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「尖閣諸島購入」問題の本質~沈黙する米国

 東京新聞に載った豊下楢彦・関西学院大教授の記事。
 個人所有の久場島が購入対象から外れている。その答えは米軍の管轄下にあるから(国有地の大正島とともに)。一昨年の中国漁船の「領海侵犯」も久場島。しかし米軍・米国は沈黙。
 政府のやるべきことは明白。島を提供している米国に明白な立場をとらせること。 しかし米国は「中立の立場」。同盟国さえ日本の立場を否定するなら「外交的知恵」を発揮するしかない。  
 購入問題は、この米国の無責任な立場を覆い隠すだけ、というもの。
 

【「尖閣諸島購入」問題の本質 米国の立ち位置隠し 豊下楢彦(10日付東京新聞夕刊)】より

・石原氏は購入の対象は魚釣島、北小島、南小島。しかし、同じく個人所有の久場島に言及無し。なぜ久場島を購入対象から外すか。その答えは同島が、国有地の大正島と同じく米軍の管理下。

・海上保安本部の公式文書では、これら二島は「射爆劇場」で米軍に提供され「米軍の許可」なしには日本人が立ち入れない区域。

・1979年以来30年以上にわたり全く使用されていないが、歴代政権は、久場島の返還を要求せず、高い賃料で借り上げる「無駄な行為」を繰り返してきた。

・一昨年9月に中国漁船が「領海侵犯」したのが、この久場島。それでは事件当時、同島を管轄する米軍はいかに対応したか。米軍の「抑止力」は機能したか。

・本質的な問題は、他ならぬ米国が尖閣諸島の帰属のありかについて「中立の立場」。久場島と大正島の二島を訓練場で日本から提供されていながら、これほど無責任な話があるか。

・なぜ日本政府は、かくも理不尽な米国の態度を黙認してきたか。 日本政府は一貫して「尖閣諸島は日本固有の領土であり、領土問題などは存在しない」と主張。ところが米国は、1971年に中国が公式に領有権を主張して以来、尖閣諸島について事実上「領土問題は存在する」との立場。中国は、こうした日米間の亀裂を徹底的に突いてきている。

・とすれば日本がなすべき喫緊の課題は明白。尖閣五島のうち二島を提供している米国に、帰属で明確な立場をとらせ、尖閣諸島が「日本固有の領土である」と内外に公言させること。

・これこそが、中国の攻勢に対処する場合の最重要課題。これに比すなら三島購入等は瑣末の問題。

・しかし同盟国である米国さえ日本の主張を否定するなら、尖閣問題が事実として「領土問題」となっていることを認めざるを得ない。

・その場合、日中国交正常化以来の両国間の「外交的知恵」である「問題の棚上げ」に立ち返り、漁業や資源問題等で妥結をめざすべし。

・石原氏の尖閣諸島購入という威勢の良い「領土ナショナリズム」は結局「中立の立場」という無責任きわまりない米国の立ち位置を覆い隠す役割を担っている。

 (とよした・ならひこ=関西学院大教授、国際関係論・外交史)

  ここには、アメリカが、急成長する中国をアジアでもっとも重視する国として、積極的な戦略的対話を行いながら、一方で軍事的な対抗もすすめ、その先兵を、近接する日本やフィリピンに担わせるというオフシェアーバランスという戦略方針がある、との指摘がある。そう見れば、よくわかるアメリカの行動である。

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