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須崎市 前兆観測予算化???  

 地震の前兆を観測するための方法などを調査するため予算が須崎市の6月市議会に出されるそうだ。
地震発生のメカニズムは複雑で多様であり、実験もできず、「正確な予測はできない」「予知不可能」との金森博雄カリフォルニア工科大名誉教授、ロバート・ゲラー東大教授が言及。「想定外」への備えこそ大事と。
 より精度の高い予測を研究する東海大学海洋研究所もあるが、「一般的には予知はすごく難しいし、皆さんが考える予知研究はできていないのが実際です」と語っている。
 予測・予知は研究機関とかがやるべき話。どんな働きかけであったかしらないが、一自治体としては、「逃げる」ための対策に全力つくすべき。
【「地震、正確な予測できない」 金森博雄名誉教授に聞く 朝日2011/12/22】
【日本の地震学、改革の時 ロバート・ゲラー nature 2011/4/11】
【地震はいつ来るのか 予知に挑む 長尾年恭教授に聞く 毎日】

 

【「地震、正確な予測できない」 金森博雄名誉教授に聞く   朝日2011/12/22】

 東日本大震災を起こしたマグニチュード(M)9の地震を予測できず地震研究のあり方が厳しく問われた2011年。日本の地震学は何が不足しており、これから社会にどう貢献すべきなのか。巨大地震研究の第一人者で、地震防災にもかかわってきた金森博雄カリフォルニア工科大名誉教授に聞いた。

■最新技術使えば、より早い警報可能

 ――日本では地震の発生を予測して防災に役立てようとしてきました。

 地震現象は非常に複雑で、正確な予測はできない。大自然を相手にした実験はできず、得られたデータで考えるしかない。全体的な仕組みはつかめても、人の一生の長さで見ると何もいえない。不確実さを十分に受け止めた上で、防災に役立てることを考えるべきだ。地震の起こり方はいつも同じとは限らない。

 ――具体的には。
 
1906年のコロンビアの地震(M8.8)は太平洋中に津波の被害があった。40年代から70年代に起こった3地震が同時発生した形だが、三つを足したものよりずっと大きかった。普段は地震が起きない周辺の領域でも同時に起きたからだ。

 ――日本でも同じことがいえますか。

 はい。南海トラフ沿いの東南海、南海地震がばらばらに起こるときより、同時に動いたほうが大きくなる。東日本大震災も同じ。普段、地震を起こさないと考えられていた場所も一緒に動いた。学者が地震をわかっていると思わないほうがいい。

 ――防災対策の前提として地震の想定が必要です。

 地震学は歴史が浅く、過去に確認できていない大地震が起こる可能性がある。過去の地震だけでなく、知識を集め、世界を見渡して、科学的に起こりうる地震を想定する「シナリオ地震」を設定することは一つの方法です。例えば、日本海溝の東側で地震が起こる恐れがあるが、いつ起こるかわからない。その地震を仮定して、津波の高さを推定すれば、原発の対策に役立てられる。

 ――政府は地震発生予測を確率で示しています。

 揺れの予測を確率で表した地図をどう評価していいか私もわからない。政府がしっかり説明しないといけないが、簡単に説明できない。理解できないものをもらってもしかたない。

 ――緊急地震速報などの早期警報を防災に役立てようと提唱されてきました。

 気象庁の緊急地震速報だけでなく、独自に地震計を設置して大きな揺れがくる前に操業を止めるシステムを作り、被害を抑えた工場がある。長周期地震動を予測して超高層建物のエレベーターを止める仕組みもある。最新技術を使えば、もっと改良できる。地震学者だけではできないので、工学者との協力が大切です。

 ――地震学を防災に役立てる道はいろいろあると。
 地震発生から津波まで時間がある。津波警報、避難訓練などの教育、避難ビルの準備などがあれば、今の技術でも生命を守れるようになると感じた。地震発生後3分で気象庁の津波警報が出たことはよかった。素早い防災対応がとれたと思う。
 ただ、もっといい技術があり、使っていれば、東北全域で10メートル以上という津波警報を早く出せた。日本の地震記録が米地質調査所(USGS)にリアルタイムで送られていたら、7分でM9と自動計算できた。日本で解析できない状態も考え、国際的な協力を考えてもいいのでは。

 ――基礎科学と応用をつなぐ道がうまくできていないように感じます。

 科学は思いがけないところで役に立つ。(地震規模を表す)モーメントマグニチュードも、大規模な地震の解析に必要だったので作ったら、便利なので、ほかの人も使いだした。
 地震学は、学問のまま放っておくと役に立たない。半導体研究なら、論文を書けば、産業界が目をつけて使うでしょう。地震学の成果は、お金もうけに結びつかないので拾ってくれません。研究者はそう認識して、大学に閉じこもらず、防災機関に広めないといけない。私はUSGSや気象庁の人とよく話をするようにしている。地震学は、早期警報、工学応用、インフラ整備、教育や訓練にもっと役立つと思います。(聞き手・瀬川茂子、桜井林太郎)
     ◇
 かなもり・ひろお 1936年、東京生まれ。東京大学理学部卒業。東大地震研究所教授を経て、72年に米カリフォルニア工科大教授。同大地震研究所長、米地震学会長などを歴任。94年朝日賞、2007年京都賞。巨大地震の規模を示すのに適した「モーメントマグニチュード」を考案したことでも知られる。

■文科省「わかりやすい表現、むずかしい」

 文部科学省地震・防災研究課の寺田博幹課長の話 阪神大震災後、防災に役立てるために、どこでどんな地震の可能性があるか、長期的な評価を始めた。地震が繰り返す間隔や、前の地震からの経過時間がわかると、次の地震がどれくらい迫っているのか確率で表すことができる。確率は一つの表現で、活動間隔や前の地震が起きた時期も発表している。
 各地が強い揺れに襲われる確率を示した地図も公表している。わかりにくいと思う人もいるかもしれないが、地震保険、企業や自治体などでは使われており、問い合わせもくる。
 東日本大震災後、海溝型の地震について、予測手法を見直している。表現法も検討中だ。すべての人にわかりやすい表現法があれば使いたいが、むずかしい。


 

【日本の地震学、改革の時 ロバート・ゲラー nature 2011/4/11】

 東京大学のロバート・ゲラー教授は「日本政府は、欠陥手法を用いた確率論的地震動予測も、仮想にすぎない東海地震に基づく不毛な短期的地震予知も、即刻やめるべきだ」と主張する。

・Robert Geller
(1952年、米ニューヨーク州生まれ。カリフォルニア工科大地球惑星科学研究科修了。理学博士。スタンフォード大助教授などを経て、84年から東京大で研究を続けている。主要研究テーマは地球の3次元内部構造など。英科学誌「ネイチャー」、米科学誌「サイエンス」で地震予知研究の問題点を指摘してきた。)  

 石橋克彦・神戸大学名誉教授をはじめとする一部の地震学者が、20年以上も前から地震や津波による原子力発電所の損壊と放射性物質の漏洩の危険性を指摘してきたにもかかわらず、この指摘はほとんど顧みられることはなかった。3月11日のマグニチュード9.1の東北地震(東日本大震災)のあとでさえ、テレビなどで  
今回起きた地震と津波を「想定外」と語る解説者は多い。

 ならば、「想定内」の地震とは何なのか。それは、日本政府の地震調査研究推進本部(以下、推進本部)が仮定した、地域ごとの固有地震を指していると思われる。そこでは、それぞれの地域に対して、断層パラメータなどを入力データとして、確率論的地震動予測地図を導き出している(地図を参照)。

 毎年日本政府は、確率論的地震動予測地図を公表している。しかしながら、1979年以降、10人以上の死者をもたらした地震はリスクが低いとされた地域に起きている。

 確率論的な地震動予測地図といえば信頼性が高いようにみえるかもしれないが、予測に用いられた手法が検証されるまでは、単なるモデルにすぎない。この地図で最も危険だと評価されているのが、東海、東南海、南海という3つの地域の「シナリオ地震」である。しかし現実には、1979年以降、10人以上の死者を出した地震は、この確率論的地震動予測地図において、比較的リスクが低いとされてきた場所で発生している。この矛盾からだけでも、確率論的地震動予測地図およびその作成に用いられた方法論に欠陥があること、したがって破棄すべきであることが強く示唆される。またこれは、昨今の一連の固有地震モデル(およびその類型である地震空白モデル)に対しても否定的な結果を示しており、確率論的地震動予測地図を作る際に仮定した物理モデルが、本来の地震発生の物理的過程と根本的に異なる誤ったものであることを示唆している。

 過去100年間で、沈み込み帯におけるマグニチュード9以上の地震は5回発生している(1952年カムチャッカ、1960年チリ、1964年アラスカ、2004年スマトラ沖、2011年東北)。この事実は、沈み込み帯の地震の最大規模は、その地質学的条件にあまり依存しないことを示唆している。これまでも大津波は東北地方の太平洋沿岸を頻繁に襲ってきた。1896年の明治三陸津波は最大38mにも達し、2万2000人以上の死者を出した。また869年の貞観津波の高さは、記録によると、今回の3月11日に発生した津波にほぼ匹敵するものとされている。

 もし、世界の地震活動度と東北地方の歴史記録が、地震の危険性を見積もるときに考慮されていれば、もちろん時間・震源・マグニチュードを特定するのは無理としても、3月11日の東北地震は一般には容易に「想定」できたはずである。とりわけ、1896年に起きた明治三陸津波はよく認知されており、かつ記録もなされているので、こうした地震への対策は、福島原子力発電所の設計段階で検討することは可能であったし、当然そうすべきであった。

◆東海地震

 1960年代、プレートテクトニクスは固体地球科学の基本的な枠組みとして一般的に認められるようになった。多くの国において、大地震の長期予測を行うために、地震活動度とプレートテクトニクスを結びつける研究が進められた。その考えはきわめて単純だった。しばらくの間大きな地震が発生していない「地震空白域」では大地震の発生が差し迫っている、という仮定である。しかし、この地震空白域仮説は実証されなかった。何万年もしくはそれ以上の時間スケールにおいて、地震や非地震の総すべり量とプレート間の相対運動の量は一致しなければならない。しかし、現在では、このプロセスは、定期的でも周期的でもないことが判明しており、3月11日の地震はこれを確認させるものであった。

 しかしながら、地震空白域仮説は1970年代半ば、世界の地球科学コミュニティで流行した。このとき、東海沖のプレート境界こそが、マグニチュード8が起こると考えられる地震空白域である、と何人かの日本の研究者が主張した。隣接する東南海および南海地域もまた、地震空白域とされた。これらの地域では1975年以降大地震は発生していないにもかかわらず、いまだに日本政府は全国で最も危険な領域としている。

 過去30年以上の間、政府の報道官および推進本部(またその設立前の関連組織)に所属する研究者は、「東海地震」という単語を頻繁に使ってきた。そのため、国民やマスメディアは、東海地震を単なる任意のシナリオではなく、「本当の地震」と思うようになった(日本語グーグルの検索では178万件ヒットする)。その結果、時計が時を刻むように、あらかじめ決まっているマグニチュード8の地震が、近い将来東海地域を確実に襲うと国民に思い込ませてしまった。「東海地震」および「東南海地震」と「南海地震」という言葉は、現実として起こっていない以上、使用すべきでない。

◆予測が不能な地震

 地震学の歴史を通じて、数時間もしくは数日間前に地震の予知を行うということは、極めて懐疑的にみられてきた(http://go.nature.com/ahc6nx も参照)。しかし、1960年代後半から1970年代初めに、はじめはソ連の研究者によって、続いて米国の主要機関の研究者による肯定的な研究が登場し、楽観ムードに変わっていった。Nature の1973年の社説には、「状況は核分裂が突然現実のものとなった1939年にいくつかの点で似ている」と記載されている9。また、ほぼ同時期に、Science といくつかの主要な専門誌上にも肯定的な報告が掲載された。
 これらの肯定的な報告は、地震の前兆を観測したという主張に基づいたものであった。1973年の Nature の社説が取り上げた研究では、地殻の地震波速度が10〜20%減少した後に正常値に回復するときは、地震が差し迫っている信号である、と報告している。しかしながら、24万人が死亡したとされる1976年の中国の唐山地震は予知(が)できなかった。そして、1970年代後半になると、大半の研究者は、このような地震の前兆報告が誤りであったことを認識するようになった。地震予知のバブルはこうしてはじけたが、多くの似たような例(ポリウォーター、常温核融合など)と同様、いくつかの国において、今でもわずかに残った一部研究者が地震の前兆という主張を続けている。

◆根拠のない予知法

 1970年代半ばに差し迫っているとされた東海地震に関する議論は、日本中をなかばパニック状態にした。この状況を利用して、気象庁や大学の科学者は1978年に「大規模地震対策特別措置法」(以下、大震法)の制定を促した。大震法によって定めた制度により、気象庁は常時観測(写真を参照)を運用して「東海地震」が発生する前兆を検出しようとしている。前兆と思われる信号が観測された場合、5人の地球物理学者から構成される「地震防災対策強化地域判定会」がデータを精査し、気象庁長官が内閣総理大臣に報告、閣議を経て広い地域においてほぼすべての活動を停止する警戒宣言を発令する、という仕組みになっている。
 
 他の国で前例がない大震法は、信頼性の高い地震の前兆が存在することを前提としている。1944年に日本で起きた東南海地震に対する測地学的前兆現象に関する一報告(文献6の図2を参照)に基づき、測地学的な滑りが気象庁の観測の主な対象となっている。震央地域から遠い場所で観測された1944年のデータは、本震の直前に断層の深い部分がゆっくりとした滑りによって数cm隆起したものと解釈された。残念ながらこのデータは、今では時代遅れの測量技術を使用して測定されたもので、かなりの不確実性を伴う。現に、この種の前兆現象は、GPSや他の近代的な測定技術では見つかっていない。1970年代に米国で観測された測地学的な前兆(パームデールバルジと呼ばれた)が報告されたが、結局は誤りであると判明した(参照文献8のセクション3.4を参照)。
研究者は国民と政府に「想定外に備える」ことを勧告しなければならない。

 このように極めて疑わしい1944年の例を根拠として大型観測研究計画を進めるのは、適切であるとは言い難い。さらに、日本政府がいまだに法的に拘束力のある地震予知体制を運用していることには、驚きを禁じえない。気象庁のホームページには、「体制が整っていて予知のできる可能性があるのは、現在のところ(場所)駿河湾付近からその沖合いを震源とする、(大きさ)マグニチュード8クラスのいわゆる『東海地震』だけです。それ以外の地震については直前に予知できるほど現在の科学技術が進んでいません」という記述がある。しかし、1978年当時と比べて現在では観測点の数ははるかに増えている。もし本当に「東海地震」の予知が1978年当時にも可能であったならば、現時点ではすべてのマグニチュード8の地震が予知されているはずである。

◆正直な議論の必要性

 東海地震予知体制が30年以上にわたって継続されているにもかかわらず、多くの主流の日本の地震学者は何の異議も申し立てていない。その理由は多少複雑である。第1に、多くの研究者がさまざまな点(予算配分、委員ポストなど)で癒着している。第2に、政府決定には名目上の審議があるが、審議会は官僚が指名する委員から構成されている。第3に、説得力のある批判は紙媒体の報道機関で取り上げられることがあるが、放送マスコミではほとんど無視されるために、インパクトが乏しい。第4に、政府は「記者クラブ」制度を介して、直接マスコミにその見解を伝えることができる。そして、しばしば報道記者は科学の知識に乏しい。最後に、大震法が有効である限り、政府は、東海地震予知には法的な拘束力があると主張することができる。

 今こそ、地震予知が不可能であることを率直に国民に伝え、東海地震予知体制を廃止して、大震法を撤廃する時である。日本全土が地震の危険にさらされているのであって、現在の地震学では、特定の地域のリスクレベルを的確に評価することはできない。その代わりに、研究者は国民と政府に「想定外に備える」ことを勧告しなければならない。そして、研究者は知っていることと知らないことの両方を正確に客観的に知らせなければならない。地震学の将来の基礎研究は、物理学に根ざし、厳密に精査され、顔の見えない官僚によってではなく、日本の一流の科学者によって導かれなければならない。
(翻訳:本人)

 著者は東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻教授。



【地震はいつ来るのか 予知に挑む  毎日】 

東海大学海洋研究所 地震予知研究センター長 長尾年恭教授

 多くの人命を奪った東日本大震災から1年。もし、地震予知ができていれば……多くの人の頭に浮かんだことだろう。難しいと言われている地震予知を研究している静岡市清水区の東海大学海洋研究所地震予知研究センター長、長尾年恭教授を訪ねた。【毎日jp編集部 銅崎順子】

 --地震予知ということですが、どのような研究をしているのでしょうか。

 長尾教授(以下、長尾) 地震予知研究センターは1995年4月に発足しました。95年というと阪神・淡路大震災が1月に発生したので、震災を受けて同センターを設置したと思われがちですが、震災の前から設置計画がありました。静岡県は東海地震が来ると言われているのに、その当時、地震の研究者は県内にいなかった。それならば地元住民のために何かしましょう、と東海大学が研究センターをスタートさせることになったのです。
 このセンターの一番ユニークなところは、地震計がないところです。地震計は、地震が来ないと動きません。地震計で地震予知はできないのです。地震予知をするためには、地震計が動く前に地下で起きていることを観測して判断することが必要で、東海大学はこれに挑戦しています。実際には、地震計がないわけではありませんが、地震予知は地震計を使う地震学者の仕事ではないというのが最大のメッセージです。

 我々の研究は、地震の前に何が起きるかに着目しています。何が起きるかというと、一つは電磁気学的な異常です。昔で言えば、「ナマズが騒いだ」などという言い方がありましたが、電磁波の異常が地震の前に起きることがはっきりしてきました。また井戸や地下水に変化が見られないかということも大事です。最近の進歩は、地震学者以外の統計物理学や破壊の物理学など物理学者が参入していることです。東海大学ではこうした物理学者と地震学者との橋渡しをしています。地震予知って言うとほとんど超能力とか予言、占いと紙一重の捉え方をされます。実際、週刊誌などで取り上げられる地震予知は、占いみたいなものです。地震雲はありませんし、思い込みなのです。静岡で見た“地震雲”でアメリカの予知をしたりしますが、ほとんどは予知と言えないものです。

 割り箸が弱いところから折れるように、物が壊れるときは弱いところから壊れます。地震も同じようなものです。地面の中は不均質なので、必ず先に壊れるところがある。予知といっても例えるならがんの早期発見と似ているかもしれません。地面の中で一番初めに壊れるミシミシピキピキを察知することです。臨界現象と言いますが、ものが壊れる直前の状態を判断することが物理学の発展によってできるようになってきました。

 我々は、臨界現象の物理学と地震の前におきる電磁現象を調べています。電磁現象は、例えばラジオに雑音が入ることです。特に中波帯ですが阪神・淡路大震災の時は地震の前に、すべての放送が聞こえなかったくらい雑音が出た。そういう現象があります。電離層の異常などを使って予知情報を配信している会社もあります。一般的には予知はすごく難しいし、皆さんが考える予知研究はできていないのが実際です。我々は、破壊の物理学、ものが壊れるときは前兆がある、このセオリーに則って研究をしています。

 天気予報が進歩したのは、人工衛星による観測やシミュレーションができるようになったからです。本当に地震学が進んだのはここ20~30年。日本でばらばらでやっていた地震観測が統一されるようになったのは阪神・淡路大震災以降です。この震災後、地震計の設置が進み台数が増えました。阪神・淡路大震災以前、観測された地震は1日20~30回だったのが、今は1日400回くらい観測されています。非常に小さい地震も観測できるようになったので、地下のゆらぎというか、ひずみのたまり方がわかるようになった。コンピューターの進歩でこれらの情報を使い地下天気図が作れるようになりました。天気図なので必ず雨が降るとはいえませんが、この週末は大丈夫ですよという地震安心情報は出せるようになったわけです。

 地震予知機という機械はないので、地震学だけでなく測地学や地下水の情報、コンピューターシミュレーションなど複数の手法を組み合わせることで、異常を計測することが大事です。今の日本ではできていないので、東海大学ができるようにしたい。五つのうち四つ異常があれば、「8割の確率でマグニチュード○クラスの地震が来る」「地震が近い」といえる。100%とは断言できないが、科学なのでトレーニングをして計測することで精度は上がります。地震の前兆現象がわかってきていますので、情報は色々出せるのですが、発表システムがないのです。

--地下天気図で1カ月以内に来そうだとか、わかるのですか。

 長尾 臨界現象の物理学を使えば、2~3日前とかにできるのではないかと考えています。東日本大震災の前は日本列島全体に異常があったと言えます。一つ経験ができたので、次は何とかしたいと思っています。

 --「地震が来ます」と発表することは難しいのでは?

 長尾 予知を出せるのは気象庁だけですし、法的整備があるのは東海地震のみです。地下天気図などの図だけをウェブで公表することになるのでしょうが、観光地など、社会に影響を与えるものですので慎重にならざるをえません。
 今の段階では、不特定多数への発表は難しい。予知できればバラ色ということではなく、予知情報をどのように伝えるかが重要です。しかし、どのように情報を公表すればいいのか、研究されていない。予知情報をどう扱うかも研究課題です。予知情報は使い方次第でリスクを下げることができます。物流であれば、日本の飛行機は約半分が羽田と成田の両空港にある。首都直下地震の恐れがあるときは、夜間は地方空港に駐機させておくとか、港湾は横浜でなく神戸に船を回そうとか分散させることもできます。

 --不特定多数に発表することが難しいのは、一般に地学や地震の知識が少ないからでしょうか。

 長尾 地学は確かに(大学入試)センター試験の受験者も少ないですしね。地学と言わず、今や地球温暖化や海洋汚染なども含めて地球科学という名前にすればよいと思っています。正しい知識を持つことは重要です。予知も大事ですが、何が正しいか科学的知識を持つことです。科学的リテラシー、メディアリテラシーが試されます。

 --長尾教授は、地震に対してどんな備えをしていますか。

 長尾 強い建物に住む、水の確保、個人用の発電機、トイレ用に猫の砂の備蓄。もし、今地震が起きたらどうするかをちょっと考える。そんなところでしょうか。泥水などを飲めるようにするサバイバルストローなどは便利だと思います。食べ物は2~3日なくても大丈夫ですが、水は大切です。トイレもそうです。近代都市では上水道と下水道がいっしょに復旧しないと大変困るわけですから。

 --ところで、なぜ研究者になったのですか。

 長尾 中学生のころ、プレートテクトニクスや大陸移動が話題になり、恩師でもある上田誠也東大名誉教授の本や映画『日本沈没』(小松左京原作)で興味を持ちました。僕らの世代は『日本沈没世代』とも言うんですよ。地球はダイナミックです。大学では固体地球物理学を学びました。未来がわかるとおもしろいしチャレンジングだと思い、20年ほど前から予知に取り組んでいます。
 津波は、東北の場合は逃げる時間が最低でも20分あります。静岡から四国の場合は、揺れている最中に津波が来る可能性が高い。予知は重要だし、建物の強度も強くする必要がある。そして最後に人命を救うのは予知かもしれません。

◆東海大学海洋研究所地震予知研究センター長 長尾年恭教授
 1987年東京大学大学院博士課程修了。金沢大学助手を経て95年12月から東海大学海洋学部助教授。98年4月から地震予知研究センター長。2001年4月から教授。専門は固体地球物理学。地震電磁気学、地球熱学。著書に「地震予知研究の新展開」(近未来社)など。

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