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チェルノブイリに学ぶ 「避難の権利を」

 農業情報研究所さんが、自身の思いとともに、東京新聞5/26特報「「チェルノブイリから学ぶWHO 独立性回復を」を全文書き写して紹介している。
 同法は、残留か避難かを選択でき、そのどちらも支援する先進的な内容である。旧ソ連の解体直前とはいえ、同法を制定されたのは国民の運動であり、その点を学ぶ必要がある。

【東京新聞5月26日特報 チェルノブイリに学ぶ 汚染度の高いところに「避難の権利」を 】

【東京新聞5月26日特報 チェルノブイリに学ぶ 汚染度の高いところに「避難の権利」を 】
以下は、5月26日付東京新聞(朝刊)の特報欄に掲載された「チェルノブイリから学ぶWHO 独立性回復を」と題する記事の全文である。ウエブページでは「世界の人々の健康を守るべき世界保健機関(WHO)が“国際原子力ムラ”に従属してきた実態を告発する医師。チェルノブイリ原発事故後、汚染区域ごとに分けた被災者支援の法律を作った科学技術者。この二人がそれぞれ来日し、福島の原発事故による近未来を懸念してチェルノブイリの教訓を伝えた」というリード部分しか見られないので、東京新聞の現物に触れるのが難しい地方の方々のために、全文を書き写して紹介することにした。

 そんなことはとっくに昔に知っているという人もいるだろう。ただ、WHOの東電福島第一原発事故による被ばく線量推計結果を無批判に伝えるだけのマスコミは健在だ。農家は、「避難地域」の外であっても福島県、栃木県、宮城県南部のいたるところに存在し、岩手県、茨城県、千葉県、群馬県、埼玉県などでも散見される、ロシアなら「移住義務ゾーン」(年間積算線量5㍉シーベルト以上の地域)、「移住権利ゾーン」(同1㍉シーベルト以上、5㍉シーベルト未満の地域)とされる地域(*)で、特段の被ばく防止措置を講じることもなく農業に励み、行政や一部専門家は当然のことのようにこれを放任し、一部消費者(団体)は「風評」に負けるなとこの「被ばく労働」を応援さえする。

 私自身は、つとに「原発事故で農業と農村が負った深手はどうしたら癒すことができるのか。名医はどんな処方を出すのだろうか」と問い、この処方箋に、除染と農地生態系の回復の絶望的困難を見越した「移住」を付け加えるべきだと主張してきた(「原発災害による農家の痛手はどうしたら癒せるのか(科学時評)」 『科学』 2012年2月号;「放射能汚染がつきつけた食と農への難問──土壌生態系の崩壊は何をもたらすか」 世界 2012年2月号)。
 しかし、こんな主張は、いまだに全く顧みられることがない。ということは、そんなことはよく知らなかったという人も多いということだろう。そういう人にお読み願いたい。低線量被ばくは体に悪いどころか、健康にいいというイデオロギーに染まった方は読んでも無駄である。 
 *福島県の放射性セシウム濃度別農地分布(2012年3月30日)及び農水省:http://www.s.affrc.go.jp/docs/map/pdf/04_00data_zenken.pdf


「チェルノブイリから学ぶWHO 独立性回復を」

「原発事故から26年。汚染地に住み、被ばくで傷付いた遺伝子は世代を経るごとに異常化が進み、被害者を増やしている」。24日、東京・新宿のホテルで、スイス・バーゼル大学名誉教授のミシェル・フェルネクス医師(82)は話す。

 「WHOは隠蔽の共犯者である。だが、事故の教訓は福島に生かさなければならない」。WHOは1948年に設立され、本部はスイス・ジュネーブにある。かつて専門委員として感染症の研究をしてきたが、86年に起きたチェルノブイリ事故後の姿勢に疑問を投げかけてきた。
 原子力産業が台頭した1957年に米国主導で設立した国際原子力機関(IAEA)や国際放射線防護委員会(ICRP)は事故による死者数を急性被ばくなどの数十人と公表。いまだ小児甲状腺がんの増加しか認めていない。

 一方、ニューヨークの科学アカデミーの後援で編集され、2009年に刊行された本では、事故による死者は98万5千人と推定した。「被害実態を明らかにした研究者からの報告を黙殺し続けている。それに異を唱えないWHOは被害の矮小化に手を貸しているといってもいい」。

 WHOは緊急時にも適切な医療を提供する役割を負う。ところが、59年にはIAEAとの間で「WHOは国連安全保障理事会に従属するIAEAの了解なしに情報を公開したり、研究したり、住民の救援をしてはいけない」との趣旨の合意をし、事実上「放射線分野での独立性を失った」と続ける。

 「IAEAは放射能汚染から人々を守ることが目的ではなく、経済的な配慮を優先させる組織。被ばくが原因と思われる健康被害を過小評価したり否定したりし、汚染地域からの避難が遅れる可能性もある。原子力事故があってもWHOは介入を禁じられてきた」

 チェルノブイリでは今もさまざまな疾病の増加が報告されている。「死産、周産期死亡、先天性異常、感染症・・・。ベラルーシでは、飲食による内部被ばくも続き、子どもの8割が何らかの病気にかかっている」

 遺伝子は放射線を浴びて切断されても修復する力があるが、間違って修復された場合に遺伝子が変異し、成長期には変異した細胞が増殖する。原発から30~300キロのネズミを調べた研究では、22世代にわたって遺伝子の異常がより進行しているという。

 「WHOは早く従属的な立場から脱し、健康被害の情報を正確に評価しなければならない」。

そう唱えるフェルネクス氏らは2007年、WHO独立のためのキャンペーン活動を開始。しかし、WHOは09年に放射能健康局を廃止し、さらに後退している。

 福島原発の事故で、日本政府の情報開示や対応は後手に回った。「言語道断だ。チェルノブイリ事故の直後、子どもたちにヨウ素を配ったポーランドでは、健康を守ることができた」とフェルネクス氏。

 今回、福島県郡山市や、広島市、さいたま市などで講演した。23日に新宿で開いた講演会では、来場した双葉町の井戸川克隆町長から「いま福島はまるで核実験場のようなところ。住み続けるべきか、避難すべきか」との質問も出た。

 あらためてフェルネクス氏に聞くと「汚染度の高いところは避難すべきだ。それ以外で住み続けるのなら、内部被ばくの防止を徹底する必要がある」。放射能のない食べ物のほか、体内の放射性セシウムの排出に効果的なペクチンが含まれる海藻やリンゴ、抗酸化物質として作用するビタミン類やカロチノイドがあるニンジンなど色つき野菜の摂取を提言した。

 福島では今後、年間の積算被ばく線量が高い20㍉シーベルト未満でも帰還はできるとし、政府は除染を進めていく考えだが、被災者の悩みは深まるばかりだ。

 被災者を支援する実効性の高い法律の制定が急務となる中、国会で与野党それぞれが被災者支援法案を提出し、協議を重ねている。その手本として注目されているのが、チェルノブイリ事故後にロシアで制定された「チェルノブイリ法」だ。

 「福島を支援する法律を作るため、参考にしてほしい」。法の制定に力を尽くしたロシアの「チェルノブイリ同盟」副代表で科学技術者のアレクサンドル・ベリキン氏(59)は17日、東京・永田町の衆院第二議員会館での集会で訴えた。

 被ばくで健康被害を受けた労働者らを国が支援する仕組みがなかったことから、「自分たちの権利を守ろう」と同盟を結成。事故から5年を経て法制定につなげた。今回「福島の子どもたちを守る法律家ネットワーク」など3つの市民団体の招きで来日した。
 
  べリキン氏は「この法律の良いところは、被災した住民自身が今後の暮らし方を決められる点です」と説明する。
 年間積算線量が5㍉シーベルトになる区域を「移住義務ゾーン」、1㍉シーベルト以上、5㍉シーベルト未満の区域を「移住権利ゾーン」と設定。被災者は支援を得て汚染地域で暮らすのか、非汚染地域へ移住するかを選ぶことができる。

 両ゾーンでは国家の負担による健康診断や薬剤の無料提供、年金の割増などの社会的な保護を受けられる。移住を選んだ場合でも国は住民が失うことになる家屋などの財産について、現物または金銭での補償をすることになっている。

 同氏は「残留者、避難者ともに支援する先進的な内容。どんな国でも快くお金を払ってくれる政府などない。人の権利を守る法律を制定するには、住民が声を上げることこそ大事」と呼びかけた。

 福島では自主避難者も賠償対象に入ることになったものの、避難せずに残った住民の低線量被ばくは続く。協議中の法案は避難指示解除準備区域などを対象にする住宅確保や就学を支援する内容だが、チェルノブイリ法のような「避難の権利」までは踏み込んでいない。

 同ネットの共同代表を務める河崎健一郎弁護士(36)は「政府はまず、健康被害も含めた正確な情報を開示すべきだ。その上で、20㍉シーベルトにこだわらずに移住か残留かの選択権を持たせ、充分な保障を受けられる仕組みをつくってほしい」と話している。


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