富士通、パナ3社で設計のみを担う新会社設立。生産からの撤退が予測される。

③日本企業はなぜ半導体で撤退に追い込まれたのか

◇DRAMでなぜ韓国に敗北したか

・言われているのは…DRAMの用途がパソコンに移行。品質にこだわりすぎ価格競争に敗れた。
・韓国企業は、なぜDRAMで急成長し勝利したのか /最大の要因
→ ほかならぬ日本企業が韓国の半導体企業を「育成」したことになる。

・韓国企業がDRAMビジネスに参入した時、必要な産業は存在せず。「製造機器、検査機器、環境整備、材料、パッケージ材料、化学材料」のすべての工程で技術がなかった。
→  日本で開発された半導体をつくる機械、化学素材を日本から輸入 

・半導体製造/ 成膜、リソグラフ、エッチング、洗浄、検査の工程ごとに製造装置が必要
・この製造装置は、日本の電機メーカー、半導体装置メーカーが共同で開発したもの。
→ が、90年代以降、半導体メーカーだけで開発・生産。電機メーカーは購入するだけに。
→ 半導体の微細化・大容量化に伴い、開発に多大の時間とコストが必要になる。
→ コスト回収のため、製造装置メーカーは、日本以外の国にも売り込むことになる。
→ 製造メーカーは、売り込みの際に、競合会社との差をつけるため「装置と同時に、その使用法や必要な反応条件などに関するノウハウも含めてユーザーに提供」。

・装置を買うと、技術者がついて来て、生産を立ち上げ、指導してくれる「DRAMは、装置を買えば誰にでもできる」事業となった。
→ 韓国は、売れ筋の装置をそろえることで大きく成功した。

・恐ろしく高価な装置 リソグラフ1台 10数億〜50億円超、技術の進歩にしたがいさらに高騰。
   こうした装置を数十台ならべて使う。最先端の半導体では、製造原価の6割が製造装置。
・ここにサムスンが勝利したもう1つの要因/ 半導体は多額の新規投資が必要、製品の価格変動が激しい
→ 半導体不況の時期にさえ、資金を大量投資し、市況が改善したら一気にシェアを奪う戦略を採用/果敢(あるいは無謀)な投資が可能だったのは、オーナー企業だったから。
→ 日本企業は、リスクの大きい決断はせず。利益が落ちると分社化し切り捨てるか、撤退の道を選択
→ この投資戦略にこそ日本メーカーの敗因があると論じる論者も多い。

◇システムLSIで台湾企業に敗北

・一連の機能を集積した回路。どのような製品に内蔵されるかで機能が異なる。/多品種少量生産が特徴。
・システムLSIも製造装置が高騰 /一方、携帯電話、デジタル家電用の製品は、ライフサイクルが短く、莫大なコストをかけて作っても、投資した費用が回収できない危険性が高い。
→ 2000年代、複数企業から注文と資金をかき集め大量生産する「ファウンドリ」が急成長
→ 発注元の半導体メーカーから、設計データを受け取り、半導体チップの生産を請け負う会社 / この最大の企業が、「台湾積体電路製造」(TSMC) 受託製造の世界の5割。

・この台湾企業の成長も、日本の技術と関係
→ 生産委託する場合/ 自社で構築した工程フローを移管して製造。技術者まで送り込んで技術移管。/また製造装置も多くは日本からの導入。装置導入後の立ち上げは、日本のメーカーの技術者が実施。

・台湾ファウンドリの「セルライブラリ」所有
ある装置やシステムの動作に必要な機能のすべてを統合し、一つのチップに実装したもの。そのチップの「カタログ」
→ デジカメ用のチップの設計をする場合、設計者の仕事は、「世界標準の設計ツールを購入、セルライブラリの中から、デジカメにぴったりのセルを指定すること」だけ。/ セルを指定すれば、自動的に、歩留まり、価格、納期がわかる。/チップ開発のリスクの低下 /また自分でチップも製造しているメーカーも急な増産に必要になった時に、TSMCに製造が委託できるよう互換性を持たす。
→ こうして最初から「セルライブラリ」に前提にした製造を行うことに。

(2)パソコン、家電での敗北

①ノートブックパソコンの敗北
・世界でのシェア 02年26.55%→ 08年ゼロ /日本メーカーの製品は、100%台湾企業
・日本メーカーの委託をうけた台湾ODM(相手先ブランドによる設計製造)企業が中国で生産し逆輸入。

◇台湾企業への委託生産

・もともと台湾での委託生産を構築したのはインテル。IBM支配を崩すため低価格のパソコンを生産
・日本の場合 / ノートパソコンを設計製造する高い技術力を持っていたが、参入が遅くシェアでまけていた日本企業は、95年ごろから台湾企業への委託生産を開始。
→ 日本メーカーの委託方法/ 台湾ODM企業を1社か2社に絞込み、大量に技術者を送り込み、製造面や品質面で教育することで、品質、コストで優位に立ち、シェア拡大を企図した。/その成果が他のメーカーに利用されないように、ODMメーカーに対し、専属的取引関係をとらせた。
→ が、日本メーカーも、専属取引している台湾メーカーも業績は伸びず。/に本メーカーが「教育」した人材が他のメーカーに流出・拡散し、「台湾ODMメーカー全体の底上げにつながった」という、間抜けな結果となった。

◇NECは、パソコン部門を、中国・レノボに実質売却。

・中国最大のパソコンメーカーと合併会社設立。出資比率レノボ51%、NEC49%。
   6年後、レノボの比率を引上げる権利。パソコンの世界シェア NEC0.9%、レノボ8.2%。
→ 無線などの最先端技術を持つNECと手を組み、クラウドを使った次世代端末の開発でも、その技術力を獲得できる。こうして、日本の技術が中国にとめどもなく流出している。

★「委託政策」は、技術を流出させ、自社の独自性を出さなくなり、結局シェア争いに敗れ、最後には、中国企業に今まで蓄積した技術、市場さえ丸ごと渡すはめになっている。

②液晶テレビ、液晶パネルでの敗北

・どちらも、日本で生まれ、日本の消費者が育てた製品。/が、2000年代の数年間で急落。


◇なぜ液晶パネルで韓国、台湾企業が成長したか

・DRAMと同じ構造 「ノウハウ」がぎっしり詰まった「製造設備」の海外流出 /と、生産委託による直接的な技術流出

・液晶パネル 極めて高度な技術蓄積の塊 /偏光板(住友化学、旭硝子)、保護フィルム(三菱ケミカル)、液晶の視野を広げる位相差フィルム(日本ゼオン)、製造装置(東京エレクトロン、アルバック)~ 「日本の技術なしでは液晶パネルはつくれない」
→ メーカーは、「日本企業が試行錯誤を繰り返して獲得した製造ノウハウの暗黙知がぎっしり詰まった」中枢素材、装置を輸出し、同時も生産ノウハウを供与して、韓国メーカーを支えた。

・韓国メーカーの台頭に懸念をもった日本メーカーは、「対抗策」として、台湾企業に技術を直接供与して低価格でつくらせ、それを自社ブランドで販売する戦略をとる。
→台湾メーカーは、日本の最新設備を、ほぼそっくり導入。「日本メーカーの工場をほぼコピー」した状況に
・日本企業による大型液晶パネル技術の流出 /ソニーとサムスンとの合併会社(04年)。他社に先駆けて第7世代、8世代という最新の製品の量産を開始

◇液晶テレビで台湾企業への委託の拡大

・液晶テレビ本体でも08年ごろから委託拡大。(一方で日本国内での人員削減)/09年は海外でもリストラ
→ テレビの自社生産からの撤退へ(日立)、東芝、ソニーも8-9割が委託生産と見られる
・円高に影響されない方法/ 東芝、価格をドル建て契約。ソニー…為替リスクは委託先が負担 

・地デジ化による液晶テレビを強制的購入、エコポイントのための税金は、台湾企業を設けさせていた。


Ⅲ 日本は先端部品分野で今後どうするか

・日本の電機産業は、電機、素材、装置メーカーがばらばらに自社のみの利益を追求して競争し /韓国、台湾、中国企業への安易な技術流出を繰り返し、/結局、日本企業全体の首を絞める結果となった。
・では、先端部品の分野で、今後、どうするつもりか

(1)半導体

①日本企業によるDRAM生産の消滅
・エルピーダメモリ 台湾4社への委託生産急加速。唯一の広島工場の台湾移設/会社更生法の適用申請
→ 米半導体会社が落札。/ DRAM生産の消滅

②システムLSIからも完全撤退か  

・ルネサス、富士通、パナソニックが、設計のみで製造は行わない新会社を設立へ /生産は、米国の半導体受託製造会社グローバル社が、日本に初の製造拠点を設立する構想
・ルネサスは、台湾企業への委託生産を急増させており、新会社は生産をしない。/DRAMと同じく「委託生産」から「生産放棄」のパターン
・グローバル社への日本政府の支援/ 日本の3工場の買取に、「産業革新機構」が出資。この工場で、日本の自動車、電機メーカー向けてのシステムLSIを生産
→ なぜ米国企業を公的資金で支援するのか。日本企業の製造部門を残す方向で支援しないのか/大きな疑問

③最先端技術開発—技術は開発、生産からは撤退

・技術開発は、日本中心に韓国、台湾企業が共同で実施、生産を担うのは韓国、台湾のパターンが増加
・EUVL(極端紫外線リソグラフィ) 経産省が音頭をとり、東芝、ルネサス、HOYA、大日本印刷、凸版印刷、富士フィルムなどが参加。/回路線幅10ナノ台以下の製造技術をめざす。記憶容量の飛躍的増大
→ 開発資金数百億円、日本11社100億円の出資、経産省50億円の補助金
→ が、同機構には、韓国のサムスン、ハイニックス半導体、台湾のTSMCなども参加、
・MRAM開発/  低消費電力、処理速度が速く、DRAMに代わる次世代メモリー
→ 東芝と韓国・ハイニックス半導体が共同開発。研究所は韓国内。

(2)ディスプレイ・パネル

①テレビ用液晶パネルは撤退   自主生産にこだわるシャープ、パナソニックスも…
→ シャープは、台湾・奇美電子に最新技術を供与。生産委託を開始。堺工場は大型に特化(その出荷先確保のために・・・)/奇美電子の親会社、鴻海説密工業と業務提携(シャープ株式10%を取得、筆頭株主に)/堺工場(46%取得)の大型パネルの5割を鴻海に引き取ってもらう。

②中小型パネル(スマートフォンなど多機能携帯電話)

・新会社ジャパンディスプレイが国家資金の投入により発足
→ 東芝、ソニー、日立のディスプレイ部門の子会社3社が「ジャパンディスプレイ」を設立 /「産業革新機構」が株式全体の約7割の2000億円程度を出資 

☆「産業革新機構」 政府が1420億円を財政投融資会計から出資、政策投資銀行などが100億円を出資した「日本国営ファンド」

・NECは中国企業に売却 
NEC液晶テクノロジー株の70%を中国の天馬微電子に売却。日本の技術が中国に流出。

③有機ELディスプレイ  日本の素材、装置メーカーが韓国で技術・生産を集積

・今年1月、サムスンが55インチの大型有期ELテレビを世界に先駆けて発表。
・もともとは、日本がリード。ソニーが07年、世界初の11インチ型テレビを発売、国内販売を終了
→ 日本メーカーがもたつく間に、装置、素材メーカーが韓国に進出し、韓国企業と共同開発に。
→ 薄型パネルの製造装置をつくる世界大手の日本企業・アルバックは、開発研究拠点を韓国に設立。サムスンなどと共同で有機EL用のパネル製造装置を開発。
・発光材料をガラスに塗布する技術の開発  東芝、セイコーエプソンが韓国に研究開発拠点を完成
・住友化学とサムスンと合併で、スマートフォン用のタッチパネル工場を建設。
・宇部興産とサムスンの合併で、耐熱性の強い樹脂材料(ガラスに代わる)の工場を設立。


Ⅳ 電機業界の今後の方向

(1)「単品売り」から「システムまるごと売り」へ
・電機境涯の言い分  「液晶テレビなんて、こんなくだらないビジネスはない」(シャープ片山社長)、単品売りは「10年しか持続しない」。

・各社共通する戦略「トータルソリューション」
 情報・通信、電力、鉄道、スマートシティといった事業で、公的機関、法人が求める仕様にあわせて、システムを開発し、シフトウェア、ハードウエア、プラント建設、その後の運用・保守まで「まるごと」引き受け、売った後も長期にわたり安定的な高収入を得ようとするもの。
→ 「まるごと売り」への脱皮 /日立 売上げの5割、東芝4割、NEC7割以上

(2)今後の展開

◇太陽光パネル、電池   パネル販売だけでなく発電ビジネスへ

◇社会インフラ 東芝、日立、三菱(いずれも原発メーカー)
・発電・スマートグリッド・スマートシティ、リニア・高速鉄道・都市交通、上下水を海外含めて展開
・3社とも、デリー、ムンバイ間のスマートグリッド、発電所も含めた多数の都市建設、交通網整備に参加。
・原発輸出  政府の原子力協定 リトアニア、ヨルダン、ベトナム、韓国、ロシアと締結

◇「新成長戦略」と一体性   ここ数年の電機業界の戦略を反映したのものが「新成長戦略」

★政府の売り込みと政府資金による融資や保証 ~ 国内の雇用と無関係 

・社会インフラ部門/外国の政府、自治体などが売り込み先であるため、個別企業の対応では限界がある
→ 政官民一体の「オールジャパン」の体制を不可欠のものとする。/政府のトップセールス
・ 国家間の競争は熾烈/個別企業の「技術力」より、その他の付加価値が売り込みの成否を左右する
→ 事故後の補償、支払い代金の工面への支援などなど 

・巨額のビジネスであり、支払い代金を相手国にどう融資するかが最大の問題/ 「新成長戦略」では、日本の公的資金や年金基金、簡保郵貯などを活用(インフラファンドの設立)して、融資、補償、再保険などを行うことを構想。
~「投融資が焦げ付けば、『結局は一般会計で面倒見ざるを得なくなる』(財務省幹部)」

・事故後の補償 /システムまるごと売りは、巨大なリスクを伴う 
→ 福島事故で、原子炉メーカーGEは、責任が問われてない。原子力損害賠償法の規定で、電力会社だけが無限責任を負うと規定/ 対米従属の日本ゆえの規定。原発輸出ではそうならない
→ メーカーの責任も問われる。システム運営までの「まるごと売り」であり、電力会社、電機メーカーにあらゆる賠償責任がかぶさる。/ その賠償は、日本のさまざまな資金でカバー。最終的には、日本国の国民に天下される

・ここまでリスクを負いながら、国内の生産や雇用には何の利益もないのが海外でのインフラ・システム事業


おわりに

・日本の電機産業 ものづくりからの全面徹底というべき現象。「ものづくりの壊滅」が始まる。
→ この原因を、安易に「円高」による海外進出の加速、アジア企業の追い上げのせいにしてはならない。

★惨状の原因/ この20年以上、電機業界の経営戦略、競争戦略そのものにあった。

①国内同業者との価格競争するため韓国、台湾の企業を部品・下請け工場として育成。/直接的な技術供与、委託生産を繰り返してきた。 /②素材・装置メーカーは、製品にパックされた技術輸出・流出を繰り返してきた。

→ 技術を底抜けに流出させながら、日本企業同士の「仁義なき」バラバラの競争を展開。自主のみの利益追求と短期的な業績向上だけをめざしてきた。
→ その結果、アジア企業を育て、アジア企業に敗北し、撤退、技術まるごとの身売りを始めている。(メモ者/ 国家資金を投入した研究においても、その成果を韓国、台湾に流出。そこには多国籍企業として、国民経済など眼中になく、利潤をあげるために国境はない露骨な姿がしめされている。)

・あげくの果てに、国家資金、国民の金融資産を担保にした世界での「まるごと事業」に邁進。

・日本企業はこれでいいのか /安易に日本の生産をつぶし、今度も安易に国家資金、国民の金融資産を当てにした商売へ
→ 日本の英知を結集し、日本の技術と国内生産を守り発展させる長期の戦略を模索すべき。/日本製品の性能の高さと技術力を築いてきたのは、日本の技術者、労働者、消費者 / 企業は、10年、20年先の自社と同業他社、国内経済と国民の未来を展望し、一丸となり、技術開発し、自国の技術を守り、国内のものづくりを大切にする戦略を立てるべき。

・多国籍企業も、母国の荒廃、疲弊の上の反応は不可能 /アメリカ企業でさえ海外生産を含めた製品の半分は、アメリカの内需。
・企業の規制も必要だろう。/台湾、韓国も中国生産移転について、厳しい規制をかけている。

・無制限のグローバル化が企業にとって本当によいことか/自国の技術者、労働者、国民とともにその成果と繁栄を分かち合うという資本主義企業の良き精神を、取り戻すべきにきている。


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