地球1個分の暮らしを~現状1.5個分 WWFレポート
現在の地球1.5個分の消費がなされる一方で、失われる地球の「豊かさ」、そして貧富の格差の拡大。「地球一個分の暮らし」をめざそう!と「生活レベルを落とし、不便に甘んじる」ことでなく「新たな工夫と技術の開発によって、より少ない資源でより多く生産し、より少なく賢く消費するライフスタイルを築いてゆく、未来に向けた積極的な意思に基づいた行動」を呼びかけている。
省エネ技術、製品の普及、エネルギーと食糧の自給など、維持可能な社会をどうつくるか・・現在の日本の電力問題、TPPを考える上でも大事な視点。
6月20日~22日に、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催される「国連持続可能な開発会議」にむけて、WWF、ロンドン動物学協会、グローバル・フットプリント・ネットワークと共同で発行したレポート。
【『生きている地球レポート2012』概要版 WWF5/15】
【地球環境の現状を明らかに 『生きている地球レポート2012』発表】 2012年5月15日、WWFは『生きている地球レポート(Living Planet Report)』の2012年版を発表しました。このレポートは、地球の生物多様性の劣化の現状とともに、世界人口の増加に伴う消費活動の増大が、環境を圧迫し、安全かつ豊かで健康な未来を脅かす傾向が続いていることを明らかにするものです。◆地球環境を圧迫する資源の消費を明らかに
WWFが2年ごとに発表している『生きている地球レポート(Living Planet Report)』は、ロンドン動物学協会およびグローバル・フットプリント・ネットワークと共同で発行しているもので、地球規模の生物多様性の劣化と、その原因となっている人類による資源や環境の過剰な利用の現状を、数値化してまとめたものです。
主な指標は、「生きている地球指数」と「エコロジカル・フットプリント」の二つで、これにより各国、各地域のデータと傾向、および地球全体で起きている環境破壊の規模を示しています。
2012年に発表したレポートでは、「生きている地球指数」は約28パーセント劣化、さらに、「エコロジカル・フットプリント」は、人間活動による自然資源の需要が1966年から倍増し、現在地球1.5個分の資源を利用して生活していることを明らかにしました。◆失われる地球の「豊かさ」と増大する消費の圧力
「生きている地球指数(Living Planet Index)」は、世界の2,600種以上の野生生物、約9,000の個体群のデータを基に算出したもので、いわば地球上の生物多様性とその豊かさを示す指標です。
今回のレポートは、この指数は1970年から2008年までに、世界全体で28%低下しましたが、特に熱帯では、過去40年足らずで60%この指数が低下しました。
これは、東南アジアや南米、アフリカなど、もともと生物多様性がゆたかであった熱帯の途上国において、その急激な劣化が進んでいる現状を示すものです。
こうした生物多様性の悪化の主因となっているのが、人類による環境や資源の消費による、自然界への圧力です。
「エコロジカル・フットプリント」は、この消費による圧力を指数化したもので、こちらは増加を続けており、1961年から2008年までにほぼ倍増しました。
この結果、現在の人類は現在、地球1個分がもともと持っている生産力を上回る規模で消費を続けており、このままでは2030年までに、地球2個分を必要とする規模にまで、消費の圧力が大きくなる可能性が示されています。◆国によって異なる傾向
こうした地球環境への圧力は、国によって状況が異なります。
「エコロジカル・フットプリント」を国別に人口一人当たりでみると、その差がわかります。
たとえば、地球の全人口が、下記の国々の平均的な消費レベルで生活すると、それをまかなうために必要とされる地球の個数に、差が出てくることがわかります。
インドなどは、国全体としての「エコロジカル・フットプリント」は大きいですが、大人口のため、国民一人あたりの平均的な生活レベルで見ると、まだ地球にかけている負担が小さいことがわかります。
しかし、いずれにしても、人類の消費が地球全体の環境にかけている負担は、年々大きくなっています。◆拡大する貧富の差
とりわけ、大きな負担になっているのが、「カーボン・フットプリント」です。
これは、人為的に排出された二酸化炭素(CO2)を、地球が吸収するのに必要な面積を計算し、環境への負荷分として換算したもので、「エコロジカル・フットプリント」の実に55%を占めています。
つまり、二酸化炭素の排出削減による地球温暖化の防止は、地球環境全体の保全のゆくえを左右する一つのカギになっている、ということです。
また「生きている地球指数」を1970年と2008年で比較すると、温帯に多い高所得国では7%上昇、つまり回復しているのに対し、中所得国では31%減少、熱帯に多い低所得国では60%の低下となっています。これは、高所得国が中・低所得国から資源を輸入・消費していることが、要因の一つであると考えられます。
世界のすべての国々は、地球の生態系サービスや自然資源に依存していますが、こうした影響には偏りがあり、その悪影響はまず世界の貧困層に降りかかります。
こうした国々では、自然環境の悪化により、水や食糧、エネルギーへのアクセスがより困難になり、貧困から抜け出せない現象が起きているのです。◆「地球一個分の暮らし」をめざそう!
『生きている地球レポート2012』の発表にあたり、WWFインターナショナルのジム・リープ事務局長は、次のようにコメントをしています。
「私たちは、地球がもう一つ存在するかのような生活を続けています。地球が提供できる資源の量よりも50%多く消費しており、この傾向を変えなければ2030年までには地球が2個あっても足りなくなるでしょう。しかし、今ならばまだ、2050年に予想される90億、または100億の人々に食糧・水・エネルギーを提供できる豊かな未来を創る選択肢が、私たちにはあります」
WWFが提議している「地球一個分の暮らし」は、まさにこの地球が本来持つ生産・吸収の能力の範囲内で、自然界から得られる資源を、管理・運用・共有することを提案するものです。
それは決して、今の生活レベルを落とし、不便に甘んじることを強いるものではありません。
新たな工夫と技術の開発によって、より少ない資源でより多く生産し、より少なく賢く消費するライフスタイルを築いてゆく、未来に向けた積極的な意思に基づいた行動です。
これを実現するためには、たとえば以下のような取り組みが必要とされます。・自然資産を守るため、生物多様性を保全する。省エネで効率の良い生産方法を確立する。
・地球の生物生産力に見合った世界共通の消費のあり方を確立する。
・長期的な自然資産の保全がもたらす利益を経済的に適切に評価し、生態系保全や持続的な管理に向けた金融投資の流れを改善する。
・食糧・水・エネルギーへ衡平にアクセスできる仕組みをつくる。WWFはこの『生きている地球レポート2012』を、2012年6月20日~22日に、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催される「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」を意識して発表しました。
世界各国の首脳が集まり、20年前の「地球サミット(1992年)」で交わされた、持続可能な未来をめざす約束を再確認する、この貴重な機会において、政府・行政・ビジネス界が協力し、これからの地球のための決断と意思を明らかにすることを、WWFは期待しています。
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