成長・雇用促進、累進的な課税制度が重要 仏大統領選をうけて ILO研究所
金融や労働の規制緩和、社会保障削減、税のフラット化など新自由主義がもたらしたリーマンショックとその後の金融危機。それを緊縮財政やいっそうの規制緩和など新自由主義で対処するというのは、負のスパイラルをもたらすのは必至。
昨日触れた「緊縮の罠」について、フランス大統領選に直接触れたILO研究所のコメント。日本共産党の社会保障・財政危機打開の「提言」と大きな流れで一致する内容。
【フランス新大統領にとっての重要目標は雇用促進 5/7ILO】
【フランス新大統領にとっての重要目標は雇用促進 5/7ILO】フランスの大統領選挙では、財政緊縮措置よりも景気刺激策を掲げて選挙運動を展開してきた社会党のフランソワ・オランド氏が5月6日の決選投票を制し、1995年以来の社会党政権が誕生します。最新の統計によればフランスの失業率は10%、失業者数は260万人を超え、特に若者(15~25歳)の失業率は2倍以上の約22%に達しています。
選挙結果を受けて、ILOの研究機関である国際労働問題研究所のレイモン・トレス所長は、「今重要なことは仕事を豊かに生む成長を刺激し、低賃金職の負担が軽くなるように社会的保護財源の累進性をもっときつくするよう確保し、若者の失業に取り組む特別計画を採用すること」として、緊縮財政の罠から抜け出し、成長・雇用戦略に向けて進むことを提案しています。トレス所長は最近出されたILOの年次刊行物『World of work report(仕事の世界報告書・英語)』2012年版の中心的な著者でもありますが、同書は、「財政緊縮策は成長と雇用を弱体化させる一方で財政赤字目標の達成をますます困難にする」として、意図する効果が達成されないことを示しています。所長は、フランスの財政状態と競争力について「一部近隣諸国よりはまだまし」と評価していますが、「前進には大幅な政策転換」が求められるとして、この2年余りの間、一部欧州諸国の政策に特徴的な緊縮財政の罠から抜け出し、成長・雇用戦略に乗り出すことを提案し、中心的な雇用創出源である小企業のための金融市場を再び始動させることをこの目標を達成する上で決定的に重要と唱え、そのための方法として、ドイツのように小企業に貸付を行う既存の銀行に対する保証を強化することや同国が比較優位を有する産業部門やサービスを中心とした実体経済に対する投資の増大に焦点を当てた新たな信用機関を創出することを提案しています。
また、欧州連合(EU)加盟国は労働市場の規制緩和を差し控えるべきとして、この点で、オーストリアのような改革の成功例に見られるように社会対話が効果的な手段であることを示した上で、「長い目で見れば設計のまずい規制は再検討すべき」としつつも現在のような危機的状況下では規制緩和は雇用創出を促進せずにむしろ雇用喪失を悪化させるとしています。
トレス所長は教育の重要性にも言及し、世界屈指の優れた高等教育制度を備えながら失業している若者が多いフランスの現状に対し、スウェーデンのように、正規の雇用に就いていない若者が学校に戻る機会を与えられ、学習と就労体験を組み合わせたり、就職活動に対する見返りとしてその他の支援を受けられるような「労働力化保証措置」を導入することを提案しています。
そして、フランスは実際の投資の低下傾向を食い止めるよう迅速に動く必要があるとして、社会的に責任ある総合財政強化策を採用し、それを成長・雇用戦略で補い、より累進的な課税制度を導入することによって仕事と財政の両方の不足を和らげることができるだろうと語っています。
ILOは上記報告書と共に、日本、米国、欧州連合、ドイツ、イタリア、スペイン、中南米について、この1年間の雇用情勢を簡単にまとめた概況文書を発表しています。
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