自治体コールセンターとワンストップサービス〜庁舎問題とも関わって
長期浸水で孤立する可能性のある高知市役所の現位置での建て替えは、新行革方針では、ワンストップサービス充実させ、自治体コールセンターの導入する方向、そして窓口業務の一部委託(偽装請負、情報保護など問題は多々あるがここではその点は省略)など・・・
これからの時代の「機能」という本質的問題が抜け落ちたまますすんでいるようで・・・以前「雑感」で少し触れたが、あらためて、検討事項などを整理してみた。
【高知市 新行政改革大綱(案) 雑感 2012/5】
1 コールセンター
市民からの問い合わせに、コールセンターが一元的に対応。問い合わせへの回答もその場で行う。
24時間、土日も対応。たらいまわしがなくなる。
あらかじめ想定された質問に対しつくられた回答にもとつき、その内容は運用する中で日々更新していく
コールセンターの職員では答えられないような質問の場合だけ関係部署につなぐ
「(仮称)高知市コールセンター」設置に係る調査及び計画策定業務 の 公募2012/5
≪懸念材料・問題点≫
①自治体職員の市民への接触機会が減る … ボトムアップ型の行政運営の縮小
一見(一聴)「問合せ」のように思えても、実は、要望であったり、苦情であったり、提案であったり、さらには問合せを口実にただ誰かと話をしたかった、などという場合が少なくない。
②民間参入による個人情報保護の問題
民間のコールセンターでは、「クレーマー」の対応や、顧客によりきめ細かいサービスを提供するために、過去の問い合わせ、各種の個人情報が蓄積されている。
大阪府2010年 自動車税コールセンターを受託しているNTTマーケティングアクト社が、業務委託契約に違反して、再委託、再々委託していた事件が発生
③費用対効果
・ 「20:80の原則」 件数では、簡単な問い合わせ80%、複雑なもの20%だが、所要時間は、複雑なものが80%であり、20%の削減にしかならない。
・情報格差が大きいのは高齢者であり、高齢者は直接出向いた相談も多い。
・06年、自治大学校 研修生グループ調査「人口50万人が分岐点であり、それ以上であればコールセンターの設置のメリットがあるが、それより下回る場合は、費用対効果が小さく、これが導入のハードル」
*横浜市・粗大ゴミ、水道局のコールセンター 04年試行期間
月~土の平均問合せ件数が40件。1時間あたり3件。問合せ1件あたり667円、5人+2人の体制で
2.自治体版CRM(Citizen Relationship Management)とは
・住民の満足度をあげ、行政サービスの質をあげるということで、コールセンターやデータベース化が言われているが、コールセンターとCRMは別物であり、データベース化はCRMの1要素でしかない。
・自治体における顧客(住民)満足度の向上のためには、
①職員の資質向上
②住民の「声」の集約と施策への反映
代表だけでなく、担当課への直通など、直接訪問など〜 コールセンターで声の集約は不可能
重要なことは、「声」の分析。問い合わせ、苦情、要望・提案など。施策への反映とフォロー
3 ワンストップサービスについて
・住民が「たらいまわし」などの不満の背景
①住民がどこに電話をかけてよいかわからない。前に言った。回答がばらつく。
②住民のニーズか1つの課ですまず、そのつど同様の話を住民がしなければならない。
→ このどちらもコールセンターで解決できるとは言えない
①については、コールセンターというより
回答の統一、FAQ(よくある質問)の整理など、業務内容の整理と更新・充実の必要性
専門性の向上、苦情から改善点をつかねうとする姿勢
②は、そもそもワンストップ業務のあり方の問題となる。
以下のレポートは参考になる・・・
「住民の利便性を向上させるための窓口の多様化やICTの導入が、自治体職員の業務フローを複雑化させるなど、自治体のコストを高める結果を招いている例も少なくない。」「公共サービスへのICT導入にあたっては、利便性だけでなく、サービス状況の把握や業務プロセスの検証を通じた「全体最適化」にも目を向けることが必要だ。」
「総務省の調査事業として実施された鳩ケ谷市(埼玉県)のインテリジェント型総合窓口では、最初の窓口で自分が必要な手続を事前に知ることができる。また、受付の一本化や、審査不要な簡易な証明書発行業務の一元化に留まらず、庁内ネットワークを活用することにより各課が作成した書類を総合窓口で受け取ることができる仕組みとなっている。こうした変革によって、複数の処理を並行して進める「並列」型の手続処理が行われ、時間やコストの削減効果や利便性の向上が期待される。/現在3億円かかっている窓口事務の3分の1が削減され、待ち時間も4割に削減されるとの試算結果が得られた。」
(2008年7月 みずほ情報総研 社会経済コンサルティング部 次長 片田 保)
4.分散型ワンストップサービスの可能性
①遠隔地とのテレビ電話相談
行政エリア拡大によるサービス提供コストの増加や、サービス多様化に伴う業務の専門化は、「必要時に専門担当者が不在」「支所には担当部署がない」などサービスの低下に繋がっている。
支庁の相談窓口と本庁の担当課を接続する、遠隔住民相談(テレビ電話相談)で解決できる可能性がある。
窓口業務のワンストップサービス化と組合せば、住民がわざわざ本庁に足を運ぶ必要がなくなる。その為、住民の満足度が向上する。さらに、行政側では、専門担当者の有効活用も可能となる。
→ こうした内容を組合せば、ふれあいセンターなどで総合的に対応できるとともに、庁舎位置、建物のあり方についても選択の幅が広がる。
②高齢化社会に対応したコミュニティ・防災の核としての新型「支所」
高齢化社会であり、市内各地から、一箇所に来てもらう庁舎から、より身近な庁舎がのぞましい。(住民の立場からみた「効率性」の向上)
・ケアや防災などより小さな単位での地域の力がますます必要となっている。それをきちんと支える地域の公的な核として機能を持たす。地域には、PTA・教育、福祉・社協、虐待・若者支援、防災防犯などさまざまな組織があり、全体を見回し、コーディネイト、サポートできる体制の強化、マンパワーはより現場に近いところに・・を重視する。まさに、地域を「支える所」。
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