「福島の介護職員不足に全国から派遣」~に見る制度の弱点
福島県で介護施設の職員不足が深刻で、厚労省と福島県との会合で、「全国の高齢者介護施設から職員を2週間~3カ月派遣してもらうことを決めた。」とのこと。
人手不足は解消してもらいたいが、あらためて介護保険制度のもつ弱点がうかびあがる。
【全国から福島に介護職員派遣 共同5/31】
①もともと全国的に介護職員が不足している。国が介護保険導入にあたって、国の財政投入を半分にし、その後も、「介護給付」抑制を第一目標に報酬改悪を繰り返してきた。その結果の人手不足である。
高知県内でも6割近い施設が、人材難を訴えている。要因は低賃金と重労働だ。
②介護保険は、市場原理にもとづき、イコールフッティングを枠組みとする。税金投入は厳しく制限されているため自治体の職員は基本的にいない。民間か、社協などへの委託である。つまり、行政が「派遣」する指揮命令系統をもたない。
自衛隊、地方整備局や自治体が人を派遣したのとはわけが違う。国家公務員である自衛隊、地方整備局は、全国規模が活動することをそもそも役割とする。地方整備局にはそのチームを持っている。自治体職員も広域連携の一環、公務として派遣されている。医療は、高度救急、災害拠点を担っている病院があり、DMATやドクターヘリなど「派遣」を前提にしたシステムが存在する。一定期間の看護師派遣も国立、県立病院などの軸が存在する。
しかし、実際、どうするのだろう。「派遣」した職員個人は給与の増額、「派遣」した施設にも、人を出した以上の財政的インセンティブをはたらかせる・・ということになるのか。
保険負担の決められた割合以外の税金投入は、介護保険制度の根幹にかわる問題として、厚労省は一貫して反対してきた。
2週間~3カ月も家を離れ、被災地に行くというのは、なかなかのことである。家庭をもつ身、とりわけ女性には厳しい現実がある。
個人の使命感だけでなく、それと一体で、その使命感を担保する身分保障をされているというシステムがなくては全体としてはうまく機能しないのではないか・・・
災害や緊急時の対応を考えるなら、公的役割という角度から、制度の見直しが必要と思う。
【全国から福島に介護職員派遣 共同5/31】厚生労働省と福島県は、東京電力福島第1原発事故の影響で高齢者介護施設職員が不足している問題を話し合う検討会を設置し、31日に福島市で開いた初会合で、緊急措置として全国の介護施設から職員を派遣してもらうことを決めた。
県によると、原発事故以降、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など県内71施設で、職員が避難したり、離職したりして226人が減少。多くの施設が人材確保に不安を抱えているという。
この日の会合では、ハローワークなどを通じて職員の確保を進めるとともに、7月から来年3月まで、全国の高齢者介護施設から職員を2週間~3カ月派遣してもらうことを決めた。
(共同)
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