ドイツから学ぶ、3.11後の日本の電力政策 富士通総研
ドイツの政策を詳しく紹介したあと、「3.11後の日本の電力政策の展望」として
「脱原発は可能か?」「原発推進派に反論する」「再生エネの大量導入は現実的か?」「再生エネ懐疑派に反論する」「電力システムをどう改革するか?」「発想電分離しても停電は増えない」と展開している。
最後に「電力政策の抜本改革には強い抵抗が予想され、実現は容易でない。国民が主体となるシステムへの改革だからこそ、国民の強い意思に基づいた政策実現が問われている。」と結んでいる。まさに、3.11以前と同じ発想を続ける原発利益共同体とのたたかい。
【ドイツから学ぶ、3.11後の日本の電力政策 ~脱原発、再生可能エネルギー、電力自由化~ 6/13】
伊方原発のすぐ北に隣接する山口県の知事選は、エネルギー政策転換において重要な選択となる。
【ドイツから学ぶ、3.11後の日本の電力政策 ~脱原発、再生可能エネルギー、電力自由化~ 6/13】富士通総研・主任研究員 高橋 洋
(要旨)
2011年3月の福島第一原子力発電所事故を受けて、日本の電力政策を取り巻く環境は劇的に変わった。原発の安全神話が崩壊し、計画停電も経験した。2011年秋から政府は「エネルギー基本計画」の見直しを進めており、脱原発は可能か、再生可能エネルギーの大量導入は現実的か、電力システムはどうあるべきか、活発な議論が続けられている。3.11後の新たな電力政策について、日本はドイツから学ぶべき点が多いというのが、本稿の基本的視座である。
3.11後にドイツはいち早く脱原発を表明したが、実は2022年までに全ての原発を廃炉にするという決定を行ったのは、2000年が最初であった。同じ年にドイツはフィードインタリフを開始し、その結果再エネの導入は6.4%から20%(発電量ベース)へと飛躍的に進んだ。そしてこの10年余りは、電力自由化を推進した時期とも合致している。独占を撤廃し、民間企業の発送電分離を進めた結果、市場は内外に開放され、それが分散型電源である再エネの普及にも寄与している。このように、3.11後の日本が真剣に悩んでいる3つの政策転換の全てを、ドイツは10年余り前に決断し、これまでに大きな成果を上げてきた。そして経済規模、技術水準、エネルギー安全保障の状況、電力産業の構造などの観点から、ドイツの10年前の状況は日本の現状と極めて近い。ドイツが成し遂げてきたことの多くは、日本にも応用可能であると考えられる。
本稿の結論としての政策提言は、次の通りである。
第1に、日本も脱原発を選択することは可能であるし、地域的安全性だけでなく経済性やエネルギー安全保障の観点からも、そうすることが望ましい。
第2に、その不可欠な手段が再エネの大量導入であるが、フィードインタリフによる優遇や立地規制の緩和などの手段により、十分に現実的である。
第3に、再エネの大量導入のためにも、発送電分離の断行や地域独占の撤廃、卸電力取引市場の活性化といった、本格的な電力自由化が不可欠である。
これらの政策が目指すものは、「自律分散型電力システム」への構造改革である。電力の供給を限られた数の電力会社に一任するのではなく、多数の供給者や無数の需要家が様々な形で関与する、市場ベースのシステムへの移行が求められている。とは言え、このような電力政策の抜本改革には強い抵抗が予想され、実現は容易でない。国民が主体となるシステムへの改革だからこそ、国民の強い意思に基づいた政策実現が問われている。
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