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「若者に投資しない社会は没落する」 第一生命研究所

 ダイヤモンドオンラインから、熊野英生・第一生命経済研究所・経済調査部 首席エコノミストの論考。経済成長という観点で、少子化、人口減のもとでの若者の就職難、不安定雇用の問題を指摘する。

・20歳代以下の雇用者報酬は、99-2011年で55兆円から37兆円と約4割減。
・頭数が減ったから総額も減らそうという発想に、縮小均衡のメカニズムがある。個々のパフォーマンスを高めるための一人当たりの投資をふやさなくては、効率・成果に悪影響を与える。
・日本経済全体では、勤労者の所得拡大が、経済成長を果たせ、社会保障システムも充実できる。
・技能労働者は慢性的に不足している。企業の新卒採用減、人的投資の減少により、労働市場に教育された人材が供給されなくなったため。「雇用のミスマッチを解消しなくていけない」と言われるが、社会全体で誰かが人的投資を増やして、スキルのある人材を育てなければ、ミスマッチは絶対に解消しない。
・日本の活路は、人的投資の総額を減らすことを止めて、1人当たりの人的投資を増やすことである。

~ これは国民経済の視点。そのためには国益と無縁な多国籍企業の行動を規制するルールが必要。
【若者に投資しない社会は没落する――熊野英生・第一生命経済研究所 6/6】

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【若者に投資しない社会は没落する――熊野英生・第一生命経済研究所 6/6】

 企業は、どんどん若い勤労世代に賃金分配をしなくなっている。20歳代以下の勤労者に配分した雇用者報酬総額は、1999年に55兆円だったと推計されるが、2011年には37兆円にまで減ってしまっている(▲39%減、図表1参照)。

 この間、雇用者報酬は、総額で▲9%ほど減額されているが、配分率自体も1999年の20.4%から、2011年の15.1%へと大幅低下している。

 このデータ解説を聞いて、若者の人数が減っているので、20歳代以下に配分した報酬額が減っていても仕方がないと考える人は多いだろう。本当にそう考えてよいのだろうか?
 筆者は、実はその点こそが大問題であると考える。なぜ、人数が少なくなっているのに、同額の人件費を分かち合わないのか。人数が少なくなった分だけ、1人当たりの分配金を引き上げることでは、何がいけないのか。
 思い出してほしいのは、2006~2009年に団塊世代がリタイヤして、企業が支払う総人件費は大幅に軽減されたことだ。筆者の計算では、企業が2005年に支払っていた50歳代の人件費は65兆円だったのが、2010年に58兆円へと▲7兆円ほど軽くなった。だが、▲7兆円は他の年代の報酬に分配されることなく、単なる総人件費の削減で終わった。

◆なぜ、1人当たりの
 人的投資を増やさないのか

 筆者は、若者が格差に苦しんでいるから賃金を増やしてほしいなどと主張するつもりはない。パイが小さくなるのに世代間闘争をやっても社会的利益は乏しい。
 重要なのは、公正・平等の視点ではなく、効率・成果に対する悪影響である。頭数が減ったから総額も減らそうという発想に、縮小均衡のメカニズムが潜んでいる。

 ここまではわかりやすい事例として、雇用者報酬のデータを紹介したが、同じようなことが企業の人的投資でも起こっているはずだ。昔から日本企業は、社内にある様々なリソースを投じて、正社員として入社した若者に手間隙かけて企業内教育・訓練を施してきた。OJT(オージェイティ)はその代表例である。どこの職場でも、中間管理職や先輩は、若手指導に随分と力を尽くしたものだ。
 当時は、手厚い人的投資は、次世代の若者たちが将来の生産性を発揮するために当たり前だと考えられた。この10数年でそうした企業カルチャーはすっかり薄らいでしまった。
 翻って、昨今、企業内では、人員削減で職場の人数が少なくなったとき、「1人1人がパフォーマンスを上げて、業績を高めよう」と気炎が上がる。もしも、個々のパフォーマンスを高めるための各種投資が、人員削減とともに同率で絞り込まれたままならば、成果の向上など、単なる精神論に終わるのではないか。

◆採用抑制は
 人的投資の抑制でもある

 一方、大学生の就職難が言われて久しい。筆者は、これだけ少子化が問題視されているのに、大学生の就職難に対して同等に批判する声が相対的に少ないことには驚く(ここでは、あえて、学力低下とか、進学率の上昇は議論しない)。

 問題を経済成長に絞って考えると、筆者は企業の採用抑制が、人的投資の抑制に直結していることが深刻だと考える。2012年3月に卒業した大卒者の中で、「一時的な職に就いた者とそれ以外の者」、つまりフリーターや無業者に当たる者は11万人もいる(図表2参照)。
 1991年にその人数が2.6万人だったのと比べると、最近は4倍以上である。11万人もの若者を、企業が能力開発もせずにいるのは、まことにもったいない。20歳代に鍛えられた経験こそ、その後の勤労人生の糧になる。

 データで見ても、正社員として育成された若者は、就業年数を重ね、仕事能力を高めることで、結果的に所得水準を上げていく(図表3参照)。

 日本経済全体では、勤労者がその所得を拡大させたとき、消費水準が増えて経済成長を果たせる。そして、社会保障システムも充実できる。経済成長のために最重要なのは、人口増加率そのものではなく、勤労者が身につけたスキル(人的資本)の総体が発揮するパフォーマンスなのである。
 反対に、人口減少と共に人に宿ったスキルの総量が減衰していくメカニズムに、社会が無関心なことが恐い。

 経済成長のために何をすればよいのかということは、次のように考えるとわかりやすい。

 日本の生産年齢人口(15~64歳)が10年後(2012年→2022年)に▲10%も減ってしまったとしよう。生産年齢人口1人当たりの生産力が高まらないと、10年後の実質GDPも▲10%減になる。

 これを避けるためには、1人当たりの生産性を向上させなくてはいけない。そのためには、人的投資額を減らさず、企業組織が蓄積しているスキルを大きく膨らませることで、イノベーションを導き出しやすくできる。
 仮に、今の若者への人的投資が10兆円だったとして、若者の人数が2割減ったとすると、投資総額を据え置いた場合は1人当たりの人的投資を1.25倍に増やせる。もしくは、新卒者が40万人だったとして、そこから正社員として採用する人数を30万人から37.5万人(=30×1.25倍)に増やせる。その場合、非正規労働者・無業者は10万人から2.5万人に減る。

 しばしば、人口減少の下では、国内設備投資を増やし、資本投入量の増加を通じて1人当たりの生産性を上げろと言われる。しかし、産業空洞化の圧力の下では容易ではない。企業は、人口減少と共に総需要が減っていくという予想によって、設備投資の圧縮を人口減のペース以上に進めているのが実情だ。

 また日本の労働市場は、国内設備投資の抑制と同時に、労働力が余剰になっている。なぜ、人口減少(=供給減)の下で、労働力が余剰になるのかを考えてほしい。これは、労働需要がより大きく減るからだ(供給>需要)。
 製造業も、非製造業も、国内需要が縮小していくという予想に基づき設備投資を絞り込んでいくと、そのインパクトが総需要を加速度的に落としていき、人口減少のペース以上の勢いで労働需要を縮小させる。
 その結果、生産年齢人口が減っているにもかかわらず、需要不足によって労働力は余剰になっていく。

 もう1つ、考えて欲しいのは、労働力全体が余剰なのに、スキルのある労働者は恒常的に不足している謎である。
 技能労働者を欲しがる企業はどこにでもいるが、彼らの欲しがる人材は慢性的に満たされないまま、10年以上が過ぎている。その理由は、企業が永らく新卒採用を減らして、人的投資を惜しんだために、労働市場に教育された人材が供給されなくなったためだ。

 エコノミストたちは、「雇用のミスマッチを解消しなくていけない」と口々に言うが、社会全体で誰かが人的投資を増やして、スキルのある人材を育てなければ、ミスマッチは絶対に解消しない。

 人口減少社会の中で、日本が活路を見出すとすれば、人的投資の総額を減らすことを止めて、1人当たりの人的投資を増やすことである。そうした改革を行なわなければ、「分厚い中間層をつくる」というチャッチフレーズはいつまでも空疎なままであり、日本の豊かさは失われていくばかりになる。未来のために、何もしないで衰退することを回避しなくてはいけない。

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